ちょっと不幸なイッセーくん   作:高町廻ル

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だから何?

「アザゼル、神器の所有者を集めてなにをしようとしていた?神もいないのに神殺しをしようとしていた訳でもあるまい?」

 

 外で暴れ回っている『白龍皇』を眺めながらサーゼクスは問いかけた。

 戦争を避けている男が勢力図を一変させるほどの力をかき集める。その行為は他勢力からしたら挑発として捉えられてもおかしくはない。

 戦争を否定しながら何故そのリスクを背負ってまで危険な行動を取ったのか。

 

「備えていたのさ」

「備えていた?戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いです」

 

 ミカエルは僅かに警戒心を出しながらアザゼルに物申した。

 

「戦争はしない、仕掛けない、だが自衛の手段は必要だ。だがお前達からの攻撃に備えていたわけじゃねえぞ」

「では?」

「禍の団」

「カオスブリゲード?」

 

 サーゼクスはその名称に覚えがないのか眉根を寄せる。

 アザゼルは説明をしていく。

 

「最近判明した三代勢力の危険分子を集めた奴らだ。中には禁じ手手の使い手や『神滅具』の使い手も複数人確認されている」

「その者たちの目的は?」

 

 ミカエルは問いかける。もし本当であれば戦争どころの話ではない。

 

「破壊と混乱、単純だろう?この平和な世界が気に入らないのさ」

 

 今回のテロリストはその組織が行なっている。ならそのボスは危険分子たちを纏められるほどの強い力を持っている。

 

「組織の頭は『赤い龍』と『白い龍』の他に強力で凶悪なドラゴンだよ」

『ッ!?』

 

 この場にいた全員がその正体に気がついた。

 

『そう、オーフィスが「禍の団」のトップです』

 

 突如割り込んできた声。部屋の隅で魔方陣が光り輝く。

 そこから出てきた相手にアザゼルは笑い、サーゼクスは苦虫を潰した様な顔をする。

 

「レヴィアタンの魔方陣」

 

 サーゼクスはそう口から漏らした。

 木場はこの言葉を拾って違和感。彼の中のレヴィアタンといえば目の前にいるセラフォルーの事だ。

 

「ヴァチカンの書庫で見た事があるぞ。あれは旧レヴィアタンの紋様だ」

 

 ゼノヴィアはそう言った。

 木場は得心した、そして何故今になってこの場に現れたのかと。

 現れたのは一人の女性。胸元が広く開いていて、深いスリットの入っているドレスを纏っている。

 

「ご機嫌よう、現魔王サーゼクス」

 

 女性は現の部分を強調しつつ恭しく挨拶をする。

 

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン」

 

 サーゼクスもまた返す。

 旧魔王の一族。かつて戦争で疲弊した悪魔だが、現魔王の一族だけは徹底抗戦すべしの姿勢を貫いた。

 だが悪魔という種の存続が危ぶまれる中でその理屈は淘汰され、その一族は冥界の隅へと追いやられた。

 その形で新政権が樹立され、その頭にサーゼクスやセラフォルーが拝命する形になった。

 

「なるほど、つまりそういう事だと受け取っていいのだな?」

「ええ、旧魔王の派達のほとんどが『禍の団』に協力することを決めました」

 

 つまり今回の襲撃は悪魔社会の異端分子達が起こしたということになる。

 

「新旧魔王の確執は決定的なわけだ。大変だな」

 

 アザゼルだけは面白そうに囃し立てる。

 

「カテレア、何故だ?」

 

 サーゼクスはそう問いかけるが、相手がなぜこのような行動を取ったのかは明白だった。

 悪魔こそが一番であり、他勢力と和平という形を取る事実を旧魔王派閥は了承できないのだ。

 

「あなた方とは逆の考えに至ったというわけです。神と先代魔王がいないのなら、この世界を変革すべきだとそう考えたわけです」

「オーフィスの野郎がか?アイツがそこまで考えているとは思えないんだがな」

 

 アザゼルは疑問に感じた。

 最強のドラゴンが現体制を一新したその世界の先なんかを欲するのだろうかと。

 

「彼は力の象徴としての役を担うだけです。新世界は私達が取り仕切る」

 

 今現在外で暴れている魔術師達は力に吸い寄せられて協力している輩というわけだ。

 

「カテレアちゃん!どうしてこんな!」

 

 セラフォルーは悲しそうにそう問いかけた。

 だが相手からすれば自分の立ち位置を奪った相手が煽っている風にしか見えないだろう。

 

「セラフォルー!私から『レヴィアタン』の座を奪っておいてよくもぬけぬけとッ…!」

 

 セラフォルーの言葉は相手に通る事は決して無い。

 

「わ、わたしは…」

「安心しなさい、今日貴方を殺してわたしがレヴィアタンを名乗ります。あとの『システム』と法全てを掌握します」

 

 その言葉にサーゼクスとセラフォルー、そしてミカエルは表情を翳らせた。

 

「くっ…くっくっくっ」

 

 だがアザゼルだけは楽しそうに嗤っていた。

 皆が不気味さを感じる。カテレアは不快そうにしているが。

 

「何がおかしい」

「腐敗?人間が愚か?おいおい今時そんなのは流行らないぜ?そういうのは一番最初に死ぬ敵役のセリフだぜ?」

「アザゼル!貴方は何処まで私たちを愚弄する!」

 

 アザゼルはカテレアの前に一歩出た。全身から薄暗いオーラを振り撒きながら。

 

「カテレア、降るつもりはないのだな?」

 

 サーゼクスからの最後通告が行われる。これから起きる戦いを察しているのだ。

 

「貴方はいい魔王でした。だが最高の魔王ではなかった」

 

 それが彼女の決別を告げる発言だった。

 アザゼルは窓の方へと手をやると壁一面を吹き飛ばした。

 

「旧魔王レヴィアタンの末裔。終末の怪物の一匹、相手としては悪くない。カテレア・レヴィアタン、俺といっちょハルマゲドンでもシャレこもうか?」

「望むところよ、堕ちた天使の総督!」

 

 二人は空いた壁から外へ飛び出していく。

 そして空中でお互いの力がぶつかっていく。

 

(朱乃さん達を守るかそれとも外の魔術師達を倒すか)

 

 木場はこの場での自分の行動を決めあぐねていた。

 それと同時に、イッセーが誰に言われるでもなくギャスパー奪還を選ぶという自分のやることを決めたあの行動力との差も感じている。

 

「木場祐斗くん、私とミカエルはここで結界の強化を続ける。悪いのだがグレイフィアが転送用の魔方陣を解析するまでの間、外の魔術師を始末してくれないか?」

 

 サーゼクスは指示を出した。彼がそれを断る理由はない。

 

「はい」

「ありがとう、君がリアスの『騎士』で良かったよ。その禁手を妹と仲間の為に振るってくれたまえ」

「はっ!ゼノヴィア、一緒に来てくれ」

 

 木場の呼びかけにゼノヴィアもデュランダルを構えて外へと飛び出していく。

 

 

「キリがないな」

 

 ゼノヴィアはデュランダルの聖なる波動で魔術師達を吹き飛ばしながらもそう言った。

 木場もまたそれに同意する。

 もう既に両手で数え切れないほどの敵を倒してきたが、次から次へと転移用のゲートから入り込んでくる。

 一方でアザゼルとカテレアの戦いは熾烈を極めていた。

 実力だけでいえばアザゼルの方が上手のはずだが、カテレアが予想以上に食い下がっている。

 旧魔王派の人間は当然だが現行政府の方針である『悪魔の駒』を持っていない。カテレアには自身を守る眷属はいない。

 

(あれは…)

 

 木場は懐から小瓶を取り出したカテレアを見た。

 その瓶をあおる。途端に彼女がまとうオーラが爆発的に上昇した。それはサーゼクスやセラフォルーに迫るほどの力強い波動だった。

 アザゼルが光の槍を相手に向けて飛ばす。だがそれをカテレアは右手を横に薙いだだけで弾いてしまう。アザゼルはこの場では一、二を争う程の実力の持ち主だというのに。

 二人の空中戦が熾烈を極める中、予想外の一撃が堕天使の総督を襲った。

 

 

 奇襲は成功だった。光が止むと当たり前だが敵地のど真ん中。

 

「まさかここに転移して来るとは!」

「遅えよ!」

 

 部室を占拠していた魔術師が攻撃を放とうとするが、それよりも早くイッセーが間合いを詰めて殴り飛ばす。

 

「ぶ、部長!イッセー先輩っ!」

 

 二人が声のする方へと視線を向けるとそこには椅子に縄で括りつけられているギャスパーと小猫がいた。

 

「ギャスパー!良かったわ、無事だったのね」

「部長…もう嫌です…」

 

 リアスの言葉を受けたギャスパーだが、相手の顔を見ると途端に泣きべそをかきだす。

 

「僕は死んだ方が良いんです…お願いです部長、先輩…僕を殺してください…」

 

 敵に捕らわれ利用されてギャスパーの心はボロボロなのだろう。その姿は痛々しい意外の表現が思い浮かばなかった。

 

「バカなことを言わないで。私はあなたの事を見捨てないわよ、簡単に見捨てない。やっとあなたを開放する事が出来たのに!」

 

 リアスの力強い言葉の数々。

だがその一つ一つをかけられるたびに自分の無力さというのをひん剥かれ、見せつけられているようで苦しいのだろう。

 

「さっさとこんなヴァンパイアなんて洗脳して、道具として有効活用すれば評価を得れたでしょうに。グレモリー家は情愛が深くて力が溢れている割に頭が悪いって」

 

 魔術師の一人がギャスパーと小猫に向かって刃物を向けながらもそう嘲る。

 

「私は自分の下僕を大切にするわ」

 

 リアスは冷静なままその煽りを返した。

 その態度が気に入らなかったのか、魔力の塊のようなものをリアスに向かって放つ。

 

「おっと」

 

 イッセーはその攻撃を簡単に弾いてしまう。

 魔術師はその態度に舌打ちをする。

 

「ギャスパー、私にいっぱい迷惑をかけてちょうだい。私は何度でもあなたを叱ってあげる。慰めてあげる!私はあなたを見捨てないわ!」

 

 リアスは堂々と宣言した。

 

「ぶ、部長…僕は…僕はっ…!」

 

 ギャスパーは先程までと同じで涙を流していたがそれは苦しいからだけではない。

 

「ギャスパー、俺からも言いたい事はあるぞ」

 

 イッセーここで沈黙を破って話し始める。

 

「女の子にここまで言わせておいて目を逸らすなんてあり得ねぇよな?お前は女装してようが立派な男だろ!ただ守られるだけで満足すんじゃねぇよ!」

 

 彼はそう言って籠手のアスカロンを取り出した。

 その刃先を見て敵は警戒するが斬りつけるために出したのではない。

 

「部長や俺だけじゃない!朱乃さんも小猫ちゃんも木場にアーシア、ゼノヴィアだってお前を見捨てない!お前が前に進みたいなら幾らだって寄りかかっていい!でも最初に踏み出す一歩だけは自分からだ!」

 

 彼はその剣で手のひらを切りつけて濡らす。

 血で濡れた刃を振ると血の滴が飛ぶ。側から見れば意味不明な行動かもしれない、だがギャスパーだけは頷いた。

 ギャスパーの口元に血が数滴付着する。それを舌で舐めとる。

 

「消えた!?」

 

 魔術師達は突如消えたギャスパーと小猫に驚いていた。

 イッセーとリアスは分かっている。ギャスパーがやったのだと。

 薄暗い部屋の中を徘徊するコウモリ達。

 

「クソ!変化したのか!」

 

 そう言うが既に遅い。そのコウモリ達が一斉に襲って来る。

 一匹一匹が魔術師達の全身を噛んでいく。相手は「血を吸うつもりか!?」「魔力が!」などと焦っているが、既にこの空間がギャスパーによって掌握されている。

 

「すげえ…」

 

 イッセーはこの結果に感嘆した。

 ここにはヘタレヴァンパイアの面影はなく、立派なリアス・グレモリー眷属の一員だった。

 

「あれがギャスパーの秘められた力の一部よ。貴方の血を飲んだ事で開放されたのよ」

「これで一部ですか…」

 

 末恐ろしい話だった。まだこれでもポテンシャルの一部でしかない。

 

「くっ…!ならば!」

 

 敵は苦し紛れに標準をリアスへと定める。だがその一撃は当たる事は無く宙に留まっている。

 それは間違いなく停止の力が作用している。

 

『無駄ですよ。あなた達の動き、全部見えています』

 

 空を飛んでいるコウモリたちの目が怪しく赤色に輝いている。

 魔術攻撃だけをピンポイントで止めている、間違いなく力を使いこないしている。

 

『僕があなた達を止めます!』

 

 再び瞳が強く輝くと敵の魔術師達も止まってしまう。女たちが動きを止めて何も出来ない状態。

 

「すげえっ!何か見たことあるぞこれ!」

 

 時間停止設定、アダルトなビデオでよく見る光景に彼は感動した。

 この桃源郷を可能とする神器の可能性、人の想像力は神様の次元までに昇華しているのだ。

 

「そうじゃないでしょ」

 

 リアスは興奮するイッセーの頭を軽くはたいた。

 

 

「体の調子は大丈夫か?」

 

 イッセーはギャスパーの腕にアザゼルから貰った腕輪をはめ込みながらそう聞いた。

 これまで神器の力をここまで積極的に使った事は無いと思ったため、体調等に異変はないか質問をする。

 因みに小猫の手当てはリアスがしている。

 

「大丈夫ですぅ…今は血の力が途切れて普通です…」

「副作用は無さげか」

 

 彼はそう聞いて安心する。

 ギャスパーの意志で力を使ったと言ってしまえばそれだけだが、彼があの場面で使うように強要した部分があるのは間違いない。

 だがギャスパーはその事について責める様子は無い、その事を分かって黙っているのか、元から強引でも背中を押して欲しかったのか。

 

「これでよしと…」

 

 リアスと小猫は魔術師達を縛り上げていた。

 

「二人とも直ぐ校舎に戻るわよ!」

 

 その宣言と共に全員で旧校舎から移動を始めた。

 

 

「あら…?」

 

 朱乃は何故か意識戻って何が起きているのか分からなかった。先ほどまで会議をしていたはずなのに部屋がめちゃくちゃになっている。

 

「どうやら、リアスとイッセーくんがやってくれたようだ」

 

 サーゼクスは意識が戻ったのを見て安堵したようだった。

 彼女は何が起きたのか分からなかったが、イッセー達が動いた事で何かが好転したのは分かった。

 

「サーゼクスさま、転送用術式の逆探知が終わりました。割り込みます」

「頼んだよ」

 

 それと同時にグレイフィアも敵の術式の解析を終わらせた旨を伝える。ここから反撃が始まる。

 

 

 ある程度の爆発音で察していたが、学校のグラウンドに到着すると既に戦闘が始まっていた。

 

「おーい、みんな!」

「イッセーくん!」

「無事だったか!」

 

 イッセーが声をかけると木場とゼノヴィアが振り返って安堵の表情を浮かべた。

 遠くに朱乃やアーシア、そして生徒会組の無事を確認する。

 

 ―ドッガァァァアアアアン!!

 

 イッセーが仲間たちの元へと走っているとその間に何かが落下して来た。

 

「なんだ?」

 

 落下物の土煙の先に人影がある。

 

「この状況で反旗か?ヴァーリ」

 

 そこにいたのはアザゼルだった。そしてその上空にいるのは白い鎧を纏った男。

 

「そうだよアザゼル」

 

 イッセーもこのやり取りでおおよその流れは分かった。裏切り者はヴァーリという事が。

 そして隣に女性が一人、彼はその服装に驚いた。

 

(あ、あんなにおっぱいが見える服を!しかもスリットが深く入っていて…エロい!)

 

 相手の女性の事を大した脅威とも思っていないからとはいえ、イッセーはかなり余裕そうだった。

 

「いやらしい視線を感じるのですが…アレが今代の赤龍帝なのですか?」

「…カテレア、少しは相手を見る目を養った方がいい」

 

 カテレアはそのプライド高さゆえか下賤なものを見る目(実際下賤)をしていたが、ヴァーリはその態度を見て彼女の見る目のなさに呆れていた。

 彼女は気が付いていないが、隙があるように見えてイッセーはいつでも不穏な行動を取れば攻撃できる用意はしている。

 

「裏切り者はお前か。そいつは誰だよ、知り合いか?」

 

 イッセーはここで浮かれた表情を消して問いかける。

 

「…全く、俺もヤキが回ったもんだ。身内がこれとはな」

 

 その問いかけに応えたのはアザゼルだった。

 

「いつからだ?」

「コカビエルを運ぶ途中でオファーを受けてね。自分の力を試してみたい俺としては断れない。『アースガルズと戦ってみないか?』こんな魅力的な提案をされてはね」

 

 問いかけに対して、ヴァーリは鎧のマスクを収納してそう返した。

 アザゼルの会談での主張からはズレた行動、この一件が『白龍皇』の単独行動であるのは彼も分かった。

 

「そうかよ、いや俺はいつかお前が手から離れていくのを感じていたのかもな。今日までお前は強い者との戦いを望んでいたからな」

 

 アザゼルは立ち上がりながらそうごちた。

 イッセーはその時に見せた悲しそうな表情が強く焼きついた。きっと二人の中だけにある思い出があるのだろうと。

 

「さて覚悟を決めてもらいましょうか、アザゼル」

 

 カテレアはそう言い放った。自分が負けるとは微塵も思っていないのだろう。

 

「さきほど膨れ上がったオーラといい、オーフィスのやつから何か貰ったな?」

「ええ、彼から世界変換の為に力を貰いました。これならば戦える!新世界創造の第一歩としてあなたを滅ぼす!」

 

 カテレアが全身からドス黒いオーラを撒き散らす。

 それと対峙してなお堕天使の総督は顔色を変えない。無造作に懐に手を突っ込む。

 

「神ってのは凄い。『神器』と『禁手』なんていう世界の均衡を崩せるほどのバグを生み出したんだからな。唯一俺が尊敬している点だ」

「まさかそれは…」

 

 彼女は相手が懐から取り出した短剣を見て怪訝そうな表情を作る。

 

「禁手化…ッ!」

 

 短剣から黄金のオーラが溢れ出し、それらがアザゼルの体を包んでいく。

 現れたの黒と黄金の色合いの鎧を纏った堕天使。

 

「俺の人工神器『堕天龍の閃光槍』それの擬似的な禁手状態『堕天龍の鎧』だ」

 

 ヴァーリは楽しそうにそれを見ていたが、カテレアは体を震わせていた。

 

「あいつ堕天使だろ、どうなってんだ」

 

 イッセーは人間でもないのに神器をそれも禁手を使っている事実に追い付かなくなる。

 

『いや、アレは厳密には禁手ではない。無理矢理バースト状態にして強制的に覚醒させているのだろう。アレではすぐに壊れる、人工神器を使い捨てにする気か?』

 

 ドライグは視覚から得られる情報をまとめてそう分析した。

 神器は壊れてもすぐさま再生する。特殊な儀礼等で抜き出せば命を落とすこともあるが、神器の破損によって所有者に悪影響が出る事は無い。

 

「さて、来いよ?」

 

 アザゼルは右手に槍を生み出して方レアを煽る。

 

「舐めるなッ!」

 

 カテレアはあたまに血がのぼり飛び出していく。

 だが一瞬の交錯ののち、肩口から腹にかけて深々と切り裂かれる。

 

「ガハッ…?」

 

 光の力を宿す槍に斬り裂かれれば悪魔にとっては致死量の一撃となる。

 

「…新世界の創造…そこにあなたは必要ない…ッ!」

 

 息も絶え絶えだが彼女は腕をまるで触手のように伸ばしてアザゼルの左腕に絡み付ける。

 

「自爆の術式よ!」

 

 いち早く気が付いたのはセラフォルーだった。

 それを聞いた皆は慌てて距離を取るか、防御用の術式を展開する。

 

「三代勢力の一角を屠れるのなら…この命にも意味があるでしょう!」

 

 自死すらもまるで誇りなのか、死にゆくとは思えない感情を爆発させる。

 アザゼルは引きちぎろうとするが離れる気配を見せない。だが焦った様子はない。

 

「自爆か?それはごめん被りたいね。お前の命なんざ腕一本がいいところだ」

 

 ザシュッと右手に握る光の槍で自身の左腕を切り裂いた。

 

「なに…?」

 

 突如相手を拘束する感覚が消える。腕が切り裂かれた事で引っ張る感覚が消えて、後方につんのめってしまう。

 アザゼルは巨大な光の槍を生み出して相手に叩きつける。爆発する事なく、光の効力によって彼女の体は消滅してしまう。

彼の纏っていた鎧が淡く輝くと消滅してしまう。

 

「チッ、限界か。もう少しだけ付き合って貰うぜ?ファーブニル」

 

 残った黄金の宝玉を手に取って口つける。

 

「さて、どうする?ヴァーリ?俺は片腕でもやれるぞ?」

 

 いまだに戦意を衰えさせないアザゼルに対して、相手は苦笑いを浮かべるだけ。

 

「兵藤一誠」

「…なんだ?」

 

 ヴァーリは静観を決め込んでいたイッセーに向かって話しかけ始める。

 

「俺はヴァーリ、ヴァーリ・ルシファーだ」

 

 彼は自身の胸に手を当ててそう言った。

 

「まさか…そんな…」

 

 リアスは驚いているようだった。

 イッセーはルシファーと聞いてサーゼクスを連想したが、相手は神器を持っている。

 

「旧魔王のルシファーの孫である父とその母親の間に生まれはハーフなんだ。魔王としての力を得ながらも、人間の血によって『白い龍』としての力も手にした存在。運命や奇跡というものがあるなら俺のことを指すのかもしれないな」

 

 彼はそう言って悪魔の翼を出現させた。

 イッセーの感想はただ一つ「だから何?」だ。

 魔王ルシファーの力を持ってるから何?『白龍皇』だから何?その程度の感想しか抱けない。

 さしたる興味も湧かない、せいぜい白龍皇が美少女だったら良かったなくらいだ。

 

「もし冗談のような存在があるのだとしたらこいつのことだ。過去現在、そして未来永劫において最強の白龍皇になる」

 

 アザゼルはそう言った。

 誰もがそれを聞いて息を呑んだ。

 再びヴァーリが視線を向ける。

 

「俺は君という人間の考えが理解できないな」

「はぁ?」

「一度両親と生まれ故郷を天使と堕天使によって滅ぼされながらもこうして力を振うこともなく平然としているところだ。それに」

 

 ヴァーリが話した内容に、まだ知らなかった面々は驚いていた。

 

「何が言いたいんだ。復讐に生きろと?さっき死んだ奴も復讐だとか覇権だの、底の見えるチープさで生きてきたんだろう?ハッキリ言ってくだらねぇな」

 

 皆の視線を受けているのは気が付いていたが、あえて取り合わずヴァーリに語りかける。

 その言葉を受けた彼もその意見だけは同意していた、前からカテレアは身の丈に合わない理想を持っているなとは思っていた。

 

「君はここまで煽っても俺に敵意を向けない。興味がないときた…楽しみにしていたんだがな、俺の宿敵がどれほどの実力を持っているのか、だが蓋を開ければ…」

 

 彼は分かりやすくため息を漏らした。

 だがそこで先ほどハーフヴァンパイアを消し飛ばすと言った時に反応した事を思い出した。そこをつけばそれなりに反応を示すかもしれなかった。

 

「ならこうしようか、今から君の親も仲間も友人達も俺が殺す。そうすれば少しは俺に対して興味と憎悪を抱くだろう!」

「…………」

「君の人生は俺という巨大な壁を越える為に使うのさ。悪魔の生は長い、俺を倒し復讐を遂げるまで挑めばいい!それくらいしなければ赤白対決は面白くないだろう」

「…………」

 

 イッセーは何も言い返さなかった。

 

「どうだ?素晴らしいシナリオっ!?」

 

 ドガアァァァン!!!!

 

 ヴァーリは気がついたら地面に叩きつけられていた。そして遅れてやってくる衝撃。

 

「ガハッ!?」

 

 鎧が衝撃で剥がされており、痛みによって込み上げる血反吐たち。

 

「勘違いしてんじゃねーよ」

 

 イッセーの声が響く。

 これまでとは逆に相手を見下ろし返すように天高く飛びながら。一瞬で彼の背後に移動して一撃喰らわせたのだ。

 

「この力はッ…!」

 

 ヴァーリは体勢を立て直して再度鎧を纏い直す。

 

「お前が最強なのは『白龍皇』の中でだろうが」

 

 淡々とした言葉の中に怒りが滲んでいる。

 

「俺がお前に挑むんじゃない!挑戦者はお前だろ!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!!!』

 

 赤龍帝の籠手が力強い輝きを放つ。

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