「ん...?」
射し込む光が眩しくて、手で遮りながら目を開く。
よくは知らないけど、私の部屋。
そんな部屋の隅で横になっていたようだ。
クッションなんかで簡易的な布団を作ったらしい。
少し体が痛い気がする。
さっきから他人事なのは、昨晩は酔っていて正確に記憶が出来ていない為だ。
ちなみに、引っ越したばかりで段ボールが積まれていたりするが、ベッドは既に設置済みだ。
なら何故ベッドで寝ないのか。
「おじょ~...おにあいれすよ~...Zz」
どうやらお客さんに譲ったらしい。
私服のまま寝転んでいる山葉さん。
寝辛かったのか、結っていた髪は解かれ、体の下敷きになっている。
気持ち良さそうに眠っているが、胸元がはだけたり色々大変な見た目だ。
確か山葉さんが酔い潰れてしまい、そもそも会ったばかりで住所も分からないこともあり仕方なく自宅まで運んだのだったか。
記憶が段々鮮明になっていく。
仕事で色々あるらしく、お酒の進みがすごかった。
気を許してくれるのは嬉しいが、私が男性だったら大問題だ。
起きたらその辺も注意しなくては。
ずり落ちていた布団を掛け直して、洗面所に向かう。
顔を洗い、歯を磨く。
幸い昨晩シャワーは浴びて寝たらしい。
化粧もしっかり落ちていた。
お酒自体がそこまで好きでなくて助かった。
もう若者ではなくなる歳だ。
女として肌ケアは大事。
...見せる相手はいないが。
「さて...。」
どうしたものか。
時間は朝6時過ぎ。このまま部屋で過ごそうにも、段ボールが積み上がっていたりあまり快適とは言えない。
荷解きをしたい所だが、山葉さんを無理に起こしたくはない。
「...走ろうかな。」
少し考えて、外に出ることにした。
散歩がてら、ランニングでもしてみよう。
寝間着からジャージに着替え、段ボールからランニングシューズを取り出す。
念の為山葉さんが起きた時に混乱しないよう、メモを残しておく。
うるさくならないよう気をつけながら扉を開く。
朝日と潮の香りが、否応なしに頭を覚醒させる。
「気持ちいい朝だ。」
少し笑顔になりながら、階段を下りる。
とりあえず、気の向くままに走ってみよう。
簡単な準備体操を終え、私は走り出した。
―――――――――――――――――――――――――――――
坂を下り、海岸線沿いを走っていく。
都会に比べると、明らかに空気がキレイだ。
吹き抜ける風も心地よく、自然とスピードも上がる。
だが全力は出せない。
あまりに激しい運動になると、もしかしたら古傷が悪化するかもしれないのだ。
嫌なことを思い出したなと考えていると、後ろの方から誰かが走って来るのが分かった。
少し振り向いて見てみると、スラッとした人影が見える。
段々影が鮮明になり、それが女の子であることが分かった。
女性としては高い身長に健康的な褐色の肌。短めのポニーテールが揺れているのが前からでも分かる。
地元の部活動少女かな?と思う合間に、女の子は私を追い越して、どんどん先へ行ってしまった。
「楽しそうだったな...。」
すれ違い様に見えた女の子の表情が、とても幸せそうだった。
いつも走っているんだろうな。
私もこんなに気持ちよく走るのは久しぶりだ。
ランニングの習慣は元からあったが、ワダツミでは更に好きになれそうだ。
次第に明るくなる街並みを眺めつつ、朝のランニングを続けた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「本っっっ当にごめんなさーーいっ!!!」
ランニングを終え、玄関に入った途端、まるでスライディングするように山葉さんから土下座をされた。
「私ってば会ったばかりの方にとんだご迷惑を...!恥ずかしい...もうお嫁に行けないかも...!」
「い、いえ。女同士ですし、お構いなく...。」
「......怒って、ませんか...?」
まるで親に叱られそうな子どものようだ。
相当気にしているらしい。
そう自分で思ってくれるだけで山葉さんがいい人なのがよく分かる。
「怒りませんよ。昨日は一緒に過ごせてとても楽しかったです。せっかく同い年ですし、これからも仲良くして欲しいです。」
「ほ、本当ですか...?」
「はい、本当です。」
私の返答に不安が消えたのか、表情がみるみる明るくなる。
「私も、地咲さんとはお友達になれたらって思ってて...。この業界で同い年の女の子なんて珍しいし。...じゃあ、また誘ったりしても、いいですか...?」
「はい。是非お願いします。」
言葉だけだと固いので、精一杯笑顔で答えてみた。
すると山葉さんも少し頬を染めながら、笑顔になってくれた。
「禁断の道が開きかけてしまいました...。」
「え?」
「何でもないです何でも!改めまして、これから宜しくお願い致しますっ!」
「よろしくお願いします。」
友達と言うにはまだまだ固い挨拶を交わし、山葉さんは何やら上機嫌で帰宅していった。
―――――――――――――――――――――――――――――
シャワーを浴びた後、昨日買った惣菜パンを朝食として食べつつ、改めて荷解きの予定を立てる。
そこまでの量じゃないし、1、2時間もあれば終わるだろう。
朝はこのまま部屋の整理をして、昼から少し外出してみるか。
コーヒーを飲み終え、さあやるぞと立ち上がったタイミングで。
ピンポーン
部屋のインターホンが鳴った。
荷物を頼んだ覚えはない。
恐らく、二人のうちどちらかだろう。
「あ、おはようございます!コーチ!」
玄関を開くと、そこには予想通り。
私服姿の入華が立っていた。
「やっぱり入華だった。おはよう。」
「え、何で分かるんですか!?まさか超能力...!」
「だって私の家、君とみちるしかまだ知らないし。」
驚く入華が面白かったが、よく考えれば山葉さんも知っていることになるのか。
まだ少し寝惚けているらしい。
「そう言えばそうでした、えへへ。」
「それで、土曜日の朝からどうしたの?まだ寝ていたい時間だったんじゃない?」
「朝日が気持ち良くてすっきり起きちゃいました!ワダツミに来たのがまだ夢みたいで、ワクワクが止められないんです!」
私の問い掛けに元気一杯に答える入華。
相変わらずキラキラした瞳をしている。
若さだなぁと、年寄りくさい感想になってしまう。
「それでですね、コーチ。今日は、何かご予定ありますか?」
「予定か...決まっているのは荷解きくらいかな。」
「あ、それ私もです。やらないといけないと思いつつ、昨日はお布団が気持ち良くて...。」
やらないといけないことがある時ほど起きられなくなる。
これは老若男女問わない、悲しいジレンマなのだ。
「...じゃなくて。荷解きは帰ってから必ずやります!だからその、コーチ。」
「?」
「良かったら、一緒にお出掛けしませんか?」
少しモジモジした様子で、上目遣いでお誘いされた。
「色々と見て回りたいと思いまして...。それなら、誰かと一緒がいいじゃないですか?最初はみちるセンパイをお誘いしようと思ったんですけど、もしかしたらコーチも、同じ考えだったりしないかな~と思ったんです。」
「なるほど。」
出掛けようとしていたのは確かだ。
入華と一緒に回るなら一人より楽しいだろうし、昨日のナンパの件もある。
土地勘のない未成年を一人には出来ない。
「うん、お誘いありがとう。準備するから、中で待っていてくれる?」
「やった!ありがとうございます!」
パッと明るくなる表情にこっちまで嬉しくなる。
入華を部屋に招き、着替え等を済ませる。
まだ整理されてない部屋なのに、それでも楽しそうに入華はキョロキョロと部屋を見回していた。
予定変更だ。
午前中からワダツミ観光と洒落込もう。
―――――――――――――――――――――――――――――
「何から見に行こうか?」
「...。」
「入華?」
歩きながらとりあえずの目的地を聞いてみたが、返答がない。
じっと私を見たまま固まっている。
足は器用に歩いたままだが。
「......あ!ごめんなさいコーチ。えーと...何でしたっけ...?」
「何から見に行くか決めてるの?」
「はい!とりあえずマシンのパーツショップを見ようと思ってました。ジェットバトルの選手として、これからお世話になる場所ですし。」
パーツショップか。
ショッピング街に乗り物のパーツ専門店があるなんて珍しい。
まあ、ワダツミという場所を考えれば当然なのかもしれないが。
「いいね。色々勉強出来そうだし、まずはそこから行ってみようか。」
「はい!楽しみですね~。」
さっきは何か考え事でもしていたのだろう。
すっかりわくわく顔に戻っている。
この後も続くようなら、お悩み相談くらい切り出してみようかな。
「コーチは昨日夜ご飯は何を食べたんですか?」
「昨日は確か...海鮮料理とお酒だったかな。」
「お酒...!大人って感じですね!」
「まあ、好きで飲むというより、付き合いで飲むだけだけどね。」
「誰かとご一緒だったんですか?」
「うん。昨日浦見の人が来たでしょ?山葉さんと偶然会って、そのままちょっとね。」
「由芽さんですか!早速お友達になったんですね。流石です、コーチ!」
「同い年みたいで、結構話が合ったんだよ。」
「なるほど。同い年の大人のお友達ですか...。私も月曜日から新しい学校なんです。友達、出来るといいんですけど。」
「入華なら大丈夫。友達ならすぐできるよ。」
「そうだと嬉しいなぁ。ありがとうございます、コーチ!」
昨日のことから話を広げつつ、入華とコミュニケーションを取っていく。
話しやすくていい子だな、と思う。
そのまま好きな食べ物とか、何でもないことを雑談しているうちに件のパーツショップに到着していた。
―――――――――――――――――――――――――――――
□◼️UMIマシンパーツショップ□◼️
中に入ってみると、想像とは違う光景が広がっていた。
何よりもまず広い。
UMIマシンの展示なんかもされているみたいだ。
壁には競技用銃のサンプルが並べられていたり、有名な企業のユニフォームのレプリカなんかも売っている。
まるでジェットバトルのグッズショップだ。
自動車販売店や、カー、バイク用品店を想像していたが、実際はイベントのグッズ売場に近い雰囲気だ。
「うわぁー!すごいですねコーチ!」
子どものようにはしゃぐ入華。
駆け出して行ったかと思うと、展示されているUMIマシンを近距離からじっくり見て、その次は銃、ユニフォームとすごい勢いで夢中になっている。
「コーチコーチ!見てくださいこれ!KIRISHIMAのユニフォームですよ!いいなー、欲しいなー!」
「いや、本物もう持ってるじゃない...。」
「あ。そうでした...。えへへ。」
ポカンとした後、すぐさまとても嬉しそうな笑顔になっている。
よほどKIRISHIMAの選手になれたのが嬉しいのだろう。
あれは改めて喜びを噛み締めている顔だ。
「これは、どこのユニフォーム?」
「それは確か、日向重工のユニフォームですよ。」
ビキニタイプが多い中、ダイビングのボディスーツのようなユニフォームが目に留まる。
体のラインが出過ぎな気がするが、少しライダースーツを思い出すフォルムだ。
「コーチが着たら似合いますよ!」
「あはは、これを着るのはちょっとハードル高いかな。入華こそ、この色なんてよく似合いそうだよ?」
赤と白のカラーリングが印象的なものを手に取って、入華にあてがってみる。
うん、なかなか良さそう。
これを着せるなら髪を下ろして、大人な感じに仕上げてあげたいところ。
「カッコ良すぎて私なんかが似合うかどうか...。」
「そんなことないと思うけど。」
少し恥ずかしそうにする入華。
自分の見た目に自信がないのだろうか。
贔屓目に見てもかなり可愛いと思うが...。
「それを手に取るなんて、お客さん分かってんね!どーよ日向コス。めちゃ映えっしょ?」
「へ?」
あまり聞き馴染みのない喋り方で話しかけられた。
店員さんかと思い振り返ると、そこには派手な服装に今時なメイク、アップにした金髪が眩しい、所謂『ギャル』がそこには立っていた。
「あの。」
「アタシとしてはもうちょっと盛った方がイメージ良くね?ってカンジなんだけどさ、そこは個性出してく方向でよろ!みたいな。まあその方がアタシのセンス光って余計卍なカンジっしょ?」
「どちら様でしょうか?」
マシンガントークがマジ卍な感じなので語気を若干強めて尋ねてみた。
ちなみに卍の意味は一ミリも理解していない。
前にテレビか何かで説明していた気がする。
ギャルは不思議そうな顔をした後、少し不満そうに眉を吊り上げ答える。
「うっそ。アタシのこと知らないカンジ?...まあ新人だし知名度も人気もこれからのとこあるけどさー。ガン萎えとまでは行かんくてもちょい萎えはするよねー。」
「新人?」
ユニフォーム片手に気になったワードを呟く入華。
ギャルは今度は得意気な顔で語り出す。
「そう。日向の期待の新星。ジェットバトルを盛り上げる為にはるばるやってきた無敵の爆上げギャル。伊澄桐利こと、りーことはアタシのことっしょ!今年から天下は日向が取るんで、よろよろ。」
「日向...重工。」
つまりあれか。
日向重工の新人選手とばったり出くわしてしまったらしい。
りーこ...じゃなくて伊澄さんは自信満々に自己紹介を終えた後、入華の隣に移動し何やら自撮り棒を構えている。
「『KIRISHIMAの新人ちゃんはっけーん!』と。」
「何で私がKIRISHIMAの選手だって知ってるの!?」
「そりゃあワダツミも広くないし。噂やら情報やらは簡単に出回るんだよーっと。」
身を翻し、今度は私にカメラを向ける。
「それでこっちがKIRISHIMAの新人コーチちゃんね。うわ、映える。反則級のイケジョキマシ...。」
「あの、勝手に写真はちょっと...。」
「あ、メンゴメンゴ。ついクセでやっちゃうんだよね。お名前は確か入華っちと輪ちゃん...じゃありんりんって呼ぶね!よろよろ!」
りんりんって。私はパンダか。
シャンシャンにしてやろうか。
「桐利ちゃんも、選手になり立てなの?」
「そだよ?入華っちよりは先輩だけどね。歳も17で同じっしょ?選手同士仲良く出来そうだなって思ってたんだよね。」
「本当に!?選手のお友達が出来るなんて、感激です...!」
「嬉しいこと言ってくれんねー!これはマブダチになれる予感?」
「はぁ...。」
何だかんだ受け入れる方向になっている入華である。
かなちゃんの時もそうだが、適応力がすごい。
「ま、今日は偶々見掛けたから挨拶したかっただけ。これ以上デートの邪魔はしないから安心しなって。」
「で、デート...。」
満足したのか、私たちから離れていく伊澄さん。
「じゃ、また月曜日ね!入華っち、りんりん!」
「行っちゃった...。」
「デート...。」
嵐のようだった。
ギャルタイフーンりーこ。
新しい異名に如何だろうか。
ん?...月曜日って、何でだ?
―――――――――――――――――――――――――――――
ギャルタイフーンが過ぎ去った後、気を取り直してパーツショップを見て回り満足した私たちは、次に近くにあったアパレルブランドショップを訪れていた。
『Galatea』
確か、最近ジェットバトルに参入した
世界的有名企業『NereIdes』
そこにGalateaも含まれていたはずだ。
新進気鋭のデザイナーが新作を出しては話題を呼ぶ、カジュアルが売りのファッションブランドだと記憶している。
奇抜なデザインが若者に人気らしい。
さて、何故このアパレルショップに入店したのかと言えば。
『折り入ってご相談があります、コーチ!』
パーツショップを出た途端、入華が頭を下げながらこう切り出してきた。
要約すると、
『ファッションというものを教えて欲しい』ということらしい。
何でも、昔からジェットバトル一筋の入華は、女の子らしい服や化粧の研究というのをまったくやったことがなかったらしく、
よく妹さんに「お姉ださい。」だの「お姉芋い。」だの言われていた。
中学卒業付近で漸く今の服装、髪型まで何とか辿り着いたそうだ。
今のままで十分いいと思うと伝えてみたが、入華が言うには結局妹の言う通りにしただけで、自分自身がオシャレを理解しないとこの先困ると不安になっているとのこと。
まあ、確かに。
これから選手として有名になれば、雑誌の取材とかそういうメディアの露出は増えていくだろう。
ある程度の知識はあるべきだなと納得したので、手近で入華の年代にも合うこの店に来店したというわけだった。
何故私に頼むのか疑問だったが、一番聞きやすいみちるには『自分で勉強しました!』と見栄を張ってしまったらしい。
なおかつ、今日私の服装や化粧の様子を見て感銘を受けたとのこと。
普通にしてるだけだから、恐縮してしまう...。
様子がおかしかったのも、私を観察したりどのタイミングで切り出すのか思案していたそうだ。
「都会...!おしゃれ...!」
「落ち着いて?大丈夫だから。ね?」
キョロキョロしつつ動揺している入華を宥めつつ、店の雰囲気を確認する。
確かに奇抜な色づかいが多いが、シンプルなのはあるし、組み立てやすいデザインがほとんどのようだ。
斬新の中に何となく実直さが見えるような気がする。
「入華はオシャレってどんなものだと思う?」
「え!?そ、それは...キラキラ!で、ビカビカ!みたいな...?」
「イルミネーションかな...?」
入華の返答に苦笑いしつつ、私の考えを噛み砕いて伝えてみる。
「ファッショナブルじゃなくて、入華がなりたいのは普通の人から見てオシャレな人だよね?」
「は、はい。オシャレじゃないなりに、見られるくらいにはなりたいかなと...。」
「ならオシャレの条件は大きく分けて二つ。場所、季節が合っていることと、その人に似合っていること。」
「な、なるほど!...それって、当たり前と言えば当たり前な気が...。」
「うん、そうだよ。オシャレって言うと難しいけど、別に奇抜なことが全てじゃない。むしろ空気が読めて、自分のことを分かっている人ほどオシャレに見えるんじゃないかな?流行とか定番とか、言葉だけでも聞いたことはある?」
「はい、妹が言っていたと思います。」
「それも結局『今の時期はこういう格好をしている人が多くて、いい感じですよ!』って意味だったりして、今の時期に着ることを推奨される服があるの。その中から自分に合うものを選べる人が、オシャレってことだと私は思うな。」
「な、なるほど。流石ですコーチ!」
コーチとしての初指導がファッションとは。
何だか妙なことになっているな。
「でも何が自分に合っているかどうか、それがそもそも分からないんですけど...。」
「スタイル、髪色、瞳の色とか。条件はあるけど、季節で格好は大体決まってくるよね。冬にスカートは寒いし、夏は上着は着たくない。つまり、後は色の組み合わせ次第って感じかな。」
「色...。」
「入華は身長は高くないけど、体のバランスがいいし、髪も瞳も色がハッキリしてて綺麗。何でも似合うと思う。」
「そ、そんなキレイだなんて...。」
気になった服を手に取って、即席でまとめてみる。
「というわけで、ちょっと試着室に行こうか?」
「は、はい!」
―――――――――――――――――――――――――――――
「ど、どうでしょうか...?」
恥ずかしそうにモジモジしながら、カーテンを開けて入華が出てくる。
Galateaロゴのインナーにオレンジ色が映えるパーカー。
ミニのデニムパンツに眩しい健康的な足を赤の靴下と黒のブーツで締める。
...まあ、我ながらありきたりな気がするが。
「よく似合ってる。可愛いよ。」
「!...う、嬉しいですけど、照れちゃいますよコーチ...。」
入華のポテンシャルに物を言わせた感じだが、私は今満足している。
年下だと私がもう着られないような服を着こなせたりして、他人のコーデを考えるのは結構楽しいかもしれない。
「ふむふむ。それを選ぶなんて、アナタ。いいセンスね!」
またもや後ろから声を掛けられる。
今度は誰だろう。
振り返るまでもなく、正面に回り込んで来た。
鮮やかなピンクと緑二色に分かれた髪。
活発そうな金色の瞳は大きく、日本人にはない魅力を放っている。
奇しくも入華に着せたパーカーと色違いのものを着ている。
「この感じなら髪型もいじりたいわね。でもこの子らしくいくならこのままでも...。」
「あの、店員の方でしょうか?」
女性は私の問い掛けに少し驚いたように目を開いた後、面白そうに口元を緩ませた。
「そんなようなものね。小物があった方がいいわ。後はマニキュアも合わせると更に垢抜けるんじゃないかしら?」
「ふむ。なるほど。」
確かに、マニキュアや化粧も気にすると更に衣装と馴染む気がする。
「ちょっと待ってて?似合いそうな小物を見繕ってくるわ。」
「え、あの。」
「いいからいいから。気に入らなかったら買わなくていいわよ?」
女性は軽くウィンクすると、そそくさと試着室を離れてしまう。
「可愛い店員さんですね!」
「店員さん、なのかな...?」
店員というにはフレンドリー...というより、何か自信というか威厳があるような。
誰なんだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――
その後。謎の店員さんはまさに完璧な小物を持ってきてくれて、せっかくなので試着した物をそのまま購入することになった。
「本当にいいんですか?コーチ...。」
「大丈夫。大人だし、独り身だから若干余裕はあるんだよ?」
「でも...。」
私が選んだ服だし、何より入華はまだKIRISHIMAに所属したばかりで給料が出ていない。
私も新人とは言え、服くらい買ってあげられる余裕はあった。
「よく似合ってるから、買わないと勿体ないでしょ?」
「それは、確かにお財布は心許ないですけど...。」
「大人に遠慮しないの。ね?」
軽く頭をポンポンしてみる。
観念したのか、こくりと頷いてくれた。
「ふーん。なるほどね。」
「?...こんなに素敵なのに、お値段は優しめなんですね。」
「それがうちの売りだもの。高いと試してもらいにくいし、気軽にお店に来てくれないでしょ?私は私の服を、沢山の人に見て触れて欲しいの。」
「私の服...?」
店員さんはくすりと笑って、今度は入華の方を向く。
「ねぇ、アナタ。その服は気に入ってもらえたかしら?」
「はい!とっても可愛いですね、これ。」
「ふふっ、良かったわ。それはね、私の自信作なの。とても素敵な服だと思うわ。それをアナタは着ていて、とてもよく似合ってる。つまり、アナタはとっても素敵ってことなのよ?だから自信を持ちなさい。今のアナタ、とってもオシャレよ!」
「!...はい、ありがとうございます!」
この行き届いた接客にファッションセンス。
本当に店員さんなんだろうか?
店を出る前にはっきりさせたくなり、思わず質問してしまう。
「あの、あなたは一体...?」
女性は少し迷った後、悪戯っぽい表情になる。
「ヘリー・ルイス。Galateaのチーフデザイナー。アナタには、NereIdes所属のガンナーと名乗った方がいいかしら?ね、KIRISHIMAのコーチさん?」
今回は休日(ワダツミ生活2日目)のお話前半です。
次はついにてげてげな人とか前作主人公何かあった世界線な人が登場する!?かも。
このキャラがメインの話を見たいって子は誰ですか?
-
入華
-
みちる
-
杏里
-
詩絵
-
颯
-
エレン
-
氷織
-
シュネー
-
桐利
-
見波
-
乙姫
-
夕離
-
紫苑
-
ヘリー
-
セレナ
-
ヴィーナ
-
かな
-
由芽