Vtuberの陰キャとギャルが百合する話   作:二葉ベス

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第15話:青の眼鏡。ぼやけた先には何も見えない

 うひゃーーー、どうしよう。自分からVtuberであることをバラしたけど、そしたら放課後に呼び出しをくらってしまった!!

 って、そんなに悲観的なことではなく、わたしのことをちゃんと認めてくれた上で、一緒に仲よくしようと言ってくれた。それが嬉しくて嬉しくて。わたしの方から絶縁宣言をしたのにもっと夢を見させてほしいって言われて。聖女か? オタクに優しいギャルって本当に存在したのか!?

 露草さんの他にこんなにも熱心に音瑠香のことを見てくれる人がいるだなんて、感涙ものだ。

 

 授業中、思い出すごとにふやけた顔を浮かべては、調子に乗るなと頭をブンブン振る。

 これを繰り返すことで先生からはわたしを心配するような目配りを何度か頂いたが、まぁ気のせいだろう。

 

 そうして放課後まで時間が過ぎる。

 

「青原、めっちゃきしょかった」

「え……っ」

 

 上げて落とされた?! まさかの絶縁宣言か?!!

 

「いくら何でもニヤけすぎでしょ、どんだけ嬉しかったのさ」

「ま、まぁ。とても嬉しかったので……」

 

 嬉しかった。はいそうです嬉しかったです!

 嬉しすぎて今現在進行形でギャルの顔を見れないし、顔とか絶対赤くなってるし。

 コメントで「好き」とか「推してる」なんて言われることはあっても、それはあくまでも文字なわけで。こうやってむき出しの心を直接耳にしたことなんてなかったから、その。照れる。

 まるで恋愛マンガの中でしか見ないようなセリフだったから、余計に恥ずかしいっていうか。ほぼ告白じゃんこんなの。ガチ恋勢こわいわー。軽率に陰キャの心を落とそうとしてくる。こわいわー。

 

「……そ、そっか」

 

 え、なんでそこでわたしの頭撫でるの?!

 いや待て。もしかしてこの人、わたしのことを推しのVtuberとか言っているけれど、ひょっとして扱いとしては犬とか子供に近いのでは? 確かに身長は向こうの方が大きい、というか。スラッとしてるから身長以上に大人の印象に見えるけども!

 う、羨ましい……っ! 第二次性徴はもっと何とかならなかったのか!?

 

「あー、こほん。じゃー行こっか!」

「行くって?」

「ん? メガネ屋」

「メガネ屋?」

 

 なんでメガネ屋?

 このギャルがメガネ掛けてるところなんて見たことないけど。

 そういえばわたしもそろそろメガネ変えようと思ってたんだっけなぁ。フレームもちょっとガタが来てたし、あとレンズの度が微妙に合わなくなってきて、うっすら困ってたところだった。

 でもそれを察するなんて流石の陽キャギャルでもできなくない? ひょっとしてできるのか?! 陽キャならニュー○イプ辺りに目覚めることもそう難しいことでもないの?

 揺られる電車の中。まぁ流石に気になったので聞いてみる。

 

「や、青原のメガネダサいし、いいもんあったらついでにあたしも買おうと思って!」

「ダ、ダサ……っ!」

 

 さっきまで喜んでいたわたしの気持ちをもてあそびやがってーーーー!!

 そうだよ! 流石に自分でもわたしのメガネってひょっとしなくてもダサいよな? って気持ちになってたよ! 高校入ってからは特にそう思ってたけど、メガネ屋なんて行くの面倒だし、ちょっと不便だったけど。けども!!

 

「あとその髪もほどきなよ。美容室行く?」

「いや、えっと。わたし、くせっ毛強くて……」

「その三つ編みって、力業なん? ウケる」

 

 ウケるなー! ストレートに治すの面倒だから、三つ編みにして力業で何とかしてますけど! でもそうじゃないもん。本当はわたしだってポニーテールとかにしたいもん。でも自分でやるともちゃもちゃ感が強くて……。

 

「じゃあどうしろって言うんですか」

「いっそバッサリ切っちゃうとか?」

「バ、バッサリ?!」

「そ。いっそショートボブにしちゃえば手入れとか楽よ?」

 

 そ、想像がつかない。生まれてこの方面倒くさくて美容室に行かないことが多すぎて、髪は伸び放題だし、くせ毛だって酷くなっていくばかりだし。でも確かに切っちゃえば楽かも……。

 

「ま、今日はメガネ屋かなー」

 

 なんか不思議だなぁ。ここ数週間で名も知らぬギャルと一緒にメガネ屋に行くことになるだなんて。

 ……ん? これって俗に言うデート、と言うやつなのでは? まぁ、そんな気分じゃないから、きっと違うかな。おっ、もうすぐ目的の駅だ。降りよう。

 

 ◇

 

「メガネっていろいろあるんだねー」

「…………」

 

 そういえば真剣にメガネのフレームなんて見たことなかったかも。

 いっそのこと、ということでメガネを丸々交換することにしたわたしは待ち時間でフレームを探すことになった。

 フレームの種類なんて全部同じようなものだと思ったけど、そうでもなかった。丸形で縁が太い奴から細いやつ。上の方だけで、下のフレームがほぼレンズと同色なもの。形だって目元に合わせてか尖ったものや丸まったものまで多数ある。これは、悩むかも。

 

「んー、ショートボブだったら丸メガネの方がいい感じっぽいなー」

「そうなんですか?」

「これ。軽ーく調べた感じね」

 

 わたしにスマホの検索画面を見せてくれた。確かに丸メガネや、なんだったら今使ってるメガネとほぼ同じ形のものが多い。

 ……もしかして、ショートボブのままだったらメガネも変えなくていいのでは?

 

「わたし、髪切ります」

「おっ、強く出るやん。かわいくなりたい願望出ちゃった系?」

「いえ、そっちの方が楽かなーって」

「……あたしの期待を返して」

 

 いや、朝は極力ぐっすり寝てたいし。夜もぐっすり眠りたいし。

 つまり、いつでもぐっすり眠りたいということ。配信とイラストと寝ること以外に時間を割きたくないのが現状だった。

 

「まーいいけど。こっちの赤いのとかどーよ?」

「派手すぎないですか?」

「じゃあこっちの黒いのとか」

「今のと変わらなくないですか?」

「文句ばかりはいっちょ前だなーこの!」

 

 両手でほっぺたをサンドされると、そのままぐにぐにと表情を歪まされてしまう。痛い痛いやめてください。このままでは顔が変形してしまいます。

 

「うわ、青原のほっぺた柔らか」

「ほっひょ! ひひょのかほへあしょはないへくだはい!」

「おぉ、ごめんごめん!」

 

 このギャル……。顔覚えたからな! 名前は覚えてないけど。

 

「でさ! これとかよくない?」

 

 そして今まで何事も起きなかったかのようにフレーム売り場の方に目を移すと、件のフレームについて指を指す。

 今までの形が太いものと比べて、圧倒的に細い印象が見受けられた。というかほっそいな。触ったら折れそう。

 

「メガネ外してみ?」

「はい」

「で、これを試着して―……」

 

 何にも見えない。やっぱメガネはレンズが入ってなんぼだよなぁ。フレームだけだと格好だけしかつけられない。

 どうなんだろうか、とギャルの方に目を向けても、特に表情は分からない。だってぼやけてるわけだし。

 

「うん、いいんじゃない?」

「そうなんですか? じゃあこれで行きます」

「他のとかいいん?」

 

 他の。他のって言ってもなぁ……。

 わたしはメガネはおろか、ファッションもよく分からない人間だ。

 だからこういうのは目が肥えた専門家の方がいい。ギャルに全肯定します。

 

「あなたが選んでくれたものなら、わたしは正解だと思うし」

「お、おう……」

 

 フレームを外してから元のメガネを装着してみると、何故かギャルが頭を撫でてくる。な、なんだよぉ! 前が見えないだろ!

 なんかしばらくしたらやめたし。なんなんだか。とりあえず店員さんにフレームとレンズを合体してもらわなければ。わたしはその足でフレームを店員さんに渡すのだった。

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