自己満足の様相を呈してきた本小説ではございますが、楽しみに見てくれている人がいると嬉しいなと思い投稿しております。
さて、いよいよ新人戦開幕となりますが、現在の構想では新人戦、更にもう1つの章までは続く予定となります。
稚拙なものですが、お付き合い頂ければ幸いです。
ついにこの日が来た。
夢を失っていた私に、新しい夢をくれた霧島。
あれから三ヶ月。
入華もみちるも、本当に成長した。
私も、少しは前に進めた気がする。
そんな私たちが試される、運命の日がやってきたのだ。
空は快晴。晴れ渡る景色とは反対に、私の心は彼女たちを信じる気持ちと、また夢を失うかもしれない恐れがせめぎあっている。
きっと入華たちも不安に違いない。
撤退の話は知らないとはいえ、彼女たちも公式デビュー戦は今日。
自分の不安を圧し殺し、選手を励まそうと視線を上げる私。
そこには予想通り不安でいっぱいの二人が。
「コーチコーチ!たこ焼きに焼きそばにチキン南蛮までありますよ!試合前に食べてきてもいいですか?!」
「あの風船の形...。クールだと思いませんか?」
......いなかった。
というか平常運転である。
逆に困る程に。
『新人戦』、またの名を『ワダツミニューウェーブカップ』。
デビューしたて、もしくは今大会デビューの新人のみの大会とはいえ、かなり規模の大きい試合だと聞いている。
ジェットバトルの為の島であるワダツミにおいて、大規模大会、それは島を挙げてのお祭りを意味する。
今年の三連休を丸々使って行われるこの大会では、スタジアムを中心に多種多様な屋台が立ち並び、ドルフィンたちのグッズ販売まで行われている。
ワダツミ外からも多くの観光客が訪れているのもあり、周囲は人で溢れ、どのお店も繁盛しているようだ。
ジェットバトルって本当に人気なんだな、と改めて実感する。
バイクは日本ではそこまで人が集まらないので、少し羨ましい気がする。
これからその多くの人たちに見られるというのに、入華もみちるもお祭りの方に気を取られているらしい。
いつもであれば好きに食べ歩き、見て回って欲しいのだが。
「今からそんなもん食ったら腹が膨れるだろ。太ましい腹でうちのユニフォーム着るつもりか?」
「うぐっ...。それは~...。」
「みちるちゃん?入華ちゃんの前やっちゃが。」
「でもクール」
「み ち る ちゃ ん?」
「ひゃい...。」
入華を杏里、みちるを詩絵がそれぞれ嗜める。
新人コンビは普段通りの私服だが、ベテランコンビはそうはいかない。
帽子にサングラス、服装も杏里はガーリッシュ、詩絵はボーイッシュと、二人らしからぬ服装となっている。
何せ、今まさに売られているグッズには二人の写真付きのものが沢山あるのだ。
そのまま素顔を晒していては、途端にサインやら握手やらで大混乱になってしまうらしい。
「落ち目なのに...。」
「おい!失礼だな輪。」
「杏ちゃんは試合に出んくても、女の子たちに大人気やし。」
「トシエも人気だろうが。ま、試合結果じゃなく顔でファンになるような、ライトな層がそれだけ多いってことだろ。」
「なるほど。」
当人としては複雑だろうが、確かに二人のグッズは幾分か捌けているように見える。
「ふむ。『素顔のエース~陽南杏里写真集~』」
「や め ろ っ!!///」
赤面する杏里。
入華が同じ本を持ってレジに向かった気がするが、気づかないフリをしておこう。
それから少し近場だけを見て回ったが、すぐに出発の時間となった。
「そろそろ控え室に行かないと。出店見学は試合が終わってから。今日の勝利の打ち上げの時にしよう。」
「はい!勝ってみんなで沢山食べましょう!」
入華らしい勝利宣言に全員が笑みを溢しつつ、件のスタジアムへ向かう。
さっきまであった胸の不安は、これから始まる勝利への期待に変わっていた。
――――――――――――――――――――――――――――
控え室に着いた。
このスタジアムはワダツミの企業が協同出資して運営を行っており、該当企業には個別の専用室が割り当てられている。
KIRISHIMAも『今は』そのうちの一つの為、個別控え室を利用できることになった。
早速ユニフォームに着替え始める入華、みちる。
その傍らで、杏里と詩絵はやっと外せた変装を気だるげに机に放り出し、一息吐くのだった。
「楽でいいよなここ。試合もモニターで見られるし。」
「いかんよ杏ちゃん。ちゃんとベンチから二人を応援せんと。」
「へいへい。分かってるけどさ、試合中は結局アドバイスも指示も禁止なんだろ?」
「選手たちの素の実力を見たいから、だそうだけど。」
「素の実力ねぇ。新人戦は今年が初めてなんだろ?シングル戦を3日かけてやるなんざ、一体何チーム出るんだ?それ。」
「えーと。何チームだったかな?」
思い出そうとしていると、部屋にノック音が響いた。
『地咲。私だ。少し話せるか?』
声の主は扉越しでも分かる、陽南監督だった。
「監督?お疲れ様です。どうぞ中へ。」
扉を開け中へ入るように促すが、監督は中を一瞬見て首を振った。
「出来れば二人だけで話したい。大した話ではないが、その方が都合が良くてな。」
「あ...。分かりました。」
「すまないな。...都条、咲宮。期待しているぞ。」
「は、はい!」
「はい!頑張ります!」
入華たちに激励を済ました監督に付いていき、控え室から離れた場所に移動する。
「まずは今日まで、彼女たちの指導ご苦労だった。杏里のことも、ありがとう。新人戦の結果がどうなろうと、君には感謝しかない。」
「私は何も。彼女たち自身の力です。」
「謙虚だな、君は。」
監督は少し微笑んだ後、一転して表情を厳しくする。
「私から再度掛け合ったが、やはり練習風景だけでは撤退は揺らがないそうだ。結果を残さなくては、彼女たちの夢は終わる。すまない...。」
「......そうですか。」
監督は監督で戦ってくれていたらしい。
新人戦で優勝しなければ、KIRISHIMAはジェットバトルから撤退する。
それは以前から分かっていたことだ。
「大丈夫ですよ監督。」
入華とみちるは負けない。
今の実力が負けていたとしても、試合の中であの子たちは成長する。
誰よりもジェットバトルに夢を見て、真っ直ぐに進んでいるのは彼女たちなのだから。
「ここで終わりになんてなりません。入華とみちる、それに杏里と詩絵。あの四人の夢が今日から始まるんです。私たちのKIRISHIMAですよ。」
「私たちの、KIRISHIMA...。」
「信じてください、あの子たちの力を。私と一緒に、これからも支えていく夢です。」
「......分かった。弱気になるのは止めよう。試合、楽しみにしている。」
監督はそう言って微笑むと、観客席の方へ歩いて行くのだった。
時計を確認すると、そろそろ開会式の時間となっていた。
選手以外は会場に出る必要はないが、観客席から見ることになるかもしれない。
まずは杏里と詩絵に合流しようと控え室に急いだ。
――――――――――――――――――――――――――――
◼️□side.みちる◼️□
「すごい人...。」
今までは観客席から見ていただけの景色。
それがまるっきり反対になっている。
足元を見れば円形の眩しい白いステージ。
その先には輝く水のフィールド。
更に視線を上げると四方八方に人、人、人。
電光掲示板には
『Wadatsumi New Wave Cup』
と英字の大会名と、マスコットのフェニ夫が映し出されている。
いよいよ始まるんだ。
大丈夫、今日の為に必死で練習したんだから。
KIRISHIMAに所属したばかりの頃は、もしかしたら試合には一度も出ずにチームがなくなってしまうかもしれないと思っていた。
それが今、私は入華と一緒にこのスタジアムに立っている。
緊張はしてる。だけど、ジェットバトルの時は不思議とドジをしない私だ。
クールに、クールに。
入華に憧れられる先輩として、私がしっかりしなくちゃ。
「みちる先輩!あっちに桐利ちゃんたちがいますよ!」
入華の指差す方向を見ると、私たちと同じようにステージに居並ぶドルフィンたちの中に
見知った顔が見えた。
ユニフォーム姿の二人は初めて見るが、ピンクと黒という二人のイメージ通りのウェットスーツ。
そのユニフォームの胸元を大胆に開けていて、何というか、かなりセクシーな感じだ。
あれが伊澄さんの言う『流行り』というやつなのだろうか。
私たちに気づくと、伊澄さんは手を大きく振ってウィンク。
黒瀬さんは手を左目に当て、ポージングで挨拶してきた。
ぐぬぬ。なかなかクールな感じだ。
負けていられないと、私もすかさずメガネをくいっとする。
お互いにクールな笑みを浮かべにらみ合う。
何か通じ合った気がする。
「あっちには紫苑ちゃ...SHIONさんとヘリーさんが!」
一際視線を集めているNereIdesの二人。
SHIONさんは周りを気にせず、ただ空を見上げている。
クールだ。やっぱりカッコいい。
ヘリーさんは既にファンサービスなのか、観客席に手を振っていた。
試合前にも関わらず、黄色い声援が響いている。
「あそこにいるのは...KAZAMIの二人ね。」
「あ、本当だ!おーい!颯ちゃーん!エレンちゃーん!」
入華の呼び掛けに気づいた相馬さんが小さく手を振り返す。
反対にエレンさんは私たちから不機嫌そうに顔を背ける。
相変わらずの態度に逆に安心してしまう。
「みちる先輩!あれ見てください、誰か出てきましたよ!」
開会式の時刻になった瞬間、
ちょうど電光掲示板の下辺りの壁面が開き、中から座席付きのゴンドラのようなものが出てきた。
流石中央スタジアム。設備がハイテクでとてもクールだ。
座席には二人の女性が座っていて
よく見ると、ゴンドラには『FMワダツミ』というロゴが付いている。
......どこかで見覚えがあるような気がする。
何だっただろうか。
『会場のみんな!こーんにーちわー!』
『ワダツミニューウェーブカップ!開会式の幕開けだー!!』
マイクから声が響いた直後、盛大なファンファーレと共に用意されたクラッカーが爆ぜ、煌びやかなテープが宙を待った。
観客の人たちから拍手と観戦が巻き起こる。
入華は子どものように目をキラキラさせて、その様子を嬉しそうに見ている。
ファンファーレが止み、観客も落ち着いて来た所で、司会らしき褐色金髪の女性が進行を始めた。
『今回初開催となる、このワダツミニューウェーブカップ。司会進行を務めさせて頂くのは、ワダツミで大人気のラジオDolphin Waveでお馴染み、パーソナリティーの村早麻汐!と』
『実況解説もこなせちゃう!パーフェクトラブリーナンバーワンアイドルのトモちん!』
『以上の二人でお送りさせてもらうぞー!』
お馴染みの人なのだろうか、二人の自己紹介に観客もドルフィンも大きな歓声を上げている。
パーフェクト、ラブリー...?
『パーフェクトでラブリーでナンバーワンって。相変わらず自己評価過剰じゃないか?』
『ええ~そうかな~?トモちんは~、みんなの大人気アイドルだぞ~?』
『場末の底辺アイドルの間違いだろ。』
『場末とはなんだ!トモちんはぴちぴちの17歳だって言ってんだろ!』
『反論するのそっちかよ...。』
二人のやり取りに会場が笑いで包まれる。
あの可愛いくてパステルカラーな服を着た、トモちんさん?の方。
雰囲気が急に変わったような...。
『とにかく進めていくぞ。いつものラジオと違って、ウチらにとって初の大仕事なんだ。』
『せっかくのありがたーいお仕事!気合い入れないとね!ところで、トモちんのライブはいつ?やっぱり最終日のフィナーレ飾る感じかな?』
『いや、あるわけないだろ。』
『なんでだよっ!!』
軽快なやり取りで会場の緊張感が薄れるのが分かる。
ドルフィンたちも例外じゃない。
まさか、そこまで計算しているのだろうか?
だとしたらとてもクールだわ。
『馬鹿言ってないで進めるぞ。ワダツミニューウェーブカップ。通称『新人戦』は、各チームの新人、つまりデビューしてまもないドルフィンたちの実力向上、人気獲得を目的として企画されたみたいだ。』
『地道なレッスン、小さな握手会に売れないCD。トモちんにもそんな時代があったなぁ。うんうん。』
『トモ、現実逃避するな。それは昔じゃなくて今のお前の姿だから。』
『来週土曜日!握手会、やります!詳細はトモちん.comにて!』
『番宣するな!?』
そこそこ話が逸れている気がするが、聞いていたくなる声とやり取りだ。
ラジオ、か。今度聴いてみようかな。
『フレッシュな新人ちゃんたちの、若さ溢れる試合に期待だね!』
『そうだな!前評判ばっちりの強豪チームは勿論、無名のまだ見ぬダークホースにも期待だ!そんなドルフィンたちは総勢32チームが参加!三日間の連休を丸々使った、熾烈な戦いが幕を開けるぞ!』
『え!?32チームが優勝するまでトーナメントって...。全部麻汐ちゃんとトモちんが実況するの?』
『ウチらにとってもハードな大会になりそうだな!』
『ええー...。トモちんのエンジェルボイスがガラガラになっちゃうよ~...。』
『その分給料は高い。』
『トモちん打ち上げは焼き肉がいいな!』
32チーム。
優勝までの道のりは遠いわね...。
『初日は一回戦すべて、2日目は二回戦とブロック決勝。そして最終日となる海の日では、エキシビションマッチと準決勝、決勝を実施予定だ!』
『初日は推しチームを決める日だと思うと、どの試合も見逃せないね!エキシビション?って誰が出るの?』
『それはルール説明後のお楽しみだ!』
麻汐さんから観客に向けて分かりやすいルール説明がされていく。
シングル戦はジェットバトルとしては簡易的で、大会もあまり多くない。
ルールを知らない人も多そうだ。
1.スタートの合図と共にフィールドを一周。先に一周した方が先行。
2.先行が決まったと同時に逆方向にターン。
攻守が決まる。
3.そこからはターン制。2分の制限時間内にエネルギー150を上限として銃で攻撃。
4.試合開始前に使用する銃の種類を4種類決めておき、それだけを使用する。
5.制限時間が過ぎるか、エネルギーを使い果たすと攻守が交代。ターンして前後を入れ換える。
6.これを繰り返し、シールドエネルギー900を先に削り切った方が勝ち。
7.振り落とされたり、クラッシュすればそれも負け。
8.周回遅れも敗北扱い(スキルによる阻害は対象外)
9.SPスキルは自ターン、相手ターン問わず1回のみ使用可能
10.連盟から認可を受けていないスキルの使用は失格
一通りルール説明が終わると、ゴンドラが更に下がり、こちらのステージの真正面に来る。
何か始まるのかな?
『では最後に!最終日にエキシビションマッチを行ってもらう、スペシャルゲストの登場だ!』
『みんな拍手でお迎えしよう!現ワダツミ最強チームKAZAMI!氷の絶対女王!永雪氷織選手!』
『女王を支える白き智将!シュネー・ヴァイスベルグ選手だー!』
――――――――――――――――――――――――――――
◼️□控え室 side.輪◼️□
「シュネー先生!?」
実況の二人がゲストを紹介すると、フィールドに一台のUMIマシンが猛スピードで現れた。
KAZAMIのマシン、『氷牙』。
一般モデルをカスタムした機体らしいが、それもKAZAMIクオリティ。
KIRISHIMAのマシンを上回る性能。
それをかの女王に合わせてカスタマイズした絶対的エースマシンだ。
圧倒的スピードをものともせず、ただ氷のように冷静に操る女王。永雪氷織。
走っているだけで分かる実力。
ついこの間パンやガチャポンに躍起になっていた人とは思えない。
それ以上に驚いたのは、そのパートナー。
あの小さな可愛らしいフォルムに、真っ白な髪。シュネー先生だった。
確かに、知り合ってしばらく経つが、先生がどこの企業関連の人なのかは聞いたことがなかった。
それがまさかKAZAMIの、しかも永雪さんのパートナーとは。
世間は本当に狭い。
「氷織...。」
杏里はかつてのライバルの登場に、目付きが鋭くなり、拳を握り締めている。
詩絵にしても、いつもの笑顔はなく、真剣にモニターを注視していた。
永雪さんたちは、フィールドを一周するとゴンドラ近くに停車し、実況コンビに合流した。
女王の登場に会場は熱狂し、試合に出るドルフィンたちでさえも、尊敬と畏敬の眼差しを向けているのが分かった。
『永雪選手、ヴァイスベルグ選手!素晴らしい走りをありがとうな!』
『いえ。』
『悪いね。ヒオはそこまで愛想がいいタイプじゃないのさ。』
『あはは。流石氷の絶対女王!って感じだね。』
軽く会話を交わしつつ、トモちんがマイクを永雪さんに向ける。
『それではそんな永雪選手!今から熱い戦いを繰り広げるルーキーたちに、何か一言!』
『一言、ですか...。』
沈黙。
少し思案する素振りをした後、真っ直ぐに選手たちを見つめる永雪さん。
『皆、今日の為厳しい練習を積み、確かな覚悟を以てこの場に来たのでしょう。そんな貴女方を、私はリスペクトします。しかし、優勝するのはKAZAMIです。KAZAMIの絶対的勝利は、揺らぎません。』
『おぉ...。』
王者らしい立派な前半部分とは裏腹に、後半は本人たちそっちのけの、まさかの勝利宣言である。
会場全体が呆気に取られる中、いち早く気を取り直したのは麻汐さん。
件の当人である颯、エレンちゃんペアのところに直ぐ様移動する。
『永雪選手からの優勝宣言が飛び出したぞ!これに対しKAZAMIのルーキーコンビはどう答える!?』
『へ?私!?......こほん。当然よ!KAZAMIが一番だってこと、世界に思い知らせてやるんだから!』
急なフリに一瞬困惑したエレンちゃんだったが、いつものお嬢様ポーズに構え直すと同時に重ねての勝利宣言をするのだった。
これには会場も熱狂。
KAZAMIの人気を裏付ける光景が広がった。
声援に満足気になるエレンちゃんだったが。
『優勝するのは私たちです!』
圧倒されるドルフィンの中から響く声。
「入華!?」
聞き間違いようがない、声の主は入華だった。
またしても静まり返る会場。
『えぇと。あの子はどこの選手だ?』
『KIRISHIMAの咲宮入華です!優勝するのは、KIRISHIMAです!』
畳み掛けるようにまたしても優勝宣言。
案の定みちるはあたふたしている。
ワダツミ中に映像が流れているのではないだろうか?
「ぷっ...。あはは!やっぱり大物だな、アイツ!」
「ふふっ、入華ちゃんらしいとね。」
「杏里、詩絵...。」
思わず吹き出した杏里に詩絵が同意する。
......確かに入華らしい。
どこまでも真っ直ぐで、不思議とその気にさせてくれる。
「...大丈夫。入華とみちるなら、できるよ。」
会場が何とも言えない空気の中、エレンちゃんがさっきまでの余裕態度を崩して反論する。
『優勝するのはKAZAMIに決まってるでしょ!?』
『KIRISHIMAです!』
『KAZAMIよ!』
『きりしま!』
『かざみ!』
『いや子どもか!』
埒の開かない言い合いに、麻汐さんが思わず突っ込みを入れる。
『さきみやいるかさん、と言いましたね。』
『はい、入華です!』
ただ二人の様子を眺めていた永雪さんが入華に話し掛ける。
冷たい射抜くような視線と、熱く輝く瞳が交差する。
またしても静寂。
さっきまで高飛車に吠えていたエレンちゃんすら押し黙ってしまう緊張感。
しばらくすると永雪さんは口元を少し緩めたかと思えば、入華に背を向けマシンの方へ歩いて行ってしまう。
『......氷織さん、あの!』
『ならば、ここまで上がって来なさい。貴女たちの力で。』
『っ!...はい!』
ただ一言そう告げると、シュネー先生を乗せ走り去ってしまった。
『な、永雪氷織選手とシュネー・ヴァイスベルグ選手でしたー!!』
『はい拍手ー!!』
無理矢理場を盛り上げようと必死な司会のお二人。
観客もドルフィンも、とりあえずは選手への激励と受け取り、意識的にテンションを上げている。
無理もない。あれはこの場のドルフィン全員ではなく、『私たち』への挑発だった。
「KIRISHIMAへの宣戦布告だね。」
「ちっ...。何が貴女たちだ...。」
「杏ちゃん...。」
氷の絶対女王。彼女にKIRISHIMAが挑む瞬間は来るのだろうか。
それもこれから始まる新人戦にすべて懸かっている。
「頼んだよ、入華、みちる。」
――――――――――――――――――――――――――――
◼️□side.みちる◼️□
「とてつもなくクールだわ...。」
去り際に一言、背中で魅せる迫力。
どれをとってもクールだった。
何も言わずニヤリとしていたシュネー先生もクールだ。
KAZAMI。あれがワダツミ最強のペアなんだ...!
『気を取り直して、いよいよトーナメントの発表だ!』
『ブロックごとに戦って、準決勝の組み合わせはまた抽選になるよ!』
スタジアムの設備から光が放たれ、巨大なトーナメント表が映し出される。
KIRISHIMAはどこに...?
『じゃあ、この後すぐの対戦カードを紹介するぞ!』
『新人戦、一回戦Aブロック第一試合は!?』
トーナメント表が消え、電光掲示板に対戦カードが表示される。
『KIRISHIMA VS 日向重工』
「いきなり日向...!?」
初戦から強敵。思わず日向コンビの方を見てしまう私。
そこには少しも動揺せず、自信満々に胸を張る伊澄さんと黒瀬さんがいた。
「トップバッターなんて嫌でも目立つし、これ一番人気は日向で決まりっしょ!」
「クックックッ。我等の力を示す時が来たか。」
それに対し、入華も拳を握り締め気合いの籠った瞳を私に向ける。
「みちる先輩!」
「...ええ!行くわよ入華!」
「はい!絶対負けませんっ!」
『麻汐とトモちんの出張!ラジオDolphinWave』
「ついに始まったワダツミニューウェーブカップ!」
「最初の対戦カードは老舗対決!初戦にふさわしい熱い展開だな!」
「でもKIRISHIMAって最近試合も出てないし、日向は何か地味っていうか。」
「怒られるぞトモ。それにKIRISHIMAは優勝宣言をするくらい元気だし、日向も堅実な実力で人気のチームだ!」
「堅実には程遠い炎上率みたいだけど...」
「ま、まあSNSと試合は関係ないぞ!きっといい試合を見せてくれるに違いない!たぶん。」
「麻汐ちゃんまで不安になってるし。さっさと次回予告行っちゃおう!」
『優勝を目指す入華たちに最初に立ち塞がったのは、友人でもある強敵、日向重工だった。一度は破れた日向の技術と強力なSPスキルに追い詰められるKIRISHIMA。狙い撃て!みちる!システムを超えた一撃で、勝機を掴み取れ!』
『次回!ドルフィンウェーブTB第14話!一回戦VS日向重工~日差し照り立つ鋼の輝き~』
「来週も要チェックだ!」
このキャラがメインの話を見たいって子は誰ですか?
-
入華
-
みちる
-
杏里
-
詩絵
-
颯
-
エレン
-
氷織
-
シュネー
-
桐利
-
見波
-
乙姫
-
夕離
-
紫苑
-
ヘリー
-
セレナ
-
ヴィーナ
-
かな
-
由芽