お祝いを込めて少し短めのお話を書きました!
偶々誕生日近くだったから、合わせればいいんじゃね?って思ったわけじゃないよ!←
海の日はドルウェブの日。
それを更に超える祝日を皆で祝おうではないか!!
「入華が変?」
新人戦まで一月を切ったある日。
いつものように練習後のカナロアを満喫していた私だったが、
他の面々はそうでもなかったらしい。
みちるの切り出した話題に私以外の全員が頷いた。
「気付いとらんかったとよ?入華ちゃん、最近ずっと元気がないっちゃね。」
「ああ。何となく覇気がないって言うか。練習は真面目にやってるが、いまいち身が入ってないんだよな。」
「学校でもそんな感じらしいんです。話を聞いてみようにも、最近すぐに帰ってしまうから、話をするタイミングがなくて...。」
「そう、なんだ...。」
選手のメンタルケアもコーチの仕事なんて言いながら、そういった変化にも気付いていなかったらしい。
実力は確かに上がっているようだったので、こちらの注意が薄くなっていたのかも。
そういえば今日だって、大好きなカナロアには行かず「用事があるので!」と、そそくさと帰ってしまった。
よく考えなくても、入華らしくないのは分かるはずだ。
「まあ、そうしょげるなって。あんたもメニューやら試合の調整やらで、ここ最近は忙しかったろ?入華の奴も、妙にコーチの目に映らないように逃げてた気がするし。」
「相談して、負担が掛からないようにしたかったんでしょうか?」
「もしくは、知られたくない悩み、とか...?」
知られたくない悩み。
例えばどんなのだろうか。
思考していると、杏里が何か思い付いたのかおどけた調子で話し始める。
「案外、恋煩いだったりしてな!」
「こ、恋!?」
「......もう、杏ちゃん。」
「だってよ、入華だって花の女子高生だぜ?ジェットバトルと飯命のあいつでも、年頃の女の子する可能性はゼロじゃあないはずだ。」
「言い方がおじさんくさいっちゃが。」
「入華が、恋愛...!?クール、クールになるのよみちる...!」
恋煩い。
つまり、入華が誰かに恋をしてしまい、それが悩みの種となっているということか。
......まあ、あり得なくはない。
ファッションを覚えようとしたり、可愛い(?)マスコットが好きだったり、女の子らしいところはらしいのだ。
少女漫画的な恋をしても違和感はない。
人に知られたくない悩みとしても納得がいく。
「もしかしたら失恋のショックという可能性も...。」
「もう杏ちゃん。そげな言い方、入華ちゃんが可哀想やっちゃが。」
「それくらいしか思い付かないんだからしょうがないだろ?トシエだって気になるくせに。」
「そうやね、杏ちゃんには浮いた話も何もないし、新鮮やっちゃが。」
「うるさいな!トシエだってそんな話一回もないだろ!」
「く、クールな女はそう簡単にこ、恋したりしないので。」
「......。」
話が逸れだした。
というか、自分の恋愛経験を赤裸々に語るのは止めよう。
特に年上の同性の前で。
私に話を振ろうとしたら分かってるよね?
三日間は寝込んで練習来れなくなるから。
私が。
「......とにかく。あんな状態じゃせっかく技術が向上しても、試合には勝てない。もう1ヶ月ないんだ、さっさと悩みを解消させないとまずいぜ、コーチ。」
「そうだね。入華に私から聞いてみるよ。」
「ま、待ってください。その方が早いのは分かるんですが...。入華が話したくないなら、無理矢理聞き出すのは可哀想な気がして。」
「そうね。どげな悩みかも分からん以上、まずは本人以外から情報を集めんと。」
「なるほど。」
先輩やコーチには言い辛いことも、クラスメートや隣人には話している可能性もある。
まずは周りの人間に話を聞いてみることにしよう。
とりあえずの方針を定め、私とみちるは入華の悩みを知り、解決する為の行動を開始するのだった。
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翌日。放課後の用務員にて。
「コーチ、周囲の人間にしっかり事情聴取をしてきましたよ!」
「ありがとう、みちる。......何だか楽しそうだね?」
「まるで探偵や刑事みたいで、カッコよくてクールだと思いませんか?!」
「あ、はい。そうだね。」
目をキラキラさせた相変わらずのクール先輩を他所に、彼女がスマホで録音してくれたボイスデータを再生する。
ちなみにこの機能を理解するのに一晩かかったらしい。そんなに『それ』っぽくしたかったのだろうか。
『なになにもう録ってんの!?みちるちゃんってば本格的だねー!』
騒がしい声が聞こえる。
これは間違いなくりーこだ。入華とも仲がいいし、いい人選だ。
『ああ、入華っちね。最近なんかテンション低すぎてガン萎えって感じっしょ?学校で話し掛けても上の空っていうか。』
やっぱり学校でも元気がないのか。
練習で疲れているだけ、という線はなさそうだ。
『相談とかは受けてないよー。でもこないだ、見波と買い物してる時に入華っちを見掛けてさ。大人っぽい服が多い店でじっーと服を見てるわけ。気になって声を掛けたらすぐ逃げちゃったんだよねー。マブダチとしては超ショックだったわー。』
大人っぽい服か...。
恋をして背伸びしたがるのはお約束。
まさか本当に恋愛の悩みなのだろうか?
『え!?入華っちが恋!?なになにそんな面白そうな話早く言ってよ!ブログに上げたらガチバズり間違いないっしょ!......な、なにその真顔。みちるちゃんそんな顔出来んの...?じょ、冗談だって!書かない!書かないから!?』
「......もちろん、全力で止めました。入華まで炎上させるわけにはいかないので。」
「うむ、よし。」
たまに見せるデキる先輩ムーブに感謝しつつ、次のボイスデータを再生する。
『......。』
......?音がしない。
『......あ、あの。もう話しても大丈夫なので...。』
『......入華が、変?』
この必要以上に静かな感じ。
颯だ。
入華とは学校でよく一緒に過ごしている。
二人のコミュニケーションは常に入華が喋り続け、颯が黙々と聞いているイメージだ。
入華の元気がない以上、一番その違和感に気付きやすいポジションと言える。
『......そういえば、最近は食べる量、少なくなった。』
『あの入華が?』
『はい...。......あとは、前と違って、私と同じ食べ物を選んでる。』
颯と言えば少食で、たんぱく質豊富なささみをよく食べている。
白米はあまり食べていないはずだ。
ごはん大好きな入華が真似しても物足りないと思うのだが。
『ごはん、食べないの?って聞いたら、私みたいになりたいからって...。』
颯みたいに...?
食べ物から見て、颯のようにスレンダーになりたいということだろうか。
「好きな人に振り向いて欲しい故の自分磨き。か、完全にこないだ読んだ漫画と同じだわ...!きゃー...!」
何やら興奮しているみちるを無視して、最後のデータを再生する。
『あー!何の用よKIRISHIMA!学校で油断してるところをヤミウチするつもりね!カエリウチにしてやるー!!』
あ、かなちゃんだ。可愛い。
忘れがちだが、かなちゃんはこの学園の中等部に通っている中学生だ。
練習でもよく試合相手になってくれてるし、入華とは姉妹のようなやり取りをしている(個人の主観)。
何かしら変化を感じ取っているだろうか?
『入華!?次はぜったいにギタンギタンにしてやるんだから!この前なんて「かなちゃんは育ち盛りでいいよね。」って言われたのよ!このかな様を子ども扱いなんて許さないんだから!』
「ああえーっと...。かなちゃんからは、特に有益な情報はなかったんです。すみません...。」
「そう、みたいだね。」
ただ、確か前に入華も自分を『育ち盛り』と評していた気がする。
今更かなちゃんにそんなことを言う必要があるかと言われれば、少し違和感があるかもしれない。
「......今のところ、本当に恋煩いの可能性が一番高いかな。」
「や、やっぱり...。」
恋煩いともなると、悩みを聞けたとしても解決が難しい。
「どうしたものか...。」
「......コーチ。私にいい考えがあります。」
「いい、考え?」
得意気にメガネをクイッとするみちるに、一抹の不安を覚える。
何でそんなに嬉しそうなの?
「事情聴取と来たら次は決まってます。尾行しましょうコーチ!」
――――――――――――――――――――――――――――
やって来ました休めない休日でお馴染みの土曜日。
季節は夏に傾きつつあり、昼前でもかなり暑い気温となっている。
本当ならエアコンガーガーの部屋で新作ゲームをプレイしていたいところったが。
「コーチ!いました!」
「みちる、声が大きい。」
私たちの視線の先には揺れるサイドテール。
間違いない、入華だ。
以前私が選んだ服を着てくれている。
何だか嬉しくなったが、すぐに尾行をしている罪悪感が汲み上げてくる。
みちるの提案に仕方なく乗っかり、本当に尾行することになってしまった。
みちるは変装のつもりなのか、全身黒統一、サングラスまで持参してきた。
めちゃくちゃ目立っている。
隣の私がいなければすぐにワダツミポリスにご厄介になっていそうだ。
......いや、むしろ私まで怪しまれている気がする。
新たな悩みに頭を抱えたのち、見てみぬ振りをしながら、入華の様子を伺う。
やはりいつもよりしおらしいというか、少し辛そうな雰囲気だ。
心配な気持ちのまま、気付かれないよう後をつける。
最初にたどり着いたのは、りーこから聞いた大人っぽい印象の洋服店だった。
少し躊躇いつつ入っていく入華。
私たちも店内に入り、離れた場所から様子を窺う。
キョロキョロと洋服を見つつ、何やらサイズを確認しているようだ。
手に取った服に違和感を覚える。
「あれ、入華より身長高い人のサイズだよね?」
「確かに...。あれの小さいサイズを探してるんじゃないですか?」
そうして眺めている入華を悩んでいると判断したのか、
店員さんがやって来て試着を薦めているが、入華は恥ずかしそうにそれを断る。
サイズがないなら聞けばいいのでは?と思ったが、しばらく服を見て何か思案した後、服を戻して店内に出てしまった。
「みちる、行くよ。」
「これ、クールな気がする...。......あれ?ま、待ってくださいコーチ!」
何やら映画に出てくるような帽子を吟味しているみちるを急かし、尾行を再開する私たち。
次にやって来たのは本屋。
ジェットバトル関連の本を見に来たのかと思えば、ファッション雑誌のコーナーで立ち止まる入華。
ペラペラとめくり、数分目を通したところで雑誌を手にレジまで向かった。
「入華があんなおしゃれな雑誌を買うなんて...。」
「ファッションの勉強かな?」
入華が買った雑誌をみちるに確かめてもらいつつ、尾行を再開する。
「あ、これSHIONさんの特集記事がある!私も欲しい...。コーチ、ちょっと買って来ても...あれ?コーチ?」
そうこうして尾行を続けていると、時刻はお昼時。
この近くには、入華のお気に入りのラーメン屋さんがある。
当然入るものと思っていた私だったが、入華は店の前まで来たものの、眺めるだけで入ろうとしない。
お腹を抑えて足早に立ち去ってしまった。
「入華...?」
更に多くの飲食店を通り掛かるも、いずれにも入華は入ろうとしない。
店を見る度に辛そうな顔をして、お腹を抑えている。
「まさか、体調が悪いんじゃ...!?」
コーチとしての責任からか、様々な不安が頭を駆け巡り、ついに心配が尾行の使命感に優った。
冷や汗を垂らしながらすぐに入華の方に駆け出す。
「入華!大丈夫!?」
「え...?コー、チ...?」
顔色を確認し、肩を支える。
熱はないようだが、辛そうだ。
腹痛か?ただの腹痛だろうか?食中毒?盲腸?とにかく助けなければ。
必要なら救急車を、とスマホを取り出した次の瞬間。
グ~~~!!
獣の雄叫びもかくやという、大音量の腹音が鳴り響いた。
――――――――――――――――――――――――――――
「ダイエット?」
「は、はい...。」
カフェに移動し、結局直接入華に話を聞くことになった。
話は簡単。『ダイエット』だ。
彼女はダイエットでご飯を食べていなかったのである。
学校で元気がないのも、練習に覇気がないのも、燃料が足りていなかったからだ。
恋煩いではなかったことに内心安心しつつ、それはそうとなぜ入華がダイエットを始めたのかが気になった。
「でも、何で入華がダイエットを?それも食べることが大好きな君が、食べない無理のあるダイエットなんて。」
「それは、その...。」
顔を真っ赤に染め、指先を合わせながらモジモジしている。
そんなに恥ずかしがる理由なのだろうか?
「入華は太ってないし、運動だってちゃんとしてるじゃない。更に痩せようとしなくても...」
「言ってた、から...。」
「え?」
「......コーチが、前に颯ちゃんのこと、言ってたので...スレンダーで、綺麗って。」
「わ、私...?」
確かに、アスリートらしい体型で綺麗とは言ったことがある気がするが。
「颯は颯だよ。入華は入華でスタイルもいいと思うし。羨ましいくらいだよ?」
「でも私、いつも食べ過ぎだってコーチに言われてて。颯ちゃんは少食で、スラッとしてて。コーチとも仲が良くて......もし痩せられたら、コーチに褒めてもらえるかなって思って。それで...。」
「......。」
......私のせいじゃないか。
この子をこんなに悩ませて、周りに心配をかけて。
軽はずみの一言が、入華を追い詰めてしまっていた。
コーチ失格だ。
「颯ちゃんに食事とか、トレーニングのことを聞いて。紫苑ちゃんにもダイエット特集の雑誌を教えてもらったりしたんです。でも、やっぱり辛くて。お店を見たら余計にお腹が空いてきちゃって...。あはは。子どもみたいですよね。」
「......ごめんなさい、入華。」
「な、なんでコーチが謝るんですか?私が勝手にやっただけですから!でも、せっかく我慢したんだから、このまま本当にスレンダーになって、アスリートらしいスタイルになってみせます!だから、もし上手くいったらその...褒めてもらえると...。」
「入華。」
入華の手を握り、真っ直ぐに見つめる。
「ふぇ!?こ、コーチ...?」
「無理なんてしなくていい。そのままの入華でいいんだよ。ごめんね、入華がそんなに私の言葉を気にしてくれてるなんて、分かってなかった。だからこそ聞いて欲しい。入華はちゃんと綺麗で可愛い。だから、無理はしないで?そんな辛そうな顔してたら、せっかくの美人さんが台無しじゃない。」
「か、かわ...。」
「いっぱい食べる、笑顔の入華が私は好きだよ。」
「す...!?」
私の素直な気持ちは伝えられたはずだ。
これでもまだ無理なダイエットを続けるのなら、強行手段であのラーメン屋まで引き摺っていくしかない。
......気付けば更に顔が真っ赤になっている。
まさか熱中症!?
栄養失調で弱った体にこの気温は厳しかったか!
額に手を付けて熱を測る。
「大丈夫!?やっぱり体調悪いの!?待ってて今救急車を!」
「べ、ます...。」
「え?」
「食べます、私!たくさん食べていつも笑顔の私でいます!コーチのす、好きな私でいますから...。」
「そ、そっか。良かった!」
最後の方は小声で聞き取れなかったが、ダイエットは止めてくれるようだ。
胸を撫で下ろし、そうと決まればと入華の手を引く。
「それじゃあ、何か食べに行こうよ。何でも好きなものをご馳走しちゃうから。」
「本当ですか!?ありがとうございます、コーチ!」
いつも見る入華の笑顔だ、と安心しつつ、自分の行動を反省する。
思った以上に自分が彼女たちに与える影響は大きいらしい。
何か忘れている気がするが、すぐに自分の至らなさをどう改善するかに意識が向く。
まだまだ半人前だな、と実感する休日となったのであった。
――――――――――――――――――――――――――――
「そんで、結局置いていかれたとよ?」
「コーチ酷いです!はぐれるばかりか私を忘れて入華とランチしてそのまま帰るなんて!」
「すぐ着いてきてると思ってたの。はぐれても連絡があると思ってたし。」
「ぎくっ...!?それは、その...。スマホを前のお店に落としちゃってて...。」
「おいおい。尾行してる奴が痕跡残してどうする。」
「うぐっ...!?」
次の日の日曜日。
報告と復調祝いも兼ねて、KIRISHIMAのみんなでカナロアを訪れていた。
尾行をしていたはずが最終的に置いてきぼりにされたみちるはまだ怒っている様子。
そんなみちるを杏里が面白がってからかい、それを詩絵が嗜める。
そして。
「相変わらずすげー食いっぷりだなぁ。」
「今日が最高記録かもしれませんよ?」
「ふふっ、元気になって良かったね、コーチ。」
「ん~!おいひ~!」
積み上がるパフェグラスの山。
その山脈の隙間からは、太陽のように輝く笑顔が咲き誇っていた。
「そういえば、大人っぽい服を見ていたのはなんだったの?単純に似合う服を探してたのかな?」
私のふとした疑問に急いで答えようと、水をゴクリと飲んでパフェをまた一つ平らげる入華。
「んぐ...。あれはコーチにお返ししようと思ってたんです。」
「お返し?」
「はい!ファッションをもっと勉強して、いつかコーチに似合うお洋服をプレゼントしてみせます!」
「......そうだったんだ。ありがとう、楽しみにしてるね。」
「はい!」
少し距離が縮まったように見える輪と入華を柔らかく見守る詩絵に、杏里がそろりと耳打ちをする。
「......なぁ、トシエ。」
「杏ちゃん?どしたね?」
「褒めて欲しくてダイエット、似合う服を選ぶ為にファッションの勉強。まさかとは思うが...。」
「ふふっ、あらあら。ある意味、これも立派な『恋煩い』やね。」
解釈違い?許せサスケ←
コーチに何でそんなに懐いてるの?
入華ってもっと前向きじゃない?
って思ったそこのあなた。ありがとうございます。
この作品における咲宮入華の解釈は、この後の展開で描ければと思います。
原作はストーリー第二部突入ということで、こちらもいよいよ次回から新人戦を開始したいと思います。
新人戦編は次回含め5話(6話)を想定しております。
お付き合い頂ければ幸いです!
このキャラがメインの話を見たいって子は誰ですか?
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入華
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みちる
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杏里
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詩絵
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颯
-
エレン
-
氷織
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シュネー
-
桐利
-
見波
-
乙姫
-
夕離
-
紫苑
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ヘリー
-
セレナ
-
ヴィーナ
-
かな
-
由芽