ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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幕話 アイズちゃんもっと頑張る

幕話 アイズちゃんもっと頑張る

 

 

カワサキさんがオラリオを出る前に私にくれた本は私が年齢を重ねるごとにそのページを増やした。最初はストレッチや体力をつける為の走りこみの距離やコースが表示されるだけだったが11歳になった頃には戦い方のページも増えていた。

 

「……むう、なんか違う」

 

書いてあるとおりに腕を動かし、足を踏み込んでみたが奇妙な動きにしかならなかった。

 

「なんかじゃなくて大分違うな、アイズ。というかそれ白兵戦だろ? お前には向いてないんじゃないのか?」

 

私の本を覗き込んでいたベートさんが向いてないと言う。

 

「……伸び悩んでる」

 

「11歳でレベル3なら上等だと俺は思うがねぇ」

 

レベル4に上がりたいが、上手く行かず足踏みしている。だから慣れてない白兵戦にも手を出してみたんだけど……全然上手く行かない。

 

「……ベートさんがレベル6にやった偉業ってなに?」

 

「目隠ししてソロでウダイオスの撃破」

 

「……私も出来るかな?」

 

「今のままじゃ無理だな。まず死ぬぞ」

 

「……むう」

 

強くなりたいのに、無理だ、死ぬとベートさんに言われる。今のベートさんはレベル6――フィンやリヴェリア達と同じレベルだ。だけどフィン達よりもベートさんの方が強い。

 

「カワサキさんにも言われただろうが、強くなるだけじゃなくてもっと視野を広げろって。おら、呼んでるぞ」

 

「え?」

 

ベートさんに呼んでるぞと言われ、指が指されたほうに視線を向ける。

 

「アイズー! 遅いよー」

 

「デメテルファミリアに遊びに行くんでしょー」

 

「はやく、はやくーッ!」

 

「あ、あ……ご、ごめん。すぐ準備する!」

 

ミィナ達の声に今日皆でデメテルファミリアに行く約束をしていたのを思い出し、慌てて片付けを始めようとするとベートさんに腕を掴まれた。

 

「俺が片付けといてやる。早く行け。友達を待たせるんじゃない」

 

「あ、ありがとう!」

 

片付けておいてくれるというベートさんに頭を下げ、外で呼んでいるミィナ達の元へ私は駆けて行くのだった。

 

「ベート。すまないな」

 

「リヴェリアか。別に礼を言われるほどの事じゃない」

 

「だとしてもだ。ありがとう」

 

オッタルと共に深層アタックを繰り返しているガレスと異なり、フィンとリヴェリアの現在でのオラリオでの立ち位置は余りいいものではない。闇派閥の台頭の切っ掛けであるゼウスとヘラの追放に関与しているロキファミリアの立ち位置は良くない。

 

「もう少し気合を入れたらどうだ? そんなんだから引退しろって言われるんだ」

 

ベートがレベル6に上がった事でフィン達を引退させ、新団長としてベートを据えるのはどうかという話がギルドで上がっているという噂はベートも知っている。それを聞いてガレスとフィンは奮起したが、リヴェリアは日に日に覇気が薄れていた。

 

「思うんだ。私は何が出来たのか……と」

 

「泣き言は聞きたくねえな。後悔するなら、反省するならちょっとは引き締まった姿を見せて欲しいもんだ」

 

覇気のないリヴェリア に背を向けてベートは歩き出した。

 

「ったく、どいつもこいつももっとしゃんとしやがれってんだ」

 

ロキファミリアが今衰退の一歩を辿っているのは純粋に団員の覇気が足りないからだ。前へ向かおうと、進もうとする意志。それが無ければどんなに人員が揃っていても成長なんて望めない。

 

「俺達だけじゃどうにもならねえだろうが、馬鹿が」

 

ベート、ガレス、ティオナ、ティオネの4人がどれだけ頑張っても、足を引っ張る団員が多すぎる。心折れ、改宗も引退も出来ずただロキファミリアにいるだけの腑抜け、そしてその腑抜けに感化されてきている多くの団員の姿がベートの脳裏に過ぎり、ベートは不機嫌そうに鼻を鳴らしてダンジョンに向かって歩き出すのだった……。

 

 

 

 

カワサキがオラリオを出て2年。カワサキが作ってくれた下地のおかげでデメテルファミリアの規模は以前の物よりも格段に大きくなっていた。

 

「デメテル様! もうすぐ収穫できるかなー?」

 

「ふふ、もうちょっとじゃないかしら?」

 

元々の団員に加えて、ペニアファミリアの所から孤児達が毎日に手伝いに来る。笑顔が溢れる今の環境は私にとってとても好ましい物であった。

 

「チビ共ー! プールに水を張ってやったぞー!」

 

「「「はーい!!!」」」

 

農作業の手伝いの後のプールを楽しみで来ている子供達が歓声を上げて駆けて行くのを見ながら大きく背伸びをする。

 

「少しは良くなったかしらね」

 

野球などの戦争遊戯のルールの追加で生産系ファミリアが探索系ファミリアに物資を巻き上げられることは少なくなった。生産系ファミリアは野球・サッカー・バスケットのルールを熟知しているが、探索系ファミリアはそうではなく負け越してくると自分達の有利なルールの戦争遊戯を行おうとして来たが、フェルズが作ったルールが阻止している。

 

「探索系のファミリアが生産系ファミリアに戦争遊戯を仕掛けるのは原則禁止」

 

「探索系ファミリアと生産系ファミリアが戦争遊戯を行う際は野球盤・フリースロー・PKの3種のみとする」

 

「戦争遊戯の勝利の際の物資・団員の譲渡はギルドおよびギルドナイトの仲介が無ければ認めらず、過度な物資、ヴァリスの徴収を防ぐ為ギルドの立会人の下公平な取引の物のみ有効とする」

 

「生産系ファミリアが敗れた際はギルドにて4割を負担する」

 

「ファミリア内のレベル差が著しい場合ギルドナイトを派遣。もしくは他のファミリアからの助っ人を可とする」

 

生産系を守る為の数多くの戦争遊戯のルールの追加が横柄な探索系ファミリアの動きを封じてくれている。これによって生産系ファミリアは今までよりも多くの栽培などが出来、商売が安定し規模が大きくなっている。

 

「アイズー。頑張れー」

 

「水に顔をつけるんだよ?」

 

「無理無理無理ッ!」

 

「なにやってるんですか、アイズ。泳ぐのは簡単ですよ?」

 

「むりいッ!!」

 

カナヅチのアイズを泳げるように手伝っているリリ達の楽しそうな声は闇派閥が台頭している頃にはなかったものだ。

 

「今日もいい日ね」

 

雲1つない快晴。明るい子供達の声と大地の実り……そのどれもこれもが素晴らしい物で、カワサキがくれた麦藁帽子を被り、楽しそうに遊んでいる子供達を見ていい時代になったと思った。

 

「ここをこう。分る?」

 

「……こう?」

 

「そう、上手ね。アイズ」

 

アイズのカナヅチ克服はアイズの逃走で終わり、プールから逃げてきたアイズは私の隣で編み棒を手にしていた。

 

「……リヴェリア達元気ないから、プレゼント」

 

「ふふ、アイズは優しい子ね」

 

「そうかな?」

 

「そうよ。貴方は優しくて、とても良い子よ」

 

11歳でレベル3の冒険者。これは今のオラリオの最速レコード。ロキファミリアではなく、別のファミリアに改宗するべきという話もあるが、それはさせない。こんなに優しくていい子を神の玩具にさせるつもりはない。

 

「んしょ、んしょ」

 

「そう、上手上手」

 

「……ん」

 

リリ達との触れ合いで明るく、そして色んなことを覚えているアイズはもっと多くの事を見て、体験して、冒険者だけではないほかの道も見つけて欲しいと思う。

 

「出来た」

 

「うん、上手に出来ているわ」

 

まだ感情を出すのは余り得意ではない様子だけど、それでも優しく笑うアイズを見て心からそう思うのだった。

 

「そういえばデメテル様」

 

「何かしらアイズ?」

 

「私たちより年上のお姉さんがカワサキさんのお嫁さんになるにはどうすれば良いかってお婆ちゃんに相談してたの、お嫁さんってどうやってなるの?」

 

「そ、それはアイズにはまだちょっと早いかしらねぇ……?」

 

「そう?」

 

「ええ、そうよ」

 

アイズからのとんでもない情報にデメテルは引き攣った表情でアイズにはまだ早いというのがやっとだった。だが数年後――。

 

「デメテル様。ベルのお嫁さんになるにはどうすればいい? リリもベルのお嫁さんになりたいって言ってるんだけど……2人は一緒にお嫁さんになれるの?」

 

「……ちょっと待ってね……頭が……」

 

「大丈夫?」

 

「え、ええ。大丈夫、大丈夫よ。アイズ」

 

真顔で爆弾を投げて来たアイズにデメテルは頭痛を覚える事となるのだった……。

 

 

 

 

ギルドからの勧告がロキファミリアに出たという噂は実際はガセである。ただそう言われるだけロキファミリアの状況は良くない物だった。

 

「……ベートがフィン達と並んだ……いやステイタスはベートの方が上やなあ」

 

目隠しダンジョンアタックや、猛者やザルドはんとの組手でメキメキとステイタスを上げているベートはもう偉業さえ積めばレベル7になれるほどの経験値を得ていた。

 

「引き抜きの話も多いしなぁ……それに新入団してくれた眷属も……」

 

内外で実質ロキファミリアの団長はベートと思われている。ゼウス、ヘラファミリアがオラリオを見限った原因であり、闇派閥の台頭のときも大きな活躍が出来なかった。それらがベートを引き抜きたいファミリアや、3首領の印象を悪くしたい冒険者達からの心無い噂に繋がっている。

 

「リヴェリアも調子悪いみたいやし……はぁ……」

 

カワサキが再びオラリオを出てから2年。その2年でフレイヤファミリアは1級ファミリアまで建て直した。猛者――いやオッタルがひたすら前を走り続け、それを他の団員が追って行く形でフレイヤファミリアは全体が底上げされた。そしてフレイヤは今までの奔放さがなくなり、大人しくなった事も大きい。それに対してウチのファミリアは……。

 

「まだ認められんかあ」

 

こちらからのアプローチでの新しい入団者のスカウトは認められていない、ベートに憧れて入団した者はいるが……。

 

「割れてもうてるやん」

 

3首領派とベート派で団員が割れてしまっている。正直に言ってファミリアとしての体は完全に崩壊している。一応主神のウチがなんとか取り仕切ろうとしているが、当然オラリオを壊滅寸前にまで追い込んだ元凶の一人ともなれば話を聞いてくれる者はそう多くはない。

 

「……どないしよ」

 

フィンとガレスは頑張っているが、リヴェリアは落ち込み気味――神会では槍玉に上げられ、フェルズからはファミリアの再起案を出させるほどに切羽詰っていた。深い溜息吐きながら禄に眠れもせえへんのにベッドに横になり、ミアハから処方された薬を飲んで眠りに落ちる

「……寝てる。今の内」

 

薬で眠っているロキはこそこそと寝室に入ってきたアイズには気付かず、朝まで眠り続け……。

 

「最悪の朝や……あん? これ……は」

 

ベッドサイドの机の上に置かれていた者を見て、ロキは目を見開き、そして数年ぶりに心からの笑みを浮かべた。

 

「アイズ……か」

 

ベッドの置かれていた毛糸で編まれたロキの小さな人形、そして……。

 

『ロキ頑張れ』

 

たった一言の応援の言葉と、ロキの絵が書かれた紙が置かれていた。

 

「は、ははは……こんなん頑張らんわけにはいかんやんか……」

 

泣き笑いを浮かべてアイズが作ってくれた人形を手に部屋を出るとリヴェリアに鉢合った。

 

「なぁ見て見て、アイズが」

 

「私にも作ってくれた」

 

リヴェリアだと一目で分かる手縫いのぬいぐるみを手にしたリヴェリアの目は強い光が戻っていた。

 

「……アイズにまで心配されてしまっていたとは……いつまでも情けない姿は見せられんな」

 

「そやな! 泣き言は今日でお仕舞いやッ!」

 

まだアイズはウチたちを見限っていない、自分達で勝手に卑下して落ち込むのは今日で終わりだ。

 

「まずはリヴェリアママ、頑張ってレベル7にランクアップしてーなー」

 

「……やるか。レベルアップ」

 

「マジで!? 期待しとるでー」

 

冗談だったが乗り気のリヴェリアを見て、まだまだ終わっていないとそう感じた。

 

「ロキ! ワシとフィンはダンジョンに行く! 暫く頼むぞ!」

 

「そういうこと」

 

「待て私も行くぞッ!」

 

フィンとガレスの荷物から顔を出しているアイズの手作りのぬいぐるみを見て、これで奮起したならもっと早く……いや、燻っていたのは自分も同じかと苦笑いを浮かべる。

 

「行ってきーなー。ちゃんとファミリアは見とるで、全員レベルアップ期待しとるでー」

 

だからなんでもないように、昔のように笑ってフィン達をファミリアの門まで見送った。

 

「ちょっと見れる面になったな、ロキ」

 

「そやねえ。ベート。これからもっと頑張るさかい、見限らんといてや?」

 

ウチの言葉にベートは返事をしなかったが、笑っている口元を見て、まだまだやり直せると心からそう思えた。

 

一方その頃ダンジョンに向かった3首領はと言うと……。

 

「ガレス。これは死ぬと思う」

 

「何をいっとるか、フィン。オッタルもベートもワシもやってる。やってできん事はない」

 

「目隠ししてダンジョンに潜るとか君達正気かい!?」

 

「見えて無くともだんだん見えてくるわい」

 

「なんかの、カワサキがいうには魔法を放出せずにそのまま殴る蹴るという技術があるそうだ」

 

「興味深いな、それは」

 

「じゃろう、試して見ればよかろう。では行くか」

 

カワサキとオッタル達の勝負を見ていたガレスによってカワサキの技術を会得する為にフィンとガレスは目隠しをし、リヴェリアは魔法を手足に込めたまま戦うという技術の習得を試みていたりするのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ここまでロキファミリア全体のデバフ解除、そしてバフ発生中。子供の不器用な手紙と贈り物で奮起。ならもっと早くとなると思いますが、ベートが覚醒しているのでベートがいれば大丈夫かという惰性と諦め。そしてどうすれば良いかと答えのない疑問。それらを全てひっくりめて走り出したのでここからロキファミリアも原作方面に向けて進んで行くことになります。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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