ちょっと不幸なイッセーくん   作:高町廻ル

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球技大会が襲ってくる

 パーン!パーン!と球技大会の開催を知らせる空砲の音が響く。

 午前は主にクラス対抗や男女別の競技、そして午後からクラブ対抗という形になっている。悪魔組は適度に手を抜いて時間を潰す。

 そして午後からはそれなりに力を入れる事に。一応不正が出来ないように昼食後にクラブ対抗戦の競技を発表する事に。

 リアスは部員たちの前に戻って来る。

 

「競技は決まったんですか?」

 

 何やら嬉しそうにしているリアス、それが気にかかってイッセーは話しかける。

 

「ええ、バッチリよ!勝ったわよ、この勝負」

「へー何なんですか?」

「ドッチボールよ!」

「…………」

 

 嫌な予感しかしない。

 

 

 部活対抗戦が始まる直前にアーシアが一瞬行方不明になったがすぐに帰ってきた。ズボンがブルマになっていたが。

 

「ブルマ!」

 

 イッセーは正直驚いた。

 まず着替えている事と昼間の太陽に晒される白い生足がここまで眩しいのかと。

 

「あ、あの桐生さんに聞いたんです。イッセーさんがこの姿を見たら喜ぶって…」

「ありがとうございます!ごっつあんです!」

 

 全力で感謝の気持ちを述べる。

 

「みんな気持ちを引き締めなさい!」

 

 リアスはイベントが好きなのかテンションが高い。

 ブルマ関連でかなりスケベ根性が刺激されたのかイッセーのテンションは高くなっていた。

 

「オッス!」

「良い返事よイッセー!頑張ったらご褒美をあげるわ!」

「うおおおっ!おっぱいぃぃぃ!!」

 

 その一言でこれ以上に無いくらいやる気を出す。正直ライザーと戦った時よりもやる気に満ち溢れている。

 

「ふんっ!」

「ぎゃあ!」

 

 アーシアがイッセーの足をぎゅっと踏み抜く。彼女はとても不機嫌そう。

 

「例のもの配ったらどうですか?」

 

 いつもの温厚さからは想像できないくらい冷ややかな視線。ちょっと遅れた反抗期かもしれない。

 

「これ作ってきたんです。これを巻いて一丸になりましょう!」

 

 彼が取り出してきたのは「オカルト研究部」の刺繡が刻まれているハチマキ。

 

「これ手作り?」

 

 それを最初に受け取ったリアスは問いかける。

 

「アーシアに教えてもらいながらですけど」

 

 イッセーに縫い物を作れるような器用さはない。だがある程度努力と忍耐力があればハチマキを作るのは素人でも出来なくはない。

 アーシアに教えてもらいながら何とか人数分は作れた。

 

「…予想以上の出来栄え」

「あらあら、確かに他の部活では共通のユニフォームとか着ていますわね」

 

 小猫と朱乃は笑みを浮かべてそれを受け取る。

 だが木場だけは何かを考え込んでいるようで取りに来ない。無視をしているのではなく最初から話に加わっていないし、聞いてすらいないと言ったところか。

 

「ほらよ」

 

 唯一取りに来ない木場にイッセーは声をかけて渡す。

 

「今くらいは勝つことに集中しろよ」

「そうだね…勝つことが重要だ…」

 

 先日から木場は意味ありげに呟いでばかり。イッセーもその態度にいい加減イラつきつつあった。

 

『オカルト研究部の皆さんと野球部の皆さんはグラウンドへ集まってください』

 

 そんなやり取りをしているとアナウンスで呼び出しがかかる。

 

 

「しねえええええっ!!」

「おっと」

 

 相手からの殺意の籠った直球が放たれるがあっさりキャッチする。

 

(死ねって…スポーツマンの精神全くねぇな…)

 

 オカルト研究部は野球部との試合を行っていた。

 辺りのギャラリーたちから鳴り響く死ね死ねコール。

 周りには観客がいっぱいいたが、その目当てはイッセー以外の美男美女軍団だろう。

 先ほどからイッセーばかり狙われていた、理由は単純、美女軍団は当然狙いにくい、消去法で男子を襲う事になる。だが木場を狙うと女子達からのヘイトが集まる為、エロエロで有名なイッセーを狙うという形だ。

 

「ほい小猫ちゃん」

 

 取ったボールをパスする。まだまだ力のコントロールに不安がある為、ボールを投げるのは躊躇われる。

 正直適当なタイミングで当たって外野に移動したいところだが、それをしたら部長に大目玉なのでできない。

 

「ぐはあっ!」

 

 小猫の細腕から繰り出されるパワフルな一撃はいつもボールを扱っている野球部ですら反応できずに撃沈する。

 

「イッセーが狙われているわね!これ作戦的には『犠牲』ね!小猫がアタッカーでイッセーがディフェンダーよ!」

 

 リアスはノリノリで指示を出していた。

 

「クソォ!恨まれてもいい!イケメン死ねぇ!」

 

 野球部員の一人がイケメンへの憎悪が強かったのか狙いを木場に定めて投げる。

 イッセーは正直無視してぶつけられても構わなかったが、男子生徒が一時の感情で破綻する可能性を考えて守る事にする。

 

「ぼーっとすんな」

「あっ、イッセーくん?」

 

 ボールをキャッチしたのだが相手は何が起きている事すら把握できていないようだった。きょとんとした顔がイッセーを苛立たせる。

 小猫にボールを渡すのだが、その時にちらりと見えたリアスの表情から機嫌は悪そうにイッセーには見えた。

 悪魔がたかだが球技大会で熱くなるなよと言ってしまえばそれだけだが、だとしても木場のふるまいは周りから見たら感じが悪すぎる。

 

(これは荒れるなぁ…)

 

 球技大会が終わった後でひと悶着ありそうだと思った。その事にため息が出そうになる。

 大会は何の問題もなくオカルト研究部が優勝をした。

 

 

 ザーッと外は雨模様だった。幸いなのは球技大会が撤収を含めて終わった後だった事だ。

 雨の湿り具合とは別に部室内はパン!と乾いた張り手の音が響いた。リアスが木場に平手打ちをしたのだ。

 

「どう?目は覚めたかしら?」

 

 リアスはそう告げる。

 今回の大会中、リアスは何度も木場に注意はしていた。だが注意をされた後もどうでも良さそうにしていた、もし仮にリアスが何もしなかったらイッセーがお灸を据えるつもりだった。

 いくら何でも上司に対して失礼が過ぎる。今だって頬を殴られた後も無表情を貫いている。

 

「もういいですか?」

 

 木場はここまでの態度から一転してニコニコ笑顔を作る。

 それが作りものであると分かるくらいにはイッセーも相手の事を理解出来てはいる。

 

「球技の練習はもうしなくてもいいでしょうし、夜の時間まで休んでもいいですか?少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです」

 

 そう言い放って出て行こうとする。

 形式上はそう述べているが、この場で話し合うのをめんどくさがっているのは見え見えだった。

 

「まぁ一応仲間だし心配はしとくわ、木場お前大丈夫か?」

 

 イッセーはこう言っても相手には何も響かないだろうなと言うのは予想出来ていた。これはあくまでリアス・グレモリーの眷属仲間の義理というだけだ。

 相手の事情を知れば違う感情も抱いたかもしれないが、誰も教えてくれないのだからどうしようもない。

 木場はどうやらイッセーの発言に対して何かが引っかかったようで立ち止まり相手の方を向く。

 

「仲間か」

「お前が言ったんだろうが『僕達は仲間』だって」

 

 アーシアを助けに行く際に仲間だと言ったのは確かに木場だった。

 木場はかつて言ったそれを思い出したようで、自嘲し始める。

 

「僕はね、基本的な事を思い出していたんだよ」

「基本的な事だぁ?」

「僕がなんのために戦っているか」

 

 その言い草から絶対に碌なものじゃないなとは思った。

 

「リアス部長の為にじゃねぇわけだ」

「そうだよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー、それを破壊するのが僕の戦う意味だ」

 

 木場はそう言って部室から出て行った。

 

 

 木場は土砂降りの雨の中を傘もささずに歩いていた。

 傘を忘れたのではない、熱くなった自身の頭を冷やすため、誰も喜びはしないが先ほどまでの自身の態度に対する贖罪も込められている。

 

(喧嘩をしてしまった)

 

 木場にとってリアスは恩人、その単語だけでは表現出来ないほどの存在。

 これまでリアスの言った事に反抗した事などなかったし、しようと思った事も無かった。

 聖剣エクスカリバーに対する思いを捨てる事など出来ない。だがその態度はリアス・グレモリーの『騎士』木場祐斗としては最低だ。

 囁いてくるのは仲間たちがいるのにこれ以上の事を望むなんてと理性が呼びかける。

 

「あれは…神父…?」

 

 木場の目に飛び込んできたのは神父服を着た人影。

 だがおかしい、いくら何でもこの土地に悪魔がいる事など気が付いていなはずがない。こんな暗い雨の中で分かりやすい服装でうろつくなど挑発かつ自殺行為だ。

 

「た…たすけ…」

 

 そう言って血反吐を吐いて倒れ込んだ。よく見ると腹部には血が滲んでおり明らかに戦闘をした後。

 死体を見て考える、何故目の前の男は死んだのか。少なくともリアスとその眷属達はこんな事などしない。少なくとも自分から喧嘩を売るような無謀かつ無責任なことはやらないはずだ。

 考えられるのは悪魔でも天界側でもない第三勢力がいるということ。

 

(殺気ッ!)

 ―ギイイィィン!!

 

 剣同士が鍔ぜりあって火花が撒き散らされる。

 見なくても殺意が向けられていると分かるくらいに濃密な敵意と害意。木場は素早く魔剣を作り出して攻撃を受けとめる。

 

「やっほ、おひさだねぇ」

 

 煽る口調に嫌な笑みを浮かべる神父。木場相手の事を知っている。

 フリード・セルゼン、先日堕天使たちとの小競り合いで戦った神父。神父ではあるがその実はただ殺戮衝動を撒き散らすだけの害獣だ。

 

「まだこの街に潜伏していたようだね?今の僕は機嫌が悪いんだ」

「それはまた都合がいいねぇ、すんばらしいよ!俺っちの方は君との再会劇に涙涙でございますよ!」

 

 木場の怒気を含んだセリフにも相手は意に返さない。

 そこで木場は気が付く。フリードが持っている聖剣、その正体に。

 

「お前さんの魔剣とこの聖剣エクスカリバー、どっちが上か確かめさせてくれないかねぇ」

 

 

「聖剣計画ですか?」

「そう、祐斗はその計画の生き残りなのよ」

 

 イッセーは自宅に戻ったところで木場がおかしくなった理由についてリアスに質問をした。

 普段の彼であれば相手のセンシティブな部分には触れなかったところだが、流石に今回の木場の態度は目に余るし、小猫は事情を知っていそうだと思い質問したのだ。

 

「聖剣ね…」

 

 木場は聖剣という物に対して並々ならぬ執念を持っているのは予想していたため驚きはない。むしろ納得がいったというものだ。

 

「数年前まで教会ではエクスカリバーの使い手を育てるための計画が存在したのよ」

「知りませんでした…」

 

 アーシアは驚いていたが、表で聖女として祭り上げられていた彼女に対して、教会は不信感を抱かせる情報は与えないだろう。

 聖剣は悪魔や魔獣に対して強力な効果を兼ね備えている。光の一撃は身を焦がし消滅させる究極ともいえる兵器。その使い手を増やせば大きな脅威になるのは間違いない。

 それこそ漫画やゲームでも表の世界でたびたび名前が挙がるくらいには有名なものだ。

 

「有名どころだとエクスカリバーかしら。あのレベルのものは使い手も選ぶ、それこそ十年に一人と言われているわ」

 

 名前が伝承されるほどの聖剣は神の領域までに到達した魔術師や錬金術師たちが生み出せる聖なる武器。だがそれを作るためのコスパの悪さと、それに輪をかけた使用者の制限。

 

「はー…なるほど」

 

 イッセーはエクスカリバーの脅威というのを具体的に理解できていないが、上級悪魔を殺せる兵器とその使い手が見繕えるほど存在していたら悪魔は危険だっただろう。そんなにうまい話は存在しないという事だ。

 

「そういえば神器の中にはエクスカリバーみたいな武器とかあるんですか?」

 

 彼はふと思った事を質問する。

 左手に宿る力はエクスカリバーの現物を見たわけでは無かったが、それに匹敵するか超える力のはず。神器にもその手の武器があってもおかしくはない。

 

「あるわ。例えば『魔剣創造』の対極の『聖剣創造』とかね。聖剣の神器は実物に比べたら出力は劣るけど弱くはないのよ。神滅具だとイエスキリストを刺した槍である『黄昏の聖槍』とかね」

 

 イッセーは勉強不足だなと思う。

 もう素性を隠す必要も無いためそろそろ本格的に勉強をしないといけないと思う。正直知識量だけならアーシアに負けているかもしれない。

 

「聖剣を作る神器では本場の名前が付けられるほどの剣には遠く及ばない、それは魔剣の方も同様ね」

「…まあですよね。エクスカリバーを神器で量産出来たら悪魔滅んでますもん」

 

 リアスはイッセーの感想に苦笑いをする。あり得ないからこそ出てくる笑み。

 

「そうね。ただ教会はその使い手を増やそうとしたのよ。特にエクスカリバーの使い手を人工的に増やそうとした、祐斗は人為的に養成を受けた者の一人なのよ」

「じゃあ木場は…」

 

 イッセーはそこでやっと事の顛末が分かった。

 教会の人間だった木場が悪魔に転生している、その情報だけで木場がどのような目に遭ったのかは想像できた。

 

「祐斗は聖剣に適応できなかった。それどころか教会は同時期に養成を受けた者達も全員適応できず『不良品』と決めつけて処分したのよ」

 

 これが木場祐斗が聖剣を憎む理由。処分が何を意味するのか分からないほど想像力が低いわけでは無い。

 アーシアはその情報がショックなのか目元に涙を滲ませている。イッセーは部屋に置いてあるティッシュを一枚とって「ほら」と言って渡す。

 彼女が内心受けるショックは計り知れない、これまで信じていたものが土台から崩れていくのは耐えがたいだろう。

 

「…そ、そんなこと…主に使える者がそのような事をするなんて許されるわけがありません…」

 

 アーシアはもう何を言ったらいいのか分からず、自分に言い聞かせるような口調で言った。

 

「悪魔よりもよっぽどか悪魔だ。どっちが邪悪なんだが」

 

 イッセーはアーシアを慰めるよりも先にそう言ってしまった。かつて生まれ育った村の事を思い出して胸が苦しくなる。

 

「そうね。教会の彼らは私たち悪魔を邪悪だと教えるわ。でも本当に邪悪なのは人間の悪意だと思うわ」

 

 リアスはそう言った。

 イッセーは変わり者だなと思う。異形の存在は何処か人というのを搾取の対象とみなしがちだ。だがリアス・グレモリーは人間臭さが同居しているように思える。

 心の何処かで悪魔ではなくただの人間としての自意識を持っている。その理由はリアスは人間界での暮らしが長いからと推測しているが、きっとそれだけではなく生来の優しさを併せ持っているのだ。

 少なくともリアスが今ここにいる二人に対して転生させた事に対して負い目を感じている、だから優しい人だとイッセーは思う。

 

「私が祐斗を悪魔に転生させた時、あの子は強烈な復讐心を誓っていたわ。生まれた時から聖剣に狂わされた才能だからこそ、その才を有意義に使って欲しかった。だって勿体ないじゃない」

 

 だがその願いは残念ながら今の木場を見る限り通じてはいない。

 

「あの子は忘れられなかった。聖剣を、聖剣に関わった者達、そして教会を」

 

 リアスの顔は悲し気に憂いていた。

 全ての話を聞いて、自身が受けた仕打ちに対して怨恨を捨てきれなくて当然だろうとイッセーは思った。

 リアスの言っている事は間違っていないと思う。可能なら復讐を忘れて悪魔として得た第二の人生を生きた方が良い。

 だが例えばいじめ問題もいじめた側は忘れる事があっても、それを受けた側は決して忘れることは無い。

 何よりイッセーは実体験からか復讐なんて勿体ないとは口が裂けても言えない。

 復讐を成し遂げなければ乗り越えられない事もあるだろう。

 自身を納得させるだけの理由を作れないだろう。

 

「とにかくしばらくは見守るわ。今はぶり返した怨恨で頭がいっぱいでしょうし」

「そういえば…」

 

 イッセーは前に母親が取り出したアルバムを出す。

 そして前に木場が見つけた写真のあるページを開く。

 

「木場はこの写真に反応してましたね」

 

 イリナとのツーショットを写した写真。背景には聖剣が飾られている一枚。

 リアスとアーシアはそれを見つめる。

 

「あなた…教会の人間と関りがあったの?」

「俺がこの家に引き取られた時に近所に住んでいた子の親が神父だったんです」

「「…………」」

 

 イッセーの口から出た情報に二人は黙り込んだ。

 リアスは何となくイッセーの込み入った事情を察していたが、アーシアは初耳だったようで分かりやすく動揺していた。

 

「そう、あなたの知り合いに教会と関りのある人がいたのね。それでこの写真の相手はどこに?」

「前にも伝えましたけどこの街の教会は悪魔とのいざこざで撤退したっぽいんですよ。だからイリナもどこに引っ越したのか知りません。それにもう十年前の出来事ですし、もしかしたら父さんか母さんなら引越し先を知ってるかもしれないですけど、俺が悪魔になった以上は連絡を取るのは危ないでしょうし」

「え、イリナ?女の子なの?」

 

 写真に写っている二人の少年ではなく、男の子と女の子の二人組。

 リアスは驚く、アーシアも男友達と思っていたのか写真を穴が開くほど見つめていた。

 

「え、女の子…えっ…?」

 

 アーシアもやはり男の子にしか見えないらしい。

 髪は短めだし、半ズボン、シンボル的に男を示してはいる…確かに一桁代の年齢なら男女の性差はまだ出にくいと言えばそうだが。

 

「まっまあ取りあえずこの街に聖職者はいないはずですよ。部長だってそれは知っているでしょう?」

「ええ、そうね。前任の悪魔の人がいなくなった理由も何となく分かってきたわ」

 

 リアスは突然降って湧いてきた情報を整理した。

 不審な点はいくつかある。そもそもイッセーはどこの誰なのかと生まれと育ち、そして過去に駒王町にいた教会と悪魔の間に何があってこの縄張りから手を引いたのか。

 まだ結論を出すには情報がまだまだ断片的すぎる。

 

「取りあえずもう寝ましょう。こうしていても祐斗の機嫌がおいそれと直るとは思えないわ」

「そっすね…え!」

 

 リアスは突然服を脱ぎ始めた。

 

「ぶ、部長!何で服を!」

 

 既にリアスは下着姿になっておりきょとんしている。

 

「何故って…私が寝る時は裸じゃないと眠れないって知っているでしょう?」

「そうじゃなくて!何でここで脱いでいるんですかって事です!」

「あなたと一緒に寝るからに決まっているでしょう?」

「え!そんなリンゴが地面に落ちるのは当たり前でしょうみたいに言われても!」

 

 まさかイッセーに女の子の方から一緒に寝たいと言われる日が来るとは。青い春が来ていた。

 

「なら私も寝ます!私もイッセーさんと一緒に寝ますぅ!」

 

 アーシアも負けじと服を脱ぎ始める。

 彼は前と比べたらだいぶ穢れたなと思う、肌は眩しいほど白いが…

 シスターを裸にするのは背徳感が酷かった、何というか悪い事をしているような、無垢な子を騙しているような罪悪感が絶え間なく襲ってくるのだ。

 

「アーシアに悪影響です!ふ、服を着てください!」

「悪影響?それは随分な言い方ねイッセー。私が裸で寝るのは知っているでしょう?もう何度も寝たのだから」

 

 取りあえずこれ以上の被害を抑えるためにそう提言する。だがそんな意見は握りつぶされる。

 

「…な、何度も寝た…?…そんな…イッセーさんと部長さんが…?」

 

 アーシアからスッと感情が抜けていく。絶句するとはこういう事なのかと。

 

「アーシア今日は私に譲りなさい」「イヤです!私だって甘える権利はありますぅ!」

 

 女性二人の喧嘩が勃発し険悪なムードに。

 肩身が狭く情けないイッセーはこっそりと布団の中に潜り込んで寝ることにした。

 

 因みにその後、話し合いの結果服を着てもらう事と三人で川の字で寝る事に。

 その結果に彼は自分の無力さと甲斐性の無さに愕然としたものだった。

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