ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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下拵え ギルメンズ・リポート その1

 

下拵え ギルメンズ・リポート その1

 

カワサキは時折村を出て行く、ふらりと出て行き、そしてふらりと帰って来る。それが2~3日であったり、数ヶ月であったりとその期間はまちまちで、旅をしているのは当然のように人脈が増えていたりする。我々が太古のモンスターや危険な遺跡の調査にも同行しているが、その先でもカワサキは少し姿を消しているので気になったのだ。

 

「カワサキよ、お主……放浪癖でもあるのかの?」

 

「ん、んー……放浪癖っつうか……なんていうのかね」

 

カワサキは手にしていた紙を隠すように虚空に突っ込み、誤魔化すように背伸びをした。

 

「未練と迷いを……いや縋ってるとでも言えば良いのか……自分でも分からんな」

 

その言葉の意味はすぐに分かった。カワサキは「探して」いるのだ。もしかしたら自分と同じ様に、自分の世界の神がこの世界に落ちてきていないか、一縷の希望と、自分でもありえないと分かっていてもそれでも諦めきれないと思ってるのだろう。

 

「カワサキよ。聞かせてくれんか?」

 

「何を?」

 

「お前がかつて居たファミリアの話だ」

 

「え? カワサキさんファミリアに入ってたんですか!? 僕も聞きたいです」

 

ワシとカワサキが難しい話をしていると思って洗濯物を畳んでいたベルがその話に食いついてきた。

 

「そんなに面白い話じゃないんだけどなぁ」

 

「僕聞いて見たいです!」

 

煙に巻こうとしていたカワサキだが、ベルの弾ける笑顔を見てやれやれという感じで肩を竦めた。

 

「んじゃまあ、俺はアインズ・ウール・ゴウンというギルドにいたんだ。41人の気の合う仲間とな……」

 

表情と態度には出さないが楽しそうなカワサキの昔話にワシとベルは耳を傾けるのだった……。

 

 

 

 

オラリオとメレンの間の山中にある小さな村落――神も冒険者もいないので小さな集落ではあるが、その集落は他の集落と比べて裕福であり、様々な小物をメレンやオラリオに売りに行き生計を立てていた。

 

「もう少し上の方を」

 

「こうか?」

 

「はい、そこで釘を打ってください」

 

「良し来た!」

 

少年が何人もの男達に指示を出し、丸い何かを作り上げる。

 

「ふーしかし、サトル。これで畑に水が来るのか?」

 

「多分大丈夫だと思いますよ。もし失敗したらまた皆で考えましょう!」

 

サトルと呼ばれた少年が主導になって作っていたのは水車だった。

 

「風車だったか? あれも最初は失敗したが上手くいったし」

 

「そうだな、サトルのおかげで色々と楽してるし、失敗したら次だ」

 

「うーしッ! 行くぞー!」

 

「「「おうッ!!!」」」

 

井戸水だけではなく、山中を流れる清流の水を使おうと水車を作り、それを担いで運んでいく村の男連中の中にサトルも混じり、山の中へと入り、その姿を村の住人は優しく見つめる。

 

「やっぱりサトルは神の子だね」

 

「そうね、あの子のおかげでずいぶんと生活が楽になったわ」

 

風車で臼を回す技術を作り、細かい細工が施された民芸品を考え、まだ幼い少年の知恵によって周囲の村からの移住民を受け入れ、どんどん大きくなっていた。

 

「父さん、母さん、ただいま!」

 

「おかえりサトル」

 

「おかえりなさいサトル」

 

父と母に迎え入れられるサトルは無邪気な笑みを浮かべる。それは子供その物であり、彼はまだ「■■■■」の記憶は思い出していない。だがそれでも両親に楽にさせたい、両親に親孝行をしたい。そんな思いが彼に少しだけ知識を与えていた。

 

 

 

波に揺れる超巨大船『フリングホルニ』――複数の神が集まった派閥同盟であると同時に移動教育機関「海上学術機関特区」――-通称「学区」には名物とも言える問題児の姉弟がいた。学区で生まれ、育ち、幼い頃から神童と謳われていたが、いつしか問題児と言われるようになった人間の姉弟がいた。

 

「なーねーちゃん」

 

「何? 愚弟」

 

「……そろそろ卒業する?」

 

弟の言葉に姉は読んでいた本を閉じながら考え中と返事を返す。授業をサボるのは当たり前、幼い少年を女装させる事を好む姉と、幼い少女に異常に執着する弟。問題児ではあるが極めて優秀であり、そして校長であるバルドルはその「意志」を認めているから追い出すことも出来ない超級の問題児であり――。

 

「もうこれ以上実習したくないんだけどさ、そろそろ卒業しようよ」

 

「……分ってる」

 

恩恵を刻み、様々な偉業を経て、膨大な経験値を得てもなおレベルアップが出来ない。どれだけ訓練をしても、実戦を積んでもレベルが上がらない最強の姉弟。支援・狙撃・サバイバル術と弓兵、そして斥候として活躍している弟と、その弟を守る盾役として有名な姉。大量の経験値、そして偉業を積んでもなお一切のステータスの向上とレベルアップが出来ない。だがレベル1でありながらレベル3に匹敵する能力を持つとされながらもステータスの向上もレベルアップも出来ない腫れ物扱いである事に姉弟はうんざりしていた。

 

「あと3日」

 

「3日……あ」

 

「……次の大点検大修理で私は卒業する。あんたはどうする?」

 

「俺も行く! 分からないけど、覚えてないけど……会いたい人が、帰りたい場所があるんだ」

 

「私もよ。だから私達はレベル1でも卒業するわ。大勢が私達を馬鹿にしてきただけど、それを実力で黙らせてきた。今も、そしてこれからもね」

 

知らないのに、知っている。覚えていないのに、覚えている、そして自分達が帰る場所を求めて「ペ■■ン■ーノ」と「ぶ■く■茶■」は生まれ育った学区を出て、「■■■■」を捜し求める旅と「■■■■・■■■・■■■」へと帰る決意を固めた。

 

 

 

男神アレスが治める、オラリオ西部に存在する国家――「ラキア」。その街中では凄まじい怒号と轟音が響いていた。

 

「いたぞ! 追えッ!!」

 

「捕まえろ! アレス様の命令だッ!!」

 

「ガキの分際で俺達を舐めやがって!!」

 

ラキアは軍事国家であり、周辺諸国に戦争を仕掛け続けている。60万を超える軍人は皆アレスの眷属だ。だがその軍人達がたった1人の子供に掻き回されていた。

 

「貴様らの汚い顔など誰が舐める物かッ!」

 

黒いローブを翻し、縦横無尽に街中を掛けながらその子供は懐から様々な瓶を落とす。

 

「ぐっ! 目がッ!!」

 

「があッ!? これは毒ッ!」

 

「くそふざけんなよッ!!」

 

気化した薬品や、毒によって何人かの軍人達は顔を歪め、子供に馬鹿にされたとより怒りを露にして少年を追いかける。

 

「ふざけているのは貴様達――いや、この国だッ! 勝てもしない戦争を繰り返し貧困を民に押し付け、あまつさえ自らは贅を凝らして遊び呆けるッ! なんと愚かで醜悪な国だッ! 私は唾棄するッ!! この国も、そしてその住民もだッ! 愚かな神に支配されることを良しとし立ち上がらないお前達を軽蔑するッ!!」

 

まだ幼さを残した少年だ。何を言ってると喉元まで込み上げて来た言葉は発せられる事は無かった。怒りに燃える双眸、狂気さえ感じさせる強さと、頭を垂れるのが当然だと思いたくなる圧倒的なカリスマ性――愚王と蔑まれるマルティヌスよりも遥かに偉大な指導者に見えた。

 

「私は……っ! ちいっ!」

 

更に演説を続けようとした少年だが、突如ローブを翻し屋根の上から飛び降りる。

 

「お、おえッ!!」

 

軍人の誰かがそう叫んだが、どこから投げ込まれた煙幕によって少年の姿を見失った……。

 

 

「相変わらず無茶をするね、祐樹」

 

「……やはりお前か、私の邪魔をしたのはッ!」

 

柔らかい表情を浮かべる茶髪の少年に祐樹と呼ばれた少年は怒りを露にし腰からナイフを抜き放つ。

 

「まだ理想を追って私の邪魔をするならば「いや、理想は折れた、僕の描いた正義は叶いもしない夢想だった」……辰巳?」

 

今にも消えてしまいそうな少年の姿に祐樹は辰巳と声を掛けた。

 

「僕は間違っていた、僕の理想を叶えるのならば僕は君に協力すべきだった。分っていた、分っていたのに僕はそれに目を背け続けた。だけどもう間違えない。祐樹……いや……ウルベルト。どうか……「やかましい」……ウルベルト?」

 

「ぐだぐだぐだと話が長い! 私は追われてるんだ、そしてお前が馬鹿なのは今に始まったことじゃない」

 

「いや、ウル「黙れと言ってる」……うっ」

 

その圧倒的な眼力に辰巳は黙り込んだ。それほどまでの迫力が祐樹――いや、ウルベルトにはあった。

 

「行くぞたっち・みー。今はこの国から手を引く、今の私達では力が足りん……それにどの道俺の演説を聞いて奮起するような連中もこの国にはいない。今は楔を打ち込んだだけで良しとしよう」

 

「じゃあどうするんだい?」

 

「ギルメンを探す。私がいて、お前がいる。ならモモンガさん達も同じ様にこの世界にいるかも知れん。この世界でもう1度アインズ・ウール・ゴウンを結成し、悪を成して正義を成す!!」

 

変らない、ウルベルトの本質は正義だ。そしてたっち・みーの本質も正義だ。だからこそ道が重なった時――自分達に不可能はないという確信があった。

 

「は……はは、良いね。それ……ッ!」

 

「だろう! 行くぞ、私とお前なら」

 

「僕と君なら」

 

「「不可能だって可能にしてみせるッ!!」」

 

互いの拳を打ち合わせ、満面の笑みを浮かべるかつての己の記憶を完全に持つ「ウルベルト・アレイン・オードル」と「たっち・みー」はかつての仲間達を求め、そしてアインズ・ウール・ゴウンの再結成を夢見てラキア王国を旅立つ。

 

「最初には何処に行く?」

 

「剣製都市ゾーリンゲンに向かいつつギルメンの情報収集だ。俺達のように記憶を持ってるなら神童とか言われて有名だろう。あとは恩恵を刻まれても良いと思える神を探す、あと派手に立ち回るなよ。俗物的な神にはうんざりだ」

 

「僕もだよ」

 

最初の目的地をゾーリンゲンに決め、2人は楽しげに歩き出し、背後から聞こえて来る怒声に追われている事を思い出しすぐに走り出すのだった……。

 

 

下拵え カワサキさんとベル君 その3へ続く

 

 




ギルメンはある程度転生済み。モモンガさん、記憶も何もなし、親孝行したいって気持ちで若干知識あり、ペロロン&茶釜 若干記憶あり、会いたいという焦燥感に駆られて学区を旅立つ、ウルベルト&たっち。完全体、1番はじけてる2人です。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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