ちょっと不幸なイッセーくん   作:高町廻ル

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甘えてもいいんだよ?

 イッセーは休日を使ってエクソシスト二人を探していた。

 理由は単純、エクスカリバーの捜索と破壊の許可を取るためだ。許可を取れば木場の復讐の手伝いになる。

 そして木場の手っ取り早く復讐を終えて二人で一緒にリアスにごめんなさいをして解決を目指す。

 

「ん?」

 

 そんな思惑を持って歩いていると少しざわついている空間を遠目に見つける。なんだなんだと覗いてみるとそこには。

 

「え~迷える子羊にお恵みを」

「どうか、天の父に代わって私達にご慈悲おおお…」

「……………………」

 

 捜索を開始して二十分にして、白いローブを被った物乞い二名を発見する。

 前を通る通行人は変なものを見る視線を送り、我関せずとその場から去っていく。

 

「なんてことだ、これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いのしない国は嫌いなんだ」

「毒づかないでゼノヴィア。路銀のついた私たちはこうしないと食事もとれないのよ?ああ、パン一つ買えない哀れな私達!」

 

 イリナは手を組んで祈る。

 だがゼノヴィアはジト目で相方を睨んでいる。

 

「ふん、もとはと言えばお前が詐欺まがいの変な絵を買うからだ」

 

 どうやら遠目から話を聞いていると、イリナが騙されたようで出張費用として支給された現金を何も考えず使い込んでしまった。

 結果としてホテルに泊まるどころか今食べる分のお金すらなくなったようだ。

 ちなみにお金を使った理由は絵を買ったから。買った絵というのはそれっぽい外国人が頭に輪っかを付けて、貧相な服を着ている。そして背景には赤ちゃんの天使がラッパを吹いている。

 正直目利きが出来ない奴でもお金を出して買うはずもない無いパチモンぶりだった。

 

 イッセーは遠目から分析している間もゼノヴィアとイリナの口論は白熱していた。

 喧嘩するほど仲が良いというか、口喧嘩こそヒートアップしているが、お互いに言いたい事を言い合える信頼が土台にあったうえで話しているように彼には見えた。

 ぐうううっ…っと二人の腹から元気な虫が鳴く。

 

「…まずはどうにかして腹を満たそう。そうしなければエクスカリバーどころではない」

「そうね。異教徒を脅してお金を貰う?異教徒相手なら主も許してくれるかも」

 

 イッセーは頭が痛くなっていた。

 イリナの口から非常識な提案が飛び出してきた。ゼノヴィアから出たならまだ分かったが、日本に住んでいた経験のあるイリナから出て来た犯罪宣言に頭を抱える。

 法治国家の日本で剣を振り回すのが許さるはずもないのだが、本当に日本育ちなのだろうか。

 

「寺を襲撃するのか?それとも賽銭箱を奪うのか?やめておけ、ここは剣でも使って大道芸でもしよう」

 

 正直路上で剣を使って芸をするのもそれなりにすれすれな行動だが、イリナの強盗案よりはマシだった。

 

「それだわ!エクスカリバーで果物でも切ったら路銀は溜まるはず!」

「まあその果物が無いわけだが…」

 

 ゼノヴィアはそう言いながらイリナの買った画をチラリと見る。

 

「ダメ!これはダメよ!」

 

 イリナは体全体を使って必死に絵を守っている。

 正直この変人コンビが知り合いという時点で頭を抱える案件だが接触を図らなくては話は始まらない。

 

 

「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

 ガツガツとゼノヴィアとイリナは出された食事に食らいついた。

 

「ちゃんと噛んで食べろよ…」

 

 彼はよく食べる奴らだなと思った。多分の成人男性でも三人前は食っている。

 リアスから貰った悪魔業での報酬が無ければこの店で皿洗いをしなくてはいけないところだった。

 腹が満たされて落ち着いたのかゼノヴィアは少し辛そうにしていた。

 

「ふぅー…落ち着いた。悪魔に救われるとは世も末だな」

「はっ倒すぞ」

 

 しっかり遠慮なく奢られておいてその言い草にキレそうになるイッセー。

 金銭にして一万円分食べておいてその態度は聖人でも流石にキレてぶん殴る。

 

「ありがとうイッセーくん。この恩はいつか…だから…ねっ…?」

 

 イリナが慌てて申し訳なさそうに謝罪をしたからギリ許した。多分二度目はない。

 

「で、私達に接触した理由は?」

 

 ここからが本題。

 彼とてイリナに対してならともかく、ゼノヴィアにまで無償で食事を奢るほど善人ではない。相手もそれを分かってはいる。

 

「エクスカリバーを俺達で破壊したいんだよ」

「ほう…?」

 

 ゼノヴィアは興味深そうにしている。そんな提案をされるとは思っていなかったからだ。

 

「なるほど…一本くらいは任せてもいいか破壊できるのならね。ただ正体は隠しておいてくれよ、こちらも敵に関りがあるとは思われたくはないんだ」

 

 彼女はその提案に殆ど迷わずに乗った。

 

「ちょっといいのゼノヴィア?イッセーくんとはいえ悪魔よ」

 

 イリナは反対そうな態度を取る。

 上の指示は悪魔を聖剣に関わらせるなだった。

 アーシアへの謝罪のように多少は頭を柔らかく融通を利かせるにしても、流石に上の命令に真正面から反抗するのは厳しいようだった。

 イッセーはイリナが否定しながらも苦しそうにしているのを感じた。恐らくだが強がってこそいるがその実情は猫の手も借りたいと言ったところか。

 ならばと最後の一押しをする。

 

「じゃあ赤龍帝ならどうだ?イリナだって赤龍帝の力を使ってるだろ、それなら問題は無いはずだ」

「え…?」

 

 そう言われて彼女は一瞬理解が追いつかなかった。

 

「なるほど…」

 

 一方でゼノヴィアは得心が行ったようで頷いていた。

 イッセーは戦いの中で自分の同じ波長のオーラをイリナから感じた。

 

「イリナが最後に見せたあの力は、小さいときに無自覚に譲渡しちゃって体に宿った赤龍帝の力だよ。教会はエクソシストがドラゴンの力使うのを認めてるならギリセーフだろ」

「そうだったんだ…」

 

 イリナは自分の掌をまじまじと見つめる。

 今日までエクソシストとして厳しい戦場でも生き残れたのは彼女の研鑽だけではなく、偶然にも発現したドラゴンの力も大きかった、それによって繋げた命もあった。

 そしてイッセーと近い力の波長を持っているなら結界をすり抜けられる。

 

「イリナ、正直言って私達だけでエクスカリバー三本の回収とコカビエルと戦うのは厳しい」

「それはそうだけど…」

「最悪私達の二本の聖剣を破壊して逃げ帰ればいい、だがそうしたとしても生きて帰れる確率は三割がいいところだ」

 

 三割と言っているが正直コカビエルと戦って敗走するとしても、エクスカリバーという得物を破壊して逃がしてくれるような良心を持っているとも、そもそも逃げられるだけの実力差があるとは考えにくい。

 ハッキリ言ってこの任務は死んで来いと言われて送られるのと同義、片道の燃料しか与えてもらえてない神風特攻だ。

 

「それでも高い確率だと思って任務についた筈よ。自己犠牲こそが信徒の本懐じゃないの?」

 

 イリナはゼノヴィアがズバズバ言ってくるため眉をひそめながら反論する。

 

「気が変わった。目の前の彼の助力があれば生きて帰れるかもしれない、生きてまた主の為に戦う、それもまた信仰ではないのかな」

「それはそうかもしれないけど…」

 

 イリナの中にあった欲とも言える部分が刺激される。

 当たり前だ、死にたくない、今を生きる人間にとって当然の生体反応だ。

 イッセーはイリナの中に生まれた揺らぎを見逃さない。

 

「イリナ…俺はやっぱりお前に死んでほしくないって思う。だから今だけは神様とか教会の上司とかに目をつぶって手を取って欲しい。これは俺のワガママが過ぎるのか?」

 

 これは間違いなく本心だった。

 立場も種族もすべてが交わりようもないくらい分かたれたとしてもやっぱりイリナには死んでほしくはない。

 彼はハッキリとは明言はしなかったがイリナは決して弱くない、自分の力を過信する上級悪魔なら倒せる。

 

「うっ…う、うぅ…」

 

 イリナはゼノヴィアとイッセーの連続攻撃に頭を抱えた。

 情と実利の両面から攻め立てられる。このままごねたらまるで自分が悪いみたいではないか。

 

「よしイリナからも了解は得た。よろしく頼むよ」

 

 ゼノヴィアはハッキリと協力しようといった。

 

「取りあえず俺の協力者…というか木場を呼ぶわ。頼むから喧嘩すんなよ」

 

 イッセーはそう言って携帯電話を開いた。

 

 

「話は分かったよ」

 

 木場は入店した途端に二人を見て殺意を振りまいたが、ファミレスの中なので自分を律している。

 因みに電話で「目の前にエクスカリバーを持った堕天使がいるんだけど」といったら何も言わずやって来た。

 

「正直に言うとエクスカリバーの使い手に破壊の承認を得るのは不満だけどね」

「随分な物言いだね。はぐれでなければ問答無用で切り捨てているところだ」

 

 予想通りに一触即発になる。

 

「二人とも喧嘩すんな。あとゼノヴィア、お前は俺に一万円の借金をしてるんだからな?免罪符とか受け付けねえぞ」

 

 イッセーは何とか二人を嗜める。

 だが思っていた以上に木場の中に積もっていたものは大きい。

 

「やっぱり『聖剣計画』の事を根に持っているのね」

 

 イリナの指摘に静かに「当然」と肯定をする木場。

 その気持ちをイッセーは痛いほど分かった。彼もまた自分の故郷を蹂躙された光景を許せていない。

 

「でもね、あの計画によって聖剣の研究は飛躍的に進んだわ」

「だが、計画失敗と断じて被験者を始末するのが許されていると思っているのか?」

「…………」

 

 その一言でイリナは黙り込んでしまった。

 死人に口なしという言葉があるように、これまでなら聖剣の使い手を生み出すために犠牲になってくれた勇気ある人たちと言い張れたかもしれない。実際にそんな言い訳が教会ではまかり通ってきたのだ。

 だが目の前の木場にその理屈は通用しない。彼はその苦痛を受けてそれでも今日まで悪魔になりながらも生き残ってきたのだから。

 イリナの考える事の出来る程度の言い訳は通用しない。

 

「その事件は私達の中でも最大級に嫌悪されるものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押した。今では堕天使側の人間さ」

 

 ゼノヴィアはイリナを庇うように話をした。

 木場はその内容が気になったようで聞き返していた。

 

「堕天使側に?その名前は?」

「バルパー・ガリレイ。皆殺しの大司教と呼ばれた男さ」

 

 仇敵の名前を知って木場の瞳の中に決意のようなものが見えた。

 

「堕天使たちを追いかければその者にたどり着くのかな。情報を貰ったから僕からも提供した方が良いみたいだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃されたよ。その際一人神父を殺害していた」

 

 木場の言ったそれに二人は驚きと得心をしていた。死体が見つかるまでは行方不明だが、死んだのが確定してた。

 

「名前はフリードセルゼン、覚えは?」

「あのクソ神父…入ってきやがったのか」

 

 コカビエルの部下ならこの街に入って来れるのも納得だった。

 かつてレイナーレという堕天使の元で殺人を行った狂人。

 元々はヴァチカンで僅か十三歳でエクソシストになった天才。悪魔や魔獣を倒す功績は大きかった。だが彼には信仰というものは備えておらず、同胞にすら手をかけたため異端にかけられるのも時間の問題だった。

 

「あの時処理班が始末できなかったツケを払う事になるとはね…」

 

 ゼノヴィアは苦そうな顔。

 

「まあ取りあえず共同戦線と行こうじゃないか」

 

 彼女は切り替えてメモ用紙に番号を書く。それはどうやら連絡先のようだった。

 

「じゃあ俺の番号を…」

 

 それを見てイッセーも自分の番号を教えようとする。

 

「知ってるから大丈夫よ」

「え、何で?」

「お母様に教えてもらったから」

「勝手に!?」

 

 多分イリナだから母親も電話番号を教えたのだろう。

 だがイリナの顔は十年前に会っただけ、仮に相手が詐欺師だったならとんでもない話だ。

 二人は立ち去って行った。

 

 

「…イッセーくん、どうしてこんなことを?」

「ちょっと待ってくれ」

 

 イッセーは木場を止めて携帯を開いて電話をかける。

 

「小猫ちゃん、使い魔なんて使ってないでここに来なよ」

「…………?」

 

 木場はその内容に疑問符を浮かべていた。

 イッセーはそれに対してジト目になる。

 

「いや、途中から小猫ちゃんいたよ?バルパーの話辺りから。聖剣に気を取られ過ぎだろ…」

「え…」

 

 いつもの木場であれば余裕で気が付いた筈。気が付かなかったことで今の彼の余裕の無さが目立つ。

 話していると小猫が店の中に入って来る。何故か匙を引っ張りながら。

 

「え、匙?なんで?」

 

 二人が席に座る。そしてイッセーは気になった事を問いかける。小猫がいるならまだ分かる、彼女もまた木場の事が気になってあれこれ動いていたのだろう。

 

「街中を歩いてたらさ…お前と物陰に隠れてる小猫ちゃんを見つけてさ。そしたら無理やり連れ込まれて…」

 

 イッセーは小猫に問いかけたが、代わりに答えたのは匙だった。

 匙は恐らくだがこのまま逃がしたら生徒会長のソーナかリアスに、イッセーや小猫が怪しい動きをしているのをチクると判断して小猫が口封じをしようとしたのだ。

 何となく外をぶらついていただけなのに聖剣関連に巻き込まれている。不憫だなと思う。

 

「イッセーくんはどうしてこんなことを?」

 

 木場は改めて問いかける。何故リアスの意向に反して教会側に対して交渉を持ち掛けるなんて真似をしたのか。

 

「んーまぁ仲間だからさ」

「僕一人が動いたら部長に迷惑がかかるから、それもあるんだよね」

「もちろんそれもある。お前一人がはぐれになるよりはマシだろ。こうして動いているのも部長に迷惑はかかってるんだろうけどさ」

 

 木場は納得出来ないようだった。

 イッセーはこじらせてんなぁ…と思う。

 復讐に走る行為をそう捉えているのならやめればいいのだが、そうにもいかない。

 

「…祐斗先輩。…私は…先輩がいなくなるのは…寂しいです…」

 

 言い合っている二人に割って入ったのは小猫だった。その表情は切なそうで寂しそうだった。

 いつも表情をあまり変えない子だからこそ、その変化はその場にいた男子全員を驚かせた。

 

「…私もお手伝いします…だからいなくならないで…」

 

 小猫の懇願。もしこれを拒否できる男がいるならきっと去勢している。

 木場はそれを目の前にして苦笑いをした。

 

「ははは…まいったね。小猫ちゃんにそんなことを言われたら僕も無理は出来ないよ。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。でもやるからにはエクスカリバーを倒す」

 

 彼はそう言って白旗をあげた。

 

「よっしゃ!じゃあ俺達でフリードもエクスカリバーもぶっ飛ばそうぜ!」

 

 イッセーはやっと折れた木場を見て声をあげた。

 だが一人乗り気ではない男が一人。

 

「え?俺も?」

 

 ここで黙って会話を聞いていた匙がそう言った。

 

「ん、あ。そういえばなんでいるんだお前?」

「酷すぎる…」

 

 イッセーの一言に溜息を漏らす匙。

 彼は困っていた、ここで逃がせば匙が何をするか分からないからだ。彼はまだ目の前の新人悪魔の口の堅さを知らないのだ。

 

「つーか俺って結構蚊帳の外というか小猫ちゃんに無理やり連れてこられただけなんだけど…」

 

 イッセーはどうしたものかと悩む。勝手に木場の事を話すわけにもいかない。

 

「少し話そうか…」

 

 木場は聖剣計画と自身の半生について主に匙に向けて話始める。

 

 カトリック教会で行われた『聖剣計画』、エクスカリバーの使い手を増やすための実験が行われる。対象は神器を含めた才能を持っていた子供たち。

 来る日も来る日も行われたのは人権を無視した非人道的な実験ばかり、それでも木場たちはお互いに励まし合い、神に愛されるはずだと心を奮い立たせて生き延びてきた。

 そんな彼らに与えたのは処分というものだった。

 皆が殺された、神使える者達に「アーメン」と言われながら毒ガスを撒かれて殺された。

 命からがら施設から逃げることは出来たが、既に木場の体は手遅れだった。だがそこでイタリアに視察に来ていたリアスに拾われて今に至る。

 

「同志たちの無念を晴らしたい。いや、彼らの死を無駄にしたくない。僕は彼らの分まで生きてエクスカリバーよりも強いと証明しなくてはいけないんだ」

 

 改めて本人の口から語られる過去。

 皆が沈痛な顔になる中で一人だけ違うリアクションをする男がいた。

 

「うぅぅぅ…」

 

 匙だった。号泣している、涙をみっともないくらいボロボロに流して鼻水まで出ている。

 

「木場!辛かっただろう!きつかっただろう!俺は今お前に同乗している!ああ、酷い話さ!その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つのも分かる!分かるぞ!」

 

 彼は木場の手を取ってそうまくしたてた。

 木場は若干引いている。

 

「俺はイケメンのお前が正直いけ好かなかったが、そういう話なら別だ!俺も手伝うぞ!まずは俺達でエクスカリバーの撃破だ!俺も頑張るからさ!お前も頑張れよ!助けてくれたリアス先輩を裏切るな!」

 

 イッセーが木場に言いたかったことを匙に全部言われてしまう。

 彼は最初こそいけ好かない奴だと思っていたが、想定以上に熱い男だなと感心していた。正直危ない事に巻き込んでしまったなと思っていたが、結果的に良い方向に向かいそうで安心をする。

 

「よっし!いい機会だ。俺の事も聞いてくれ!共同戦線を張るなら俺の事も知ってくれよ!」

 

 匙は気恥ずかしそうにしながらも目を蘭々と輝かせながら語り始める。

 

「俺の目標はソーナ会長と出来ちゃった結婚をする事だ!でもな、出来ちゃった結婚ってのはモテない奴にとってはハードル高いんだぜ?出来ちゃう相手がいない訳でさ…でも、俺、いつか会長と出来ちゃった結婚するんだ…」

「な、なんだと…」

 

 相手の独白を聞いてイッセーの中にこみ上げるものがあった。

 

「分かる…分かるぜ匙!俺も部長の胸を揉んで吸う!それが今の目標だ!」

 

 そう、前にライザーの件でご褒美をもらう予定だったが、胸を揉むだけで終わってしまった。

 リアス的にはそれでいいでしょと言った感じだった。

 彼としてもあの柔らかさは忘れられないいい体験だったのは間違いない。

 それを聞いた匙は一拍空けて涙を流す。目の前に突然現れた理解者であり、同じ志を持つ同士。

 

「兵藤!お前分かっているのか!上級悪魔の主様のお乳に触るのがどれほどのものか!」

「安心しろ匙、俺は部長の胸を揉んだ事がある。ラッキースケベじゃない…しっかりと揉んだんだよ!」

「バカなっ!そんな事が可能なのか!?」

「嘘じゃない!俺は確かに触れたんだ。今でもその感触は忘れねえよ」

「す、吸う?吸う場所は乳首なんだよな?」

「バカ野郎が、おっぱいで吸うと言ったら乳首しかないだろうが!俺もお前も頑張ってご主人様とエッチしようぜ」

「うん、うん!」

 

 男二人が手を取り合って熱く語りあう。

 先日、つまらないいがみ合いをしていた下級悪魔の二人はそこには無かった。

 

「…あはは」

「…最低です」

 

 その話し合いに混ざれない二人は苦笑いと軽蔑の視線を向けていた。

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