ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー40 激辛カレー その2

 

メニュー40 激辛カレー その2

 

赤いカレーだ。ガネーシャの作るカレーよりもカワサキのカレーは赤かった……。

 

「うお……これは強烈そうだな」

 

「でも良い匂いだ……旨そうだ」

 

強烈な香辛料の香りだが、不快ではない……刺激の中に食欲を誘う香りが混じっている。これはただ辛いだけではなく、計算された辛さと美味さの調和が取れた1品なのだ。

 

「いただきます」

 

小さく一礼してからスプーンでカレーだけを掬って口へと運ぶ。1口目で口の中に広がったのは痛みを伴う辛味……その余りの辛さに思わず目を見開いた。だがじっくりと味わっているとその辛味の中に凄まじい旨味の塊が姿を見せる。

 

「からぁぁいいいッ! でもうまぁぁあああいッ!!!」

 

「美味い辛い辛い美味いッ! なんだこれッ!!」

 

大粒の汗が額から流れ落ちる。美味さはあるが辛く拒否反応がある……だがそれでも美味い、美味しいのだ。スプーンを口へ運ぶ手が止まらない。

 

「辛い……辛いのに……おいひい……」

 

アーディは辛いのが苦手で、顔を真っ赤にさせ額から大量の汗を流しながらもカレーを口に運び続けていた。

 

(これは凄い……ガネーシャのカレーとは別ベクトルで美味い)

 

ガネーシャのカレーは確かに美味い、だがカワサキのカレーは味が安定しているというか……何と言えば良いのか判らないが味に纏まりがあるのだ。多分これは料理人かそうじゃないかだろう……同じ味を安定して再現できる料理人のカワサキと、そうじゃないガネーシャとの差だろう。

 

「この米と一緒に食べるともっと美味いな」

 

「米もちゃんと調整しているんだな。辛さと旨味を際立たせている……」

 

カレーの強烈な辛さとそれを安定させるライスの美味さはガネーシャのカレーにはない美味さだ。

 

「柔らかい……口の中で肉がほどけて消える……肉汁と辛さが口の中一杯に広がるッ!」

 

「くうう……美味いッ! これは癖になる」

 

強烈な辛さ、そして美味さ、米の絶妙な塩加減と深い味わい……。

 

「ふう……美味い」

 

額に浮かぶ汗を拭い、服のボタンを1つ外して大きく息を吐いた。

 

「……この白いの美味しい……」

 

アーディが半泣きで白いドリンクを飲んでいるのを見て私も興味を抱き、用意されていた白いドリンクを口にした。

 

「……ヨーグルトを使ったドリンクか、甘酸っぱくて良いな」

 

甘さとほのかな酸味は下の上に痛みを押し流し、香辛料によって火照った身体が白いドリンク……ラッシーというらしい飲み物の冷たさが心地よく冷やしてくれる。

 

「これは良いな、カレーがまた食べたくなる」

 

「辛くて甘くて熱くて……うーん……美味い……」

 

激辛カレーと甘酸っぱいラッシー……ガネーシャとのカレーとはまた違う美味さと辛さに私達は辛い辛いと呟きながらもカレーを口へと運び続けるのだった……。

 

 

 

 

 

 

カワサキの作ってくれたカレーは俺を考慮してくれたのか羊を使ったカレーだった。柔らかく、中までしっかり味が染みているその羊肉は食欲を強く刺激する。

 

(辛い……だが美味い。俺のカレーとはまた違う)

 

俺が使っている香辛料と似ているが、香辛料のブレンドや量が違うのだろう。美味さや後味が別物だ……なるほどこれがプロの味かとしみじみ思う。

 

(この米も美味い……何を使っているんだ?)

 

米もただ炊いたのではない、カレーの味に合わせて味付けし、そして風味などを考えて調理しているのだろう。カレーの強烈な辛さを和らげつつ、そして旨味も増幅させている。

 

「美味い、お前のカレーは本当に美味いな! ガネーシャ感激ッ!」

 

オラリオで俺より美味いカレーを作れる奴はいないと思っていたが……ここにいた。

 

「美味い美味いッ! そして辛いッ!」

 

辛さと美味さのバランス、絶妙にもう食べたくないという辛さではない、もっと食べたいと思える辛さのバランス。

 

「本当に美味いな! 俺はこの辛さが癖になりそうだ」

 

「でも私はガネーシャのカレーが好きかなあ。カワサキのは美味しいけどなんかお店の味って感じで……」

 

「それは分りますね。なんというか……高級って言えば良いのかな? 美味しいんだけど……なんというか……」

 

「ちょっとガネーシャの美味しいカレーとは違うかなって感じかな」

 

カワサキのカレーも美味しいが、俺のカレーも美味いと団員達が言ってくれる声を聞くと思わず笑みが零れる。

 

「慣れ親しんだ味の違いって奴かねぇ。俺はガネーシャのカレーの方が美味いと思うけどな」

 

「む? だが俺はカワサキのカレーの方が美味いと思うがな」

 

自分の作る味と違うからか、それとも他人が作ってくれたから美味いと思うのかは分らないが……俺にはカワサキのカレーの方が美味いと思う。

 

「やっぱり他人が作ってくれると美味いって思うもんなんだよな」

 

「そういうものか。そうだ、カワサキ。俺は香辛料が少し足りなくてな……良かったら分けてくれまいか?」

 

「良いぞ。後で持ってこよう」

 

「それは助かる! 楽しみにしている!」

 

オラリオでは香辛料を入手するのが難しく、新しくどうやって入手するか悩んでいたのがカワサキが持っているというのならばありがたく分けてもらおうと思う。

 

「しかし、美味いな。香辛料のブレンドか?」

 

「香辛料をすり潰した後に炒めてるか?」

 

「む。炒めてはいるが……少し炒め方が足りないかもしれないな。ほかには何か隠し味のようなものはあるか?」

 

「飴色玉葱だな」

 

「飴色……玉葱? 微塵切りにして炒めるだけでは駄目か?」

 

「それだとちょっと旨みが足りないな」

 

「今度作り方を教えてくれるとありがたい」

 

「良いぞ、食べ終わったら教える」

 

「それは助かる。それとカレーのお代わりを頼む!」

 

「あいよっと」

 

どうすればもっとカレーが美味く出来るのか、カワサキが作ってくれたカレーを食べながらカワサキがどんな風に作っているのかを聞き、自分のカレーと何が違うのかを質問し、もっと自分のカレーを美味くして眷属達に振舞うのだと思いながらカレーを頬張るのだった……。

 

 

 

 

 

ガネーシャのカレーは骨付き鶏肉が真ん中に置かれたインパクトの強い1品だった。鼻をくすぐる香辛料の香りは俺の物よりもずっと強く、香りが豊かだ。

 

(……香辛料の炒めが足りないとガネーシャは言っていたが……それが返って上手く言ってるのか?)

 

香辛料に関しての俺の理解が足りないのか、それともガネーシャのフィーリングで混ぜ合わせた香辛料が上手く相乗効果を発揮しているのかもしれない。

 

「……美味いな」

 

にんにくと生姜がたっぷりと使われ、飴色玉葱ではないが微塵切りの玉葱を使っているからか辛味と甘みがルーの中へ溶け出しているようだ。

 

(骨付き腿肉は香辛料で炒めながら煮詰めたわけか……上手く辛味と旨みが染み込んでいるな)

 

多分弱火でじっくりと炒めながら香辛料と混ぜ合わせ、トマトと出汁で煮詰めたわけか……。なるほど上手く作っている」

流石はインドの神。スパイスの調合に関しては俺よりも遥かに上だと素直に認める。

 

(骨付きだから旨味も良く滲み出ているし、何よりも優しい味がする。辛いカレーで優しい味と言うのはおかしな話かもしれないが……とても優しい味がする)

 

「お前は自分の眷属をとても大事にしてるんだな」

 

「当然だ! 自分の家族を大事にするのは当然だろう」

 

家族の為に作られた料理の味だ。俺のように美味い料理ではない、だがガネーシャの料理は優しく、間違いなく家族を思う優しい味だ。

 

(まぁ作ってる料理は激辛なんだが……)

 

これが激辛料理ではなく、もっと別の煮込み料理だったりすれば心温まる1品なんだがなと思う。

 

(しかし……美味いな)

 

辛い、辛いが美味い、そして優しい味がする。俺の作るカレーよりもガネーシャファミリアの団員にはこのカレーの方がきっと舌に合い美味いのだろう。俺のカレーも確かに減っているが、ガネーシャの作ったカレーの方が減り具合が早い。

 

(そうだよな、ただ美味いだけじゃないんだよな)

 

栄養素や美味い組み合わせとかじゃない、腹が満たされれば良いと言うものではない。

 

(良い物を見た。心からそう思えるな……)

 

心が満たされる料理はどんな料理であったとしても笑顔が溢れている。オラリオの神には下種や、享楽的な奴らが多い、そんな中でもガネーシャは好意的に見れる男だったが、このカレーを食べ、そして笑顔に溢れる団員達を見て良い物が見れたと小さく笑みを浮かべながらカレーを口へと運ぶのだった……。

 

 

 

 

カワサキさんのカレーは凄く辛かった。辛くて、熱くて……それでもとても美味しかった。

 

(痛い、辛い……熱い……でも……手が進む)

 

本当なら辛い物は余り得意ではないのにもっと食べたいと思う。

 

「ふうー……これ美味しいなあ」

 

このラッシーという甘酸っぱい飲み物は口の中をさっぱりさせるだけではなく、辛さも押し流してくれる。

 

「アーディ、大丈夫なのか?」

 

「うん、お姉ちゃん。辛いけど……美味しいよ」

 

羊肉の脂とホロホロと口の中で溶けて行き、ルーと混ざり合うと辛いことは辛いのだが、それ以上に旨味を強く感じる。

 

(その後に辛味がやってくるんだけどねッ!)

 

その辛さに背筋が少し伸びるが、その辛味で食欲が刺激され、味付けされた米にスプーンが伸びる。

 

「ガネーシャの骨付き鶏腿肉も美味いなぁ。慣れ親しんだ味だ」

 

「カワサキの作ってくれたほろほろの羊肉も美味しいわよ」

 

同じカレーだが、その味には微妙な違いがあり、その違いが面白く、そして美味しい。

 

「ふう……ご馳走様でした」

 

「美味しかったな……」

 

額から溢れる汗を拭い、ラッシーを飲んで大きく息を吐いて一息ついた。

 

「結局3杯も食べちゃった……」

 

「辛いのに美味くてどんどん食べてしまったな」

 

少し食べ過ぎた気もするが、それでも美味しかったから仕方ない……でも暫くは動きたくないなと思っていると机の上に小さなガラスのお皿が置かれた。それには白い塊……オラリオでは珍しいアイスクリームだった。

 

「辛いカレーを食べた後にはアイスクリームだろ?」

 

「良いですねー! いただきます!」

 

「私もありがたく貰おう」

 

満腹でもう何もいらないと思っていたが、デザートにアイスクリームなら嬉しいし、ありがたい。

 

「んー甘くて美味しい……」

 

「カレーの後には良いな……」

 

「甘い物は余り好きじゃないけど、カレーの後なら美味く思えるな」

 

辛いカレーの後の冷たくて甘いアイスは火照った身体に凄く心地良く、小さめのアイスという事もありあっという間に食べ終わり、デザートまで食べて満足した私達は食堂の椅子に背中を預け、さきほどとはまた違った満足しきった吐息をお姉ちゃんと共に漏らすのだった……。だがこの時の私は知らなかったし、安心してしまったのだ。

 

(ガネーシャファミリアが後にいれば安全だよね)

 

カワサキさんの後にギルドだけではなく、ガネーシャファミリアもいると分かればカワサキさんを追い出したり、カワサキさんを無理矢理ファミリアに入れようとする神もいなくなる筈だからカワサキさんも大丈夫だと思っていた……だがカワサキさんはガネーシャファミリアにカレーを振舞ってから1週間後に何も言わずにオラリオから姿を消すのだった……。

 

 

 

 

メニュー41 サムゲタン へ続く

 

 




と言う訳でカレー回は終了。次回はサムゲタンで医神コンビをメインにした話にして見たいと思います。もう少しで原作前編は終了で原作開始まで後少し、どんな展開が待っているのか楽しみにしていてください。


それと今回は久しぶりに料理のリクエストをやりたいと思います。

こんな料理を出して欲しいな等というリクエストを受け付けたいと思います。

詳しくは本日の活動報告にありますので、そちらを見ていただいて活動報告でリクエストを受け付けておりますので、そちらのコメントにてよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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