ちょっと不幸なイッセーくん   作:高町廻ル

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魔性の女悪魔になれるわよ

「けつ痛い…アーシアに治してもらお…」

 

 イッセーとリアスが帰る頃には日も沈んで夜になっていた。

 別れ際に小猫は謝りながら尻を抑えていた。だがきっと後悔はしていない。

 

「ただいま」

「ただいま帰りました」

 

 玄関の扉を開けながら挨拶をして入る。

 すると廊下の突き当りから母親が顔をのぞかせる、手招きをして来いとジェスチャーを送って来る。

 

「なんだろ」

「さぁ…?」

 

 イッセーとリアスは含みありげなその行動に疑問符を浮かべる。素直に二人は招かれるままに廊下を歩いて台所の方へと向かう。

 

「ほらアーシアちゃん!」

「はぅ!」

 

 すると三希に押されたアーシアが飛び出してくる。

 エプロン姿のアーシア、だが明らかに肌面積が広いのだ。そう、裸エプロンというやつだ。

 

「アーシア!そ、そんな素晴らしい…いや、なんていやらしい格好をッ!」

「ク、クラスのお友達に聞いたんです…日本のキッチンに立つには裸にエプロンだと…恥ずかしいですけれど…日本の文化に溶け込まなくては…下が無いとスースーしますね…」

 

 顔を真っ赤にしてもじもじしている。しれっとノーパン宣言もしている。

 日本の文化というよりはピンク文化だ。最近リアスの影響を受けて貞操感にバグが起きているアーシア。

 

「アーシア…誰に聞いたんだ…?」

 

 鼻時が出そうになるのをグッと堪えて問いかける。気を抜いたらきっと止まらない。

 

「桐生さんから」

「やっぱりあのエロ眼鏡か!」

 

 案の定だった。そして情けない事に彼はよくやったと思ってしまう。桐生、侮れない女。

 頑張るアーシアを見て三希は優しそうな笑みを浮かべ始める。

 

「うふふ、可愛いでしょう?母さん大賛成よ?若い頃を思い出すわぁ…」

「父さんとそんな事を!?聞きたくなかった!!」

 

 親の情事ほど知りたくないものは存在しない。

 

「…なるほど、その手があったわね」

 

 その光景を見てリアスは悔しそうにしている。

 

「アーシア、あなたは魔性の女悪魔になれるわ。エッチな子ね」

「えー!私エッチな悪魔になりたくないです!」

「何なんだこの会話は?」

 

 裸エプロンを装着(脱衣)してエッチになりたくないはもう意味が分からなかった。

 

「少し待っていなさい、私もそれをやるわ。私から先手を取るなんてやるようになったわね」

「待ってリアスさん、私も手伝うわ」

 

 リアスは足早に奥へと歩いて行く。そしてその背中を追いかけていく親。

 

「イッセーさん、どうですか?」

 

 アーシアは無自覚なのかエプロンの端をつまんで格好を見せる。端を掴むなんてそんな事をしたら大事なところが見えそうに。

 

「アーシア、似合っていると思うよ…?…この言葉がこの場での正しい使用法かどうかは分かんないけどさ…」

 

 ちょっと鼻にこみ上げるものがあったが何とか返事をする。

 裸エプロンという事は後ろ側は間違いなく全裸に近い事になっているはずだ。その妄想をするだけでご飯がいけそうだった。

 

「イッセー!私も着てきたわ!」

 

 リアスも裸エプロンで飛び込んできた。

 イッセーはここでやって鼻から熱いものを流した。胸も股もギリギリ隠れている程度でしかない!

 

 その後、帰ってきた父親もまた裸エプロン二人の料理風景を見て卒倒した。だが顔は幸せそうなすけべ顔だった。

 父上曰く両方娶れよとのこと。

 

 

 次の日、イッセーは教室の机でもの思いにふけっていた。

 

「はぁ~…」

 

 昨日の夜にリアスに家から出るなと言われたからだ、彼個人としては木場とエクソシスト二人の安否が気になっていた。

 正直あの三人がフリードとコカビエルを相手取って五体満足で帰って来れるとは思えないのだ。

 一応リアスと朱乃の使い魔を町中に放って探索はしているそうだが、見つかった時にはもう手遅れの可能性が高い。いくらなんでも自ら死を選ばないとは思いたいが、教会の信仰心は度を越えてしまうところがある。

 

「最近難しい顔をしてばっかりだな」

 

 元浜は頬杖をついているイッセーに話しかける。

 

「俺だって色々考えてるさ」

「あれか?リアス先輩と姫島先輩のおっぱい、どっちを揉むかか?」

 

 松田はいつも通りの下品なトークをおっぱじめる。

 

「それはいつも考えてるよ。形やハリは部長、大きさなら朱乃さんだよ」

 

 真剣な表情を崩さずに真剣にそう語る。

 その語る姿はまさに専門家だった、おっぱい専門家、なお童貞。

 

「お前…いい加減先輩たちの信者とファンクラブの奴らに殺されるぞ…」

「元浜よ。おっぱいは命より重い、覚えとけ」

「深すぎる…」

 

 共学の教室内でする会話では無かった。

 

「…………」

「あーひあ、なんやよ?」

 

 ふくれっ面でイッセーの頬をつねるアーシア。どうやら先ほどの会話はしっかりと聞かれていたようだ。

 

「アーシアちゃんまでイッセーの毒牙に…うおおおおっ!!」

 

 松田は頭を抱える。どこでこんなに差が出たのかと。

 

「ところでイッセー、例のボウリングとカラオケの会合はどうなってるんだ?」

 

 気を取り直した元浜が話しかける。

 前に元浜と松田二人と遊びに行く予定を立てていたのだが、折角だからとアーシアと桐生も誘った。

 せっかくだからと小猫にも声をかけていた。木場の一件が解決した記念で無理矢理来させると言ったら結構乗り気で来ることに。

 

「アーシアに桐生、小猫ちゃんは来るよ。後、木場は微妙だな」

「うおおおっ!アーシアちゃんに搭白小猫ちゃん!これだけでテンションあがるぜ!」

 

 松田は涙を流しながら感謝をしていた。どんだけ女子との会話に飢えているんだ。

 

「悪かったわね。私も行くことになって」

 

 松田の頭をはたきながらじろりと睨む桐生。

 叩かれた側も負けじと言い返す

 

「ふっ、お前はアーシアちゃんのオプションさ。メガネ属性は元浜で間に合っている」

「そこの変態メガネと一緒にしないでくれる?属性が穢れる」

「元浜のメガネは女子のサイズを数値化出来る特殊なものなんだぞ!お前とは違う!」

 

 元浜は服の上からでも女子のスリーサイズを判別する事の出来る特殊なスキルを持っている。ヌーブラから寄せたり上げていても正確に判別することが出来る、正直透視能力としか思えない。

 だがそれを聞いた桐生は不敵に笑む。

 

「まさかその能力が元浜だけのものとでも?」

『ッ!?』

 

 桐生の視線が男たち三人の股間に向けられる。その意味に気が付いて手でアレを隠すが時すでに遅し。

 

「なるほど、なるほど」

 

 何やら測り終えたようで頷いていた。

 

「兵藤、アンタは結構ある方だから大丈夫よ」

「女の子にセクハラ受けてるよ!」

 

 彼女は肩を叩いてそう言った。

 

「良かったわねアーシア」

「?」

 

 どうやらアーシアはアレの意味を分かっていないようだった。騙されやすすぎて不安になる。

 桐生は意味を理解出来ておらず疑問符を浮かべる。

 

「もう、しょうがない子だわ…えっとね、兵藤のアレが…」

「アーシアに変なことを吹き込むな!」

 

 これ以上癒し枠を消さない為に必死に止める。

 止められた桐生は面白くなさそうだった。

 

「まあいいわ。ところで木場君は難しそうなの?」

「いや、無理やりでも来させるよ」

 

 イッセーは何が何でも木場を連れ出すつもりだった。

 

 

 放課後になって事態は急転した。

 皆が部室に集まっている。ただし木場を除いて。

 

「部長、イリナさんを見つけましたわ。これは…」

 

 朱乃の使い魔がイリナを発見した。だが想定上に事態は悪化していた。

 

 

 イッセー達が急いでイリナのいる町全体を見渡せる丘の上に急行すると血まみれのイリナが倒れていた。

 

「イリナ!」

 

 イッセーは素早く傍に駆け寄った。

 いつもであれば罠かもしれないと疑うところだが、今の彼にその余裕はなかった。

 

「いっ…せーくん…?」

 

 彼女はまだ意識はあるようで自分のもとに駆け寄ってきた相手にそう話しかけた。だが安心したのか直ぐに気絶をしてしまう。

 現在進行形で彼女は血を流している。素人目からでもとにかく出血の勢いが激しい、一瞬でコップを満たす勢いだった。

 

『まずいな…ドラゴンの力で無理矢理体を活性化させて血を作っているな…早くあのシスターに治させるんだ』

 

 ドライグはそう判断した。

 例えるなら止血をしていないのに無理矢理輸血をしているようなもの。正常な回復など望めない、それどころか命すら削っている。

 

「アーシア頼む!」

「は、はい!」

 

 指示を受けて慌ててイリナの体を癒しの力で包み込む。アーシアの神器の力によって傷口は分かりやすく消えていくが、顔色の悪さは戻らず嫌な汗をかき続けている。

 そのタイミングで会長と副会長であるロングヘアーの眼鏡をかけた女性、そして匙が現れる。

 リアスは真っ先に話しかける。

 

「ソーナ、来たのね」

「流石に黙ってみているわけにはいきません」

 

 もう既にこの土地の悪魔だけでは対処出来なくなりつつあるのを肌で感じていた。

 前に堕天使レイナーレと小競り合いを繰り広げた時は不干渉だった。だが今回は匙が首を突っ込んだせいもあるが、もう一人の上級悪魔も介入を決めた。

 

「傷口は治りました…けれど私の力で治せるのは目に見える傷だけです。失った血と体力は戻りません…」

 

 アーシアからの報告にソーナはなるほどと頷く。

 

「分かりました。では椿姫お願いします。いくら教会側でもさすがにこの状況で文句は言わないでしょう。敵から情報を得るためにとでも大義名分をつけておきましょうか」

「はい」

 

 呼ばれた副会長の真羅椿姫はイリナを抱きかかえて魔方陣でジャンプした。

 当然情報を得るためではないイリナを治療するためだ、お互い不干渉と話はつけているがこの状況で人命を助けて文句を言われる筋合いはない。

 

「匙来てくれたか」

「それよりどうなってんだよ。あの子が紫藤さんか?血まみれじゃないか」

 

 イッセーは来てくれた相手に話しかける。だが匙からすれば突然女の子が倒れている現場に放り込まれて意味が分からないだろう。

 

「まあ罠だろうよ。わざわざイリナを生かす理由が無いからな」

 

 イッセーは林の方に視線を送る。先ほどから一人この場にいるのは察していた。

 

「やあやあ…ご機嫌麗しいねぇ…」

 

 木の間から出て来たのはフリードだった。

 右手に聖剣エクスカリバーを握っている。そして神父服が膨らんでいる、恐らくだが他のエクスカリバーも隠し持っている。しかもよく見たら左肩には白い紐『擬態の聖剣』が結ばれている。

 

「うおっ!」

 

 フリードが汚い言葉を続けざまに吐こうとするのだがリアスとソーナが素早く手に魔力をまとわせて相手に攻撃を加える準備をする。

 

「いやいやいや!ちょっと待ってちょ!ここに何の策もなく来るわけ無いんだなぁ~ここには挨拶がてら来たんだって!」

 

 フリードがそう言った瞬間この場所の重圧が何段階も上がった。

 それを察知して籠手を取り出す。

 

「上っ!」

 

 リアスが気配に気が付いて空に視線を向けると十枚の黒い翼を携えた、装飾残った服を着た堕天使がいた。

 

「初めましてかな、グレモリー家の娘。紅髪が麗しいものだ。忌々しい兄君を思い出して反吐が出そうだよ」

「ごきげんよう、堕ちた堕天使の幹部、コカビエル。政治的な交渉を求めるなら無駄だわ。グレモリー家は魔王様とは最も遠く近い存在」

 

 リアスは堂々と向き合った。

 聖書に刻まれるおとぎ話の存在が今目の前にいる。

 イッセーはコカビエルの持つ圧力のせいか、リアスの堂々とした態度が、小動物が必死に見栄を張っているようにしか見えなかった。

 

「魔王と交渉をするだなんて馬鹿なことはしない。お前の根城であるこの街で暴れればサーゼクスも出てくるだろう」

 

 コカビエルの口から出てくるそれは悪魔と戦争を起こそうとしているという極めて危険な思考。

 

「そんな事をすればまた戦争が起こるわよ?」

「願ったりかなったりだ。エクスカリバーを盗めばミカエルが戦争を仕掛けてくるかと思ったが、寄越してきたのはたかだが聖剣使い数人。あまりにもつまらん!」

「…………」

 

 コカビエルの自分勝手な意見にイッセーは頭が沸騰しそうだった。そんなつまらない理由で多くの人を傷つけたのかと。

 

「だから暴れるんだよこの場所で」

「戦闘狂め…」

 

 リアスがそう反応するが相手は嬉しそうな反応を示す。

 

「そうだ!そうだとも!俺は戦争が終わってから退屈で仕方なかった!アザゼルもシェムハザも戦争には消極的。それどころか神器とかいうつまらんものを集め出して研究に没頭している」

 

 そこでイッセーに視線を向ける。

 彼は真正面からそのプレッシャーを真正面から受けとめたが、隣に立っていた匙は体を震わせていた。

 

「俺の神器を狙ってんのか」

「さあな、アザゼルなら欲しがるかもしれないが俺は興味ないな。まさかあの時逃がしたそれが立ちふさがるとはな」

 

 それが本気なのか不明。

 赤龍帝がいるというのも一種のイレギュラーとして捉えているのか、戦いが盛り上げればどうでもいいのか心の内を読むのは難しい。

 

「どちらにしろここで聖剣をめぐる戦いをさせてもらうぞリアス・グレモリー。さぞ魔力が立ちこめて混沌が楽しめるだろう!エクスカリバーを開放するにも最適だ!」

「ひゃはは!最高でしょ、うちのボス!これ全部使える超ご都合ハイパー状態なんだぜ?」

 

 そう言ってフリードは神父服のローブをがばっと広げる。そこには予想通り二本のエクスカリバーが帯剣されていた。

 そして分かるのはやはりバルパーとコカビエルはグルだったという事。

 

「バルパーの聖剣研究もここまでくれば本物か」

 

 コカビエルはそれ見てさぞ満足そうだった。

 

「ハハハ!戦争をしよう、魔王サーゼクス・ルシファーの妹よ!」

 

 そう言って十枚の翼をはばたかせて駒王学園の方へと飛んで行く。

そして一瞬それに気を取られたせいでフリードもこの場から逃げていた。

 

「リアス」

「ええ、分かっているわ」

 

 上級悪魔の二人はコカビエルの向かった場所は分かっている。根城である学校に向かったのだ。

 既に夕日は傾いて夜の時間が始まろうとしていた。

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