ようこそハイスコア狙いの教室へ   作:茶漬生活

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4月08日(水)裏

「全て」を敢えて差し出した者が、最後には真の「全て」を得る

 荒木 飛呂彦(1960-) “スティール・ボール・ラン”


 

 始業を告げるチャイムが鳴った。

 事前に知らされている予定ではこれからSシステムの説明があるらしいが、教師はまだ入ってこない。クラス内でひそひそと私語が始まるのも仕方ないことだろう。時間にルーズな人間はあまり好きではないのだが。

 

「にゃはは、先生が遅れて気になるのはわかるよ。だけどもう時間になっているし静かに待っていよう?」

 

 長い髪をした少女が窘める。……大きいな。いや気になるわけではないが。そこばかり見るのは失礼だろう。ふと顔を見ると容姿もかなり整っている。

 

 いや、些細なことではあるが言っていることは正しい。そもそも俺が言ってもよかったことだ。また動けなかったというわけか……いや過ぎたことはいい。せっかく彼女が声を上げてくれたのだ。ここは援護すべきだ。

 

「その通りだな。すまなかった。静かに待とう。」

 

 俺自身は特に私語をしていたわけではない。だがまだお互いの名前も一致しない初日だ。周囲の生徒以外からは真偽が分からないだろうし、これで彼女への反感も下がる。それでいい。

 俺より先に正しいことをした人間がいるのならそれを助ける。今はまだ実践できていないが少なくともこの程度はしないとあの生き方には届かない。

 

 開始時間を3分ほど過ぎた頃、ウェーブの掛かったこれまた豊かな女性が入ってきた。こちらも顔は整っているようだが時間だけではなく色々と緩そうな印象を受ける。この先生は大丈夫なのだろうか?

 いや見た目で判断するのはよくないな。特に色々緩そうなどと失礼なことを思ってしまった。

 

「みんなごめんねー。ちょっと遅れちゃった。みんなちゃんと静かに待っててえらいね。

 流石Bクラス!えっと、私はBクラスを担当することになった星之宮知恵って言います。

 この学校は学年ごとにクラス替えがないから卒業までの3年間ずっとみんなの担任です。

 知恵ちゃんとか知恵せんせーとか呼んでねっ!ちなみに担当教科は保険で養護教諭も

 兼任してるから怪我したり相談事があればなんでも言ってね。あと恋愛相談なら大歓迎よ!

 ベッドは貸せないけど先生お茶とか用意しちゃう!あっ、でもちゃんと避妊はしないとだめよ?

 まだ高校生だから節度を持ったお突き合いにしましょう。」

 

 前言撤回。色々緩そうではなく色々緩い先生だったようだ。堂々と不純異性交遊を推奨するとか大丈夫なのかこの先生は。とてもじゃないがこの学校の理念に適した人材とは思えない。

 

「えーっとなんだったっけ。あっそうそう。Sシステムの説明だったね。今から資料を配る……

 ってみんなちゃんと持ってきて準備してるみたいだね。やっぱりBクラスはみんな優秀だね。

 うーん、重いから配らなくていっか。もう一部欲しい人はあとでそこの段ボールから好きに取っていってね。」

 

 頭が痛い。なんだこの先生は。これが3年間も担任なのか。俺がしっかりしなくては。ここが力の使いどころだ。

 

「こっちはちゃんと配らないとね。今から学生証カードを配ります。

 みんなちゃんと行き渡ったね?もし自分の名前じゃない人がいたら手を上げてね。

 うん、居ないね。では説明はじめまーす。事前にこの資料を読んできた人も多いだろうけど、

 これは敷地内すべての施設を利用したり商品を購入することができるようになってます。

 クレジットカードみたいなものだね。ただし今から説明するポイントが必要だから注意してね。

 みんな今までの説明はちゃんとわかった?わかってない人がいたら繰り返すよ。」

 

 クラスメイトはみんな頷く。事前に配られた資料に書いてあった内容ではあるが、この程度の説明はちゃんとこなせるようで一安心だ。

 

「うん、みんな大丈夫だね。すごいすごい。それじゃあ続き行くよ。

 事前資料で説明してない大事な部分だからちゃんと聞いておいてね。

 学校内においてポイントで買えないものはありません。

 学校の敷地内にあるものなら何でも購入可能!施設では機械にこの学生証を通すか、

 提示することで使用可能。使い方はシンプルだから迷うことはないと思うな。

 あとポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになってます。

 既にみんな平等に10万ポイントが既に支給されているはずです。あとで確認しておいてね。

 このポイントはおおよそ1ポイントにつき1円の価値があります。はいみんな静かにね。」

 

 クラスが動揺している。貨幣が使えずポイント制になるというのは知っていたが月に10万ポイントか。高校生の小遣いの平均は5000円くらいだったはず。生活費込みとはいえ、金銭感覚が壊れる生徒が出るのではないだろうか。

 ゆるく窘めるのはたわわな彼女がやるだろうから俺は強く引き締める方を担当した方がいい。適材適所。今度こそ動いて見せる。

 

「うんうん、みんな驚いてるね。多いよねー。でもこの学校は実力で生徒を測るんだよ。

 入学を果たしたみんなはそれだけの価値と可能性があるって評価されてるってことだね。

 ちなみにこのポイントは卒業後には全て学校側が回収するから現金化とかはできないから

 使うべき時にはちゃんと使うようにね。でもなにかあった時のためにあんまり無駄遣いは

 しない方がいいかも?うん、そこはみんなにおまかせっ!

 あとポイントは誰かに譲渡することもできるから覚えておいてね。

 ただ無理やりカツアゲとかはダメだよ。学校はいじめには厳しく対応します。

 退学処分とかもあるからね。逆になにかされたらちゃんとみんなに相談するようにね。

 以上っ!何か質問はあるかな?大事な部分だからわからない人がいたら繰り返すよ。」

 

 一応忠告はしてくれるんだな。だが微妙に頼りない。何かされたらみんなに相談じゃなく自分に相談しろというのが普通ではないだろうか。やはり俺がしっかりするべきだろ「1-Dの鬼塚英輔です。失礼します。」

 

 戸が開いて生徒が入ってくる。こちらはまだ説明中だというのに。こんな奴も未来を支えていく若者の一人ということか。この学校はどうなっている。

 

「あはは、どうしたのかな。迷ったのかな?佐枝ちゃんの教室は二つ先だよ。」

 

「先生がおられる間に間に合って幸いでした。ちょうど説明が終わって質問を受け付けているところですよね。私から質問を一つ。」

 

 こいつは何を言っている。質問なら自クラスの教師にするべきだろう。雰囲気だけは立派だが非常識が服を着て歩いているような奴だ。Dクラスの鬼塚と言ったか。

 

 

 

 

「来月このクラスの生徒に振り込まれる“プライベートポイント”は何ポイントでしょうか?」

 

 

 

 

 続く言葉に星之宮先生の表情が抜け落ち幽霊を見るような目に変わった。

 

 なんだ?反応がおかしい。来月のポイントは10万―――違う!星之宮先生は何と言った。そんなことは一言も言われていない! “大事な部分だからちゃんと聞いておいてね”そうだ!頭に忠告までつけていた。

 思わずクラスを見回すと豊満な彼女も驚愕している。他の生徒も顔が変わっていく。大半の生徒は気付いたようだ。

 

「どうしましたか星之宮先生。お答えいただけませんか?それとも説明できない事情があるのでしょうか?」

 

 再度、星之宮先生を見ると目を見開いて固まっている。これはほぼ確定だ。しかし鬼塚だったか。あいつは今プライベートポイントと言った。資料にはポイントとしか書かれていないし先生もそうとしか言っていない。プライベートがあるということはパブリック・ポイントがあるということか?いやそんなものに意味はない。全体を評価しても――

 

「お答えいただけないようなので、俺の“推測”をお話させてもらおう。今、4クラスで説明されているSシステムの説明は不十分だ―――」

 

 衝撃。絶句する我々をよそに鬼塚の説明は洪水のように続いた。

 クラスポイントによる競争、生活態度などによる減点、監視カメラ、Aクラスにしか与えられない特典、特別試験、退学措置、2000万ポイントによるクラス移動。

 

 無茶苦茶な話だ。壮大な妄想だと言ってほしい。だが星之宮先生の異様な反応を見る限り、これは真実だと考えた方がいいだろう。ようやく頭が回ってきた。

 

 特典とプライベートポイントを飴、退学を鞭として競争原理を働かせて実力ある生徒を育成することこそSシステムの本質。つまりあの説明から真意を見抜くのも実力のうちということ。そういう意味で俺たちBクラスは既にDクラスの後塵を拝しているということだ。これが事実だとしたら――いや事実なのだろう。相当にまずい状態だ。

 

 だというのに、不思議と焦りや悔しさが出てこない。

 鬼塚自身はロクでもない仕組みと言っていたが存外理のある仕組みだ。これで競争の結果こいつが最も実力があるものとして卒業するのなら正直納得してしまう自分がいる。

 

 だが何故だ。これを秘匿していればDクラスは大きなアドバンテージを得ることができる。だというのになぜ俺たちに情報を漏らす?星之宮先生の反応を見る限り、現時点で気付かれるはずもない相当深い部分まで情報が知られているとみていい。豊かな彼女も思い当たったようだ。表情が驚愕から困惑に変化している。

 

「ここで本題だ。時間がないので説明は後に回すが今年の現Aクラスに勝つのは困難だ。だから、俺が現Bクラスを不動のAクラスに押し上げる。その対価として来月から現Dクラスの人員を全員このクラスに移動させる8億ポイントを貯めるため節約生活を送ってもらいたい。これは今の内容とDクラスが現在持っているはずの1000ポイントを含め今後得る全てのCPをこのクラスに譲渡する契約書だ。DクラスそしてBクラスの間でAクラス80人での卒業を目指すためこの契約書にクラス全員で同意してほしい。星之宮先生には公証人の立場で立会人をお願いできませんでしょうか。」

 

 

 ………そういうことか。

 

 ―――力を持っていながらそれを使わないのは愚か者のすることだ―――

 

 ため息が出る。本当に遠い。

 

 これだけの優位があれば鬼塚一人なら卒業までに2000万を貯めることは容易だろう。だがクラス全員で。情報以前に視野が違い過ぎる。敵わないわけだ。

 

 可能性だけを見れば二重譲渡の契約などの詐欺も考えられなくはない。だがこちらのクラスの説明が終わっていないことからして最初にここに来たはずだ。

 いや、嘘はないだろう。逆にここまで壮大な嘘なら騙されてもある意味納得できる。俺はこの話に賭けてみたくなった。周りを見渡すとスタイルの良い彼女を含め半分程度は納得しているようだが、もう半分は困惑している。理解が追い付いていないようだ。そこは時間をかけて説明すれば――――

 

 時間が無いと言っていたのはなぜだ?

 

 ふと、気になって鬼塚の方を見やると星之宮先生が再起動していた。

 

「鬼塚君。悪いけど今日の時点では契約の立合人は引き受けられないかな。クラスポイントというBクラス生徒にとって本当に存在するかわからないものを条文には書けないんじゃないかな? それにクラス間の契約といってBクラス全員の署名を求めているけどDクラスの同意はどうするつもり?それとも既に同意を得ているの?あなた一人でDクラスの事を決められない。わかるでしょう?」

 

 話は理解できる。いわゆる筋論というやつだろう。

 

 ここまでの流れを見れば流石にわかる。星之宮先生は学校側の人間としてクラスポイントの存在を公認できない。組織人として学校が知らせないことにしているものを認めることは出来ないというのは理解できる話だ。

 その中でBクラスに最大限にヒントを与えようとしていたのがあの説明に挟まれた忠告なんだろう。だが建前論ではあってもそこに瑕疵があれば契約は成立しない。

 

「裏を返せばクラスポイントは存在していて、仮定のまま意味が発生してしまうからクラスポイントの移動についての契約がダメということですね。」

 

 鬼塚の発言で思い当たったのだろう。さらに何人か顔が変わった人間がいる。Bクラスの方の説得は早く進みそうだ。星之宮先生は喜びと申し訳なさと――これは悔いだろうか――なにか険しいものが混じった複雑な表情をしていた。

 

「一つ目の問題点について、時間の問題で説明していませんでしたがこの契約書はクラスポイントが存在する場合のみ効果を発揮し、クラスポイントに関する推測が見当違いであれば無効になると記載しています。この条件でも不可能でしょうか。」

 

「……確かにこの内容なら一つ目の問題はクリアできるね。これいつ準備したのかな? 少なくとも自分がDクラスでBクラス相手に話を持っていくって確信がないと作れない内容だよね。」

 

 それでいいのか。塾で数学の場合分けというのを習ったが、それと同じようなものか。だが、確かに。契約書なんていつ作ったものだ?

 

「同じ内容で甲乙のパターンごとに12通り用意していました。本当に外部に漏れないと思っていました?割とザルですよねここ。特にAクラス以外の卒業生や退学になった生徒はこの学校に深い悔いや恨みを持つ。あなたとDクラスの茶柱先生、あと真嶋先生あたりはよくご存じではないですか?」

 

 今度こそ星之宮先生は固まった。柔らかい表情が完全に削げ落ち、能面になった星之宮知恵がそこにいた。だが……あれこそが本当の星之宮知恵。まだよく知らない人物に対してそんな確信を持たせるような表情だった。

 

「そっかー。まぁ確かにね。そこまで把握してるってことは漏洩元は私たちの同級生ってとこかな?立場上学校に報告はしなきゃいけないけど、気持ちはわかるしあんまり深入りしない方がよさそうだね。」

 

 つまり星之宮先生は卒業生ということ……それもこの学校に悔いか恨みを持った。あんな表情になるような経験を積むことがこの学校の本質。どうやら俺の考えはまだまだ甘かったようだ。鬼塚が言う通りロクでもない仕組みがあるのかもしれない。

 

「それに知っているのはおそらくもう一人いますよと言うのは置いておいて二つ目。Dクラスには同意どころか今の事情も話していません。ただこれではどうでしょうか。」

 

『――仮にポイントを使う必要が無いと思った者は誰かに譲渡しても構わない。』

 

 鬼塚の携帯から音声が再生される。内容は星之宮先生が語ったものとほぼ同じ。ということは今の音声はどちらもDクラス担任の茶柱という先生のものだろう……なんだその名前!?

 

「すもももももももものうちと言います。なにせまだポイントとしか言われていませんからね。ただ茶柱先生の態度もあって今のDクラスは既に学級崩壊の傾向が出ているので来月頭にはおそらくクラスポイントを全て吐き出す。来月頭に使われることもなく消えてしまう、つまり必要のないポイントなら俺が譲渡しても構わないでしょう。」

 

 暴論だが理はある。そこまでクラスがひどいのか?

 

「同意については元々、早いうちにクラスのリーダーシップを取った上で、学級委員みたいな立場をプライベートポイントで公認してもらうつもりだったんですよ。あとは表見代表取締役みたいな形で契約に効力を持たせてCPを移してしまえば、相手クラスと協力は成立するかなって。あるいは意図的にBクラスに攻撃を仕掛けて審議の和解条件を使って譲渡するって手もありますね。ただ――――」

 

『――だが、そんなに心配なら鬼塚。入学式終了後この教室に全員が戻るまでお前にクラスを全て任せる。遅刻者が出ないようしっかり監督しろ。――承知しました。引き受けます。――ふっ、では任せた。――』

 

「茶柱先生が全権委任に相当する発言をしてくれましたからね。クラスポイントも“全て”に含まれるという解釈は不可能でしょうか?」

 

 またしても確信がある。持つ者の彼女を含め理解が追い付いているBクラス生、俺たちの心は一致している。

 

 言いたくはない。言いたくはないが―――

 

 

 

 これはひどい。

 

 

 

 拡大解釈にも程がある。だが一応筋が通らないこともない。星之宮先生、ひいては学校の判断によるところだ。注目の的となった星之宮先生は……震えている?

 

「――――――――はははは、言っちゃったんだ佐枝ちゃん。言っちゃったんだ。一番言っちゃいけない相手に言っちゃったんだ。あはははははは。あーお腹痛い。」

 

 能面が一転して爆笑している。だが……顔は間違いなく笑っているのに泣き顔に見えた。……どうやら俺の目は節穴で確定らしい。

 

「さて、星之宮先生。いかがでしょうか?多少苦しいところがないでもないですが最低限のロジックは組んでいるつもりです。茶柱先生から全生徒を引き抜き解体する。この契約の立会人を引き受けていただけませんでしょうか?」

 

 鬼塚も鬼塚で言葉の選び方がおかしい。そして言葉以上に手段を選ばないタイプだ。

 だが能力とその目的は信用できる。BクラスがAクラスに上がる上でこれ以上の協力者はいないだろう。

 

「先生。俺もこの契約に同意した方がクラスのためになると考えます。立会人を務めていただけませんでしょうか。」

 

「……わたしも賛成します。後日、もっと話を聞く必要があると思いますが、この契約は時間制限がある以上、必要なものだと思います。」

 

 スタイルのよい彼女も賛成してくれるようだ。ある意味一番不安なのは星之宮先生だが――

 

「おっけー。ここまでされちゃ認めるしかないね。わかりました。佐枝ちゃんにはわたしから説明しておくよ。どんな顔するのかたのしみだねー。いやー名前通り鬼みたいに怖い子だねー。いや悪魔かなー?ところで神崎君と一之瀬さん以外のみんなは同意でいいのかな?うちが断ったら鬼塚君はAクラスに話を持っていく、ってとこだよね?」

 

 満面の笑みを浮かべて承諾された。その笑みに一抹の不安は浮かぶがあとはうちのクラスだけだ。星之宮先生の言う通り、この契約を他のクラスに持っていかれたら終わりだ。

 

「みんな、わたしたちだけで進めちゃってごめんね。ただ今の話からしてクラス対抗戦がはじまるってことと、この契約でうちのクラスが断然有利になるってのは間違いないと思うんだ。だからみんなで署名した方がいいと思うんだけどどうかな?反対の人や疑問があるって人はいる?」

 

 そうだ。この役目は俺より一之瀬の方が適任だ。

 だが俺もこういう人間関係の構築を少し真面目に考えた方がいいのかもしれない。鬼塚に届かないのは仕方ないが節穴のままは流石に悔しい。彼女や他のクラスメイトたちからも勉強させてもらおう。

 

 人知れず俺が決意を固めている間にクラスの女子一人の手が上がった。あれは……ネームプレートから見るに姫野と言うらしい。少し物足りないが髪が綺麗な少女だ。

 

「確認なんだけど来月から節約生活って具体的にどのぐらいになるわけ? 毎月20万ずつ40人で貯めても36カ月で3億にならないよね?8億って割と実現性がないとおもうんだけど。」

 

 予想以上に冷静な意見が来た。確かに80人での卒業という夢に浮かれて、見落としていた部分だ。

 

「契約書には一応余裕をみて月2万PP以外全てと記載しているが、お互いが合意していれば変更は可能にしている。これは最低保証額として実情を見て調整したい。この契約は関係者全員の同意で破棄・更新できるとしているしな。

 あとで確認してもらえばいいが、プライベートポイントが枯渇しても生活できるよう、ここの食堂も含め無料で購入できる商品が用意されている。それらを活用した上で、経費としてDクラス引き上げ用の共有資産から生活のために支出することも考えている。例えば全員でまとめて食事を作ってコストを削減するなどだ。

 星之宮先生。プライベートポイントで購入できないものはないと聞いていますが、調理実習室を35カ月借り続けるためには何ポイント必要でしょうか。」

 

「借りるだけなら予約すればロハ!って言いたいけど独占ってことだよね?予約をし続けるなら一日1000ポイントってところだね。料理部とか活動場所がなくなっちゃうしねー。」

 

 ……ロハ?ロハとはなんだ?

 

「その額であれば十分ですね。設備を確認次第ですが予約独占権を購入させてください。聞いての通り食は何とかするつもりだ。住は寮が電気水道ともに無料。あとは衣だが制服と無料商品を活用していく。ただ女子には申し訳ないがメイク関係は一部諦めてもらう必要があるかもしれない。そこは実際にここの生活を確認してから改めて相談だ。このクラスの生徒が増えるごとにプライベートポイントの総額も増えるし、今後のクラスポイントをいくら稼げるか次第なところもある。最悪は卒業時の人数が80人を下回ることもあるだろうが、簡単に諦めるつもりはないのでBクラス全体で協力してほしい。この回答でどうだろうか。」

 

 

 

 共同生活か。だが元々2万は多いぐらいだと思っていた。衣服も含めてだと少し不安はあるが、まぁ我慢できない方ではない。姫野か、俺たちが気付かない部分に気付いてくれたことに感謝しよう。

 

「…………私は同意する。だが食事だけは頼むよ。」

 

「両クラスの協力次第だが尽力する。俺もマズイ飯は御免だ。他にはないだろうか。問題ないようならお互いが保持する用の契約書2通を回すから各自署名を頼む。星之宮先生よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから運命共同体としてよろしく頼む。この契約は来月まで気取られないこと、生活態度で減点を極力なくす、この二点をBクラスにはお願いする。今日の午後はまず俺を含めたグループチャットを作ってほしい。俺の連絡先は神崎に教えておく。」

 

 

 入学初日。こうして俺たちBクラスと鬼塚の同盟契約が結ばれた。

 




 神崎君の変な属性は完全に捏造です。Bクラスのメンバーは描写が少なすぎたのでつい出来事で……許してください。何でもします。

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