ちょっと不幸なイッセーくん   作:高町廻ル

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裸の付き合いをしよう、背中流すよ

 ライザー訪問から一晩経った日の朝。

 

「はうっはうっ…」

「…………」

 

 息を荒げるアーシア。そしてそれを黙って見守るイッセー。

 

「はい、水」

「ありがとうございますぅぅ……」

 

 二人はジャージに着替えて走っていた、ランニングだ。

 アーシアが朝早く起きてイッセーに体力作りを手伝って欲しいと頼んだのだ。

 

『今日の部活はいったん中止よ。みんな一旦自宅待機よ』

 

 昨日、ライザーが去った後、リアスはそう告げて朱乃以外のメンバーはいったん自宅待機という流れになった。

 

 アーシアの足を押さえて上体おこしを始める。

 正直柔らかい足を直接かつ合法的に触れるもんだから、イッセーはちょっと罪悪感を含みながら興奮する。

 

「いち、に、さん、し…」

「はう、ううぅ…」

「えっ、四回?」

 

 上体おこしを始めたところあっさり限界が来てしまう。その事実に彼は愕然としてしまう。

 

「いちいいぃ……」

 

 鉄棒にチャレンジするが一往復すら難しい状態。あまりにも腕力が無さすぎた。

 それからも様々な運動メニューに挑戦するがアーシアはまともにこなせなかった。

 

「どうしたんだ。アーシア」

 

 へばって倒れこんでしまうアーシア。その傍で介抱をするイッセーは心配そうに話しかける。

 話しかけてはみたものの、理由は何となくだが分かっていた。リアスのレーティングゲームの為に少しでも鍛えたいのだ。

 

「私、怖がってばかりで何も出来ませんでした」

 

 彼女はあの時、他の眷属たちの様に毅然とした態度や臨戦体勢に入れなかった。

 自分だけが恐怖に震えていた、その事実にあの時愕然としてしまった。

 まるで自分が取り残されている様で。自分でリアス・グレモリーの眷属になる事を決めたくせに。

 

「アーシアには回復技があるだろ。相手はそのことは知らないし切り札になると思うぞ」

 

 傷をまるで無かったかのように治してしまう力は、事前に知っていなければ裏をかけるのは間違いなかった。

 考えれば当たり前の事だが、回復役は決して前に出るべきではない、チームにおいて王であるリアスの次に傷ついてはいけない。

 イッセーはそう励ましてみるものの、相手はそれだけでは物足りないと思っているのは分かっていた。事実相手は顔を上げない。

 

「なぁアーシア」

「…………」

 

 イッセーは可能な限り同じ目線になるように膝を折って話しかける。

 

「ほんとにアーシアは守られるだけしか出来ないのか?俺にはそうは思えない」

「…え?」

 

 その言葉で俯いていた顔を上げる。

 相手から出てくるその言葉にはその場だけ相手を励ませればいいではなく、心の底から思っている声音を感じたのだ。

 

「私に…出来る事…」

「もちろん神器の力をひたすら鍛えてもいいし、魔法を覚えてみてもいい、シスターだった時の経験を活かしてアンチ悪魔的な戦い方を編み出してもいい。逃げ足や体鍛えるのだって付き合うよ」

 

 相手はひたすら黙ってそれを聞いている。一つ一つを聞き逃さないように。

 イッセーは少しでも強くなって欲しかった。仮に強くなれなくても強くなろうとする姿勢だけは失わないで欲しかった

 

「無理だとか、出来るわけないとか、自分に見切りをつけるのは早いと思う。だってそう思えるほど行動に移してないだろ」

「イッセーさん…」

 

 厳しい言葉でしか構成されていない説教だったがアーシアは苦しい気持ちにはならなかった。

 これまで自分に強くなるように励ましてくれる人なんていなかったから。

 回復能力だけでしかアーシアの事を見ない人ばかりだった。決して傷ついた人を助けるのは嫌ではない、それでも一緒に居てくれる人が欲しかった。

 

「あーごめんごめん、言い過ぎた忘れて。取りあえずレーティングゲームに向けて手っ取り早くだよな」

「いえ、私もっと頑張ってみます」

 

 相手のその反応にイッセーは少しだけ驚く。

 まずは鍛えるのは意味が無いと結論付けられるまでやり通す。無理だと、出来ないと嘆くのはそれからだ。

 

「自宅待機だって言ったでしょう。探したのよ?」

 

 二人が話し合っているとリアスがいきなり現れる。ちょっと呆れたような、微笑ましいものを見るような優しい表情で。

 

「どうしたんですか部長」

 

 イッセーは問いかけるというよりは何が目的で探していたのか当たりはついているので、確認の意の方が強い。

 

「修行しに山に行くわよ」

 

 リアスは簡潔に答えを述べる。

 

 

「でっけー」

 

 イッセーは目の前の巨大な別荘を見てそんな感想を口にする。

 リアスを含めたグレモリー眷属はグレモリー家が人間界で所有している別荘にやってきた。

 

「遊びじゃないのよ」

 

 リアスはちょっとだけ呆れたような苦笑い。だが決して不快感は含んでいない、手のかかる弟を見ているような感じ。

 

 メンバーそれぞれに割り当てられた部屋で特訓の為の着替えを行う。一階が女性陣で二階が男性陣の部屋がある。

 木場は自身の部屋の扉のノブに手をかける際にイッセーに対してこう言った。

 

「覗かないでね」

「張り倒すぞ」

 

 最近、学校の女子たちから木場といる時に並々ならぬオーラを感じるのはこいつのせいだと思う。出来れば勘弁してほしい所存だった。

 

 

「まずはイッセーとアーシアの力を確認するわよ」

 

 皆がジャージ、もしくは体操服姿に着替えて中庭に集合する。

 この辺一帯の山々は全てグレモリー家が買い取ってあるそうで、遠くまで結界が張ってあり多少の爆発は問題ない。

 

「まずはアーシアね。神器を出して頂戴」

「はい!」

 

 元気よく返事をすると彼女の指に指輪の神器が現れる。

 

「まずはこの猫を治してみてもらうわ」

 

 リアスの言葉に反応して朱乃は魔方陣を使って猫を召喚した。すぐに死ぬわけではなさそうだが、この場で動けない程度には大けがを負っている。

 

「分かりました」

 

 アーシアの手から黄緑色のオーラのように包まれる。

 

「ちょっと待って頂戴」

「えっ」

「どの距離から癒しの力を送れるのかしら」

「え、ええっと」

 

 そう言われてもアーシアは答えられない。これまで治すなら直接患部に触れていたし、距離を空けようと思った事も無い。

 実験の結果、直接触れなければ癒しの力で相手の傷は治せなかった。だが触れれば怪我は一瞬で治った。だが猫は傷が治っているはずなのにその場から動こうとしない。

 

「傷は治せても体力は元には戻らないのね」

 

 リアスはそう結論付けた。

 赤龍帝の籠手よりも便利なもんだなぁ…と素直に感心する。

 堕天使たちも黙って手に入れようとするわけだと。調子に乗った結果として悪魔にその神器の使い手を取られてしまうわけだが。

 

「イッセーはどうなのかしら」

「『赤龍帝の籠手』は十秒ごとに持ち主の力を倍加。倍加した力はそのまま放出したり、あとそれを他人に譲渡したりできます」

「そんな事が出来るの?」

「やってみましょうか」

 

 神器を出して倍加を始める。

 

『Boost!!』

 

 取りあえず三分ほど倍加を行う。その間誰も一言も発さず黙ってい見ていた。

 

「こんなもんかな…じゃあ部長どうぞ」

「お願いするわ」

「あ、直接触れないと送れないんで」

 

 倍加をストップしてリアスの肩に触れて力を流す。

 

『Transfer!!』

「えっ」

 

 その音声と共にリアスのまとう魔力のオーラが数倍に膨れ上がる。

 彼女自身これまでにないパワーを感じて戸惑っている。ふと遠くの山に向かって掌を向けて魔力をいつものように放つ。

 

『ッ!?』

 

 するとあまりにも巨大な紅色の魔力塊が放出される。そして山に直撃をして辺り一帯に轟音と閃光を撒き散らす。

 ドオオオン!!と音と一緒に爆風が別荘一帯を襲う。

 辺り一帯に土煙が巻き上げられる。そして視界が晴れると山が丸ごと消し飛んでいた。

 

「…すごい」

 

 小猫一番最初に感想を口にする。彼女の短い悪魔歴ではあったがこれほどの威力の一撃を見たのは初めてだったのだ。

 

「この一撃があればライザーも」

 

 リアスは自身の掌を見て呟く。これまで放ったことの無い強大な一撃、出すことが出来なかった最上級悪魔クラスの一撃。それが自分の手から出てきたことに驚きを隠せない。

 

「あれ…」

「リアス!」

 

 そう呟いているとリアスの足から力が抜けその場にへたり込んでしまう。

 それを見て朱乃は慌てて体を支える。

 

「イッセーくん、これは」

「譲渡された力を使えばそれ相応に体力と気力を使っちまうからな。今のは本来の部長ならまだ出せない分無理したはずだからな」

 

 木場からの問いかけにそう答える。

 譲渡として生成された力は魔力、魔法力、光力など様々な力に変換することが出来るが、一方で身の丈以上の力を無理に使わせるため大きな疲労を伴う。

 

「二人の力は分かったわ」

 

 リアスは朱乃の力を借りて何とか立ち上がる。疲労しているのは間違いなかったが、それ以上の高揚が顔にはあった。

 

「個別に練習していきましょうか」

 

 

「いくよ」

「ばっちこい」

 

 木場は剣を生み出しイッセーに斬りかかる。

 イッセーが思っていた以上に相手の剣技は鋭かった。正直避けるのだけで精一杯だった。

 そうやって立ち会ってから数分後、相手は剣を降ろしてアドバイスを始める。

 

「イッセーくんはかわすのが大げさすぎるよ」

「大げさ?」

「確実にかわせているんだけど、ステップしてからの間合いが開きすぎて反撃できなくなっているよ」

「なるほど」

「反撃の心配もないし、相手から距離を取ってくれるからこっちの態勢を立て直すのも簡単だからね」

「おっけおっけ、気を付けてみるわ」

 

 戦い方のアドバイスを受けながら少しずつ調整していく。

 隠れて生活をしていた関係上、これまで実戦の経験は少なかったし、誰かに戦い方の教えを乞う機会というのも無かった。

 

「絶対上級悪魔になるぞっ!」

 

 イッセーは気合を入れ直す。

 今回のレーティングゲームは公式なものでは無いが、どうやら上級悪魔の名家の重鎮が見てくれると来ている、実力をアピールできれば出世につながるのではという秘かな希望を持っている。

 

「……ハーレムかい?」

「うん!!!!」

 

 木場の口調は呆れているように感じたが、夢に邁進するイッセーはそんな事どうでもよかった。

 

 

 中庭の真ん中に机と椅子のセット。その上に水の入ったペットボトル。

 そして机を三人で囲む。

 

「アーシアちゃんは魔力的な潜在能力が高いですわね。部長、私に次ぐくらいですわ」

「ありがとうございます!」

「イッセーくんは魔力に関しては普通…くらいですわね…」

「そんな申し訳なさそうに言わなくていいですよ…」

 

 先程から魔力操作の訓練を朱乃とアーシアと共に行ってみるが、神器を使わない素の状態ではそこまで突出した能力は持っていない。

 ペットボトルの中に入っている水を魔力によって遠隔操作しようとするが、結果は中で水を暴れさせるのがやっと。

 一方のアーシアは既に水を沸騰させたり凍結させたり自由自在にコントロールして見せている。自身に魔力的素養があると分かって乗り気で訓練している。

 イッセーからしたら魔力の塊を直接ペットボトルにぶつけた方が正直効率的だった。

 

「魔力ってコントロールする意味あるんですか?魔力の塊を倍加させて投げた方が攻撃力有りそうなんですけど」

 

 ちょっと不貞腐れながらそんな文句を言う。

 朱乃はしっかり困った顔をする。

 

「そうですわね…イッセーくんのような神器を持っているのならそうですけれど。炎一つでも直接放射して燃やすだけではなく、料理をするために使ったり、暖を取るため、灯りにするために使ったり。魔力という燃料をどう加工をするのか手数を増やすに越したことは無いという話です」

 

 イメージしたものを具現化する力が魔力、悪魔のみが扱える技能。

 子供の悪魔なら水を遠隔操作するくらいなら簡単らしいが、イッセーはその感覚に戸惑っていた。

 

「あ、水面が揺れた!」

「すごいです!」

「イッセーくん、こっそり膝で机を蹴らないように」

 

 魔力を操作するのは難しそうだった。

 

 

「うわっ」

 

 何度目かの足払いを食らってこけてしまう。

 小猫との体術訓練。これまで武術系を学んだ事が無かった為、小柄な体躯から繰り出される多彩な格闘コンボに苦戦してしまう。

 それに体格に差がある為小猫に攻撃を当てるのが難しいのだ。有効なのは抱きついて組み伏せる事だが、それはそれで返されそうなのとセクハラと報復が怖い。

 

「…小さいって思いましたね」

「うおっ!?」

 

 彼女の拳の鋭さが一段と増す。

 実際かわすことだけなら難しく無かったが、木場のアドバイスを意識して敢えてギリギリの回避をしている、だが悪癖を無くすのは一朝一夕で出来るものでは無かった。

 普段の戦い方であれば神器の力を十全に使って総エネルギー量の差で相手を圧倒するところだが、近接格闘のみに限定すると上手く相手にマウントを取れない。

 

「レーティングゲームでは最初から体力も魔力も使い続けるとすぐガス欠します。最小限の体裁きだけで戦う練習をしないと」

「だよなぁ…」

 

 イッセーの息が少し上がっていたため二人は休憩を取る。

 体力の限界というよりは自分の課題に意識を多く割いているため、精神面での疲労が大きかった。

 何よりも一人一人の戦闘能力は別にしても人数だけなら圧倒的に不利だった。一人が複数人分の運動力でカバーをしなければならない。四、五人に取り囲まれたら何も出来ずに負けましたでは話にならない、せめて時間くらいは稼いで残りのメンバーが立て直すくらいの働きはしなければいけない。

 

 

「気張りなさい!」

「おっす!」

 

 山道をひたすら走っていた。

 先ほどから聞こえるリアスの掛け声。イッセーは森の中を爆走していた。理由は単純で体力作り、別に体力が無いわけでは無かったが鍛えるに越したことは無いためこうして時間を作って走る。

 因みにリアスは飛んでいる。

 

「レーティングゲームって結構体力いるんですか?」

 

 ただ走るだけなら楽勝だったためそれとなく話しかける。

 

「そうね。内容にもよるけど一日がかりのものもあるわ」

「うひゃぁ…」

 

 実践中いつどこで攻撃を受けるか分からない状態で丸一日というのはそれなりに体力が無いと務まらない。

 日が沈むまで走り回る事になった。

 

 

「美味い!」

 

 一日の修業を終えてみんなで夕食を囲んでいた。

 肉やら野菜やら色とりどりの料理が盛り付けられている。全てリアスがこの森で狩ったり、釣ったりしたもので、イッセーはお嬢様なのに結構アクティブなんだなと、勝手に持っていた偏見を改めていた。

 

「…………」

 

 傍にいる小猫が物静かにその体に似合わぬ量をかき込んでいるのを見て何も言えなくなる。

 

「…何ですか」

「いや、このお肉おいしー」

 

 一瞬とんでもない殺気が飛んできたが話を必死に逸らす。

 

「この魚塩味が効いてて美味しいです」

「あら嬉しいですわ」

「お嫁さんに欲しいくらいっす!」

「うふふ、困っちゃいましたわね」

 

 案外こうして外出して外泊というのにテンションが上がっているのか、イッセーは景気のいいことを言い出す。

 

「……私もスープ作ったんですよ」

 

 しょぼんとするアーシア。意中の相手が他の女の料理ばかり褒めるからか悲しい気持ちに。

 イッセーはそれをみてあわててスープに口をつける。オニオンのスープ、調味料で濃い味をつけているわけでは無かったが野菜から出る甘みで味がつけられている。

 それを「美味しい」と褒めると顔を赤らめて喜んでいた。

 

 全員が夕食を取り終え、片付けを終えてリビングに集まる。

 

「今日一日やってみてどうだったかしら」

 

 皆が集まるとリアスがこう切り出す。

 

「意外と長時間戦う体力作りって大変なんですね」

 

 イッセーは取り敢えず思ったことを口にする。基本的に戦わずに済めばと思う派だからだ。

 そして口にはしなかったが、イッセーには木場のような剣術は無い、小猫の様な格闘スキルも無い、アーシアの様にサポートに特化した能力も無い、リアスや朱乃の様な魔力も無い。

 神器の力頼みなのは否めない。得意なのは神器の力を偽装するくらい。それも詳しく調べられたらバレる程度。

 

『実戦ではどんな達人でも負ける時は負ける。多くの経験を積み綿密に練られた計画が一度の偶然によって破られる事もある。そう考えこむな』

(ドライグとかな)

『耳が痛いな』

(まぁ俺はガチれば余裕だし)

『慢心するな』

 

 過去、神によって倒され神器に封印されたドラゴン。誰よりも強かったはずだが、それでも負けて今に至る。最強ではあっても絶対は存在しない。

 

「そうね。例えば逃げるのは戦う以上に体力と精神力を使うわ」

 

 イッセーとアーシアはその一言に深々と頷く。どちらも逃げ回ってきた過去を持っているためそれをよく実感している。

 その後もレーティングゲームにおいて必要な心構えについて説かれる。

 

 三十分ほど話し合いが続いたころ、リアスは時計を見て苦笑いをする。熱が入り過ぎてしまったと恥ずかしくなる。

 

「そろそろ休みましょうか。ここには素敵な温泉があるのよ」

「温泉!?」

 

 先ほどまで真面目モードで話し合ってきたせいか途轍もない緩急だった。

 温泉といえば覗き、覗きといえば温泉。イッセーの脳内はそのように定義されている。先ほどまでのシリアスさは消えて桃色一色に塗りつぶされる。

 

「ボクは覗かないよ、イッセーくん」

「ばっかお前!」

 

 素早く紳士的な牽制をする木場。

 そのやり取りは当然女性陣に聞こえているわけで。

 

「あらイッセー、私達の入浴をのぞきたいの?」

「うっ…」

 

 リアスの悪戯気な問いかけに相手は詰まってしまう。

 彼女は面白がりながら問いかける。

 

「なら一緒に入る?私はいいけれど?」

「そんな素敵な日本語が!?」

 

 これまでの人生ではお目にかかれなかった日本語に彼は驚愕する。

 

「朱乃はどう?」

「私も構いませんわ。うふふ。殿方のお背中を流してみたいかもしれません」

「いいんですか!」

 

 朱乃からとても素敵な提案にときめいてしまう。流してもらえるなら流してもらいたい。

 

「アーシアは?愛しのイッセーなら大丈夫よね?」

「…………」

 

 アーシアはその問いかけに無言で首を縦に振る。その意味は肯定。

 イッセーはとんでもない事が起きていると心がワクワクしていた。間違いなく人間だったころには味わえなかったものだ。

 

「最後に小猫は?」

「イヤです」

「ですよね」

 

 考えてみれば年相応の高校生が積極的に混浴を所望するとは思えない。

 そもそもリアスは小猫が最後に拒否するのが分かっていてこんな茶番をしていたのだ。

 

「イッセーくん、僕と裸の付き合いをしよう。背中流すよ」

「うるせえ!」

 

 ちなみに男二人は普通に温泉に入ったし、覗きもエッチなエピソードも生まれなかった。

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