ようこそハイスコア狙いの教室へ   作:茶漬生活

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5月01日(金)中編

Wir müssen wissen, wir werden wissen!

 我々は知らねばならない、我々は知るであろう!

 David Hilbert (1862-1943)


 

 

      Aクラス   940 CP

      Bクラス  1997 CP

      Cクラス   490 CP

      Dクラス     0 CP

 

 

 

 嫌な予感がする。

 茶柱先生が張り出した何かの数字――やめよう。これは間違いなく各クラスの評価。

 篠原さんと佐藤さんはまだわかっていないけれど堀北さんと南君に外村君、あと多分平田君は気付いてる。Dクラスが0ということはこの後に続く説明は多分――――

 

「これはクラスポイントというものでクラス毎の評価を示したものだ。

 毎月1日の振込額はこのCPを100倍したものになる。

 つまり入学初日は1000ポイントあったが今は0ということだ。」

 

 最悪だ。今月から0ポイント生活。

 今月10万貰えない可能性なんて考えもしなかった。残りはそんなに多くない。

 

「先生、これがクラスの評価だというのは分かりました。ですが腑に落ちないことがあります。

 なぜここまで差が開くのでしょうか?クラス毎にそこまで差はないはずです。」

 

 っ!ここからの説明は聞き逃しちゃいけないやつだ。

 

「平田。気持ちはわかるが説明は最後まで聞け。いくつか例年にないことが起きているので説明が難しいが、AクラスとCクラスを見れば大きく差がついているだろう。これはお前たちの生活態度によって4月頭の1000から減点されたことによる差だ。この一か月間全てのクラスが同じルールで採点されたが、この2クラスはこれだけの差がついた。これが現実だ。まあAクラスの減点60というのも歴代最高レベルなのでCクラスを基準にするといい。」

 

 Cクラスは大きく減点されて、Aクラスはほとんど減点されなかった。平田君のいう通りクラス毎に差がここまで開くのはおかしい。考えられるのは二つ。

 一つはAクラスは早々にこの裏に気付いて態度を改めたということ。もう一つは――

 

「そしてもう一つ。このクラス分けも学校からの評価順に上から振り分けられている。つまり最も優秀な生徒はAクラスに、ダメな生徒はDクラスへ、と。大手集団塾でもよくある制度だな。つまりこのクラスは本来落ちこぼれが集まる最後の砦というわけだ。」

 

 今更予想が当たっても仕方がないのに。いわゆる三馬鹿グループはこの学校のレベルに合ってないとは思っていた。こういうことだったなんて……

 

「クラスポイントは例年であればクラス分けの基準からして本来であればAからDまで階段状になっていた。だが今年はBクラスがAクラスを超えたことによって入れ替わりが生じる。今日から元BクラスがAクラスに上がり、元AクラスがBクラスに落ちる。」

 

 茶柱先生は「例年にないことが起きている」と言っていた。それに生活態度で減点された点についてもAクラスとCクラスにしか触れていない。つまりBクラスとDクラスは別の理由がある。

 

 それはBクラスのクラスポイントを見れば明らかだ。そして誰がそれをやったのかも―――

 

「この入れ替わり制度にも意味がある。国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている、それは周知の事実だ。恐らくこのクラスのほとんどの者も、目標とする進学先、就職先を持っていることだろう。だが、一般的な高校生にすら劣る生徒には当然そのような恩恵を与えるわけにはいかない。この学校に将来の望みを叶えてもらえるのはAクラスで卒業した生徒のみだ。それ以外の生徒に対してこの学校は何一つ保証することはないだろう。」

 

「つまり外部に公表されている進学・就職実績は虚偽ということですね。ご立派な大義名分を掲げて大金をつぎ込んでいますが、実態は嘘で塗り固めたFラン高校というわけだ。そりゃ政府も必死で特典ぐらい用意しますよね。大量の血税をつぎ込んで“何の成果もあげられませんでしたぁ!”って大スキャンダルですもの。これが広まったら学校関係者や政治家、役人と何人の首が飛ぶんでしょうね?いやむしろ括る方ですか。」

 

 推定今回の主犯。鬼塚君だ。

 彼は真面目さと気安さが共存したような性格で入試で主席だったこともあり、初日はリーダー的立場になるんじゃないかと思われていた。だけど付き合いが良くないため平田君に取って代わられ、さらに須藤君と同じく暴力的な面があるとわかってオタクグループ以外からは敬遠されている。

 

「全国的には高校卒業後約90%が進学・就職など適切な進路に行ける。まぁ、ちゃんと進路指導すればいいだけだから当然ですね。で?成績下位3クラスを切り捨てて進学・就職率ほぼ100%でしたっけ?笑わせないでくださいよ。大部分を捨てて一部をより高みへ上げるって方針は否定しませんし、この学校だから救われる人間だっているかもしれませんが、それはそれで事前に同意した者だけでやるべきものでしょう。」

 

 未来を支えていく若者の育成――そんな謳い文句に自尊心がくすぐられた部分がないとは言えない。だけど今の話からするとここはそんな綺麗なものじゃない。蠱毒の壺だ。

 

 これって外ではどの程度知られてるんだろう?知っている人の割合によってはAクラス以外で卒業したこと自体が大きなデメリットになるかもしれない。

 

「なかなか興味深い意見だねミスター。で?君の事だ。意図があってクラスポイントをBクラスに譲ったんだろう?今も向こうに音声を伝えているようだしねえ。」

 

 確かに机の上に電卓と携帯が置かれている。確かに真面目な鬼塚君らしくない。なぜ?クラスを裏切るメリットはなに?

 

「流石だな六助。なに、この底辺校の実績を上げさせてやろうと思っているだけだよ。聞いていたら入ってきてくれ――向こうもまだ説明中のようだな。B、いやAクラスにはSHR中に携帯を取り出す馬鹿はいないからな。まあその前に聞きましょうか。茶柱先生、俺が把握している限り遅刻欠席合わせて81回。授業中の私語や携帯を触った回数292回。あと俺と須藤の授業中の立ち上がり2回、喧嘩未遂1回がありましたね。まぁ実際は俺より後ろの席でもやってたのでもっと増えるでしょうが。この場合クラスポイントは何ポイント減点されますか?」

 

 ――っ!二日目?ううん多分初日からだ。きっと譲渡もあのタイミング。

 

「それは答えられないな。人事考課、つまり詳細な査定の内容はこの学校の決まりで教えられないことになっている、社会も同じだ。お前が社会に出て企業に入ったとして詳しい人事の査定内容を教えるか否かは企業が決めることだ。」

 

「まともな企業は改善を促すためにも開示しますけどね。訴えられたら出さざるを得ないんですし。まぁいつまでも高校生気分みたいですし非常識なのは仕方ないですか。10年前でしたっけ?内輪揉めでクラスポイントを300ほど吹き飛ばした男女がいたのは。そいつらよりはこのクラスの方がまだマシでしょう。」

 

 茶柱先生の表情が痛みを堪えるようなものに変わった。まさかそういうこと?

 

「さて。俺が新Aクラスにクラスポイントを譲渡したわけだが、まぁ何もしなくてもお前らは今月CPを全損していた。心当たりがあるだろう。クズども。このクラスで少なくとも生活態度で減点がなかっただろう生徒は洋介・六助・綾小路・幸村・三宅・長谷部・王ぐらいだな。あと博士と航も最近は改善している。脚を上げたままだったら不味かったな六助。」

 

「あまりレディを傷つけるのは感心しないねえ。女性のおいたを許すのも男の甲斐性だよミスター。で?私はその先が聞きたいのだが。」

 

 今あげられた人たちは私たちに足を引っ張られた側ということだ。平田君とみーちゃん以外は友達がいないのが大きいと思うけど。

 

『学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ。』

 

「誇大広告気味だがある程度事実だ。この学校は2000万プライベートポイントでクラス移動が出来る。A・Dクラスで協力してAクラスにクラスポイントを集め一人ずつ移動する計画というわけだ。現Aクラスからは全員の同意をとってある。まぁ当然協力的な生徒・Aクラスで足を引っ張ることのない生徒から順に移ってもらうことになる。全員移動できるとは限らんからな。励んでくれ――まあDでも気にしない誰かさんや、自力で移れる六助には必要ないかもしれんが。」

 

 ……これがAクラスにポイントを移した理由。学年ごとのクラス分けはない、あの説明にまで裏があっただなんて。

 

 でも状況は非常によくない。私はすでにクズ側に分類されている。

 今のままAクラスがプライベートポイントを20万ずつ貯めたとしても35カ月で2.8億弱。13人しか移動できないし、きっと実際はもっと少ない。それに鬼塚君とさっき上げられた7人はほぼ確定――――残り5枠に入らなければいけない。

 

 ――待って、高円寺君が自力で移動できる?他にも手段があるということ?

 

「さて、残りの話は後回しだ。楽しい楽しいテスト結果を聞こうじゃないか。頭が悪すぎて退学する生徒までは面倒見切れんぞ。茶柱先生お願いします。」

 

 退学!?……これまでからしてテスト結果にもなにか問題があるということ。

 篠原さん達に合わせてる場合じゃなくなった。なんとしても鬼塚君とAクラスに認められなきゃいけない。

 

 

 

 

 そういうクラスに……なってしまった。

 

 

 

 

 

 

 




やってることは実質3年時の南雲と同じというアレ
ちなみに松下視点です。

原作0巻って読んでますか?

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