オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

15 / 71
前回のあらすじ:新人ギルド職員ノーカ・ウントはその日も精力的に業務をこなしていた。さあこれからは残業の時間だと肩を回し気合を入れるノーカだったが、本来の部署における上司が申し訳なさそうに定時退社を奨めて来る。急遽ノー残業デーとなり憧れのアフターファイブに洒落込んだノーカは、収入がなければ実質私生活の標語に則り闇派閥(イヴィルス)に属する悪神アパテー捕獲のためダイダロス通りへ繰り出した。そして道中でブリーダーの存在やメタモルフォーゼとかいうやべースキルを思い出し、目的地で対人戦闘を経験し、肝心の目標に繋がる手掛かりを逃す。途方に暮れ、帰って寝ようとしていたノーカへ声を掛けてきたのは、目標を捕獲した同郷のデス・アルマだった。


第十五話:アパテーとアガペー――どうして差がついたのか……慢心、環境の違い――

 一度は取り逃がしてしまったバスラムをデス・アルマが確保してくれたおかげで、イベントナビが次の段階に進んだ事を確認したノーカ。

 だが、いきなり女神アパテーを捕まえようとなっているのは果たしてどうなのか。手抜きなのか、サイレント修正でも食らったのか、別の理由か。判明したからと言って依存度が極小の振れ幅で変わる程度でしかないため、後回しにする。

 案内の矢印も復活した事だし、或いはバスラムは始末してしまっても良いのではないかとも思い始めていた。デス・アルマの手前、行動に移すのは憚られるが。

 

「おかげ様で目標も確保できましたし、私は行きますね」

 

「暇潰しか? 付き合おう」

 

 取り敢えず案内の矢印に従って移動する事にしたら、デス・アルマが同行を申し出て来た。何となく、本当に何となく、ノーカの胸中には何故お前の名前はインで終わらぬのだという理不尽な不満が浮かんできた。口には勿論、態度にも出さないが。

 

「ふむ、まぁ確かにここで別れて一人で帰すのも都合が悪いですね」

 

 アパテーは生け捕りにする必要がある。取り巻きがいないのなら殺傷沙汰にはならずに済むので、同行を許しても問題ないとノーカは判断した。むしろ野放しにすると危険が危ないので見張っておく必要があった。

 アルマ化しても、元のモンスターが持っていた性質は綺麗さっぱり消えるわけではない。趣味嗜好のような形になる場合が多いが、確かに残っているのだ。好戦的な種族でも腕試し程度に収めるため丸くなってはいるが、だからといって必要だと思った殺しへの躊躇いは持ち得ない。モンスター時代の記憶が曖昧な個体も多いが、元は生きるためには命懸けな野生で暮らしていた連中だ。面構えが違う。

 ちなみに、驚いたり意識を失ったりといった弾みで人化が解けてしまう個体もいる。本人たちの強い希望でオラリオ内のでの活動を許可してはいるが、地味にノーカは気が気でなかったりする。心配と同時に信用も信頼もしているし、単独行動の厳禁を筆頭に注意を徹底させてはいる。いるが……今まさに禁を破っている者が居るというこの裏切られた感。助けられているので無下にもできないジレンマ。ノーカは蟠りを解消するべく脳内で各国のフタエノキワミを再生することに決め、実行した。

 さて、デス・アルマの同行について上記の問題がどうなのかと言えば、変化は意のままだし、元がアンデッドモンスター故か人間の記憶が残っている節があり自然な振る舞いが出来るし空気も読めて、発言内容はアレだが行動の自制も利く。元となったモンスター、デスは積極的にPCへ襲い掛かってくるアクティブモンスターであるため、やや好戦的。注意すべきは魂食いが可能(ソウルイーター)であることか。デス系モンスターの種族としてソウルイーターが存在するのでややこしいのだが、それはさておき。

 魂を食らい消費してしまう行為は、この世界において正しく不正な処理であり、天界で転生作業に明け暮れるのが役割な神々にとっては忌むべきものに他ならない。ここオラリオでは――少なくとも地上で行わせるわけにはいかない。

 だが、このデス・アルマは割と楽観的というか羽目を外すのが趣味というか、結構な頻度でこちらの魂をより強く輝かせるために無茶振りしてくるというまるでどこか(原作のフレイヤ)で見た真似をしてくる悪癖持ちなのである。

 或いは生まれたばかりで、新しく得た人間の性質に振り回されているに過ぎず、年を重ねる事で落ち着きと共にモンスターの本能を取り戻す可能性もなくはない。きっと、そう……アナザーロアよりもディープでダークな話が展開されるのだろうな……本能と理性の板挟みになって苦しみながらも人を傷付ける事が止められず悲しみ涙を流しながら自分を討つ様に頼むのだ……一番友好度の高い存在であるPCに。想像するだけで色々と込み上げて来るものがある。というより夢に見そうだ。

 ECOならインスタントな奇跡が起きて制御可能になりパワーアップを遂げた状態で生き返るのだろうが、蘇生魔法はおろか回復魔法一つで騒がれるダンまち世界にそこまでのご都合主義は望めまい。代わりに秒間100発のエナジーショックを叩き込むリビングスタッフのようなECO側の常識も纏めて破壊する事態も起きているのだが。憑依しているので確認はできなかったが、使用者のサラ美ちゃんはさぞポカンとした表情だった事だろう。ショックの威力も本来のスタッフ固定ではなくPCのMAを参照してた疑惑すらある。

 

「とりあえず考えるより動きますか」

 

 色々考えたが、最悪の場合は鞄に突っ込めば良いかと思い直してノーカはケツイ。デス・アルマは寒気を感じて震えた。或いはGルートではなく絆地獄たちを想起したのかもしれない。

 

 

 

 

 

第十五話:アパテーとアガペー――どうして差がついたのか……慢心、環境の違い――

 

 

 

 

 

 アパテーは可愛い自分の子等が命を失ったのを感じ取り驚愕し、悲嘆し、激怒した。団長のバスラムは残っているようだが、タイミング的には返り討ちできた可能性は考え難い。今は安全の確保が最優先だと思いながらも、必ずや仇を討たねばならぬと誓い、他の闇派閥(イヴィルス)に属する神の元へ急ごうと通りへ出て

 

「あぁ、これですの」

 

 まるで他人が片付け損なって置き去りにされていた道具を探しに来て順当に見つけたときのような、多少の面倒臭さと僅かな苛立ちとを滲ませた声色を最後に、意識を刈り取られた。即落ち2コマという奴である。落とすのは……意識だ。

 

「よっしゃ、後は縄で縛って猿轡噛ませてギルドの奥にポイするだけです」

 

 順調過ぎて逆にフラグなのではとの恐怖を隠しながら、神アパテーの捕獲を終えることができたノーカは小さく息を吐く。

 

「思った以上に何も起こらなかったな。つまらん」

 

 一方、デス・アルマは刺激らしい刺激のない散歩でしかなかったことに、内心満更でもなかったが、表向き不満気に溢す。

 

「何も起こらないならそれにこした事はありませんよ。お仕事なんですから」 

 

「ふん……」

 

 ノーカは縛りアパテーを脇に抱えながら、空いている手でデス・アルマの頭を撫でつつ、軽く諭す。

 対するデス・アルマの反応は詰まらなそうたったが、恐らくは照れ隠しだとノーカは経験から察する。今が明るい時分ならば、その頬は朱に染まっている事だろう。

 

「こやつはどうするのだ?」

 

 デス・アルマの指差す先には、未だに気絶しているバスラム。ノーカとしてはイベントナビに従って確保したものの、結局アパテー捕獲には使わなかったので、扱いに困っていると言えば困っている。イベントナビは完全に達成済で報酬も受領している。或いはアパテーの動くフラグが【ファミリア】全員戦闘不能のような管理でもされていたのだろうか、とゲーム脳をノーカは働かせた。

 

「ぶっちゃけいらないんで、ダンジョンに捨てて来ましょう」

 

 よって、有効利用できるかの確認を兼ねた廃棄処分を行う事とした。

 

「ほう? それは……」

 

「食べちゃダメですよ?」

 

「チッ!」

 

 目を細め口で弧を描きながら舌なめずりしてみせるデス・アルマに釘を刺しておく。わざとらしい舌打ちを返す辺り、解っていたのだろう。とはいえ、一応は説明するのが義理というものであろう……多少、婉曲な形になるが。

 

「親孝行という奴です。現地の魂は質を問わずいくらあっても足りません」

 

「家族が増えるよ!!」

 

「おいばかやめろ」

 

 まさかの返しにノーカはこの世界に来て一番の焦りを感じた。単純な言葉だけの内容だけなら使い方が間違っていないので性質が悪い。こいつはそういう事するという負の信頼があるのも確かなのだが。

 

「まぁいい。次こそは余を愉しませろよ?」

 

 フフフ、と笑みを溢すデス・アルマの差し出した手を、ノーカは笑顔を返しながら恭しく取って、そのまま引いて歩いていく。

 

「それはそうと単独行動の罰に晩御飯のおかず一品減らすよう言っておきますね」

 

「なん……だと……」

 

 帰り道の歩き始めに告げられた言葉は、デス・アルマを絶望させるには十分だった。ちなみにデザートのあんころ餅が減らされた。

 

 

 

「と、言うわけで当日の生煮えです」

 

「それを言うなら生け贄だろう」

 

 ギルドの最奥にて、大神ウラノスへとノーカが成果を報告する。

 ツッコミを入れたのは今回から同席する事になったフェルズだ。その声は疲労を滲ませており、立ち姿もやや背筋の曲がっただらしない格好だ。

 

「ツッコミを入れねば居ても立っても居られない……その姿勢、私は非常に高く評価しましてよ『愚者(ポンコツ)』様?」

 

「えぇい、そのお高く留まった口調とミスマッチでおぞましい裏声を止めろ! ないはずなのに鳥肌が立つ心地だ……」

 

「おほん、報告はしかと受け取った。それでノーカよ」

 

 煽り成分100%だが本心からの評価を下すノーカに対して、ガクブルとローブを震わせるフェルズ。そんな低次元なやり取りで弛緩した空気をを咳払いで仕切り直し、ウラノスがノーカへと尋ねる。

 

「この当日決裁という異例のスピードで申請が受理された『なんでもクエストカウンターオラリオ支店』というのは?」

 

「ふむ? やはりオラリオ支店ではなくオラリオ出張所にするべきでしたか……」

 

「そうではない」

 

 ウラノスはボケに乗らなかった。真面目なときは真面目を貫く、上司とは斯く在って欲しいものであるとノーカはウラノスの評価を高めた。相対的にフェルズの評価を下げる目的で。

 

「まぁ、元は故郷にあった万事を請け負う業者ですね。失せ物探しですとか、忘れたお弁当の配達ですとか。裏では私専用クエストとして行き場を無くした不思議な種族の保護と、そこに辿り着くための問題解決に西へ東へ駆けずり回る羽目になるようなものが舞い込んで来るわけですが」

 

 若干の遠い目を明後日の方向に向けながら、当時の様子を語って聞かせると

 

「ほう、お前の言う不思議な種族というのは、例えば『異端児(ゼノス)』のようなものも含まれるのか?」

 

 ウラノスはしっかりと話に乗ってくる。ウラノスの問いに、ノーカはノータイムで首を縦に振った。

 

「正しく。何せ、今回もそこの従業員は『異端児(ゼノス)』に似た存在ですからね」

 

 聞いていたフェルズの顎が外れ、地面に当たり、乾いた音を響かせた。砕けなかったか、と小さく舌打ちをしたノーカに、ありったけの非難を乗せた視線をぶつけるフェルズだが、すぐにそそくさと骨を拾い上げ嵌め直す。

 

 猿轡を噛まされ縄で縛られたアパテーは、聞いてはならない内容を平然と語る事実から、生かすつもりはないのだと、既に自分の命運が尽きている事を察した。

 

「アルマと言いましてね。魂を意味する語だそうで。モンスターの姿で理知を宿した存在ではなく、人の心を持った事で人としての姿も得たモンスターです……もっとも、最初から人間に興味を持つだけの心を宿している前提なのですが」

 

 説明を続けるノーカだが、何故か縛り上げた状態で正座させられているアパテーの周りをぐるぐると周回しながら話し始める。

 

「彼女等が生まれた背景には想いの力とやらを集めるフシギなたまごという……なんでしたっけ、アレ。なんかこう、名前通りに不思議な現象を起こしまくるんですよ。実際は起こしやすくするだけでトリガーは主犯達自身が引いてるんですけど。事件に巻き込まれるからそれのせいと言えばいいのか、事件を通して新たな出会いがあるからおかげと言えばいいのか……」

 

 ぐるぐる歩き回りぶつぶつ溢すノーカに対して、ウラノスは重要と思われる部分について尋ねる事とした。

 

「そのアルマというのは、危険度……いや、友好度はどのような感じだろうか」

 

「危険度は取り扱いを誤れば極大、友好度は基本的にはこちらも極大ですね。人に興味を抱き知りたいがために想いの力が作用して人の姿を取った子達ですから。ただ、単純に強いんですよね。準備なしの遭遇戦ならバフが間に合わずに余裕で私ボコボコにされます。まー仮に。仮にですがね。憧れの対象が取るに足らない自分達(モンスター)未満の存在だと理解した場合は反動でそれはもう荒れるんじゃないでしょうか」

 

 私は寡聞にして存じませんがね、と続けて肩を竦めるノーカの言葉に、ウラノスとしては唸る他なかった。

 人類全てが愚かな訳では決してないが、愚かな者が零な訳でもない。仮にアルマとやらが、最初に出会した相手が闇派閥(イヴィルス)のような者であったのなら。その最初の接触一度だけで全体を判断された場合は……

 

「私としてはアルマに対する神の挙動が心配なのだが」

 

「あっ」

 

「あー」

 

 フェルズから差し込まれた意見は、ウラノスとしても非常に大きな懸念となった。直後にノーカから物凄く納得した感じの声を聞いた事でその考えは加速した。

 

「多分ですけど、うちの子達は神も人も判別できないと思います。神威とかも似たような気配は多種多様に浴びて来てますし、ちょっと変わった人くらいの認識でしょうね」

 

 弱いのに粋がってる相手には憐憫の目を向ける程度で手は出さないと信じたいところですが……と安心していいのか心配していいのか微妙なラインの擁護を聞かされて、ウラノスはちょっぴり胃の痛みを覚えた。

 

(後でガネーシャに情報を共有せねば、な)

 

 信頼できる仲間(道連れ)がいるのは良い事だと、そう考えたウラノスの気持ちはほんの僅かにだが上向いたのだった。

 

「まぁ、それは神会(デナトゥス)で私の力と覚悟とを示した後に関連性を示唆すれば多少マシになるでしょう。逆に現在の様子が気になって来ましたが」

 

 現在はギルド所有の土地を借り、事務所兼販売所兼休憩所の建設を始める所だ。寝泊りは飛空庭まで戻って貰っている。

 本音を言えば、プレハブを繋げる様な形式にしておき、耐久性や防衛機能に外観といった整備は後付けしたい所もある。

 だが、アルマ達の活動家拠点という付加価値で一気に完成度を高める必要を感じてしまい、大工も兼任してくれるらしい【ゴブニュ・ファミリア】への紹介状を発行して貰えないかと大神ウラノスに泣き付いたのはノーカの記憶に新しい。

 代価にフェルズへコモンのイリスカードとブランクイリスカードを渡したので、めっちゃ自慢して来た『神秘』とやらの力を示した見せて欲しいところである。再現できれば冒険者の底上げに役立つはずだし、新作が出せれば『異端児(ゼノス)』の外見に手を加える余地が生まれるかも知れないのだ。

 問題点があるとすれば、フシギなたまごが存在しないこの世界で想いの力をどう集め、また、配るのかだが、これに関しては何故か何とかなりそうな予感がしている。というか、庭のたんすで肥やしになっている家具としてのフシギなたまごが置換されていそうな気配をひしひしと感じるのだ。守護魔もウルゥやカナデを含めて普通に渡って来ている。本来ならうちの守護魔は先の二名とそのハートメイトを除けばハヅキしかおらず、代わりにハートメイトのハヅキが二人いる状況だったのだが……まぁ、最終日価格は偉大であった。そして持つべきは友。それだけだ。

 

神会(デナトゥス)といえば、そういえばガネーシャはお前のしようと考えている事に難色を示していたな」

 

 ウラノスの思い出したように漏らした言葉に、ノーカはそう言えば要否は決まらないままになっていた事を思い出す。

 その原因の一つにして最大のものが入場してきたフェルズ渾身且つ無意識のボケにあった事も思い出したノーカはフェルズに多少の感謝を込めて評価を下げておく。

 今更だがこの事ある毎に下げる評価、感情に比重を置いた主観的な判断に基づくものであるため、特に意味のないものである。客観的な評価は別枠で存在するが、隠しパラメーター的なとでも言おうか、感情を排して数値化してもなお恐らくはあるはずの見落としにより揺らぐため参考にはするが重視はしない……とノーカは考えているのだが、彼女は直感型で答えを決めてから補強する材料で塗り固めているのに、如何にも私は論理的な理由で答えに辿り着きましたと言うタイプである。そして直感の出所は言語化できない無意識レベルの深度に保存している、他者をモチーフにした人格群によって形成された自分なりの多角的な視点による客観視を用いた擬似的な集合知――即ち上記の客観的な評価なので、最重要視していたりする。なお、多角的な視点を用意し過ぎてどのような結果になろうとも彼方を立てれば此方が立たず的な結論しか出せなくなり、よく自爆というか自縛する。結果として最終的な判断基準が数値になりがちだが、当然その選択肢の欠点も見えているわけで、無力感は高まり自己評価は最低値を更新する。地味に悪循環である。そこから脱却する方法は視点を減らしていき偏った物の見方しか出来ない正義マンになる事だろうか。つまり真に賢い者は愚か者と同義なのだろう。

 

「ガネーシャ様の懸念も理解出来ますが、そもそも私は『異端児(ゼノス)』と呼ぶには特殊過ぎるんですよね。こちらの常識である魔石とは無縁ですし、魂の由来からして詳細は不明ですけどこちらにはないと思われます。オカンかて想定外の規格外が生まれて悲喜交々ですの」

 

「ふむ。だが、それだけでは……」

 

「勿論、彼の神が『異端児(ゼノス)』全体への影響だけでなく私個人の心配までして下さっているのは承知しています。たまたま頑強であっただけの体に殺生や殺意とは縁遠い魂。しかも相手はモンスターは勿論、人間ですらなく神。それが及ぼす影響は全くの未知で、或いは壊れ暴君の如く振る舞い統治……否、管理を始める。或いは殺戮の本能に目覚め何もかも根絶やしにする。おおよそ想定されるバッドエンドは12種類と豊富に取り揃えております。今ならトゥルーエンドという名のビターエンドでユーザーをトラウマに叩き込む手配もバッチリです。グッドエンドは堂々のグランドエンド唯一つ、一本たりとも逃せない乱立するフラグの管理はフェルズの細腕に重くのし掛かる事でしょう」

 

「何故私に!?」

 

 ウラノスの補足を手で制して、ノーカはガネーシャの抱えるもう一つの懸念に対して推論を述べる。

 途中からズレて適当な言葉を並べ最終的にはフェル虐に着地する辺りこいつ偽りの黒羊のスフィア・リアクターにでもなってんのかと思わなくもないが、混沌具合が足りないので未だ至らずといった所だろう。モンスターの本能を偽り続けてるとか想いの力を無理矢理流用してサード・ステージに到達させてるから通常の反動と合わせて心身共にボロボロとかの設定が後から生えて来ても困る。タグにスパロボのあるダンまちとかどうすればいいのか。ヒーロー戦記ならまだしも。あ、でもゼオルート師匠が転移する話は読みたいかも。スパロボじゃなく魔装機神のタグになるが。

 

「愛です。愛ですよフェルズ」

 

「何故そこで愛ッ!?」

 

 キラーパスに驚愕するフェルズへ、ノーカはさも分かりきった結論を諭すように伝えたが、フェルズは更に困惑を深めるだけだった。然もありなん。

 ここで言う愛とは某一神教の使うアガペーのつもりだが、元はギリシャ語の数ある愛を表す言葉の一つで自己犠牲的な愛を意味するらしい。地球におけるウラノスやアパテーの故郷で使われていたわけで、そう考えるとこのダンまち世界では、天界の故郷とやらで使われる方言として存在するのかも知れない。三大クエストの生き残り相手にアガペー談義させてみたい……みたくない? みたくなくない? 元ネタからして解釈間違いから生まれた悲しき空の王者だし通じないのだろうが。

 

「まぁ、冗談はさておき。既に私まで守るべき群衆に数えている懐の広いガネーシャ様の粋な心を蔑ろにはできません。説得は必要ですね」

 

 ノーカは内心であの有耶無耶に終わった時に覚悟の示し方が足りていなかった事を悔やみながら、実は不随意運動な羽ばたきを繰り返す翼を意識して大きく羽ばたかせる。

 

「報告は終わってますし、退室して【ガネーシャ・ファミリア】のホームに向かおうと思います」

 

「うむ、アパテーの身柄についてはこちらで預かっておこう」

 

 解散の流れを作り、ノーカは退室するべく背を向ける。

 ガネーシャは善神だ。その中心にはどっしりと根付く大樹の如き一本の筋が通っている。言い換えれば、頑固だ。守るべき対象を守るためなら一般人並の能力に落ちていながら体を張って止めようとしかねない。そのような部分にこそ人は惹かれ集まるのだろう。と惹かれた一人であるノーカは考えた。

 

「……ノーカよ」

 

 ガネーシャをどう説得するか、真摯に向き合い思いの丈を伝えてから喧嘩が定番だなと計画を立てるノーカの背に、大神の声が掛かる。

 きっと良さげな励ましとか祈りとかが来るのだろう。ここは一つ振り向かずに背中で応えるのがオサレというやつか、と足を止めウキウキしながら待つノーカへ

 

「この決裁書を元の場所にファイリングして貰えると助かるのだが……」

 

「……拝受します」

 

 申し訳なさそうに書類の処置を頼む大神に、ノーカは少し……そう、ほんの少しだけ彼の評価を下げた。代わりにフェルズの評価をそれ以上に下げたので許して欲しいと内心で謝りながら。フェルズが一体何をしたと言われれば、していないからだの一言を返す。言うまでもなく、単なる言い掛かりでしかなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。