ようこそハイスコア狙いの教室へ 作:茶漬生活
“Sie hatte ihn angeblickt mit einem Ausdruck, den er sich nicht zu deuten wußte.
War auch sie überrascht gewesen? Hatte ihr Blick eine Bitte enthalten?
Oder Sehnsucht? Oder - ja, was nur?”
彼女は解き明かしがたい表情で彼を見つめていた。
彼女も驚いていたのだろうか? 彼女の眼差しは何か訴えていたのだろうか?
憧れ? それとも―――何だったのだろう?
Michael Andreas Helmuth Ende(1929-1995)“
スネークイーター作戦、はーじまーるよー。
八神が余計なことを口走り始めかねないのでパパ柳は急いで八神を確保したということですね。
さて、これが分かると当然もう一つの疑問が出てきますよね?
「崇拝のホワイトルーム生」天沢一夏は?
「もう止めよう、拓也」
生徒会室の扉が開かれ、
「あ? なんでおまえがここに……いつからいた……」
誰の言葉も届きそうになかった状況で八神くんが動きを止める。
「これ以上暴れたって、それでどうなるっていうの? それで認めて貰えると思ってるの? 受け入れてもらえると思ってるの? もう……終わったんだよ。」
この通り、天沢は八神の「本当の願い」を把握しています。
つまり、天沢は「児童養護施設」のことを把握しているということです。
案外志朗もいたりするんじゃないでしょうかね?
そして、もう一つ。
「ホワイトルーム生の独白」ではこんな表現があります。
同じ部屋で学ぶ者たちの中には神格化された綾小路清隆を『崇拝』する人間もいた。
なんて情けない話だ。
1番になるべく教育を受けているはずの人間が、1番になることを放棄している。
そんな人間が、ホワイトルームで
結局彼らは鼻で笑うまでもなく
0巻を読む限り、天沢グループのボンクラが作った試験管ベビーがホワイトルームの凍結が通告された8歳以降、神崎がパパ小路と会った頃まではホワイトルーム5期生にいてナンバー2の位置に居たのは事実です。
しかし、この「ホワイトルーム生」の内心描写から判断するに2年生編の時点で「崇拝のホワイトルーム生」は脱落済み―――正体発覚前からわざわざ存在を否定されています。
「崇拝のホワイトルーム生」を名乗る「彼女」は一体何者なんでしょうね?
独白は内心描写であり本人にとって真実という前提で考えれば、「彼女」が綾小路を崇拝していたことは事実。
更に二人は面識があり、八神は天沢が綾小路に傾倒していると認識しています。
天沢が綾小路に会って話したと独白で語られていることから、独白している「天沢一夏」と「彼女」が別人という線も薄い。
唯一「自称・七瀬翼」と「自称・天沢一夏」が逆転しているという線もなくはないですが、「七瀬翼の独白」に「ボク」が出ていることからその可能性は薄いでしょう。
七瀬の「ボク」のように八神や天沢が兵士ライナーだったらどうしようもないですが。
しかし「ホワイトルーム生の独白」が八神のものでなかったとしても「崇拝のホワイトルーム生」が否定されていることは変わりません。
「天沢一夏の独白」と「ホワイトルーム生の独白」は矛盾していますね。
ちなみに11.5巻でも月城はこのようなことを言っています。
「君に一方的に有利なゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
「新学期になると、新入生としてホワイトルームから
2年生編1巻冒頭「暗躍」において、月城も地の文も「ホワイトルーム生」を単数として扱っており、「ホワイトルーム生たち」と複数形で呼んだことは一度もありません。
2年生編2巻冒頭「七瀬翼の独白」
2年生編3巻冒頭「ホワイトルーム生の独白」
2年生編4巻冒頭「天沢一夏の独白」
というのも実に意味深ですね。
もうわかりますよね。
「天沢一夏」はホワイトルーム脱落生。
八神同様に肝心な部分を語っていない「信頼できない語り手」ということです。
そもそも雪の扱いから分かる通りホワイトルームは男女ともに同じプログラムを与え、生理によるパフォーマンス低下すら脱落の原因になる施設です。
あそこの研究者は全員女と付き合ったことがない童貞です。
生理を見てザノバみたいな反応してましたし間違いない。いやザノバは既婚者でしたけど。
天沢が8歳頃のパパ小路とボンクラ親父との会話で「男女の性差を感じさせない」ことからナンバー2と言われていることからも分かりますが、遅くとも発育の違いによる男女の能力差が逆転するあたりで天沢は脱落したでしょう。
「先輩が10歳の時に受けてたカリキュラムはプロジェクト5に基づいた構築理論。11歳の時に受けていたのはプロジェクト7に基づいた相対性理論。
(中略)
「あたし先輩みたいにコミュニケーション能力が欠如してるわけじゃないからね?」
こちらの考えを見透かしたように、天沢は訂正してきた。
「
綾小路は知らないことでしょうが、そもそも綾小路が受けたのはホワイトルームの中でも難易10を超えた
天沢がホワイトルーム5期生なら同じカリキュラムを受けているわけがないですね。
ましてや八神の独白を見るに、第5期生に「ホワイトルームの最高傑作」の様子を見せたのは1度で、八神が折れていないことから、その時に綾小路が受けていたのはおそらくデモンストレーション用。
綾小路が本当に受けていたカリキュラムを二つも知るはずがありません。
しかも会話の内容から見るに構築理論・相対性理論などの授業単位ではなく、プロジェクト5、プロジェクト7というカリキュラムそのもの――――運営側としての知識を披露しています。
授業を受けていた側の「第5期生」なら、知っていてはおかしい知識ですね。
しかし、リニューアル体育祭でのバレーを見れば分かる通り「彼女」はホワイトルーム生並みの実力を備えている上、独白を見る限り、無人島サバイバル時点では綾小路への崇拝の感情がそのまま残っています。
脱落生にしては非常に高い能力を持っていますし、自分に自信を持っていますね。
つまり、天沢が能力を磨いたのは脱落後。
「健康的フラスコ計画」の方です。
「確かに君はもうホワイトルーム側の人間じゃなくなった。だから僕にとって君は敵」
右腕を伸ばし、天沢の前髪にそっと触れる。
「そう考えたんだろうけど……僕は君を敵とすら認識していないよ」
「あらら、言ってくれるぅ」
「冗談さ。君が
2年生編4.5巻の八神のこの発言も、よく読んでみると無人島サバイバル最終日にクビにされたことを言っているのではなく、天沢が「一般人」=「身元引受人がいる」という前提で八神は話を進めています。
ホワイトルーム側の人間でなくなっただけでは、手を出せない相手にはならないですからね。
天沢は八神の背景を知っているが、八神は天沢を一般人だと考えている非対称な関係が出来上がっています。
天沢が脱落後に行った施設と八神が隠された児童養護施設は別の場所であり、高育で再会したわけですね。
そして天沢はホワイトルームに戻される理由がないということ。
天沢一夏は健康的フラスコ計画の被験者
これが八神と天沢のホワイトルームに対するスタンスの違いに繋がっているのでしょう。
そしてもう一つ。
2年生編3巻で一之瀬が盗み聞きした月城と司馬の会話を見てみましょう。
「しかし、そう簡単に退学させられるでしょうか。相手はホワイトルームの―――です」
「人は肩書に惑わされるモノです。ただの―――である――――よ」
「最終日まで彼が――――延びたなら、予定―――I2で葬り去―――ことにしましょう。」
ダッシュ部分に入る言葉は「最高傑作」「???」「???です」「生き」「通り」「る」。
これが一般的な解釈ですし、聞いていた一之瀬は実際「最終日まで綾小路くんが無事だったら、I2に呼び出して葬り去る」と解釈しています。
本当にそうでしょうか?
ダッシュを〇に書き換えるとこうなります。
「しかし、そう簡単に退学させられるでしょうか。相手はホワイトルームの○○〇です」
「人は肩書に惑わされるモノです。ただの○○○である○○○○よ」
「最終日まで彼が○○○○延びたなら、予定○○○I2で葬り去○○〇ことにしましょう」
ダッシュ4文字と3文字が使い分けられていますね。
ここに埋まる具体的な文字が想定されているということですが、その場合「葬り去」の後が文字数に合致しません。
ここが合うように考えるとこうなります。
「最終日まで彼が無事生き延びたなら、予定通りにI2で葬り去られることにしましょう」
または
「最終日まで彼が無事生き延びたなら、予定通りにI2で葬り去らせることにしましょう」
大分意味が変わってきますね。
実際に月城はI2に現れているので前者だった……といいたいところですが、一之瀬が「無事」だったらと聞いている様にこの会話の隠れた部分を聞いた上で「綾小路を葬り去る」と解釈しています。
つまり、ここで語られていたのは後者です。
本来、I2に来るのは月城・司馬ではなかった。
綾小路と戦うべき相手は別にいたということになります。
そして、月城が手を抜いていることを踏まえると綾小路を葬る気はない。
ここで語られていたのは「I2で綾小路を葬る」計画ではなく、「I2で綾小路に誰かを葬り去らせる」計画です。
「しかし、そう簡単に退学させられるでしょうか。相手はホワイトルームの被験体です」
「人は肩書に惑わされるモノです。ただの高校生である子供ですよ」
「最終日まで彼が無事生き延びたなら、予定通りにI2で葬り去らせることにしましょう。」
つまりI2で綾小路に葬り去られることになっていたのは
月城は表向きパパ柳の意向に従いつつも、パパ柳の手駒を潰す動きをしているということです。司馬も同じでしょうね。
面従腹背。私の嫌いな言葉です。必要性が理解できるのがなおのこと質が悪い。
そして、八神が潰される予定だったという前提で見ると、I2前で堀北・伊吹を妨害した天沢がなぜ司馬に制裁を受けたかもわかります。
「ここに君を呼んだのは、真意を確かめたかったからなんだ。本心から綾小路先輩を守りたくて、繰り返し僕の計画の邪魔をしていたのかな?」
作中で明示的に天沢が八神の妨害をしたのは櫛田と倉地の件のみ。
なのに「繰り返し」と言われているのはそういうことですね。
天沢はI2に行かせないため八神の行動を妨害していたわけです。
八神が怒っていないのは言葉通りI2で「暴力で戦う」ではなく頭での勝負を付けたかったからでしょう。
これは2年生編7巻でも同じです。
「どうしても綾小路先輩のところに行くって言うなら、その前にあたしが止める」
「おまえが? 僕に1度だって勝ったことはないじゃないか。笑わせるなよ」
そして、この行動を持って天沢は「失格の烙印を押される。戻るべき場所はもうない」と言われています。
ホワイトルームは脱落済み、『児童養護施設』のボスである月城にも逆らった。
だから「戻る場所はもうない」とモンデンキント解雇を言わたされたわけです。
そして2年生編4巻の月城の発言。
「確かにそうかもしれません。しかし綾小路くん、君はホワイトルームの中でも特別な成果を残した
「もしそうなら、あの男の期待を裏切るような進化……いや、退化ですかね?」
「いやいや、そうでもないのでは? ホワイトルームの悲願は日本の掌握、ひいては世界の掌握。
月城は綾小路を「最高傑作」ではなく「成功例/成功体」と語っています。
第0巻の内容を踏まえると綾小路は「成功例」ではなく「成功例より上手くいった失敗作」であるにも関わらず。
つまり、八神のような「ホワイトルームの成功例」は『児童福祉施設』にとっては失敗作――――綾小路のような異常個体こそを成功例として、その成長体の作成を目的にしていることが分かります。
そして『児童福祉施設』が「ホワイトルーム」の後発であることと、天沢がここまでの能力を持っていることを考えると、『児童福祉施設』は乳幼児からの教育ではなく本当の能力開発であろうことも察することが出来ます。
月城は「乳幼児からの教育を施したサンプル」として綾小路を気にしているわけですね。
そもそも順当に考えれば八神がBクラスで天沢がAクラスというのは、八神は天沢より評価が低いということです。
そして無人島サバイバルで綾小路を助けた1年は他にもいます。
宇都宮陸は椿と協力して表向き綾小路を追い詰める動きをしつつも、穴をあけて綾小路を救い、坂柳にそれを知られないようにもしていました。
そして八神はやたらと宇都宮を敵視していました。
宇都宮自身も宝泉に並ぶかそれを超える能力を持っていることを示唆していましたよね。
つまり、行動を見る限り宇都宮も同じくモンデンキントです。
それも天沢と違って忠実な。
八神がやたらとライバル視していますし、八神が預けられた児童養護施設の1番だったというところではないでしょうか?
後から入ってきた八神は元から評価されている宇都宮を敵視していたような気がします。
推測に推測を重ねすぎているので正直怪しいですし、英輔君が彼らと会うことはないでしょうからどうでもいいことではありますが。
そしてもう一人。椿桜子。
椿は自分の退学は構わない、1年生の他クラス生徒も助けたいと言っていますが、10分おき、5分おきにGPSサーチを連打して1-A三井あゆみ、1-B堂上美津子、1-D巻田高茂を巻き添えにしようとしていました。
宇都宮に協力して綾小路を助けるにしては、やってることが滅茶苦茶です。
そして、椿はいくつもおかしい言動をとっています。
彼女は無人島サバイバル9日目。宝泉との会話でこんなことを言っています。
『綾小路先輩を真正面から退学させることは難しいはず。だからこそ、この無人島っていう監視の目が届ききらない舞台が用意されたんだと私は思う。』
言ってることがおかしいですね?
月城と南雲は1年生への試験として上級生を退学させる試験を用意し、ランダムで選んだ生徒が綾小路だったと説明したはずです。
椿の目線では、試験が先にあってターゲットは綾小路である必要はないと認識していないとおかしいですが、椿は「綾小路を退学させたい」という目的があって、そのために退学試験が発生しているという前提で語っています。
実際、この直後に宇都宮の方は「綾小路がターゲットにされたのは単なる偶然じゃない」と、月城達に説明された内容を前提に推測を披露しています。
裏事情を理解してるのは月城・天沢・七瀬・八神、そして察している綾小路・南雲だけのはずです。
宇都宮の発言はお漏らしした椿へのフォローにも聞こえますね。
そして、彼女は6日目、八神との会話の中で「七瀬は同行の許可を得てついて回っている」という伝聞情報を漏らしています。
どこでそれを知ったんでしょうか?
綾小路とべったりだった七瀬が椿と接触したのは小宮と木下が突き落とされた直後のみ。
しかしこの時分かる形でそんな会話はしていません。
それどころではなかったですし、下手すれば人が死んでいた可能性があるような状況で話すことではありません。七瀬が隠れてこれを共有する理由があったんでしょうか?
どちらもこのタイミングで椿が知っているとおかしい情報です。
そしてもう一つ。9日目朝8時過ぎ宝泉とのトランシーバーでの会話です。
『答える前に1つ。七瀬さんは味方ってことでいいんだよね?』
ここで初めて、七瀬の存在に触れてくる椿。
椿は宇都宮の望み通り綾小路包囲作戦を失敗した、七瀬を使って綾小路に警戒を促したと宇都宮との間で語っています。
つまりこれは情報提供のパイプ役として利用するため七瀬がそこにいるかの確認のはずです。
しかし椿目線での七瀬はどんな存在でしょうか?
七瀬は綾小路に「許可を得て同行していた」にも関わらず、突如離脱して宝泉の元に帰参しています。
着順報酬は同行しているかどうかによらず、全員が到着したかどうかなので七瀬が指定エリアを目指し続けるなら法泉の元に戻る必要はありません。
二人が同行していた以上、同じテーブルなのはわかっているのですから同行を続けて問題がないにも関わらず別れて、宝泉と合流したならばまず喧嘩別れを考えるはずでしょう。
なぜ七瀬が宝泉のところに戻ってきたスパイだと確信して作戦を立てられたのでしょうか?
しかもちょうど七瀬が宝泉の元に到着した10分後にトランシーバーが届いています。
あまりに都合が良すぎませんか?
七瀬と椿は間違いなく組んでいます。
2年生編8巻の綾小路の推察が正しければ、この二人は月城の裏の目的と同じく、綾小路の退学阻止が目的ということになります。
そして、七瀬は松雄栄一郎の
一方で、綾小路が修学旅行でパパ小路の手の者に襲われることを心配していないことを根拠に、自分を守っているのではないかと疑われていましたね。
先に述べた通り、パパ小路は政界追放されて7年以上経っている過去の人で現状はただの無職です。こんなマダオが各地の高校に圧力をかけられるわけがありません。
ウッキウキでオトモダチのヤクザを嗾けたところで、高校に通報されて豚箱EDです。
あれは嘘かシャブ中の妄想と考えるべきです。
つまり「七瀬翼の独白」の通り松雄栄一郎が首を括ったのならば、括らせた人間はラリ小路とは別の人間ということです。
それは誰か? そんな権力者は1人しかいないですね。
松雄が破滅したのは、綾小路のせいで娘が苦境に陥ったパパ柳の腹いせ。
七瀬の仇はパパ柳です。
だからパパ小路の動きを気にしていないんです。
修学旅行中はパパ柳が手を下さないよう月城が頑張って守るでしょうし「先輩が恐れてる父親はただのアホですよ」とは七瀬も流石に言えないでしょう。
つまり七瀬と椿もパパ柳の反目になります。
天沢・宇都宮、七瀬・椿で四人ですね。
そして、ここまで月城関係者がパパ柳アンチらしき動きをしていると新しい視点が出てきます。
児童養護施設は18歳までで、それ以降は自力で生きていくことになるため、大学進学すら厳しい。
公金を入れるにしても児童養護施設単体ではなぜ出ていく年齢になってからも支援する必要があるのかという話が出てくるでしょう。
そして何より児童養護施設の出身となると、どうしても世間から軽く見られることになります――――
ありましたよね。
ただの高卒に特権と箔を過剰に付与して社会に送り込む既存の国立機関が。
更に一般人との限定的な交流が可能な施設でもあります。
「健康的フラスコ計画」と「東京都高度育成高等学校」の接続。
月城達の狙いって高育を乗っ取って、この国を「世襲」から「マムルーク朝方式」に転換させることじゃないですかね?
その場合の第1号は……綾小路清隆になります。
とはいっても、坂柳クラスにテコ入れのしようがなくなっているので、月城と関わることはもうないでしょうが……
だから真嶋クラスを一撃で潰す必要があったんですねぇ!
考察続きになっていますが、月城たちが高育に来る条件は何かという点と、1学期時点で主人公が打てる手段、混合合宿のネタバレ回避を組み合わせて考えるとこうなってしまいました。
こういう展開しか書けなかった作者の実力不足です。
考察回はあと2回で終わりの予定ですので許して下さい……