Vtuberの陰キャとギャルが百合する話   作:二葉ベス

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第4章:年始のような計画する毎日
第41話:青の始業。3週間ぶりの音瑠香成分


「ふあぁ……ねむいし、だるい」

 

 およそ3週間ぶりの通学路を歩きながら、冬の寒さに負けそうになる日々。

 あー、朝から起きて通学するのなんていつぶりだろうか。最近は実家行ったり、昼夜逆転してたりだったもんなぁ……。

 おかげでオキテさんの朝活がどれだけ眩しいことか……。

 あの人、冬休み中も朝活続けてたんだもんな。さすが朝つよつよギャルは違う。

 

 そうなのだ。3週間ぶりというのも、今日は冬休み明けの初の登校日。いわゆる始業式だ。

 クリスマスの配信から最後に年末配信。それから実家に行って、戻ってきたらまた年始配信。と、比較的ゆっくりした時間の中でキャラデザの勉強も続けていた。

 にか先生曰く、キャラデザはひたすら描き続けることが大事らしい。例えばいろんなキャラのデザインや形を覚えながら、数をこなしていく。

 確かに勉強にはなってるけど、この間のにか先生のとの作業通話のときは、だいぶスパルタだったのを覚えている。あの口調で結構鬼コーチなんだなぁ、って震えながら描いていました。

 

 おかげで今ではいくつか音瑠香の新衣装案が思いついていたり。

 ギャグよりに行くのであれば、全身着る毛布だったり、どこでもクッションだったり。

 あるいはもっとかわいい路線でアイドル系とか、ふわふわドレスな感じとか。

 前者も後者も、正直需要があるかと言われたら……。正直分からない。全部試してみちゃうのも悪くはないんだけど、作業量もハンパじゃないんだよなぁ、それ……。

 

「あ、学校だ」

 

 チラホラと脱力した生徒、気が抜けた生徒などがトボトボと学校へと歩いてくのが見える。あぁ、みんな休み明けってこんなもんだよね。

 

 3週間ぶりに下駄箱で靴を履き替えて、廊下を歩き、自分の教室へと入った。

 見知った顔が2人。あぁ、あのギャルたちいつも早いなぁ。

 教室のドアを開けた瞬間、こちらをぎょろりと向く明るいブラウンの女。わたしをわたしだと認識した途端、ものすごい勢いで接敵してきた!

 

「青原ーーーーーー!!!!!」

「えっ!? な、ななななななんですか!?!!!!」

 

 このまま抱きつかれる、と思いきや直前で止まって右手のひらを向けて一言。

 

「おはよ!」

「お、おはようございます……」

 

 な、なんだこのギャル。怖すぎだろ。3週間の間にどうかしちゃったのか?

 とりあえず赤城さんが手のひらを向けてきているので、こちらも手のひらを重ねて対応してみた。あれだ、生体認証しているみたいな気分になる。

 

「クリスマスぶりじゃん、元気してた?」

「ま、まぁ……。実家でゆっくり出来ましたし」

「配信にも来てくれてありがとねー!」

「まぁ、相方ですし……」

 

 時々感じる。もしかしたらわたし=音瑠香という正体が実はクラスのみんなにはバレているのではないかと言うことに。

 このギャルが活動を始めて大体2,3ヶ月。その過程でさまざまなことをクラスの中で会話していた。音瑠香のことやオキテさんのことなど。だから身バレはダメなんだって。Vtuber引退理由ランキングの上位に入ってくるんだってば。

 

 ま、まぁ、それはそれとして。赤城さんが気にかけてくれているってのは感じるし、寂しく思わないように今日みたいな事をしてくれるって思ったら、嬉しくないわけではない。ただ口にはしないだけで。

 

「何やっとんじゃ」

「ぶへっ!」

「あ、赤城さん?!」

 

 赤城さんの後ろからチョップが炸裂! あえなくその手を離した赤城さんが後ろにいた星守さんに反論を始めた。

 

「何すんのさ! 3週間ぶりぐらいの友だちとの再会だよ?! 水を差すな!」

「アンタはいちいち大げさすぎんだよ。後ろ支えてるし」

「あ、ごめーん!」

 

 後ろを向いたら、確かにちょっと不服そうにわたしを見ている姿が。

 ひ、ひぃ!! 今退きますからぁ!!!

 そそくさと自分の席へと瞬間移動する。これぐらいは陰キャの特殊技能の1つということで。

 

「いやぁ、なんか。ごめんな、つゆがうるさくて」

「うるさいとはなんだ!」

「うるさいだろ! 3日前とか相当ひどかったし」

「へ、へぇー」

 

 3日前って、配信アーカイブ残ってなかった日か。

 一応配信してて、終了した旨のつぶやきもしてたから、配信自体はやってたようにみえるけど、わたしはその時にか先生とスパルタ通話中でそれどころじゃなかったんだよなぁ。

 

「あん時のつゆ、めっちゃヘラってて草だった」

「ぃや、ヘラってないし……」

「『音瑠香ちゃん成分が足りない……』ってずっと言ってたじゃん」

「あー! あー! きこえませんー!!!」

 

 エゴサしたら確かにそんなことが書いてあったような。音瑠香ちゃん成分ってまずなんだよ。わたしから接種できるものって陰のオーラと湿ったきのこの匂いぐらいだろう。

 てことは、赤城さんもついに陰キャになりつつ……?! いや、ありえない。今日も通りすがりのクラスメイトに挨拶してるもん。陽キャだ。

 

「そういえば赤城さん、登録者1000人超えてたみたいですね」

「あ、それ聞いちゃうー? そーなのよ! ついに1000人よ、1000人!」

 

 わたし、まだ300人ちょいなんですけどね。

 そうか。始めて2,3ヶ月で登録者1000人行く人はいるんだ。はぁ……。つらすぎて泣けてきた。これがギャルと陰キャの実力差ってわけか……。

 

「おめでとうございます、赤城さん」

「うん、ありがとー!」

 

 満面の笑みで答える赤城さんはやっぱり輝いて見える。

 やっぱり1000人に行ったし記念配信とかするのかな。でもいま用意してるものを聞いたことがなかった気がする。わたしにすら秘密にしている可能性もあるけど、何かやるんだろうか。

 聞いてみたところ、返事は速攻で帰ってきた。

 

「うんや、なにも」

「えぇ……」

「だってー、お財布すっからかんだし、依頼するにしてもまた数万単位飛んでいくし。歌とか歌いたいけど、家族がいる前じゃなー、って」

 

 意外と建設的な理由っていうか、お金の問題は仕方ないよね。わたしだって年がら年中困ってるし。

 

「いっそのこと青原にキービジュ描いてもらうとかありかなー、とか思ってても報酬どうしようかなー、とか考えちゃうし」

「あはは、いいですよ。わたし無料で描きますよ?」

「ダメだよ! こういう労働には対価が必要なんだって!」

 

 ま、まぁ。労働と言えば労働だけど。わたしはイラストは労働だとこれっぽっちも思ってないから。むしろ楽しいからやってる。報酬はいいねと拡散、みたいなところがある。実際に金品のやり取りをしたことがないのが大きいかもしれないけど。

 

「まっ、おいおい考えていこうかなーって! だからこれからもよろしくね、青原!」

「こちらこそです、赤城さん」

 

 新年、というのは流石に時期外れもいいところかもしれない。

 だけど赤城さんにはちゃんとした挨拶をしたいと思ってた。だって相方だし。コンビだし。

 今年も1年、末永くよろしくお願いします、ってね。

 

「なんか、アタシのこと置き去りにしてね?」

「あ、舞。いたんだ」

「んだとぉ?!」

 

 このノリもいつも通り、かな。

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