「おじゃましまーす」
イッセーはある日の深夜、依頼主の元へとジャンプした。
今日の顧客は最近彼を贔屓にしている二十代くらいの男性。
「よー悪いな悪魔くん」
「どうもです」
依頼主の男性は手を軽く振って挨拶をする。
最近彼の悪魔家業としてスコア更新に貢献していくれているありがたい存在。
偏見と言ってしまえばそうなのだが顔立ちは外国人だがいつも浴衣を着ている。
イケメンだが木場みたいな爽やかな感じではなく、ワイルド、ちょい悪的な感じか。
ここ連日はこの男にお呼ばれされている。依頼内容は悪魔に頼らなくてもいいようなものばかり。パンを買いに行ったり、一緒に夜釣りをしたりなどだ。
正直対価を貰う必要も無いものばかりだが、相手はそれに反して何故か高級な品物ばかり送ってくるためここ最近のイッセーはアホ程儲けているのだ。
(つーかこの人…普通の人じゃないよな?)
『そうだな、だがわざわざ悪魔を呼ぶ理由が分からないな』
イッセーは目の前の男がたまたま悪魔に依頼しただけの一般人とは思っていない。
タワーマンションの上階に住んでいるというだけではなく、一の説明で十以上の理解をしているからだ。恐らくだが悪魔に慣れている。
そして何より胡散臭いのだ。
彼からしたら上級悪魔への道が広がるならこのボーナスタイムは逃せない。別に相手に説明はしているし、詐欺行為を働いているわけでは無いからいいのだ。
「悪魔くん、今日はゲームでもやらないか。昼間に買ったんだが相手してくれないか」
既にテレビに接続されているゲーム機。コントローラーがテーブルの上に二つ置かれていた。
準備万端の態勢、これをやる相手を確保するために悪魔を召喚したというのか。
「はい」
イッセーは特に拒否する理由が無いため肯定の返事をする。またこれか…と心の中で思わなくはないが別に拒否する理由もない。
依頼主はゲーム機を弄ってソフトをセットする。
「よし、ゲームもセット出来た。日本ってのは暇つぶしのアイテムが多くていいな」
「あ、これ新作のやつですね」
元浜が好きなレーシングゲームシリーズの新作だった。
小遣いを貯めて買うと学校で言っていた。過去作も何度か付き合わされたものだった。
「おっ結構ゲームとかやった事がある口か?」
「よく友達に付き合ってゲーセンとか据え置き機とか色々とですね」
「そりゃ楽しみだ、こっちは初心者だから軽く頼む」
『GO!』
開始と共にイッセーのマシンはスタートダッシュに成功する。一方の依頼主は最下位からスタートした。
最初は手を抜いて程よく負けようかと考えていた。
だが途中から相手が操作の仕方を理解したのか追い上げて来た。
「まじか…」
終わってみたら負けたのはイッセーだった。
正直ショックではあった、最初は間違いなく初心者だった。でも最後の方ではコースの癖もマシンの特徴も理解して操作していた。
「覚えるの早いですね…」
「じゃあもうひとレースお願いしようか、赤龍帝」
「…………」
『Boost!』
その瞬間イッセーは『赤龍帝の籠手』を起動させて攻撃に出た。
ドオン!とタワーマンションの壁が突き破られる。壁がとても風通りが良くなってしまっている。
並の相手ならこの一撃で吹き飛ばされている。
「判断が早いな。動きに迷いがない。最近の平和ボケしてる悪魔とは違うな、やっぱ」
だが男はイッセーの腕を握って抑え込んでいた。
「…あんた誰だ?」
一切の隙を見せずに睨みつける。
腕を握りしめて抑え込まれた。そんなことが出来る相手がまともな人なはずもない。
「アザゼル。堕天使どもの頭をやっている。よろしくな兵藤一誠」
男は背中の翼、十二枚を展開した。
◎
「冗談じゃないわ」
リアスはイッセーを抱きしめてそう言った。
抱きしめられている彼はいつもならその柔らかい感覚を楽しんでいるところだが、今だけはその気にはなれなかった。
アザゼル、恐らくだがあの堕天使はイッセーの故郷も全て知ったうえで、のこのこと目の前に現れた。
神器のマニアでもあるあの男は赤龍帝の籠手の情報を知らないはずがない、そして過去故郷が蹂躙されたあの一件に噛んでいる可能性の高い堕天使。
正直、心の中に溜まっている毒々しい感情を抑え込むので精一杯なのが本音だ。
彼は黒い部分がバレてないよなと不安になるが、皆は乱心のリアスの方に意識がいっている。
「三すくみのトップの会談が行われるとはいえ、堕天使の総督が営業妨害をしていたなんて…!」
リアスはぷるぷると体を震わせて怒りをあらわにしていた。
堕天使の総督が素性を隠して秘密裏に接触を図って来た。営業妨害だし、お茶目でしたでは済まされない。
あの後、イッセーが壊したタワマンはリアスが全額弁償と隠蔽工作をした。
イッセーはその事について謝ったが、相手は無事で何よりと言っていた。
「しかし私の可愛いイッセーに手をだそうだなんて万死に値するわ!アザゼルは神器に強い興味を持っていると聞いているわ。イッセーが『赤龍帝の籠手』を持っているから接触を図ってきたのね」
リアスはイッセーぎゅうっと力強く抱きしめてそう言った。
実際彼の持つ神滅具に興味があるのは事実だろう。
「案外…謝りに来たんじゃないですかね」
イッセーそれとなく言ったが、仮にそうだとして謝られたところで迷惑なだけだった。
もう死んだ家族も故郷も謝られたところで戻ってこないのだから。
「僕がイッセー君を守るからね」
ここで木場は前に出て来た。
「真顔で男にそう言われても反応に困るぞ…」
イッセーは正直反応に困る。
突然そんなことを言われても自分の事くらい自分でやるしとしか思わない。
「真顔で言うに決まっているじゃないか。キミは僕を助けてくれた大事な仲間だ。仲間の危機を救わないでグレモリー眷属の『騎士』を名乗れないさ」
「いや…お前のそれは男じゃなくてヒロインに向けるものだろ…」
同性からそんな事を言われても持て余す。というか身に危険を覚えてしまう。
木場は何を返されても気にせずに言葉を繋げる。
「僕の『禁手』とキミの『赤龍帝の籠手』が合わさればどんな危機でも乗り越えられる気がするんだ。少し前までこんなことを口にするタイプではなかったんだけどね。けれどそれが嫌じゃないのは何でだろう。胸の辺りが熱いんだ…」
「うへぇ…」
イッセーは苦い顔をした。何故男に口説かれなきゃならんのかと。
最近女子たちの間で木場との不本意すぎるカップリングの噂が広まっている。これ以上BL関係が広まるのは勘弁願いたかった。
彼が木場の手助けをしたのはリアスが暴走する木場見て心を痛めていたからと、木場の事情に同情した部分があるからだ。
言葉で憐れんだところで火に油を注ぐだけ、なら行動で手助け出来ればと思っただけだ。結果としてそれが変なスイッチを押してしまったわけだが。
「しかしどうしたものかしら…」
リアスは頭を悩ませる。
下手に堕天使に手を出したら均衡状態が崩れてしまう。ただでさえ先日のコカビエルの一件で危ういというのに。
「アザゼルは昔からそういう男だよ」
突然響いた声。皆がそちらに視線を向けると紅髪の男性がにこやかに微笑んでいた。
イッセーはこの人物が誰なのか分からなかった。それはアーシアとゼノヴィアは同じようで疑問符を浮かべている。
だが朱乃達はすぐさま膝を突いた。
リアスはイッセーに座るようにジェスチャーをして驚いた声をあげる。
「お、お、お兄様!」
目の前にいるのは悪魔社会のトップに立っている男、サーゼクス・ルシファーだった。
そしてその隣にはメイドのグレイフィアが。
「先日のコカビエルのような事はしないよ、アザゼルは」
改めてサーゼクスは挨拶をする。
「くつろいでくれたまえ、今日はプライベートで来ている」
皆がそれに従って顔をあげた。
「お兄様…どうしてここに…?」
「授業参観が近いのだろう?私も参加しようと思ってね」
彼の手には授業参観のプリントが握られていた。
イッセーはそれを見て、親が有休をとってでもアーシアの元へ馳せ参じると言っていたのを思い出した。あの両親はこの手のイベントは基本参加するのだが。
「いち魔王が一人の悪魔を特別視してはいけません!」
リアスは顔を真っ赤にして可愛らしく拒否している。
イッセーは照れ隠しをしてるのかなと思った。態度から見て嫌っているわけでは無いのは分かった。
「いやいやこれは仕事でもあるんだよ。実はここで三すくみの会談をしようと思ってね。下見に来たんだよ」
皆が驚く。この町に天使や堕天使の長がやってきて話し合いを行う。
リアスが代表で問いかける。
「ここで、本当に?」
「この学園はどうやら何かしらの縁があるようだ。余りに偶然では片付けられないようなことが起こっている」
サーゼクスはチラリとイッセーを見た。
(知らんがな…)
別にイッセーが何かしたわけではない。
どちらかといえばリアスが魔王の妹だからこそコカビエルが襲来して、白龍皇がその後始末の為に派遣されたのだが。
「あなたが魔王か初めまして、ゼノヴィアという者だ」
ゼノヴィアは臆せずに挨拶をかました。
その堂々とした態度にも相手は姿勢を崩さない。
「ごきげんよう、ゼノヴィア。私はサーゼクス・ルシファー。リアスから聞いているよ、伝説のデュランダル使いが悪魔に転生するなんて…初めて聞いた時は耳を疑ったよ」
そう言われてゼノヴィアは頭を抱えだした。
私は何故悪魔に?とかこれでよかったのか?うわごとのように呟いている。そして神に祈りだしてダメージを受ける。
「ハハハ、リアスの眷属は楽しい者が多くていい」
イッセーは立場も実力も数段高位の相手だというのに、相手を威圧しない不思議な空気感を持った人だなと思った。
「さてこれ以上は難しい話をしても仕方ない。うーむ、しかし、人間界に来たとはいえ夜中だ。宿泊施設は空いているだろうか?」
サーゼクスふとそんな事を呟いた。
既に時刻は夜遅くになっている。ホテル等の宿泊施設が開いているかは微妙なラインだった。
ふとサーゼクスの視線がイッセーに向けられる。
◎
「なるほど、妹が迷惑をかけていなくて安心しました」
「そんなお兄さん!リアスはとてもいいひとですわよ」
「ええ、リアスはイッセーにはもったいないくらい素敵なお嬢さんです」
兵藤家のリビングで伝説の魔王様と兵藤夫妻が朗らか対談している。
ホテルを手配する手間がかかるため、今回は急遽兵藤家に泊まる事になった。サーゼクスもお世話になっている家の人にお礼をしたいと思っていたのだ。
リアスは恥ずかしそうに、アーシアはハラハラしている。
サーゼクスの人間界での身分は複数の企業を束ねる実業家の跡取り息子で「サーゼクス・グレモリー」と名乗っている。
「そちらのメイドさんは…?」
五郎は気になった事を質問した。
サーゼクスの背後にはグレイフィアがじっと待機していたのだが、日本人的な感覚ではメイドは馴染みがない。スーツ姿の秘書なら分かっただろうが。
彼は「グレイフィア」ですと言った後、とんでもない爆弾を。
「私の妻です」
『ええええええっ!』
リアス以外は驚いた。
グレイフィアは無表情で頬をつねる。
「メイドのグレイフィアです」
「いたひ、いたひよ、ぐれいふぃあ」
つねられていても朗らかな顔を崩さない。
こんな間抜けた構図なのにイケメン度が下がらず、お茶目さだけが上がるのはカリスマがなせる業なのだろうか?
「それではグレモリーさんも授業参観に?」
「ええ、仕事も一段落しましたし、この機会に学び舎と妹の授業風景を見ようかと。当日は父も来ます」
五郎は話している途中でキッチンに向かうとお酒のボトルを取り出した。
イッセーはどのようなブランドなのか知らないが、そこそこいい品なのだろうと思った。
「グレモリーさん、お酒は行けますかね?日本のおいしいお酒が」
「それは素晴らしい!ぜひともいただきましょう!日本の酒はいける口なのでね!」
◎
「…………」
イッセーと魔王は自室で一緒に寝ていた。
理由はサーゼクスが話したい事があるから一緒に寝たいという事だった。
リアスは凄い嫌がったが、サーゼクスが真面目な表情でお願いをしたため折れた。
いつもであれば嗜めるであろうグレイフィアも今回は援護射撃をしていたところから、リアスは本当に大事な話があるのだと分かったため納得をした。
ちなみにイッセーがベッドでサーゼクスが床に布団で寝ている。本人曰く床で寝る経験が無かったため進んで床で寝ている。
「アザゼルに会ったそうだね」
サーゼクスから話しかけてくる。
イッセーが返事をしていく。
「はい」
「何か言われたのかな」
「『今度改めて会いに行く』だそうです」
あの後、すぐさまリアスたちが駆け付けてアザゼルと一触即発(既にイッセーが攻撃を加えている)になったが、当の本人は手を振って何処かへと飛んで行ってしまった。
「そうか。アザゼルは神器に対して強い興味を持つ。既に複数人の神滅具使いが彼の元へ身を寄せている」
「何のためにでしょうか?」
「それは分からない。アザゼルは天界、冥界、そして人間界に多大な影響を与える事の出来る組織の総督だ。ただ彼はコカビエルのような戦好きではない、最初に戦争から手を引いたのは堕天使だったくらいにね」
イッセーの知らない歴史が語られる。
人間界に影響を与える、もし仮にアザゼルの機嫌が変わればこの街は再びコカビエルの時のように戦場になるかもしれない。
サーゼクスはイッセーの雰囲気に何かを察したのか話しかける。
「安心しなさい。君の事も家族の安全も保障するよ。元々リアスから君の安全の保障を悪魔社会全体でするように契約を打診されていたんだよ」
イッセーは長い事思っていた疑問に一つ納得をした。
何故自分の周りだけを守るのに転生をする、つまり命を担保にしなければいけないのだろうとずっと疑問に思っていたのだ。
その理由は『赤龍帝の籠手』の存在は悪魔社会と契約をしなくてはいけないレベルの存在だったのだ。それこそ寿命が尽きるその時まで悪魔の利となる行動をしなくてはいけないほどに。
その割には危険なことが起こり過ぎているような気がしなくもない。コカビエル襲来はあまりにもイレギュラーが過ぎるが。
「君とは…そうだね、リアスと同じでイッセーくんと呼んでいいかな?」
「はい」
「ありがとう、ではイッセー君。君と話したい事はいくつかあるが…まずはライザー・フェニックスの件、ありがとう」
そう言われて少し戸惑ってしまう。
これまでリアス以外のグレモリー家の人と話したことが無かったため、婚約破棄の一手を決めたイッセーを実際にどう思っているのか不安だった。
そして言われたのが賞賛。
「ええっと、サーゼクスさま的には婚約は反対だったんですか?」
「そうだね、魔王として反対は出来ないけれど、まだリアスに婚約や跡継ぎは早いと思っていたよ」
「難しいんですね…」
兄と魔王を両立する難しさ。ソーナもそうだったが悪魔社会の貴族はしがらみが多いのだろう。
「こちらが本題なのだけれど…」
サーゼクスは少しだけ間をおいて話始める。
「今回の会談で悪魔サイドとしては天使と堕天使の双方に和平を持ち込もうと思っている」
「えっ!?」
イッセーは驚いて上体を上げた。
和平、つまり今の冷戦状態を解消して、もう二度と戦争しないという明確な取り決めと枠組みを作ろうという事だ。
「和平ですか…?」
「もう今のこの三すくみに次の戦争をする体力は正直無い。知っていると思うけれど神はいない。また戦争が起これば人間もそして三大勢力全てが共倒れする。それは魔王として望むところではない」
サーゼクスの瞳には明確な決意があった。この会談を絶対に成功させるという強い決意だ。
「そんな大事な事…俺に言っても良かったんですか?」
「勿論会談までこの事はオフレコで頼むよ。といっても教会とグリゴリサイドには既に和平案のタンパリングを進めているけどね」
「分かりました」
とんでもない事を伝えられたなと今更ながらそう思う。
「それでイッセーくんに教えた理由は君が『赤龍帝』だからに他ならない」
「赤龍帝が?」
「神滅具の使い手は一人で三大勢力のパワーバランスを崩しかねない存在だ。妹の眷属にこのようなことを思うのは失礼だが、大きな交渉のカードを悪魔側は持ったと思っている。個人的には君の意向がこの会談では大きく左右すると私は思っている」
サーゼクスは改めて体を上げてイッセーをじっと見つめる。相手の瞳の奥に隠しているものを見透かそうとするかのように。
「君はとても強かな瞳をしている。この世の理不尽を見て来た面構えをしている。たった十七年日本で平和に生きて来たのでは到底そんな顔つきにはならない」
魔王として永く生きて世界の様々な事情を知っているからこそ、イッセーの中にあるものの一端に気が付いていた。
「だからこそ会談の前に君が何を経験して何を考えているのか知りたいんだよ」
サーゼクスが魔王として強制をしていないのはイッセーも分かった。
話せという高圧的なものを相手から感じない。そこはリアスと似ているなと思った。
彼女もイッセーの生まれについては何となく気が付いているが、それを無理に聞こうとはしない。
アザゼルと恐らくだが天界側の代表であるミカエルが来るのであれば、二人からイッセーの過去の事が漏れるのは避けられない。あの二人は昔の事に関わっているだろうから。
もう隠す事でもなくなっているため覚悟を決める。
「ではこれも会談までオフレコで」
「うん、魔王の名に懸けて。勿論グレイフィアにも」
確認を取ると、イッセーは昔話を始めた。
話し始めてどれくらいの時間が経ったのか分からない。
電気を消している部屋では時間の感覚が曖昧になる。その間サーゼクスは何も口を挟まず黙って話を聞いていた。
「そうか、君の事は分かった、よく頑張ったね。それを踏まえて今結論を出さなくていい、会談の日までに結論を出して欲しい、その力と赤龍帝という名前、どう向き合っていくのか」
「ありがとうございます」
正直イッセーとしては和平に傾いてはいる。
まず和平が成立すればイリナと再会するのも難しいものでは無くなるから。そしてこれから先、自分と同じような境遇の人が減った方が良いに決まっている。
しかし一方でまだ堕天使と天使たちに対して憎い気持ちが消えたわけでは無い。ここで和平かそれを拒むのか決めろと言われても困るだけだった。
相手もそれを察してか無理に話を進めなかった。
「俺からも一つだけいいですか?」
「なんだい?」
イッセーは一つだけ知りたい事があった。
リアスは知らないようだったが、魔王であるサーゼクスなら知っていると思ったのだ。
「ぶちょ、リアス様の前任悪魔のクレーリアって人は今何をしていますか?」
かつて一度だけ邂逅した悪魔の女性。
個人的には優しそうだなといった印象を受けた。
「…どうしてその名前を?」
サーゼクスはここで初めて顔に僅かだが動揺を見せた。相手からその名前を聞くとは思っていなかったのだ。
「たまたま会った事があるんです。相手は俺が赤龍帝とは気が付かなったはずですけれど」
「なるほど…」
「十年前に教会の人…八重垣さんと森の中で密会したのを見ちゃったんです。その後悪魔も教会もこの街から手を引きました」
サーゼクスは少しだけ苦しそうにしていたが、観念したのか話始めた。
「分かった、けれどこれはしかるべき時まで口外をしないようにして欲しい。決して誰にも、リアスであっても」
「はい」
サーゼクスはこの街で十年前に起きた一件を教えた。
それを聞いたイッセーは結果として和平に対する思いを強くする事になった。