続けるかは今のところ反響次第です()
第1話『ワダツミの出会い』
鳴り響くエンジン音。
肌に感じる潮風と、潮の香り。
「いよいよだ...。」
緊張した面持ちで、少女は手を握ったり開いたりする。
半年間の教習を思い出す。
10年前のあの日。私はあの人に憧れた。
キレイな海に、弾ける光と水。
唸りを上げる機械が、まるで乗り手と一つになったみたいに自由に泳ぎ、飛び跳ねていた。
その姿は以前家族で見に行った、自由に海を駆けるイルカみたいで。
私もあんな風になりたいと思ったのは、この名前のせいなのかもしれない。
あと一歩。
やれることは全部やった。
面接はちょっと緊張しちゃったけど、ハキハキ答えられたと思うし。
教習だって、結構いい成績で卒業した。
先生も褒めてくれたし。
その実力をここで出すだけだ。
大丈夫、きっと上手くいく。
そしたら私はここで、憧れの舞台で泳げるんだ。
「憧れの、その先に...!」
赤い髪を揺らしながら、少女はマシンに手をかけ、自らの体と命運をそのマシンに預ける。
深呼吸し、目を閉じる。
ゲートが開き、少女とマシンを日差しが優しく照らし出す。
再び目を開いたその時には、少女の瞳から迷いは消えていた。
「エントリーNo.16番!咲宮入華です!スタンバイ!」
『GO!』
―――――――――――――――――――――――――――――
『ジェットバトル』
それは美しきドルフィンたちが互いに競い合う、水上の弾丸ファイト。
一台の『UMIマシン』に操縦者である「ライダー」、
射撃手である「ガンナー」のペアで乗り、
エネルギー銃を撃ち合い、相手のマシンを止める事が目的のマリンスポーツ。
それがジェットバトルである。
始まりは自動車生産、または造船。
所謂乗り物メーカーと言われるようなとある企業が、自社の製造能力をプロモーションする為にUMIマシンを開発したのが起源である。
その為UMIマシンはデザイン性を重視した見た目、時代世相を反映したようなゲーム的なデザインが主となった。
また、その乗り手にはいずれも美しい女性が採用された。
いつの時代も華やかさがある方が売れる。
スポーツの起源としてはいささか道楽に寄りすぎている気がするが、結果としてプロモーションは成功、それ以上のモノを生み出した。
UMIマシン単体では性能発表程度で終わっていただろうが、美しい女性がヒロイックなマシンを駆る姿が動画配信サイトから話題になり、世界的に称賛されるようになったのだ。
これに目を付けた企業が集まり、ただのプロモーションをスポーツに昇華させようと目論んだ。
その中の企業の一つが、今日から私の所属する会社である『株式会社KIRISHIMA』だ。
その後、当初からあったゲームの要素を強く押し出した上、最新技術を持ち寄った結果。
水鉄砲のような多彩な銃でマシンのエネルギーフィールドを削り、先にマシンを停止させた方が勝ちなどというまさに現実にゲームが飛び出したようなスポーツが出来上がってしまった。
商魂逞しいにも程がある。
選手として扱われるようになったキャンペーンガールは、その水上での華麗な姿から『ドルフィン』とも呼ばれるようになった。
これがここ、日本の人工島『ワダツミ』より広まり、今や世界的に広まったマリンスポーツの起源である。
今や多種多様な企業が参画している。
確か最近、ファッションブランドまで参入したはずだ。
そこまで門戸が広いのには理由があったりする。
ジェットバトルは、始まりはゲームと言えど競技を行うにはリアルな人間の射撃、ライディングテクニックが必要不可欠であり。
スポーツ選手として必要な専門性があるのは他のスポーツと同じだ。
しかしジェットバトルの起源を聞けば分かると思うが、このスポーツには技術以上に重要な条件がある。
選手の『華やかさ』、『可愛いさ』、『美しさ』である。
企業のプロモーション要素はスポーツとなった今もしっかり受け継がれており、その乗り手にはアイドル性が要求された。
つまりテクニック以前に見た目重視採用だったりする。
そんなわけで、事前にある程度テクニックがある美女を見つけるのは今現在も結構難しい。
今やUMIマシン教習所も存在しているが、先程も言った通りドルフィンになる第一条件は本人のアイドル性。
顔に自信がありまくるか、夢見がちな少女でない限り教習所に通ったりはしないだろう。
つまり企業にとってドルフィンは『才能』を見つけ、『育てる』ことが前提となっている。
その為、設備が整いさえすればどの企業でも競技に参加出来る。
今やマシンですら他企業に提供してもらう会社がほとんどだ。
アイドルみたいなスポーツ選手。
なるほど、私のようなジェットバトルの経験がなくともコーチが務まるとされたのはそういうことか。
ちょっとした体力トレーニングやマシンの操縦指導は確かに出来る。
しかしそれをよりによって私に育てろとは、皮肉か何かだろうか。
「着いたか。」
ジェットバトルの始まりの地にして最高峰。
南に浮かぶ人工島ワダツミ。
ここが私の新天地というわけだ。
復習を終えて、私は下船準備をする。
何にせよ、やるしかない。
私にはもう、あの風を感じることは出来ないのだから。
―――――――――――――――――――――――――――――
人工島ワダツミ。
リゾート地として設計されたここは、今やジェットバトルの為の専用島と化している。
大きく分けてワダツミは
観光区、工業区、居住区に分かれており、
観光区と居住区の生活利便施設以外は関係者以外立ち入り禁止となっている。
居住区はジェットバトル関係者のみが生活しており、工業区も当たり前のようにジェットバトル関係の生産の為の設備であるらしい。
私が思っている以上に、このスポーツは金になるらしい。
......いけない、まだ僻み癖が抜けないようだ。
すぐ否定的な気持ちになる。
興味がないわけじゃない。
マシンのハンドリングとか、エンジンは何を使っていて、最高速はどんなものなのか、とか。
......ふむ。考えていたら少し楽しくなって来たかもしれない。
まずは居住区に行って荷物を置かなければ。
服装もスーツにしなければならないし。
ヒールでは動きにくいので、今の私はごくごく普通の服装をしている、はずだ。
何やらジロジロ見られているのは服装がダサいからではないと信じたい。
居住区への行き方を地図で確認していたその時。
ドンッ!
私に走る何かがぶつかった。
体幹には自信があったが、いきなりかつかなり重かった為、耐えきれず尻餅をついてしまう。
「ああ!?だ、大丈夫ですか!?」
ぶつかった何か。
何かではなく、私にぶつかって来たのは赤い髪がキレイな女の子だった。
可愛いイルカの髪飾りを付けている。重そうなキャリーケースを引っ張っているが、まさかそれを持ち上げながら走っていたのだろうか。
「急いでたからって、私本当にそそっかしくて...。ごめんなさい!大丈夫ですか...?」
少女が申し訳なさそうにこちらに手を差し伸べる。
私は手を握って立ち上がり、汚れを払って少女に向き直る。
「私は大丈夫。君は平気?ケガはしてない?」
見たところ高校生くらいの年齢だろうか。
体格も大きくないし、むしろこの子の方が心配だ。
「私は全然大丈夫です!本当に、ごめんなさい!」
すごい勢いで頭を下げられる。
一動作一動作が元気な子だ。
「私は平気だから。それより何でそんなに急いでいるの?その荷物で急ぐのは危な」
「ああー!?忘れてました私、遅刻しそうでっ!すみません、お詫びはまた今度!必ずしますから~!!」
何かを思い出したようで、またしても勢いよく走り出してしまった。
危ないって言ったのに。
遅刻しそうって言ってたけど、待ち合わせでもしているのだろうか。
後ろ姿がみるみる小さくなっていく。
「なかなかいいタフネスしてる...。」
どうでもいいことを言いつつ、意識をまた地図へと戻す。
「あの、すみません。」
そしたら今度は、眼鏡を掛けた大人しそうな女の子に声を掛けられた。
ぶつかられたわけでもないので、普通に応じてみる。
「はい、何でしょうか。」
「この辺りで赤い髪をした、高校生くらいの女の子を見掛けませんでしたか?たぶん大荷物で、イルカの髪飾りを付けてるんですけど。」
分かりやすい特徴だ。
偶然私もそんなような子を見た気がする。
「さっきあちらに慌てた様子で走って行きましたけど。」
「ええ!?入華ったら、待ち合わせ場所は港って伝えたはずなのに!?し、失礼します...!」
ペコリと頭を下げた後
落ち着いた様子『だった』彼女は先程の少女と同じ様に慌てて走り去ってしまった。
知り合いなのだろうか。
何だか雰囲気が似ている。
「...やっぱりいい足してる。」
島育ちだと身体能力が高くなるのだろうか。
少し感心して、再度地図に目を向ける。
私も急がないと。今日は監督に挨拶があるのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️□株式会社KIRISHIMA・ジェットバトル課◼️□
居住区の寮に荷物を置き、着替えた後私はここに向かった。
『株式会社KIRISHIMA』
今日から私が配属される会社だ。
古くから自動車など乗り物全般を扱っている歴史ある企業。
ジェットバトルにも古くから参入し、昔は最強と呼び声高い実力だったらしいが。
「それも過去の話だ。」
目の前の女性、私の上司に当たる彼女。
陽南監督はため息を吐いて答える。
確か彼女自身も優秀なドルフィンであったはずだ。
霧島最強伝説の立役者とか、資料に載っていた。
「今や連戦連敗。選手すらまともに揃えられない状態だ。」
「確か、監督の娘さんが選手として活躍していたはずでは?」
私の問いかけに監督は更に深いため息を吐く。
「杏里はスランプ、どころではないな。とにかく試合で使える状態ではない。」
「スランプ...。」
スポーツ選手だった者として、その気持ちは分からなくはない。
何かあったのだろう。負けたくない相手に負けたとか。
「そうなると、今参加できる選手はどれくらいなのでしょうか?」
「二人だ。」
「二人!?」
ギリギリの人数じゃないか。
確か今一強と言われている風見の選手は候補生も入れて50人はいると聞く。
「間違えた。確か今日配属予定の新人が一人。念願のライダーだったはずだが。」
「残りの二人はガンナーだったと...。」
つまりその新人がいなければまともに競技すら出来ないということか。
監督は居住いを正し、真剣な眼差しで私を見つめる。
「簡潔に言う。新人とそのパートナーを鍛え上げ、三ヶ月後の新人戦で優勝させて欲しい。」
「...は?」
三ヶ月後?
「相手はデビューして2年未満のひよっこだらけだ。最も、風見に関しては新人でも他のレギュラーレベルの腕があるそうだが。」
「うちはライダーは新人の子だけなんですよね?...ちなみに、そのパートナーの子はどれくらいの」
「半年。」
...無茶苦茶だ。
新人とほぼ新人、私自身も素人同然。
それで優勝なんて出来るわけが。
「優勝しなければ、そこでKIRISHIMAはジェットバトルから撤退する。」
「...へ?」
企業が撤退。
つまり、ジェットバトル辞めるってこと?
「上の決定事項だ。その最後の切り札として、私が君を選んだ。」
「で、でも私はジェットバトルの経験はないし。」
プロとしての視点を求めているにしても。
私の実績は、『前』の私の実績だ。
今の私じゃ何の役にも...。
「地咲輪。君に霧島の命運と、ドルフィンたちを託す。」
「そ、そんなこと言われても...!」
コンコン
「失礼しますっ!」
「ま、待って入華!まだ入っていいって言われてな!?」
扉を勢いよく開ける音。
その先にいたのは、今朝見掛けたばかりの少女たちだった。
「都条。ノックしたら返事を待てと前にも」
「「ああー!?」」
二人が揃って私を指差す。
これは、少女たちが織り成す水上の熱いバトルと青春の物語。
夢を諦めた彼女と、夢の先を目指し続ける少女。
その二人の出会いから始まる物語。
ドルフィンと呼ばれる少女たち。
彼女たちが生み出す感動、巻き起こる喝采の嵐。
その様子を人はいつしか
『ドルフィンウェーブ』と呼んだ。
オリジナル設定マシマシですが世界観説明な感じの第1話でした。
好きになってもらえたら嬉しいです。
このキャラがメインの話を見たいって子は誰ですか?
-
入華
-
みちる
-
杏里
-
詩絵
-
颯
-
エレン
-
氷織
-
シュネー
-
桐利
-
見波
-
乙姫
-
夕離
-
紫苑
-
ヘリー
-
セレナ
-
ヴィーナ
-
かな
-
由芽