ようこそハイスコア狙いの教室へ 作:茶漬生活
“旅人のコートを脱がせたくらいで勝てると思うな。
太陽やるなら灼熱地獄でパンツ1枚残さず剥ぎ取れ!
それぐらいでなければ理想で現実を変えることなどできやしない。
もっともっと強く賢くなれ!朝ドラァ!”
脚本・古沢良太 “リーガル・ハイ”
「龍園、連合はこの試験の内容も想定していると考えて当たるべきだ。」
昨日から始まった二つ目の特別試験。
同室の石崎たちを追い出した俺の部屋には朝からCクラスの金田・アルベルト・石崎・椎名とBクラス葛城・戸塚・的場・田宮が集まっていた。狭いが仕方ねぇ。
無人島ではあの野郎に完全にしてやられた。
1160CP。
あいつらは2270CPのはずだからこれで来月は3430CP。
933CPの葛城達や400CPの俺達を足しても倍以上の開きがある。
葛城の話じゃあいつらは両クラスでリーダーを交換していたらしいが、俺なら見抜けた……道理で追い出そうとしやがったわけだ。
悔しいが出遅れてる上に頭数まで半分じゃ勝負にならねえ。ハゲが船に戻って早速同盟の提案をしてきたのも当然だな……風呂ぐらい入ってきやがれと一度は追い返したが。
理事長の娘とかいう蹴り飛ばしてやったメスガキが不安といえば不安だが今回の試験の間は影響ねえだろう。
昨日の個別説明によると俺と葛城が振り分けられた竜グループの面子はわかりやすい。
Aクラス: 一之瀬帆波 神崎隆二 篠原さつき 姫野ユキ
Bクラス: 葛城康平 西川亮子 矢野小春
Cクラス: 金田悟 木下美野里 時任裕也 龍園翔
Dクラス: 綾小路清隆 鬼塚英輔 高円寺六助
明らかにランダムじゃなくクラスの主導者で割り振られてやがる。まさに頂上決戦じゃねえか、グループ分けには意図があるってことだ。
しかも葛城によるとあいつら無人島で人狼ゲームだと?完全に読んでやがる。やってくれるぜ。
無人島試験の情報を持ってたってのは理屈がわからんでもないが、こっちは完全にわからねえ……
あいつは生徒会副会長だったな……そこから仕入れたってところか。試験後には葛城を後押しして生徒会に入れる方法を考えた方がいいな。
「『優待者は学校側が公平性を期し厳正に調整している。』という説明がありました。信じ切るのは危険ですが優待者はおそらく各クラス3人ずつ。優待者の選び方にも法則があると考えるべきでしょう。」
「あぁ1時からの話し合いどころか優待者の法則が見つかり次第終わらせる。昨日の時点であいつらも携帯を集めてやがったからな。何としてもあいつらより先に見つけるぞ。」
金田の説で間違いない。昨日の時点で全グループのメンバーを聞き出してまとめさせたが、この前提がないとスタートラインにすら立てねえってことだ。
「グループは4人4人3人3人のグループが4つ。
4人3人3人3人のグループが7つ、全員3人のグループが1つ。
公平に分配ということはおそらく40人4クラスの場合は4433のグループが6通り、
4333のグループが4通り、3333のグループが2つが想定されていたのだろう。
優待者も本来なら各クラス3人中1人、3人中1人、4人中1人で割り振られたはずだ。
公平性を信じるならこの優待者の枠組みは変わらないと考えていいだろうが、
坂柳の欠席に関するペナルティについては何も回答がなかったので
優待者の配分で不利にされているのか、本当にノーペナルティなのか判断に困るところだな。」
葛城が小難しいことを言ってやがるが結局特定の役には立たねえってことだ。
「またクソガキ関係か……大したクラスだな葛城。」
「くっ、返す言葉もないが、大部分は学校側の事情に巻き込まれただけだ。同盟を組む以上そのような発言は控えてもらいたい。」
「逆に考えろ。あのガキが学校と繋がってるってんなら結構なことじゃねえか。船旅が終わり次第、畳んで学校の情報とやらを絞り出すぞ。」
「暴力的な手段は控えろ龍園!先日の審議結果を忘れたか。」
「ならてめえが手を尽くせ。とにかく今はこの試験だ。金田、ひより、頼んだぞ。」
「微力を尽くします。」
「ええ、もうあのような顔はさせません。」
あのような顔……俺達じゃなく伊集院とか言うDクラスの奴だろうな。連中と付き合うのは感心しねえがひよりなら情報を漏らしはしないだろう。向こうの情報を引き出す窓口と考えれば我慢できなくはねえ……今回の結果次第だがな。役に立って見せろ。
葛城もな――――
8時になると同時に79人分の携帯が一斉に鳴りだした。
「探せ!俺は違った!」
「竜は自分です!」
金田か!よし……メールの着信!?
「どこだ!?」
「鼠です!」
「……そんな、牛も終わった。」
直後にまたメール着信音が鳴った。虎だな、ふざけやがって!
「葛城!金田悟を報告しろ!」
Cクラスから減るのは痛いが連中に渡すよりはマシだ。くそっ、兎も終わった、間に合うか。
「ああ!…………今、終了連絡がきた。間に合ったぞ!」
よくやった葛城!いやそれより法則だ。もっと材料が要る。くそっ、こいつも外れか。
「終わったところでもいい!優待者を探せ!」
「沢田恭美!虎グループ、Bクラスが優待者だ!」
チッ、終了済みの方か、法則はまだか!くそっ馬も終わりやがった!容赦ねえな。
「西野武子、羊グループ、Cクラスだ!はやく報告を!」
「畜生!間に合わなかった!」
「猿グループ、橋本正義!Bクラスだ!」
クソっ、間に合わねぇか。
「犬と猪に絞れ!」
「名前です!猪は諸藤さんのはず……間に合いませんね。犬グループはAクラスの浜口君です。
事前に報告メールをグループ全員分用意しておいたのが幸いしました。」
……絶え間なく着信音が鳴り響いた今回の特別試験は数分で終わった。
「…………猪グループ諸藤リカ、Cクラス。確かに優待者ですね。」
2勝10敗……クソがっ。
「……ひより、説明しろ。」
「はい、グループ全員の名前をクラスに関係なく五十音順に並べて何番目かが法則でしょう。
虎グループ3番目の沢田さん、竜グループ5番目の金田君、羊グループ8番目の西野さん、
猿グループ9番目の橋本君、犬グループ11番目の浜口君、猪グループ12番目の諸藤さん。
牛蛇犬がAクラス、虎猿鳥がBクラス、竜羊犬がCクラス、鼠兎馬がDクラスですね。」
「――――気付けば単純な法則か。『大前提としてAクラスからDクラスまでの関係性を一度無視しろ』あの発言がヒントだったということだな。もっと早く気付いていれば……言っても仕方がないな。」
「連合はこれで200CP、我々はどちらも-100CP……やられましたね。」
結果は金田の推測通りだろう……気に食わないがこの手しかねぇな。
「葛城。CクラスのCPを全て譲渡する。特別試験の結果が反映されるのは9月頭だそうだ。
それまでにBクラスに移しておけばCクラス分の減点は踏み倒せる。*1
代わりにBクラス全員から限界まで徴税しろ。当然あのメスガキも含めてな。
あいつを今月中に黙らせるぞ。」
0CPのままで居ること自体がメリットになるってことだな。ほんとにやってくれる……
「お前……あぁ。必ずBクラスに同意させる。弥彦、的場、田宮もいいな。」
「もちろんですよ! 次は勝ちましょう!」
……なるほどな。
的場・田宮は嫌そうな顔だが戸塚が真っ先に同意したことで反対できなくなった。
葛城があのアホを使ってることが疑問だったが戸塚の役目はサクラか……しかも本心からの。
暴力じゃなくこういう説得もあるってことか。葛城の奴いい部下持ってるじゃねえか。
ここでこれ以上出来ることもない。
お互いクラスを“説得”するため一旦解散だな――――――
『本日全てのグループにおいて特別試験が終了しました。したがって予定を繰り上げ、本日午後6時より結果をお知らせするメールをお送りします。各自携帯をご確認ください。』
元々14日の午後11時からってことだったが、全て終わったからな、もっと早くてもよかったくらいだ。結果は分かりきっているが一応金田の推測が正しいか確認する意味もある。あと数分だな。
携帯が震える。結果は――――
「……そういうことかよクソがっ!!」
「茶柱、星之宮、お前たち何をやったら生徒にあそこまで警戒される。」
もうじき優待者通知が送信される。今回の生徒たちはどちらも開始直後に終わらせる可能性があるため教師は2階の一室に全員が集まっていた。
「え~私は何もしてないよ。それに無人島試験の時の説明の方がメインじゃない?
どっちかというと学校への不信だね。
わたしだって最近帆波ちゃんたちからの目が厳しくて困ってるよ……
ただ佐枝ちゃんの方は心当たりあるかもね~。
中間テスト範囲の変更伝え忘れたんでしょ?色々聞いてるよ~。」
「茶柱、お前……」
昨日のルール説明では坂上先生がAクラス、茶柱がBクラス、星之宮がCクラス、俺がDクラスを担当したが、鬼塚に限らずどのグループも不信感丸出しであらゆる質問をしてきた。
負債の扱いや裏切者が出た後のグループ終了連絡の有無はともかく、坂柳の欠席ペナルティの扱いについて聞かれた際は閉口したし、複数グループが正解しても1グループ分しか報酬を払わないのではないかといった質問には流石に血が上った。
俺や坂上先生に限らず茶柱や星之宮も同じように質問攻めにされたようだ。
穴を突こうとするような質問は学校としても歓迎だが、公平性が全く信用されていない観点からの質問も同じように多かったのは問題だ……いや、坂柳や神室の件からすると確かにそのような不正があったのだろう。
無人島試験でのやり取りも学校に報告したが、我々にも満足な説明はなく、実質不正を認めたような学校側の対応に坂上先生は激昂しておられた……
元々学校のシステムに否定的な方であるし、ここの卒業生じゃない人間にとってあれが普通なのだろうな……今回の試験における坂柳の欠席ペナルティの扱いにも不満を隠せていなかった。坂上先生もAクラスから相当つつかれたようだ。
俺は教師として戻ってきてまで一体なにをやっているんだ……?
俺たちの代も歪められていたのだろうか。俺はこんなことをするために教師になったのか?
……今はそんなことを考えている場合ではないな。そろそろ8時。業者の予約メールで優待者かどうかが送信される頃だ――――
全員の携帯が鳴り響く……やはりか。
「あはは、早速だ。やっぱり早いねー。」
裏切者が出た後のグループへの自動返信などは業者に任せているが、グループ終了のメールは我々にも届くようになっている。じきに裏切者が誰だったかなども連絡が来るだろう。
「終了したのは鼠グループですね……牛も終わったようです。」
坂上先生が読み上げる中、続けて終了メールが届き上から順に終わっていく。5分も経たずに全てが終了してしまった。 一度もグループ別会合が開かれないまま終了とは前代未聞だな……
しかしいくらなんでも早すぎる。
「星之宮、茶柱。本当に試験内容を漏らしていないんだな。」
「何度も言ったけどそんなことはしないよ。そもそも漏らしたのが私なら人狼ゲームやってたなんて報告だって上げないしね。私たちの同級生から聞いたって匂わせてたけど業者とかも疑った方がいいかもね……あれっ、メールだ。」
「私も漏らしていない。するわけがないだろう。」
……この2人ではないだろう。やはり業者か学校内部を疑うべきか、少なくとも鬼塚に漏れているのは間違いない。……星之宮が携帯を耳に当てている?メールではなかったのか?
「………あは、あははははははは!ほんと最ッ高だね。」
突然笑い出した。なんだ?
「星之宮、何があった。誰と話している。」
「通話じゃないですよー。それに多分そろそろわかるよ。ちょっと着信うるさいから音消すね。」
星之宮の端末から何度も響いていたメール着信音が消えた。誰からのメールか問い詰めようとしたところで部屋の扉がノックされた。
誰だ?
補助の先生が扉を開けると業者の担当者が入ってきた。
「何かありましたか? 結果の報告ならメールでお送りいただける手筈ではなかったでしょうか。」
「それが想定外の問題が発生しまして……先生方の判断をお伺いしたい次第です。」
一堂がざわめいて星之宮だけが笑っている……学生時代からこういう時はロクなことがない。聞きたくないが聞かないわけにもいかないだろう。
「――――何が起きたのでしょうか?」
「それが……
裏切者を報告するメールが何通も同時に届いています。
一応コンマ数秒の違いで届いた順番はつけられるのですが、
おそらく生徒側には試験終了の返信メールが送信完了後に届いています。」
『――――裏切者が出てグループの試験が終了したかどうかってのは分かるんですか?
――――裏切者が出た場合、全員にメールで終了連絡が届くことになっている。
――――裏切る場合はそのメールが来る前に送ればいいということですね。
――――その通りだ。』
血の気の引く音が聞こえた。星之宮の携帯から流れたのは昨日の説明。
……あの質問と声は間違いなく羊グループの本堂と南だ。ということは聞きなれない回答者の声は俺のものだろう、台詞も記憶通りだ。録音されていた……?
『――――この学校だよ?報酬の話もちゃんと信用できるの?
例えば虎と…虎と牛でDクラスが裏切りに成功しても、報酬は1名分とか言い出すんじゃない?
――――そんなことはしない、全員に約束通り報酬は支払われる!もっと学校を信用しろ!』
あの質問は……そうだ虎グループの長谷部だ。確かにそう答えた。
『虎と虎と牛の正解した裏切者全員に約束通り報酬を支払う』
同じグループから複数裏切者が出ても支払うと認めてしまっている……あの言い直しも意図的なものか。不信感からの質問じゃなかった……
島でやけにあっさり追及をやめて引き下がったと思ったが本命は船上試験への布石……この長谷部の質問の違和感を消すために学校への不信感をバラまいた。
「ってことみたいだけどどうする、真嶋
私の携帯に次々とスクショが送られてきてるけど全員、終了メールより先に送信してるね。
あと坂上先生分の音声ファイルも送られてきてるよ?」
坂上先生も絶句しておられる。Aクラスから同じような言質を取られたのだろう……完全にやられた。
最悪の事態だ。最初の1名しか認めないと言った場合、教師と学校の信用は完全になくなる。
生徒会からの抗議どころか今後、特別試験のボイコット、いや、坂柳にヘイトが集まっている今の状況では最悪は坂柳を標的にした暴動が起きる……
……特別に警備を付けてもらわなければ
だがルールを反故にした上で、一
そして俺も……
もう信じることができない。
「………………学校に連絡を取る。俺達で判断できることではない。
ただし諸事情を鑑みて認めるべきだと具申する。それでいいな。」
子(鼠)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は4名。
丑(牛)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は3名。
寅(虎)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は7名。
卯(兎)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は3名。
辰(竜)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は8名。
巳(蛇)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は3名。
午(馬)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は4名。
未(羊)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は6名。
申(猿)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は6名。
酉(鳥)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は7名。
戌(犬)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は4名。
亥(猪)――裏切者の正解により結果3とする。正解した裏切者は7名。
暫定クラスポイント:8月1日時点(確定済)+無人島試験(未反映)+船上試験(未反映)
A.星之宮クラス 2360 CP + 634 CP +1050 CP ⇒ 4044 CP
B.真嶋クラス 713 CP + 120 CP - 950 CP ⇒ 0 CP
C.坂上クラス 400 CP + 0 CP -1000 CP ⇒ 0 CP
D.茶柱クラス 0 CP + 526 CP + 900 CP ⇒ 1426 CP