あれからブリュンヒルデ殿と接触して、味方に引き入れたりなどなどしているうちに気が付いた時には太陽から出でるは焔の巨人。名をスルト。なんでも北欧における神話のなかでも特に猛き者。解放されたシグルド殿からの話を聞くにすとーかーのような所業は拙僧はどうかとも思います。しかし、そんなことを言ったところで現状が解決するわけでもなし。ならば仕方なし、少し無理をすることに。
と思った矢先、
「オーララ!!」
といった具合にナポレオン殿の一射。堅い外骨格を貫きはせずとも、想いや祈りは届いたご様子。それに神性持ち特攻の宝具とくれば『ぼでぃーぶろう』のように効いてくること間違いなし。であればこちらもそれ相応のことをせねば。ゆっくりと降りてくるクリプターのオフェリア。どうやら楔となっている魔眼を取り外すことによってこの現状をどうにかするとのこと。さっそく敵が一人いなくなるかとも思いましたが、マスターの顔をチラリと拝見するに、どうやら良くは思わないよう。それもそうでしょう、彼女は魔術師でも何でもないただの一介の人。であれば目の前で少女が自らで死を選ぶのをよく思わないはずがない。
彼女はそういう人間です。おそらく今何もしなければ彼女の心の傷に死という塩が塗られていくばかりでしょう。もし、あらゆる異変すべてが解決したとして、その時の彼女の心は無事であるのでしょうか。答えは否。たった一人で人類という巨木を支える行為、せめて少しでもその傷を隠せることができたのであれば、その倒れそうな体と心を支えることができたのであれば、それ以上の成果はきっとないはずだ。
敵であるクリプターが目をくり抜こうとした手に、そっと自分の手を重ねる。少し危ない橋を渡ることとなるが、今の私にできることは、せいぜいこれが限界だ。
「...お待ちくだされ、おふぇりあ殿。マスター、少々お聞きしたいことが。もし、拙僧が万に一つでもこの方を救える術を持っていたとして、貴方様はどうします?見捨てる、それとも危険な橋を渡る?どちらでも誰も責めはせぬでしょう。何故ならどちらとも正しいのだから。貴方が信ずる方を拙僧にお命じください」
「一つしかないよ。...彼女を、救って!」
「私からもお願いします!道満さん、どうかオフェリアさんを...!」
「ちょっと、貴方たち!」
「であれば結構。ではオフェリア殿、失礼」
自分にできることはせいぜい呼ぶくらいだ。彼を...縁切りのあの人を。
「龍脈、接続完了。疑似神核形成...」
核にビキビキと嫌な感覚。もう少し耐えろ。もう少しなんだ!
口から吐血しながら彼を呼び寄せる。
「きたれよ、崇徳院!」
なんとか持った肉体に鞭をうち、術を発動。
「成功確率は...5分ほど。では、急急如律令!」
「ちょっと!」
札を額に張り、術を行使。そのまま目を一閃!
力が抜けたように倒れこむオフェリア殿。
脈と体調を確認...問題なし。
目を確認するとごく一般の眼へと変貌していた。
まさかうまくいくとは、道満びっくり。
「魔眼、消滅にござります」
『今、一体なにを!?』
「いえ、縁切りに縁のある方を卸した程度。疑似的な降霊とでも言いましょう」
『確かに崇徳院は縁切りで祀られてはいるが...』
「拙僧もまさかできるとは到底思いませんでした。なにしろ祀られている程度、崇徳院の加護でも祝福でもなんでもない。そんな力を行使できるとは拙僧、びっくりはっぴー」
「あの、それって失敗してたら」
「それは聞かないお約束ですぞ、ましゅ殿」
「あ、はい」
「もうじきすれば意識も回復するでしょう。それまで焔の巨人のお相手、お願いしても?」
「請け負った。道満殿、貴殿には感謝してもしきれない。せめてやつを討つことで、この借りを少しでも返そう。行けるな、我が愛」
「ええ、あなた。せめてスルトを討つまでの間の共闘戦線。ともに舞いましょう」
「ではのちほど。ぷしゅー」
熱くなった内の熱をゆっくりと冷ます。その間にマスターたちによってスルトが討伐されたました。異聞の王との戦闘にはなんとか回復し、ブリュンヒルデ殿との協力によりオフェリア陣営のサーヴァントたちを撃破し空想樹も切除。
「ほう、これが空想樹。これさえあれば、夢のカルデアダイオーも現実のものに」
「言ってる場合か!」
なんてこともありつつ、無理がたたったのか限界が来たので退去。
悪漢にはちょうどいい最後にございまする。
ちなみにオフェリア殿は通りすがりの謎の神父殿に抱えられて消え行きました。
「ではマスター、お別れの前に最後の忠告を。時には内なる心に悪を宿してみるもの必要かと存じ上げます。ええ、至極悪いことをすればココロがすかっとしますよ。具体的には誰かの菓子類を盗み食いしたり、トイレの後は手を洗わなかったり!!」
「やることが小さいね」
「大小ではありませぬ。やるべきことに反するのです。自らの善に従うことが良い結果を残すとも限りませぬぞ。なので、もし悪いことをしたくなったら私めをお呼びくださいませ。その時はぜひカルデアダイオーを!!」
「最後ので台無しですね」
「キミ、途中まですごいシリアスだったのにねえ」
「では悪漢、これにてドロン!」
これが北欧での私の記録です。
死に物狂いで次につなげなければならないこの記録。
もしこの身一つで彼女の重荷が少し取り除けたのなら、この悪漢が生きた意味はあるのでしょう。