こっちまだジェットバトル一回しかしてないんですがそれは...。
まああれだよ。アニメ原作漫画って、アニメ終わってからしばらくして終わるじゃん?それ←
土曜日。
それは社会人にとって、唯一の楽園。
月曜日の影に怯える日曜日と違い、土曜日は24時間が自由。(業種による)
この日ばかりは大人も年甲斐もなくはしゃぎ倒してしまう。(個人差)
そんなパラダイスをこのワダツミで迎えるのは、もう三回目になる。
初日は入華とワダツミ観光、二回目はトレーニングメニューの見直しとジェットバトル研究に費やした。
三回目の今日は、漸く土曜日らしい土曜日、つまり休日として過ごせることになった。
思えば、ワダツミに来てからというもの、
知らないスポーツの勉強に慣れない学校の掃除、ボディーガードやら、多感な時期の年下女子たちとのコミュニケーションなど。
我ながら働き過ぎたと思う。
今日はちゃんと自分を労って、一人でゆっくりしよう。
外に出るとまた誰かと会いそうだし、今日はとことんインドアでいこう。
家の中ならまず、いきなり勝負を挑まれたりはしない。
この日の為にみんなの友達、Amazonessで注文は済ませておいた。
島でさえ、2日かからずにお届けしてくれるこの通販サイトには、本当に頭が下がる。
突然だが、私はゲームが好きだ。
バイクが一番ではあったが、それだけというわけにもいかず
一人で集中して、なおかつスッキリ出来るゲームをいつの間にかよく遊ぶようになっていた。
およそ女子が遊びそうにないジャンルが不思議とハマりやすく、fpsのシューティング、ホラーゲームとかが好きだ。
今回はそんな私にピッタリの、往年の名作をREしたバイオでハザードなゲームを購入した。
fpsではないが、約束された名作というやつである。
集中してやれば今日中にクリア出来るかな、と意気揚々ディスクをゲーム機にセットしたその瞬間。
ピンポーン。
家のチャイムが無情にも鳴り響いた。
一瞬にして思考が巡る。
郵便?→今朝の分はもう届いた
宅配?→ゲームは届いてる
勧誘?→ワダツミはそういうのがない
「......はぁ...。」
土曜日が消え失せる予感を感じつつ、玄関の扉を開ける。
「あ、コーチ。おはようございます。休日に、ごめんなさい。その...。」
「みちる... ?」
訪問者は予想通り(入華の可能性も有)みちるだった。
しかし、どうも様子がおかしい。
不思議に思う私に、みちるが何かを決意したように気合いを入れて、それから言葉を続けた。
「人生相談!が、あります!」
―――――――――――――――――――――――――――――
「わ、私にクールを教えてください!!」
「まずは落ち着いて?」
人生相談があると真剣に言われてしまったので、コーチとして放っておくわけにはいかずとりあえず上がってもらったのだが。
「えーっと...。クーリングオフ?」
「何だかクールですね、その言葉!」
「クーリッシュ?」
「美味しいですよね、名前もクールですし!」
ダメだ、話が噛み合ってない。
というか私もふざけた。反省。
クールを教えてと言われたのか?
クールって、形容詞のクール?
「cool?」
「わぁ...!クールな発音ですね...!」
まずい。ゲシュタルト崩壊してきた。
「クールを教えてって、どういうこと...?」
「私の身近で一番クールなのはコーチなんです!私に、クールを教えてください!!」
私が、クール...。
自分では全然そんな風には思えないんだけど。
それこそ最近は驚きの連続である。
「冷静ってことかな?でも私、そんなに冷静じゃないよ。いっつも驚いてるし...。」
「そんなことありません!コーチは最高にクールですよ!」
何か励まされてる?
それにしてもすごい熱意というか、発言すればする程クールから遠ざかっているように見える。
一体何がみちるをここまで突き動かすのだろうか?
「そもそも、何でみちるはそんなにクールになりたいの?というか、入華と話してる感じは冷静な先輩に見えるけど。」
「っ...。それは...。」
気まずそうに目を伏せるみちる。
それからちょっとして、ぽつぽつと彼女は真実を語り始めた。
「......私、本当はすごくドジなんです。」
「あ、うん。」
「......えぇ!?」
「何となく分かるよ。意識してない時、入華よりぽわっとしてるよね。」
「ぽわっ...!?」
ショックが強かったのか、床に手を付いて項垂れてしまう。
「やっぱり、コーチにはバレバレですよね...。メガネだって、実は伊達なんです。」
「うん。試合の時着けてないし、目擦ってたよね。」
「それもバレてたんですか!?」
どんどん床との設置面積が増えていくみちるを抱き起こし、話の続きを促す。
「......私、見た目的にはクールな子に見られやすいみたいで。よく第一印象と違うねって、友達には言われていたんです。それだけなら良かったんですが...。」
―――――――――――――――――――――――――――――
「と、言うわけなんです。」
「なるほど...。」
昔は友達にいじられる程度だったが、入華という純粋に自分を慕ってくれる後輩が嬉しくて、つい見栄を張ってしまい。
気付けば『大人で頼れるクールな先輩』、というイメージが付いてしまったのだとか。
本当のことを言おうにも入華はまったく気付いておらず、あのキラキラした目で見られる度に気が引けてしまうとのこと。
まあ、気持ちは分かる。
天使に見つめられる罪人の気分なのだろう。
気付かないあの子もあの子だ。
確かにジェットバトルの時は落ち着いてる気がするけど。
「それで、何とか理想の先輩になれるように、クールについて研究を続けていたんですが。」
「研究?」
「はい。スパイ映画を見たり、ハードボイルドな主人公の映画を見たり。」
映画見てるだけじゃないか。
創作物のキャラになりきるなんて、それはクールじゃなくて違う病気だ。
「みちるは映画鑑賞が趣味なんだよね。」
「何でそんな優しい顔をするんですか!?可哀想なんですか、私!?」
いけないいけない。
この子は一応真面目に努力をしたに違いない。
端から見て滑稽でも、憐れんではいけないのだ。
「他にも色々してるんですよ?辞書でクールの意味を調べたり...。」
「うんうん。頑張ったね。みちるは偉いね。」
「赤ちゃんをあやすみたいに撫でないでください!?」
それからもみちるからの研究成果を色々聞いたが、どれも的外れというか、論点がずれている感じがした。
とりあえずブラックコーヒーは関係ないと思う。
「そんなっ。苦くても我慢して飲み切ったのに...!」
「はぁ。...でも、ジェットバトルの時はそんなにドジじゃないというか、むしろ落ち着いてない?」
「集中出来るせいか、そういう時は落ち着けるんです。だから余計に入華にバレないというか...。」
なるほど。
なら別に問題ないのでは?と思ったが、一日中集中しているわけにもいかない。
彼女自身はいつドジを踏みか不安で仕方ないのだろう。
変に悩んで、選手業に支障が出る可能性も十分ある。
メンタルトレーニングもコーチの立派な仕事だ。
「とりあえず、クール=冷静ってことでいいの?」
「は、はい。辞書にも冷静という字は入ってますし。」
「そ、そう。......なら、どんな状況でも動じず、正しく落ち着いた判断が出来ればいいわけだ。」
「それです!出来るようになるでしょうか...?」
横目でチラリと、今日遊ぶ予定であった物品を見る。
ちょうどいい。我ながら名案だ。
―――――――――――――――――――――――――――――
「きゃあぁっ!?な、何でいつも急に出てくるの!?」
「うひぃっ!?近い近い近い!?」
「り、リロード...!出来てない!?やめて!離してっ!?」
「いやぁ!?死にたくないぃ!?」
人生相談を受けて小一時間。
冷静さを身に付ける訓練と称して、
私がみちるに勧めたのは『ホラーゲーム』だった。
実際に命の危険はないが、人を脅かすことを念頭に置いたジャンルの為、嵌まってしまえば恐怖によるパニックを起こすことが出来る。
そんな状況で適切に敵を対処することが出来れば、みちるの言うクール、つまり『冷静さ』を身に付けられると考えたのだが...。
「こ、コーチ...。たす、けて...。」
今にも死にそうな顔で、みちるは私にすがりつく。
『ゲーム?......コーチ、私は子どもじゃないんですよ?作り物で私が怖がるわけないじゃないですか。』
『いえ、やったことはありませんが。映画も、ホラーは見たことありません。』
『任せてください。私はこれでも、KIRISHIMAのガンナーなんですよ?』
清々しい程のフラグだった。
結果はあまりにも残酷。
最初のドッキリでコントローラーを投げ。
弾は明後日の方向に飛び散り。
攻撃を避けるのはキャラではなくみちる。
カラスの鳴き声にビビり散らす。等々。
おお、みちるよ。死んでしまうとは情けない。
「みちるにホラーは少し早かったね...。」
「今年で18、なのに...!?」
震える頭を優しく撫でる。
みちるが冷静さを身に付ける前に、私が母性に目覚めそうだ。
それからまた30分程経過して。
「すみません、コーチ...。その、取り乱しました...。」
「作り物で私が怖がるわけないじゃないですか。」
「やめてくださいっ!?」
ふむ。反応が面白くてつい弄りたくなる。
私にサディスティックな一面があったとは。
「みちるは私の知らない私を教えてくれるね。」
「私の人生相談ですよね!?」
少なくともこの2時間で、彼女のツッコミ力はかなり向上したと思う。
感情がよく乗っている。クールとは程遠いな。
「とにかく、ホラーゲームは刺激が強すぎるかな。もう少し優しいところから始めた方がいいかも。」
「そう、ですね。......とはいえ、何をどうしたらいいんでしょうか...。」
ふむ。
単にクールと言っても、冷静なだけではない。
みちるが四方八方にクールを見出だしていたように、人によって感じるクールには違いがあるだろう。
「違うアプローチを試してみようか。」
「違う...?」
おもむろにスマホを取り出し、画面を操作する。
「ふふふ。このムダに広がった交遊関係を有効活用する時が来た。」
―――――――――――――――――――――――――――――
【ちさきりん】:クールってなにか分かる?
【紫苑】:は?
【紫苑】:何言ってんの?
【紫苑】:忙しいんだからよく分からない連絡しないで
「......めちゃくちゃ怒られたんですけど。」
「あの...ごめんなさい...?」
クールでカッコいいと言えばモデルのSHION。
ということで、紫苑にチャットをしてみたのだが。
タイミングと聞き方が悪かったのか怒られてしまった。
仲良し度が足りなかったのかもしれない。
悲しい。
「じゃあ、次は...。」
【ちさきりん】:クールってなにか分かる?
【D.W.】:クックックッ
【D.W.】:氷獄の知を得たいと申すか
【D.W.】:よいだろう、我が同胞よ
【D.W.】:闇が示しし邪道なる啓示を与えよう
【D.W.】:貴殿にふさわしい魔導書を我が選定しようぞ
「......たぶん、おすすめの本を教えてくれるって」
「分かるんですか!?って、それだと私が映画を見てたのと変わらないのでは...?」
「確かに...。」
やはりみちるの発想は思春期の暗黒面に近しいらしい。
暗黒面に堕ちないよう、私が正しく導かなくては。マスターとして。
「チャットだと上手く趣旨が伝わらないのかな。」
「なら電話ですか?」
「電話は電話で何か相手に悪い気が...。仕方ない、最終手段でいこう。」
「最終、手段?」
―――――――――――――――――――――――――――――
「外に行けば何か見つかるかも。」
「最終手段、頼りなさ過ぎませんか...?」
万策尽きた私達は、どこかにクールの手がかりがあるのではと、そのわずかな可能性に賭けてショッピング街に来ていた。
一瞬入華を誘おうかと思ったが、今回のお悩みは彼女に知られてしまえばそれで水の泡となってしまう。
二人の秘密にしておこうという話になった。
「そう簡単に見つかるなら、私一人でもクールを見つけてますよ。」
「それはどうかな?」
「何でそんなに自信満々なんですか...?何となくクールですし。」
「それはまあ。経験だよ。」
最初の3日程度で、私にどれだけ知人が増えたと思う?
ワダツミを歩けば誰かに会う。
生活エリアが狭いからだろうが、適当に歩いているだけで何かしら起こるのだ、この島は。
クールになるヒントくらい、そこら辺に落ちているに違いない。
「お、早速何かあった。」
「え?......ああ、出店ですね。あれは、たい焼きでしょうか?」
見慣れない位置に出店が現れていた。
旗を見るに、どうやらたい焼きの屋台らしい。
あんこやカスタードの甘い匂いがこちらまで届いてくる。
「たい焼きが食べたいんですか?コーチ、まるで入華みたいですね。」
「いや、そうじゃなくて。」
何となく食いしん坊キャラにされそうなところを否定し、たい焼きの列に並んでいる、ある人物を指差す。
いい加減この島のイベント発生には慣れてきた。知り合いを発見するのもお手のものである。
「あれ...。もしかして、シュネー先生ですか?」
「だろうね。あの格好は私服だったのか...。」
学校で見掛ける通りの、いつものボクっ子博士なファッションだ。
物珍しそうにメニューを見ている。
「こんにちは、シュネー先生。」
「おや?...リンくんに、ミチルくんじゃないか。珍しいね、学校以外で会うなんて。」
すぐにこちらに向き直り、挨拶をしてくれる。
やっぱり見た目と中身のギャップがすごい。
かなちゃんやエレンちゃんとは大違いだ。
「プライベートでお会いするのは初めてですね。たい焼き、お好きなんですか?」
「実は、食べたことがなくてね。日本のお菓子として名前は知っていたんだが、偶然屋台があるのを見掛けたので、せっかくだから体験してみようと思ったんだ。」
たい焼きを食べたことがないとは、かなり珍しい気がするが、何を隠そうシュネー先生はドイツ出身。
機会がなければたい焼きを食べたことがなくても不思議ではない。
「シュネー先生は日本の文化がお好きなんですよね。」
「ああ。食文化も歴史も、武道なども興味深いよ。こないだは弓道について教えてくれてありがとう。」
「いえ、私も趣味の話が出来て楽しかったので。」
波長が合うのか、みちるとシュネー先生は仲良く談笑している。
こうしてみると、みちるも落ち着いていてお姉さんっぽいんだけどな。
「ところで、たい焼きは別に鯛が材料になっているわけではないんだろう?何故鯛の形に焼くんだい?」
「へ?そ、それは...。」
みちるが私にヘルプの視線を送ってくる。
いや、私も知らないし。
仕方ないので、皆の先生、見波さん風に言うなら万能の知、スマホの検索機能を利用する。
「ふむ。最初は丸い形で売ったけど売れなくて。次に亀の形にしたけど、それもダメ。最終的にめで『たい』に掛けた鯛の形にしたら売れたのが始まりなんだって。」
「なるほど。言葉遊びとは、日本らしくて面白いね。気に入ったよ。」
「すごい。そうやって調べるんですね。クール、ですね!」
「クール?」
みちるは機械音痴まで入っているのか?
と思いつつ、クールという言葉に反応したシュネー先生を見て思いつく。
「そうだ。シュネー先生、たい焼き奢るから、少し相談に乗ってもらえないかな?」
「相談、かい?」
―――――――――――――――――――――――――――――
「ごちそうさま。とても美味しかったよ。これはもう一度食べたい味だね。」
「洋菓子風にはなるけど、カスタードもオススメだよ。喜んでもらえてよかった。」
近くのベンチに座り、三人並んでたい焼きを食べた。
いつもは大人っぽいシュネー先生が、年相応の笑顔でたい焼きを頬張る姿がとても可愛かった。
これがギャップ萌えか。
「それで、相談というのはどんなものかな。ボクで良ければ何でも答えるよ。」
「ああ、そうだった。」
「わ、わふへなひへふひゃひゃひほ!こーひ!?」
「食べながら喋らないの。」
たい焼きを頬張りつつ抗議するみちるを嗜めつつ、シュネー先生にこれまでの経緯を説明する。
当たり前のようにみちるのクール詐欺がネタバレされているが、シュネー先生がまったく驚いていない辺り察するにあまりある。
「なるほど。つまりミチルくんにとってのクールが分からなくなってしまっているということだね。」
「四方八方にクールを見出だすみたいで。」
「そんな動物の習性みたいに言わないでくださいよ...。」
シュネー先生は顎に手を当て少し考えると、みちるに向かって話し始めた。
「本末転倒というやつさ。クールにならなければいけないのではなく、何故クールになりたいのかを思い出すべきじゃないかい?」
「何でって。それは、入華が...。」
「そこさ。イルカくんが慕っているのは『クール』なミチルくんではなく、ミチルくんなんだ。」
「クールな私じゃなくて、私...?」
混乱した様子のミチルに優しく微笑みつつ、先生は話を続ける。
「もう一度考え直すといいよ。ミチルくんはイルカくんの為に、理想の先輩になろうとしている。その理想というのは、本当に君の言う『クール』が絶対条件なのかな?」
「理想の、私...。」
流石『先生』。
諭すように語る姿は正に理想の先生だ。
先ほどの少女らしさとギャップがすごい。
推せる。
みちるはまだ混乱しているようだが、今のシュネー先生の話がすべてな気がする。
後は、彼女がどう答えを出すかだ。
「ありがとう。何よりの助言だと思うよ。流石先生だね。」
「リンくんなら最初から分かっていることさ。意地悪するのも程々にするといい。それじゃあ、また学校で。」
こちらも叱られてしまった。
手を振りベンチから去っていくシュネー先生。
先生の先生たる由縁を垣間見つつ、悩むみちるを連れてまた別の場所へ移動するのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ゲームセンター、ですか...?」
私とみちるがやって来たのはゲームセンター。
流石観光地というか、こないだのカジノのように広く大きい。
クレーンゲームやアーケードゲームと言った定番は勿論、ジェットバトル体験ゲームまで置いてある。
「お、あった。」
お目当てのゲームはすぐに見つかった。
ゲーム台に銃型のコントローラー。
よく見慣れた画面が映し出されている。
「ひぃっ!?ま、またゾンビ...!?」
「さっきのやつと同じ系列のアーケード版だね。」
先程みちるが見事に撃沈したホラーゲーム。
そのシリーズのシューティングゲームである。
案の定トラウマが甦ったのか、震えながら悲鳴を上げるみちる。
「ま、まさかこれをやるつもりですか...!?」
「そうだけど。」
財布から100円を取り出し、ゲームに投入する。
銃を構え次々現れるゾンビを撃ち抜いていく。
「す、すごい...。」
「やったことがあるから、多少はね。」
ゾンビを撃ちながら先程のシュネー先生との話を踏まえ、みちるに伝えたいことを話始める。
「さっきの先生の話だけど。例えばここに入華がいたとして。入華にみちるのカッコいいところが見たいって言われたら、みちるはどうする?」
「そ、それは...。怖い、ですけど...。とりあえずやってみるかと...。」
「そう。みちるはいつも、出来ない、無理って思うことも、理想の先輩になる為にチャレンジするでしょ?それはちょっとしたことで、見栄なのかもしれないけど。正反対の自分になろうとするのって、かなり難しくて辛いことだと思う。」
一面のボスが出現する。
ちなみにこのゲームは一人用、二人用で難易度が変えられるのだが。
私が選んだのは二人用難易度だ。
「そんな大変なことから、入華の期待を裏切りたくないって、その一点だけで進める。逃げ出さずに、立ち向かうその姿が、あの子にはクールに見えてるんじゃないかな。」
「っ...。クールに、なろうとする私...。」
「そう。入華の理想の先輩になら、きっともうなれてるんだよ。」
やっぱり一人だけだと大分理不尽な難易度だ。
そろそろキツくなってきた。
「逃げ出すか、進むか。今日は私が入華の代わりってことで。みちるセンパイはどうする?」
「......私は。」
画面の照準が二つに増える。
正確にボスの弱点を狙い撃ちしていき、先ほどまでのピンチが嘘のように追い詰めていく。
「進みます。その方がクールだと、判断しました!」
ボスが倒れ第一ステージクリアの表示が出る。
私の隣には、怯えてコントローラーを投げ捨てるドジっ娘ではなく。
自信に満ちた表情で銃を構える、まさにクールな表情のカッコいいセンパイの姿があった。
―――――――――――――――――――――――――――――
「まあまあかな。」
「や、やっぱり怖い...。」
最終ステージまでは行けなかったが、初めてにしては上出来だ。
お疲れ様とみちるに声を掛けようとしたその時。
「いや、お見事。射撃指導とメンタルトレーニングを同時にこなすとはね。冷静になる為の情熱か。いいインスピレーションを貰えたよ。」
パチパチと拍手が響き、一人の人物がこちらに向かってくる。
Tシャツにスウェットとラフな格好だが不思議と特別感のある、オーラのある女性だ。
サングラスが有名人っぽさを醸し出している。
この髪色といい、顔つきといい。
どこかで見覚えがあるような。
「あの、どちら様で...?」
「ああ、すまない。自己紹介が遅れたね。私はセレナ・ルイス。Salaciaのチーフデザイナーをしている。」
「あぁ!?」
みちるは知っている人らしい。
やはり有名人か。それにしてもリアクションが大きい子だ。
というか、サラキアにルイス?
それってもしかして。
「NereIdes?...ヘリーさんのお姉さん?」
「...く。ははは。」
私の疑問にセレナさんが我慢出来ないように笑う。
「その発言を姉さんに知られたら、顔を真っ赤にして怒るだろうね。」
「あれ?姉さん?」
「ああ。ヘリー・ルイスは私の姉だ。よく間違われるけどね。」
なんと。
ヘリーさんより身長が高くて大人っぽいから、てっきりお姉さんかと思った。
「姉さんとはもう知り合いなんだね。都条選手と一緒にいるということは、君が噂の新人コーチということでいいのかな?」
「は、はい。地咲輪です。」
差し出された手を握り握手する。
この出先で関係者に会う流れ多くないだろうか?
後一体何人いるんだ。
「お察しの通り、SalaciaはNereIdesとしてジェットバトルに参入した。私も姉さんと同じガンナー見習いというわけさ。」
「た、大変ですね。」
「興味深いよ。新しいインスピレーションも得られるしね。」
何かを言いかけたセレナさんは、ふと腕時計を確認すると残念そうに眉をひそめた。
「時間切れか。すまない、外せない打ち合わせがあってね。リン、次会った時は私にも指導をお願いしたいな。」
「へ?あ、いや。指導なんて。」
「よろしく頼むよ。」
そんな偉そうなことは出来ないと断ろうとするが、セレナさんはウィンクを残し、そのまま立ち去ってしまった。
呆然とする私とみちる。
そういえば、さっきから何も話さないなと思い、みちるの方を見てみると。
「......か、カッコいい。」
「へ?」
「クールですね!セレナさん。」
「......懲りないね、みちるは。」
それから一週間。
口調がおかしい、センパイの様子が変だと入華から連日聞かされることとなった。
シュネー先生と私の言葉はどこへやら。
みちるのクール道は、どうやらまだまだ続くらしい。
スレッタ?知らない子ですね←
次回は漸くジェットバトルします。
登場するのは驚異の格差でお馴染みの...?
ギャグ回に見えて、みちるにとっては大事なお話です。
伏線回収はいつなの...?
このキャラがメインの話を見たいって子は誰ですか?
-
入華
-
みちる
-
杏里
-
詩絵
-
颯
-
エレン
-
氷織
-
シュネー
-
桐利
-
見波
-
乙姫
-
夕離
-
紫苑
-
ヘリー
-
セレナ
-
ヴィーナ
-
かな
-
由芽