ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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下拵え カワサキさんとベル君 その3

下拵え カワサキさんとベル君 その3

 

9歳の子供がいても新婚気分のアルトとメーテリアが再び旅行に出掛けた次の日――カワサキの提案で1度ベルが本当に冒険者を務める事が出来るのか……それを確かめてみるテストを行う事にした。

 

「と言うわけで説得材料を増やす為に1度今のお前の能力を一度調べるぞ、ベル」

 

「はい! 頑張ります!!」

 

ベルは気合が入っているが、正直ベルには冒険者は無理……そう思っていたのだが……。

 

「はぁ……はぁ……も、もう無理です……」

 

「10周と半分……か」

 

村の回り……山道を10周と半分走ったところでベルは力尽きたがこれには驚いた。俺達が鍛錬に使っている道なのでかなり過酷な道のりだ。殆ど獣道で、歩くならともかく走るのはかなり難しい。毎日走っているのは知っていたが、こんなにハイペースで走っているのは知らなかった。

 

「恩恵なしでこれか……努力が見えるな」

 

「団長もそう思うか」

 

「荒削りではあるが、認めざるを得ないだろう」

 

まだまだと頭言葉はつくが脚力と体力は申し分ない……基礎は十分に出来ていると認めざるを得ない。

 

「次は腕立て。もう無理だと思う回数までやってみろ」

 

「は、はい! 頑張ります!」

 

特に回数も決めず出来るだけやれというカワサキの言葉にベルは大粒の汗を流しながら……。

 

「2……24……7……24……だぁッ! ぜーぜーッ!」

 

「ん、247回な。じゃあ5分休憩したら今度は腹筋」

 

「は、はい……」

 

5分の休憩ではそこまで回復しない……そう思ったのだが……。

 

「1……9……9ッ! に、にひゃあああっくッ!!!」

 

200回やり遂げてベルは大の字で横になった。少しの休憩で運動が可能になる回復力も申し分ない。

 

「参った……反対出来る理由が少なくなるな」

 

「確かにな、思った以上に根性がある」

 

冒険者に必要な身体能力は十分。そして根性もある……反対する理由は少なくなってきているが、それでも俺はベルが冒険者になるのは反対だった。

 

「うわっとと……」

 

「うーん。普通のロングソードでも駄目かぁ」

 

「すみません」

 

「いや謝る事じゃないんだけど……うーん、どうしたもんか」

 

ベルに武器を扱う才能が皆無だった……練習用の木刀などでも取りまわしに不安がある。いくら身体能力に優れていても武器が扱えないのでは話にならない。

 

「ここまでか」

 

「まぁ努力は認めるが、今のままでは無理だな」

 

無理だと口にしたが、カワサキがついている以上はどうなるか分からない。それは俺だけではなく、遠目で見ていたアルフィアや団長や女帝達も間違いなく同意見だろうなと考えながら俺は広場を後にし、ベルが本気で冒険者になるのを目指しているのならば――俺達でも認めざるをえない何かをカワサキが教えるのだろう。

 

「どうなるか楽しみだな」

 

戦闘の才はないがサポートに秀でていたアルトと穏やかな気質のメーテリア――その2人の素質を受け継いでいるのか、それとも全く異なる才能を開花させるのかと思うと俺は自然に口元に笑みが浮かんでいるのだった……。

 

 

 

冒険者としての才能はないとお爺ちゃん達にも言われて、それでも冒険者になりたくて頑張って来たけれど……ここで思いもよらない壁にぶつかった。

 

「武器が重いです……」

 

武器が重かったのだ。いや、持ち上げる事は出来るし、当然振ることも出来るのだが……身体が流れる、イメージ通りに行かないとどうしても奇妙な動きになってしまう。

 

「んーもっと思い切り短くしてみるか?」

 

「ナイフとかですか?」

 

「ナイフとか、ショートソードだな。えーっと……お、あったあった。ブロンズショートソード」

 

「……いつも思うんですけど、その黒いの何なんですか?」

 

「知らん」

 

「ええ……」

 

「知らんけど便利なもんだ。それで良いだろ?」

 

「……良いのかな?」

 

カワサキさんの側に浮かんでいる黒い穴から鞘に入った剣を取り出す姿にどうやってるのかと尋ねると知らんと返され、思わずえーっと声を上げる。

 

「まぁ便利だから良いんだよ。ほれ、試してみろ」

 

「は、はい!」

 

カワサキさんに渡されたショートソードを鞘から抜いて構えてみる。さっきの剣よりも短いからか、重芯が崩れる事無く立つ事が出来た。

 

「重いですけど、軽いですね。変な感じですけど」

 

金属の重さを感じるが、それでも重いと言う訳ではなく、軽いという訳でもなく、丁度手にしっくりと来ると重さだった。

 

「やっぱりお前は小柄だからなあ。重芯がぶれるのかもな、もしかすると余り重い装備は向いてないかも」

 

「重い装備っていうとマキシムさんとか、ザルドおじさんみたいな装備は……」

 

「無理じゃないか? 着れても動けないと思うぞ」

 

格好良い鎧は無理と言われて思わず崩れ落ちる。凄く格好良いからあんな鎧がほしかったのに……。

 

「まぁすぐは無理でも鍛えれば、大人になればいけるんじゃないか?」

 

カワサキさんはそう励ましてくれるけど、なんか腑に落ちない。

 

「じゃあ今日から軽く格闘術の稽古を始めるぞ」

 

「はい! でも剣とかは……「俺が教えれると思うか?」……無理なんですか? おたまで剣と戦ってましたよね?」

 

おたまで戦えるなら剣でも戦えるんじゃと尋ね返すとカワサキさんは無理だと断言した。

 

「俺は料理人だから剣は無理。というか俺は剣を使うより殴った方が強い」

 

「……それはそれでどうなんですか?」

 

剣より素手が強い……確かにザルドおじさんとかと勝負してたなあっと思い、カワサキさんは素手でも強いと納得は出来ないが、納得した。

 

「俺が教えれるのは徒手空拳だ。あとは色々てきとーに」

 

「てきとーに!? カワサキさんの格闘術って適当だったんですか!?」

 

「いや、俺の護身術って良さそうなの組み合わせてるしな! 出来る事は多ければ多いほど良い、引き出しが多いほど戦いの時に楽になる」

 

「な、なるほど? 頑張ります! じゃあ先ずは何を」

 

「お前を押し倒そうとする変態男に襲われた時は全力で股間を蹴れ。変態に人権はないからな」

 

カワサキさんの最初の教えは股間を蹴れであり、僕は最初から呆然とした顔をする事になったのですが、5年後のオラリオで……。

 

「お前が、お前がああッ!! アポロン様のッ!! 寵愛を受けるだと! ふざけるなあッ!!」

 

「でやあッ!!」

 

目を血走らせ、唾を飛ばしながら押し潰してくるヒュアキントスさんに心の底から僕は恐怖した。なにか、こう言葉に出来ない恐怖を感じた僕は迷わずに足を振り上げた。

 

「ッ■☆△○!?!?」

 

ぐちゃっという生々しい音と、足に伝わってくる嫌な感触、そして白目を剥いて倒れたヒュアキントスさんの下から這い出る。

 

「ヒュアキントスのヒュアキントスがッ!?」

 

「お、お前! お前ぇッ! それは駄目だろッ! それはやっちゃ駄目な奴だろッ!!」

 

「やばい! めちゃくちゃ痙攣して泡を吹いてるッ!!」

 

「撤退! てったーいッ!!!」

 

戦争遊戯の中で本当に身の危険を感じて本気でヒュアキントスさんの股間を蹴り上げることを5年前の僕は予想もしないのでした。

 

 

下拵え ペニアファミリアの日々

 

 




ヒュアキントスのヒュアキントスを5年後に粉砕するかもしれないベル君です。出来る事は多ければ、多いほど良いと色々と詰め込まれているのでモンスターとの戦闘知識よりも対人戦闘のスキルが育っているベル君です。次回はオラリオ編、ダイダロス通りの子供達をメインで書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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