ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか? 作:混沌の魔法使い
下拵え 大きな壁
ザルドとオッタルと共にカワサキさんと訓練をしている時になんでもないように言われた言葉に俺は動きを止めた。
「カワサキさん……いま何て……?」
「もうじき俺はオラリオを出るって言った」
聞き違いでは無かったと分かり、俺は思わずカワサキさんに詰め寄った。
「何でだ!? なんであんたがオラリオを出る!?」
「ダイダロス通りのガキ共にちょっかいを掛けてる連中がいてな」
その言葉に俺は怒りで目の前が真っ赤になるのを感じた。カワサキさんがオラリオを出るという決断を下した理由が分かったからだ。
「どこの恥知らずだッ!? ありえねえッ!!」
カワサキさんが面倒を見ていると知ってちょっかいを掛ける。どう考えても孤児達を人質にカワサキさんにいう事を聞かせようとしているようにしか思えなかった。
「どこぞの2流か3流ファミリアか?」
「興味ねぇ。ただまぁ……潮時だろ?」
潮時だというが、そんな訳はない、これからだ。これからカワサキさんはもっと必要に……。
「だからよオッタル、ベート。組手じゃねえ、本気で相手をしてやる。訓練の総仕上げと……これからの迷惑料ってことでどうだ?」
産毛が立ち全身が震えた。飄々としていて、いつもと同じ優しい笑顔を浮かべているがそれが恐ろしいと思った。それほどまでにカワサキさんから発せられる闘志は凄まじい物だった。
「小僧共。良い経験になるからやっておけ。本気のカワサキは強い、うちの団長や女帝に匹敵するほどに強いぜ。プライドだけじゃなくて骨が何本も砕かれることになるだろうがな」
まぁポーションで治るけどなと言いながらザルドは脇腹を摩っていた。それはカワサキさんに砕かれた箇所であろうことは容易に想像がついた。
「それは良い。1度カワサキの全力を見て見たかった。ダイダロス通りの子供の事は引き受けよう」
「悪いな、迷惑を掛ける」
「構わない。そのかわり……本当に本気で相手をしてくれ。頼むぞ」
闘志を燃やしているオッタルを見て俺も声を上げた。
「俺もだ、俺もあんたが面倒を見ていた奴らを見ておく」
「おう、頼むぜ。ベート」
カワサキさんにはまだオラリオにいて欲しい、だがそれ以上にカワサキさんの正真正銘本気の全力を体験したかった。一矢報いることすら難しいと分かっていても徒手空拳を限界まで極めているカワサキさんの強さを体験するのは俺にとっても有益だと思った。
「オッタル、フレイヤに話を通しておいてくれ。明日戦いの野でやる。見学したい連中がいるなら集合ってな。ベートもロキファミリアで見所が在る連中がいたら連れてきても良いぜ」
そう言って手をひらひらと振って帰っていくカワサキさんの後ろ姿を見送る。
「強いってどれくらい強いんだ。ザルドさんよ」
「……恐ろしいほどに強い。ただそうだな……カワサキのあれは徹底して人を壊す術に長けたもんだ。俺はモンスターと戦うよりも怖いと思うぜ。淡々と、そして冷静に壊してくるからな」
武器を持ってようが、自分の方が身体能力が高かろうが絶対に勝てないと思ったとザルドは言った。
「あれは1つの頂点だ。己の身体を武器にする者にとって目指すべき頂。文字通り身体に刻めよ」
あのザルドがそこまで言う……一体どれ程強いのか俺は歓喜と興奮に身震いしながらロキファミリアへの帰路についた。そして翌朝ガレスとティオネ、ティオナ。一応フィン達にも声を掛けたが付いてくるといったのはガレス達3人だけだった。まぁそれも良いだろうと思いながら戦いの野への訓練場へと足を踏み入れると全身の毛が逆立った。
「よう、待ってたぜベート。んじゃまあ……早速やるか? それともウォームは済んでないか?」
自然体だが、紛れも無く臨戦態勢のカワサキさんを見て。俺は上着を脱いでカワサキさんの前に立った。
「準備はしてきた。万全だが……本当に良いのか? 俺は武装していて……ッ」
「洟垂れ小僧が俺の心配をするなんて1000年早い。良いからお前も本気の本気で来いよ。俺も本気で……」
潰してやるからよといつも同じ口調で、そしていつもと違う冷酷な光を宿した目で俺を見つめてそう告げた。
カワサキが本気で戦うと聞いてこれは人目に見せるのは駄目だと思って訓練場を使う許可を出したが、それで正解だった。
「がっ!? ぐっ!?」
カワサキが変わった構え……腕をL字に構えて前後に動かしているのは見えているが、それが突然伸びベートの頭が左右に弾かれる。
「オッタルは見えてる?」
「……ギリギリ見えると言った所です。ただ対峙していれば恐らく見えないでしょう……それほど見えにくいパンチです」
腕が鞭のように撓り、ベートの顔は既に腫れあがっていた。だがそれでもベートの闘志は消えていない、蒼く、そして熱く燃えている。
「お……おああああああッ!!」
避けられない、防げないのならば被弾を覚悟して前に出る。その瞬間カワサキの構えが変わった。Lの構えから左手を突き出した独特の構えから鋭い気合と共に拳が突き出された。
「がッ!?」
ベートの頭が吹っ飛び、少し遅れて足が宙に浮いた。さっきまでの拳も速かったが、今の一撃は完全に私の知覚を超えていた。
「……今何をしたの?」
「分りません、分りませんが……恐ろしく精密で鋭く、速い一撃でしょう」
オッタルが冷や汗を流しているのが分る。それほどまでにあの一撃は強烈だったのだろう、その証拠にベートの鼻は折れ、夥しい出血をしていた。
「ふんっ!」
「お、根性あるな。男の子」
「たりめえだ……ッ!」
自分で折れた鼻を真っ直ぐにし、鼻に詰まっている血を出したベートは獰猛な笑みを浮かべた。
「全部見て、喰らって覚えてやる。俺はもっともっと強くなる!」
「良いね、良いね。そういうのは嫌いじゃない……だからギアを上げて行くぜ」
カワサキの構えが又変わったと思った瞬間にはカワサキの姿は宙を舞い、ベートの顔面に膝蹴りが叩き込まれていた。
「ぶっ!?」
「悪いな。相手の弱点を狙うのは基本だからな」
「えぐいわね……」
折れた鼻に追撃の膝、面白いくらいに鼻血を噴出したベートだが、足を地面に叩きつけるようにして踏ん張る。
「おおおッ!!」
一撃くらい入れてやると言わんばかりに吼えたベートの一撃は当たる……そう思ったのだが……。
「甘いな。やけっぱちになるくらいなら1度下がれ」
カワサキはその一撃を避けると同時にベートの腕を掴んだ。次の瞬間には2人の姿は倒れ、カワサキがベートの腕を伸ばしていた。
「……関節ね。見たことのない形だけど……」
両足で腕を挟み、両手で腕を捻りながら伸ばしている。腕の可動域を超えているのであれは相当きついのは一目で分かったが、続く骨の折れる音に眉を顰めた。
「本当にえぐいわね」
「カワサキは対人を極めているとザルドが言っていましたからね。カワサキが本気で戦うということは対人の極地……つまり素手で効率よく人を壊すという事に他ならない」
一瞬で相手の腕を圧し折り、反撃も防御も許さない体術はモンスターではなく、人に重きをおいた者だ。モンスターと戦う専門家が冒険者だとすれば、人間の壊し方、そして倒し方に特化した専門家がカワサキ。どう考えてもオラリオの冒険者に勝てる相手ではなかった。
「そりゃ勝てないわねぇ……」
「ですね」
蹴りで人の肌を裂き、下手に反撃しよう物なら骨を折られる。闇派閥が何人集まっても勝てないわけだと納得する。冒険者の高い身体能力をいなし、その身体能力を利用した反撃方法を知ってるカワサキに冒険者は最初から勝てるわけが無かったのだ。
「でもベートは楽しそうね」
「ええ、なんせ自分が目指すべき究極の形ですからね」
足技を主体にしつつ、臨機応変に全身を使う。それは徒手空拳の完成形でありベートだけではなく、私の眷属達も目を皿にして見つめている。そんな事を考えているとベートの蹴りがカワサキの胴を捉えた。
「うぐっ!?」
だが苦悶の声を上げたのはベートで何が起きたかとジッと見つめる。
「料理人じゃなくて人間相手の壊しの専門家って言っても私は納得するわね」
「私もです」
ベートの蹴りをカワサキは肘で受け止めた。固く尖った肘で蹴りを受け止められたことでベートの脛は間違いなく砕けた。
「言っただろ? やけっぱちで攻撃するなってよ!」
右腕と左脛が砕けて肉体は既に限界、それを精神で支えていたベートだったがそれにも限界がある。空を切り裂く音と共に放たれた後回し蹴りで顎を打ち抜かれたベートがぐるりと白目を向き、後ろ向きにひっくり返る……誰もがそう思った。だが闘技場に強く地面を踏みしめる音が響いた。
「ま……まだ……まだああッ!!」
口から血を流しながら吼えたベートは信じられないことに意識を保っていた。いや……あれは。
「無茶するわね、あの子」
「ですが……らしいかと」
「ふふ、そうね」
自分で舌を噛んでその痛みで意識を保つととんでもない無茶をする。目が爛々と輝き、まだ終わらないと吼える姿は誇り高い狼その物だった。
「……最後だ。ベート、お前に良い物を見せてやろう」
そういうとカワサキの両腕に炎が灯った。だが放たれること無く、その炎はカワサキの身体の一部とでもいうのか、熱く燃え盛っているのにカワサキ自身を焼くことは無かった。
「魔法は己自身。それを外に放出してどうする? 魔力は自分自身それが己を傷つけることは元来ありえない」
カワサキはそう言いながら腕を振るうと炎はヴェールのようにカワサキの腕のあとを舞うように付いてくる。
「行くぜ。その目と身体でよく覚えて自分の物にしろ」
力強い炎が更に燃え上がり天を付く業火となりベートの姿は炎の中に消え、炎が消えた後には全身に軽い火傷をしたベートが倒れていた。
「まぁ俺は魔法が苦手なんで見掛け倒しだけどなッ!」
カッカッカと笑ったカワサキだが、あれは1つの武の境地だった。
(魔法を手足に纏わせた打撃……物に出来ればオラリオが変るわね……)
今まで誰も思いつかず、考えたこともない技術だが、それを極めればモンスターにも当然有効な白兵戦の技術が生まれる事になる。ヘディンやへグニなどは身を乗り出さんばかりの様子だった。きっとあの2人ならばあの技術を物にするだろうとと思いながら倒れているベートに視線を向ける。カワサキは慣れた手付きで意識がないのを確認するとポーションをベートにぶちまけてから背負ってガレス達の下へ歩き出した。
「オッタル。全力でぶつかってきなさい。勝っても負けても悔いを残しては駄目よ?」
「……はい、行ってまいります」
「もう……良い目をしちゃって……妬けちゃうわ」
恋する乙女もかくやという目をして階段を下りていくオッタルを見ながら私は思わずそう呟いてしまうのだった……。
ベートは完全に気を失っていたが、その口元は満足気だった。あそこまで全力でぶつかって負ければいっそ清清しさもあるだろうと納得する。
「カワサキはあんなにも強かったのだな」
「テルスキュラで見たときはもうちょっと優しい感じだったけどねー」
「女ってことで手加減してくれたのかな~?」
カワサキはむやみやたらに手を上げる人間ではないし、性格も優しい。子供と女に手を上げる趣味は無いと言っていたが本当にその通りなのだろう。
「……しかし強い、猛者が手も足もでんか……」
レベル8……現在のオラリオ最強であるオッタルが手も足もでない、いや正確にはこれでもかと手は出している。
「どうした? もっと全力で良いんだぞオッタル」
「くっ!」
オッタルのラッシュをいなし、防ぎ、弾き、歩くようなペースでオッタルへと歩みを進めている。
「シッ!!」
「がっ!?」
防げない一撃をと大振りした瞬間を狙い澄ました一撃がオッタルの顔面を打ち抜き、オッタルの身体が大きく弾かれた。
「あれは厄介じゃな」
「そーう? 私はベートと戦っていた時みたいな動きの方が嫌だけど」
「それも嫌だが、あれはまた別の意味で厄介だ。距離が近く腕も武器も振り切れん、遠ざけようと攻撃をすれば全て弾かれる。焦りが募り、いなされ空回りが続けば体力だけを消費する」
「分った。ガレスみたいなタイプがイヤってことだね?」
「そうなる、しかしまあ良くやるものだ」
あれはオッタルの動き全てを見切っていなければ出来ない。フェイントを混ぜ出し抜こうとしているが、カワサキはその上を行っている。
「そら、気絶するなよ。オッタル」
軽く、本当に軽くカワサキがオッタルに触れたと思った瞬間。触れた前面ではなく、背中の鎧が砕け散った。
「げぼ……ッ! ごふっ! げほごほっ!!」
激しく咳き込むオッタルは夥しい血を吐きながらも、その目は爛々と輝いていた。
「衝撃が突き抜けた……なんだ……今のは」
「俺も詳しくは知らん! まぁあれだ。徒手空拳の境地だな」
「なんだそれでは覚えられんではないかッ!!」
「ははは! 喰らって体で覚えなッ!!」
「言われなくともそのつもりだッ!!」
衝撃が突き抜ける打撃が何度もオッタルを捉えるが、オッタルは獰猛な笑みを浮かべて前に出続ける。
「あれ体力で無理矢理じゃん」
「ああ。あれを真似出来るものはそうはおらんじゃろう」
体内を破壊する打撃を喰らっても前に出ている。ベートも精神が肉体を凌駕していたが、オッタルはベートを遥かに上回る精神力でその痛みを耐えて一矢報いると強い決意で前に出ている。
「おああああああッ!!」
「ッ!」
そしてオッタルの決死の一撃はカワサキの顔面を捉え、その身体を後に弾いたが、カワサキはなんでもないように……いや、獰猛とも取れる闘争心むき出しの笑みを浮かべて前に出た。
「オッタルよ。俺のとっておきの魔法を見せてやるよ」
カワサキがそういうと力強く踏み込み腕を回転させながらオッタルの胸を打った。
「意識を飛ばすなよ?」
これから殴るぞと言わんばかりに振りかぶっているのにオッタルはピクリとも動かない。
「なんだ。カワサキは何をした……?」
「魔法って言ってたように聞こえたけど……」
「動きを奪う魔法?」
オッタルは動こうと必死の表情をしているが動く事は出来ず、カワサキの強烈なフックを叩き込まれその場に膝から崩れ落ちる。
「……おおっ!!!」
「流石にタフだな」
だが即座に立ち上がりながらのアッパーがカワサキの頬を掠め、カワサキは頬を指先で撫でて血を拭うと歯を剥きだして獰猛としか思えない笑みを浮かべた。そこからは足を止めての打ち合いになったのだが、ここでもオッタルとカワサキの差が出てきた。
「うわあ……一方的」
「本当に全然当たらないね」
オッタルの方が手数は多いのだが、カワサキには掠りもせず、逆にカワサキの拳がオッタルを打つ。だが何発打たれてもオッタルは倒れず、前に出て手を出し続ける。
「どれ、もう1発。面白いもんを見せてやる」
カワサキは軽く告げるとオッタルの胸に右手を当てて、手の甲を自らの左手で打った。
「がっがっ……ごおっ!」
血反吐を吐き、白目を剥きながらオッタルは前に出る……だが失速しそのまま膝をついて倒れ込んだ。
「な、なにを……じた……」
「鎧を着た相手の心臓を止める武術だ。心臓打ちという、まぁこれは完全に殺す術なんで使うのは趣味じゃないが……お前なら耐えれると思ったんでな」
「き……きついことを言ってくれるなッ!!」
「流石にすげえタフネスだな、普通ならもう動けんだろうによ」
「まだ終わるものかあッ!!」
鬼気迫る表情で目を真紅に染め上げ、口元から血を流しながらもオッタルは拳を繰り出し続ける。それにはカワサキの表情も少し崩れ……。
「おあああああああッ!!!」
「ッ……あーくそッ! 今のは効いた。今のは効いたぜ、オッタル」
雄叫びと共に繰り出した右拳がカワサキの顔面を打ち抜き、一瞬よろめいたがカワサキの言葉は賞賛だった。
「おい、男の子。我慢比べしようぜ」
「望む所だぁッ!!!」
足を肩幅で開き、カワサキとオッタルが向き合い避ける事も無く、防ぐ事も無く全力のフルスイングを交互に顔面に叩き込む。
「おいおい、温いぜオッタルッ!!」
「がぁッ!! おおおおおおッ!!!」
「うっ! は、ははははッ!! 気合が乗ってる良いパンチだなッ!! ええっ! オッタルッ!!!」
「がぼっ!? ぐぐ……おおおおおッ!!!」
互いにノーガードで全力の殴り合い……だが明らかにカワサキの方が有利で、オッタルは根性で踏ん張っているだけだった。
「う……う……うがああああああッ!!!」
「っ!? がッ! ぐぶっ……かー……今のは効いた。今のは効いたぜ、オッタル」
殺したと思うほどの一撃が叩き込まれてもなお、カワサキはオッタルを賞賛した。満身創痍のオッタルに対してまだカワサキは余裕であると言う嫌な証明だった。
「さぁ……続きだ。気合入れろよオッタルぅッ!!!」
今の一撃がカワサキのスイッチを入れてしまったのか。オッタルの一撃とは比べ物にならない轟音を立ててカワサキの拳が叩き込まれる。
「ぐぶっ!? ガッ!? おあああああああッ!!!」
「はっはぁッ!! 良いぜ良いぜッ!! もっと全力で来いよッ!!」
オッタルの魂を込めた一撃でも僅かに吹き飛ばす程度……恩恵は無いが、体を極限まで鍛えた人間であるカワサキの凄まじさには正直言葉も無かった。
「■■■ッ!!」
オッタルの咆哮は最早言葉になっていない。その目は充血し、口から夥しい出血をしながら、一方的に殴られ続けている。それなのに前に出続け、拳を繰り出し続ける。
「いや、本当に良い根性してるぜッ!! だがこれでしまいだっ!」
激しい轟音と共に前に飛び込みながらカワサキが繰り出した右拳でオッタルの身体が水平に吹っ飛んだが……。
「がぁあああああッ!!!」
「まじか……いや、マジでこれは驚いた」
足を叩きつけ、強引に動きを止めて爛々と燃える眼光でカワサキを睨みつけるその姿には思わず絶句した。
「いや、強すぎ……」
「あれ普通なら首の骨折れてる」
「ワシもそう思う」
オッタルの拳に合わせて自ら飛び込み、オッタルの拳の勢いと自身の勢いを乗せた一撃は間違いなく骨が砕かれ、命が潰えてもおかしくない一撃だった。だがオッタルはそれでも耐えた。そしてまだ戦う意志を見せた。
「行くぜ。これに耐えたら大したもんだ」
「げぶろおっ!?」
鈍い肉を打つ音が響き、オッタルが腹を押さえて苦悶の表情を浮かべて身体をくの字に折った。その光景を見てティオナ達が痛そうと呟いているが、カワサキの動きはそれで終わりでは無かった。
「ふんっ!」
「がっぼおッ!?」
深くしゃがみ込み、身体全身を使ったアッパーでオッタルの身体が宙に浮いた。ダメージも凄まじかったのか完全に棒立ちになったオッタルの前で身体を左右に動かし、遠心力を生かした左右の連打を棒立ちのオッタルの顔面に叩きつける。1発1発凄まじい音を立てて叩き込まれる拳は凄まじい威力で、根性で立っていたオッタルの意識を飛ばすには十分であり、10発目を超えた当たりの一撃でオッタルは背中から倒れ込んだ。完全に意識を失っているのは明白でカワサキがポーションをぶちまけているのを見ながらワシはどうすればあれに勝てるのかとそればかりを考え、どうしてワシは戦えないのかと深く落胆するのだった……。
メニュー43 ステーキへ続く
オッタルとベート戦その2でした。今回は皆知ってるボクシング漫画ネタを使ってみましたが、たまにはこういうのも良いかなと思います。次回は食事会で引き続きこのメンバーでお送りするので次回の更新もどうかよろしくお願いします。
オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは
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間違っている
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間違っていない