ちなみに、ノーカさんはお披露目前まで基本的にトラスーツ(遊園地とかにいそうな全身タイプの着ぐるみ。ECO内のお正月イベントで寅年に貰えた)装備なので、口部分が開いて顔が露出する機構の働く高速移動中でもないのにてへぺろしても舌を出しているなんて外には見えていません。
襲撃時も当然のように着ぐるみ姿。イケロス・ファミリアの面々は何見て嬢ちゃんだと判断したんでしょうね。見た目はそれなり(デフォルメされた虎の着ぐるみ)とか怪物趣味か……。ハルバードや次元安定石も完全に虚空から取り出しちゃってます。
返り血を浴びてないとかは拙作におけるECO装備の仕様。雨が降っても弾く。槍が降っても傷まない。ただし耐久値は削れるので突然脱げるというか傍目には消滅する。攻撃判定の某が当たると無関係な部位の装備も容赦なく削れる。憑依装備扱いになっているときは削れないので、その場で着替え始めでもしない限り削れない。
装備で見た目が変わるタイプのゲームでムービーに反映される現象ということで、どうか一つ。某アイルーフェイクと違って全身ファンシーなのでシュール加減はマシな部類のはず。
第十一話:戦後処理――ノーカさん、ECOで農家だった。誰かの声「ハーベストですの」――
「まーぶっちゃけると武器や格闘で戦うの苦手なんですよね」
あの後ウィスパーチャット経由でノーカの指示を受けたドラッキー・アルマによって強襲、捕縛され『差押』と書かれた札を額に貼られた上で地面に転がされたディックスに腰掛けながら、ノーカは勝負を放棄した理由を告げる。
ちなみに、捕縛された際にドラッキー・アルマの放った「忍法・影縫いの術!」という台詞を聞いたディックスは「やっぱりニンジャじゃねぇか……」と弱々しくツッコミを入れ、言われたドラッキー・アルマはディックスの前に立つと見下ろしながら「忍っ」と胸の前で印を結んで見せた。また、ドラッキー・アルマの姿を見たディックスはこいつも未発見種の『
人間であっても『恩恵』を受けた眷属の強さはレベルで決まり、
「軽く打ち合っただけでも技量が全然違うのは理解できました。なので、学ぶにしても壁が高すぎて効率が悪いな、と」
ノーカのECOにおける職業、ハーヴェストはバックパッカーと呼ばれる採取や生産を得意とする系統に分類される。また、ハーヴェストは三次職――クロニクルジョブと呼ばれる最終形態であり、その基幹となる一次職はファーマー、即ち農家だ。
余談になるが、ECOにおける二次職はエキスパートジョブとテクニカルジョブとの二種類があり、ファーマーの場合はそれぞれアルケミストとマリオネストとなっている。字面からしてこいつ自分が前に立って戦うつもりないなと予想できてしまうラインナップだとご理解頂けるだろう。まぁ、ECOの終末期はパートナーと呼ばれるNPCを考慮すれば攻撃も支援も回復も自前でこなすゼネラリストで溢れていたわけだが。
ハーヴェストはパートナーを含めない単体の場合でも各種役割を果たす手段を備えており、ノーカの場合はクリエイトネコ
また、三次職の更に先として用意されたデュアルジョブという所謂サブクラス的なシステムに、ネクロマンサーを二次テクニカルに持つソウルテイカーという職業を選んでいるので、ゴーストタイプも持っているに違いない。待望の特殊寄りくさ/ゴーストタイプはここにいた。早くウルトラホールを開いてアローラ……は世紀末なのでパルキアにあくうせつだんして貰ってシンオウ……も試される大地過ぎるので脈絡もなくパルデア……パラドックスポケモンよりオモダカ氏が怖い(真顔)レホール先生はもっと怖い(迫真)人間が一番怖いんだってはっきりわかんだね。イッシュでいいっしゅ……いえ、何でもないっしゅ。
「はい、はい! 主殿、小生に質問の用意ありです!」
「はい、ドラッキー・アルマさん」
「主殿によって成敗された奴原めの処遇は如何致しましょう? 放置しているとあちらの命が危ういのでは?」
ふんすふんすと鼻息荒く手を上げて主張するドラッキー・アルマにほっこりしながら先を促せば、返ってきたのはディックス以外の死屍累々といった有り様で転がっている男達に関する物だった。
「次元安定石を使ってここら一帯をディメンジョンダンジョン化してありますから、適当に治療してから捕縛して……ヘイ、ディックス。近くにいい倉庫とかない? 君らのホームというかアジトなわけだけど」
さらっと言っているが、ECOの次元安定石に自発的な異界化などという機能はない。あれは存在が確認された次元断層を安定させて侵入を可能とするアイテムだ。現実として起きてしまっているので受け入れるしかないのだが、悪用し放題な手段の獲得にノーカとしてはワクワクが止まらない。
この時点で、ノーカはディックスの所属を知らなかった。
ギルドに所属はしたものの、現時点では貢献度稼ぎの第一歩として選んだのが財政方面だったため、浅い原作知識を除けば【ファミリア】や商会、個人商店といった単位でしかオラリオを把握できていない。そのため、【ファミリア】の構成員は例え団長であっても記憶できていなかったのだ。
これに関しては本人としても手落ちだとは思っていたのだが、何しろ原作に名前が出て来るような大御所など氷山の一角でしかなく、その上で原作に表記がなくとも納税額から実力者であると知れる組織が多数存在するのである。しかも言うまでもなく計算機、表ソフトといった機能を持つコンピューターの類は存在しない。辛うじて算盤、そして紙媒体だ。どうした魔石産業。不甲斐ないぞ魔石産業。代わりに算盤が七色に発光するとかアホな機能には手を出しているぞ魔石産業。次の目標は音声ガイドらしい。
閑話休題。
そんな理由から納税額ランキングを作って上から順に調査するだけなのに三徹してまだ半分にも至っていない。金額的に見れば八割近く終わったようなものなので残る数多の小物を恩赦にしてしまおうか位の気持ちだが、そういった場所にこそ後ろ暗いものが隠れているのである。
とりあえず作成した納税額ランキングでそれなりの位置に付いているソーマ、アポロン、イシュタルの原作における踏み台【ファミリア】の皆様には難癖を付けて追加徴税できるようギルド長を巻き込んで悪巧みする予定だ。何割か彼の懐に入るようにすれば全力を尽くしてくれると思われる。
また、ノーカは普段リング名を表示しない設定ECOをプレイしていた。なので、この時もその設定を弄っていないという地味に痛いミスをしている。なんなら設定の存在そのものが忘却の彼方にある。もっとも、仮に表示させていたとしても【イケロス・ファミリア】が黒だと確信し登録ホームの場所次第では要求先の施設が変わる程度であり、一連の流れが変わることはない。
このリングというのは井戸から幽霊とかのアレ……ではなく、プレイヤーによるグループの名称だ。友達や家族のような人との繋がりを表す輪ということなのだろう。つまりダンまち世界においては原作主人公ベル・クラネルの所属する新しい家族【ファミリア】こそが該当すると考えられる。
この場にいるECO出身者であるドラッキー・アルマの場合、彼女(を含めたパートナー一同)に自分がゲームの中の存在という認識はなく、ECOの舞台であるアクロニア大陸に生きる一個の命という自認である。リングというシステム自体は知っていても、ゲーム画面の表示等に関する知識は持っていないため、指摘の可能性はない。チュートリアル担当? 何のことやら。
また、パートナー達は別の世界にやって来たという認識はあるのだが、ECOにはゲームの開始地点であるエミル界の他、次元の壁を越えた先にタイタニア世界、ドミニオン世界といった別世界が存在し、それを気軽かつ手軽に行き来できていたため、今回の件も新世界への到達は珍しいが次元間移動は慣れたものなので取り乱す必要はないというスタンスだ。何しろプレイヤーが時空の鍵を使用する度、または移動先での起動キーを使用する度、どちらのタイミングにせよ頻繁に飛空庭が次元を越えて瞬間移動するのだから。
「あー、あるにはあるが、お前らみてぇな(強過ぎるという意味の)化物は入れねぇな」
ディックスはギルドに正式登録されている探索系【ファミリア】である【イケロス・ファミリア】に所属している。しかも団長だ。しかしながらこの【ファミリア】、元ネタが悪夢を司る神なせいか、裏で犯罪に手を染めているのが実態だ。
ちなみに【イケロス・ファミリア】もそれなりの位置にいたので調査済なのだが、放任主義と脳筋揃いとが祟ったのか、ギルドの記録している魔石やドロップアイテムの売却額よりも生産系ファミリアに開示させた取引一覧から抽出した購入額が大幅に上回っていたため、追加調査の対象に指定されている。今回の件がなければ登録ホーム訪問からの偽装発覚を経て神イケロス呼び出し、申告漏れを自分から切り出されて余罪追及の機会を失い罰金処分で済んでいただろうが……。
今回ノーカの身に起きた一件も、人を迷子にする性能の高さから迷宮よりも迷宮らしいとまで言われるダイダロス通りに珍種が一人で迷い込むというおいしいイベントが突発したので、計画を煮詰める間もなく即応できる面子での人海戦術により捕獲して好事家に売却する目的で行われていた。仮に珍妙な格好をしただけで中身はありふれた人間だったとしても誘拐して人身売買なので結末は変わらない。
そんな【イケロス・ファミリア】がギルドに提出しているホームは偽装されたものに過ぎず、事前通告の一つもなければ基本的にもぬけの殻だ。
では実際の活動拠点はと言えば、答えは入る者を迷わせるダイダロス通りの一角にひっそりと入り口を構える広大な地下施設。陽の当たる場所で輝かしい実績を誇る潔白(笑)な【ファミリア】はもちろん、多少後ろ暗い程度ではその存在に辿り着かない闇の底。ダイダロス通りの名前にもなった奇人ダイダロスと関係が深く、団長ディックスに因縁を持つ、未完成の『人造迷宮』クノッソス――そこが彼らの活動拠点だ。ディックスには案内する気も情報を開示する気も全くないが。
「それなら問題ないな。私は神みたいなものだから」
「……なんて?」
「おほん、申し遅れました。私この度「ちょっと救界に行って来る」とか言いながら一向に行ったまま戻って来ない神々に業を煮やした天界の神々が協力して設計からアフターケアまでお祭テンションの赴くまま羽目を外して担当した『救界型ガチ勢支援残酷精算機』『アウトな神は強制送還しちゃうぞマッスィーン』ことノーカ・ウントでございます。コンゴトモヨロシク」
「………………」
「……?」
反応がないディックスを不審に思ったノーカは首を傾げる。透かさずドラッキー・アルマがディックスの側により顔の前で手を振り反応を探り、掌を口元に寄せ呼吸を確認し、首に手を当てて脈を測る。
「死亡確認」
「おかしいものをなくしました……」
首を横に振ってからしんみりと告げたドラッキー・アルマの報告を聞いたノーカは、失われたものの大きさに今更ながら気付き、惜しみながら空を仰いだ。シリアス適正である。
どこまでも広がる一面の青。そこに槍を持ち、額に掛けたゴーグルを指で摘まみながら、鋭い目付きを若干和らげた爽やかな笑顔を浮かべウィンクする男を幻視した。