ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー41 サムゲタン 

メニュー41 サムゲタン 

 

 

闇派閥の主神達を預かるとはカワサキに言いはした。言いはしたが……10人近い神を内密でディアンケヒト・ファミリアで預かり続けるというのは中々に厳しい物があった。団員達にも釘を刺しているが、邪神、悪神とは思えない善良な性格をしている闇派閥の神について疑いや不信感を抱いている者もいる。

 

「安請け合いをしたつもりはないが……ここまで長引くとは……」

 

表向き入院している闇派閥の団員も善良その物、そして地下に隔離している神々も善良にしか思えないというのが本当に闇派閥の関係者なのかと疑われているというのが実に面倒だった。

 

(問題がないのならさっさと解放すれば良い物を……)

 

闇派閥が壊滅しているのをならば隔離している神を解放してしまえば良い物を……とはいえフェルズとウラノスに駄目だと言われているのでそれも出来ず面倒な事になっている。いくら金を貰っていても、団員に不信感を抱かれてしまえば闇派閥で荒れている現在のオラリオでは団員の脱退にも繋がりかねないので闇派閥の主神や団員についての次の方針をさっさと決めてほしい物だとぼやいてしまう。

 

「ディアンケヒト様。カワサキさんとミアハ様が尋ねて来ておりますが……」

 

「すぐにこっちに通せ。それと人払いも忘れるな」

 

ミアハはともかくカワサキが来るというのならば何らかの進展があるかもしれない……そう思ってカワサキとミアハを執務室へ通したのだが……。

 

「何ぃ!? オラリオを出るだとぉ!?」

 

「どういうことだ。カワサキ」

 

近い内にオラリオを出るというカワサキに思わず声を荒げ、ミアハはどういうことなのかと説明を求める。とは言え神会の会議の内容を考えればカワサキがオラリオを出る理由には大体予想が付いた。

 

「お前を排除しようとしているファミリアから圧力が掛かったか?」

 

「当たらずとも遠からずだな。ダイダロス通りのガキ共に危害を加えられるのは俺としても面白くないんだよ」

 

自分のためではなく、あくまで孤児達の為というカワサキにワシは溜息を吐いた。

 

「お前が居なくなった後は少しくらいなら面倒を見てやる」

 

「私もだ。カワサキには助けられているからな」

 

「悪いな、迷惑を掛ける。それでな……迷惑を掛けるついでにもう1つ面倒事を引き受けて欲しい」

 

「これ以上迷惑を……「ただとは言わん。迷惑料だ」……ッ!?」

 

これ以上面倒事を掛けるなと言いかけたワシの言葉を遮って机の上に置かれた金塊にワシは言葉を失い、思わず目を白黒させた。

 

「……金塊何ぞ持ってたのか?」

 

成人の男の顔と同じ位の金塊が2つ。それをこともなげに出したカワサキはにやりと笑った。

 

「必要な時に使う為にこういうもんは残しておくべきだろ? で、聞いてくれるのか? ディアンケヒト、ミアハ」

 

「いや、金は「黙ってろ。これは取引だ、それに貴様も金は少しは持っておけたわけがッ! 良いだろう、引き受ける」

 

そう言ってくれると分かっていたと笑うカワサキは更にもう3つ金塊を机の上におき、3つをワシに、2つをミアハへと押し付け、信じられないことを口にした。

 

「今から悪神を本当に善神にする。ちっとショッキングかも知れんがよろしく頼む」

 

神の性質を捻じ曲げる、その信じられない言葉に金塊を見たショック以上にワシもミアハも言葉を失うのだった……。

 

 

 

 

性格を変える麻婆豆腐で悪神、邪神の性格を変えはしたが……それで完璧ではない。あくまではあれは時間制限付きの物であり、俺がオラリオを離れてから元の性格に戻られても困る。

 

(本当はやるべきでは無いが……そうも言ってられないからな)

 

クックマンのスキルというのは料理のバフ・デバフがメインではあるが、他にも出来る事はある。料理でステータスの成長率を変化させたり、ステータスを直に変化させたり……だが今回はカルマ値を直接変化させる能力を使う。事前に鑑定しているが悪神、邪神のカルマ値は大体マイナス180前後。300が最大値という事を考えればかなり悪い訳だが、現在は俺の食べさせたマーボーで大体+120~160前後。悪人でも善人でもない、元が悪神・邪神という事を考えれば160前後でも十分に善人と言える数値だ。多少後ろめたさもあるが、やっと今オラリオが安定しているのだ。神のあり方を曲げるというのは今後大きなひずみとなるかもしれないが、オラリオが安定するまでは今の性格で存在を固定させてもらおうと思う。

 

「まずは丸鶏」

 

ここに来るまでに買ってきた丸鶏のぼんじり、手羽の第一関節より先、余分な首の皮を切り落とし、余分な脂を取り除き、水で血合いを綺麗に洗い流す。脂と血合いが残っているとスープに雑味が出るので事前にこうして綺麗に洗っておくことが重要なポイントだ。

 

「料理で本当に闇派閥の神の性格を変えれるのか? あの麻婆豆腐とやらは一時的なんだろう?」

 

「ああ。確かに完全に変えるのは少し難しい。だが今はオラリオを安定させるためにも元の性格に戻られたら面倒なんでな」

 

また暗黒期の再来なんて冗談ではないので、今から作る料理で性格をより善よりにする。カルマ値で侵入出来ないダンジョンなどもあるのでそれを攻略に用いるクックマンのスキルを有効に使おうという話だ。

 

(性格が善よりならカルマ値が悪に向かうこともないだろう)

 

行動によってカルマ値は変化するが、元が善よりの今なら例え悪行をしても、すぐに善行をするのでカルマ値がレッドラインを越えて悪神に戻るという事はないだろう。

 

「よっと」

 

鳥の首の皮を引っ張って中央に集め竹串で縫うように刺して穴を塞いだらひっくり返して餅米、高麗人参、なつめ、むき栗、銀杏、にんにくをつめるが準備した分を全て入れず、半分くらいを残して詰める。薬味を詰め終えたら餅米を8分目まで詰め、尾の穴を竹串で再び縫うようにして止める。

 

「何をしているんだ? 鳥の足に切れ込みをいれて何をしている?」

 

「ああ。これか……足に穴を開けて鳥の足をこの穴に通して竹串で止めるんだ。そうすると見た目が綺麗に仕上がる」

 

料理は見た目も大事だからこういう一手間を俺は決して惜しまない。この一手間が味を良くすると思えば、このくらいの事は手間でも何でもないとディアンケヒトに言いながら丸鶏がすっぽり大鍋にネギの緑の部分と玉葱を入れ、丸鶏が浸るくらいの水を入れ、鶏の中に入れずに残しておいた高麗人参、なつめ、むき栗、銀杏、にんにく、更にしょうがの薄切り、昆布1枚、黒こしょうと、最初に切り落とした鶏手羽の先を入れ、スキル善悪の境界を発動し、それの効果を増強させる為にドラゴンを殺す香辛料ではなく、天界の涙というカルマ値を善に向ける香辛料と加えてから強火で煮込み始める。煮込み始めてすぐ灰汁が浮いてくるのでそれを掬う、時々黄色い鶏の脂も浮いてくるのでその脂も掬い、完全に煮立ったら中火に落とし、煮込む事で丸鶏がスープから出てきたら刺し水をして丸鶏がスープから出ないように丁寧に1時間ほど煮詰めれば……。

 

「特製サムゲタンの完成だ」

 

悪神を善神へと変えるオラリオを一時的にだが平和にする為の1品が完成し、俺がオラリオを留まる理由がまた1つ消えるのだった……。

 

 

 

 

特別な食事と言って差し出されたのは鶏を丸々1匹使った豪勢なスープだった。

 

「とても美味しそうですね」

 

「ああ、腕によりを掛けて作った。是非食べて欲しい」

 

「はい、ありがたくいただきます」

 

ぼんやりとしている頭でも腹は減る。それに用意される食事はとても美味でそれを拒む理由は無かった。

 

「いただきます」

 

スプーンを手に食事の前の挨拶をしてスープを口に運ぶ。見た目は透き通ったスープだが味は思った以上にしっかりとしていた。

 

(うん、これは美味しい)

 

味は塩胡椒がベースで、沢山のハーブが使われており味に凄く深みがあった。

 

「ん、鶏肉も美味しい……」

 

しっかりと煮込まれている鶏肉はスプーンで簡単で解れるほどに柔らかく、そして鶏肉にもしっかりとハーブの味が染みこんでいてとても優しい味がした。

 

「これはお米ですか……ふーふー……」

 

鶏の腹の中には極東の主食の米がたっぷりと詰め込まれていた。それをスプーンで掬って口へ運ぶともちもちとした独特の所感と米にもしっかり鳥の出汁が染みこんでいて味のない米とは思えないほどに旨味が凝縮されていた。

 

「ふー……凄く汗が出てきましたね……」

 

ハーブのおかげなのか汗が吹き出てくる。だけどそれは不快な物ではなく、汗が流れる度にまるで私の中の悪い物が流れ落ちていくような気がした。

 

「うーん……美味しいですね」

 

なんだか憑き物が落ちたと言うか……生まれ変わったというべきかは分からないけど……「今までの自分」と「今の自分」が全然違う何かに変っていくような、そんな気がしたけど……美味しい食事を食べたいと言う気持ちが勝り、頭の中で止めなさいという声が聞こえた気がしたが私はスプーンを口へと運び続けた。

 

 

「これで性格が変るのか?」

 

「正確には善人で固定する……だ。ミアハ」

 

人道的じゃないから俺も本当はやりたくないんだがなとカワサキは言ったが、今回ばかりは仕方ない。闇派閥の大多数は捕まったが、全ての団員が捕まったわけではない。生き残った悪神や邪神を再び神輿にして復活しかねないことを考えればカワサキのやったことも黙認する必要がある。

 

「見た目も随分変ったな」

 

「カルマ値を善にしたからな、今のこいつらは善神に限りなく近い。フェルズにも話を通しているからもう少し時間をおいてからどうするか決めてくれ」

 

どうするか決めてくれと言われても善神に変わった闇派閥の神々をどうしろというのだと思わず頭を抱える。

 

「容姿も大分変っている。別の神としてゴリ押すのも出来るか……」

 

「まぁかなり力技になると思うけどな。これでも権能は使えるし、知識もある。上手く使えばオラリオの復興に役立つだろう」

 

悪神とは言えど確かにその知識は使えるし、髪の色や目の色が変わっていたり、肉付きも良くなったので一目で闇派閥の主神とは思えないだろう。

 

「これはギルド長にも話は通っているんだよな?」

 

「勿論だ。ウラノスから許可を得ているし、なんならこれからギルドに行って話をしてくるつもりだ」

 

「それならば早く結論を出して、どうするかワシらに伝えてくれ。こうも大人しくなれるとワシらとしても少しばかり心苦しい」

 

「たしかにな」

 

闇派閥の主神だけではなく団員達もその容姿と印象を大きく変えていた。今ならば闇派閥の構成員と繋げる事は難しい筈だ。それにカワサキのいう通りオラリオの復興にも繋がるとは思うが……。

 

「少し間違えれば私もお前も破滅だな」

 

「……そのようじゃ」

 

闇派閥の構成員を薬物でおかしくしたと言われかねない連中を2人で預かることになり、余り仲が良いとはいえないがこの秘密はなんとしても漏らしてはならないと理解し、私とディアンケヒトは無言で固く、そして強く握手を交わすのだった……。

 

 

メニュー42 クリームパイ へ続く

 

 




医神2人が胃痛を抱える胃神へとクラスチェンジしました。これだけの厄種を押し付けられ、そしてカワサキ本人が近いうちにいなくなると知っているのでこれどうするよってなるのは当然ですよね。おいたわしいことになった胃神はこの後原作よりもずっと仲良くなる感じになると思います。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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