オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

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前回のあらすじ:主神の命を受け『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』へと赴いたオッタル。仕事としてお茶会の準備の手伝いを依頼したのだが、予定日は既に予約が一杯だと断られてしまう。念のため予約の入っていない空き時間とその時間帯の担当者を教えて貰い、オッタルは主神の元へと走った。ウキウキした主神のご尊顔に胸を打たれながらも、予約を失敗した事実を伝えければならない無念に曇るオッタル。告げられたフレイヤの表情もまた曇る。心痛に耐え、予約を入れられる時間と担当の情報を伝えると曇りが取れ悩まし気な表情に変える女神フレイヤ。そして言い渡された条件で予約を入れるべく走るオッタル。だが現実は非情だった。オラリオのより多くの人々を助けたいので予約は週一までと限定されてしまったのだ。優先順位の確認を怠った不徳を恥じ、オッタルが取った行動は……勝ったら予約を二件に増やして欲しいとの条件を賭けた決闘の申し込みだった。


第二十八話:続々・開拓地――DDと闇派閥――

 周囲からのサイコパス認定を受けて傷心したノーカは次の案件である闇派閥(イヴィルス)の首魁とその護衛について確認するべく説明を頼む。が、話を聞いていたアルマ達は露骨に視線を逸らして唐突に用事を思い出しその場を去ってしまう。ノリの良い仲間にノーカは嬉しくて泣きそうだ。

 そこで、流れについていけなさそうなペペン・アルマとサラマンダー・アルマにお願いしたのだが、場所以前に確保された事すら知らなかった。

 取り敢えず二名にお礼を述べて上等なマジックキャンディーを渡して解放する。そして深呼吸を一つ。次に懐から次元安定石を取り出して、砕く。

 

「狩りの時間だオラァ!」

 

 憑依装備の面々からNDKとウィスパーチャットが届く中、切り替わる景色。

 キレ散らかしながらも自力で賄える範囲のバフを掛け、ネコグルミ(ぬいぐるみ)マリオネット(ぬいぐるみ)ドリアード(モンスター)に加えて死霊(モンスター)と仕様が変わって一発屋を止めて居残る様になった死神(モンスター)も召喚して、周りの塩対応で気落ちしている今が好機とばかりに自発的に飛び出してきた御魂・アリア(本体は武器)を傍らに、ノーカはディメンジョンアクロニア開拓地なる地名を持つらしいディメンジョンダンジョンの探索を始めた。

 今のノーカには、八つ当たりの行為が、それを向ける対象が必要だった。そういう事にしておこう。

 尚、その様子は好意的に見れば凄腕テイマーだったが、そうでない場合は前線指揮官タイプのモンスターであった。途中で某武蔵の国の妖精にメタモルして、試験がてらパズドラコラボで大量に確保してあった光ドロップ(巨大化アイテム)を使ったので、第三者には新種の階層主にしか見えなかった事だろう。

 本人は射程や攻撃範囲が広がる副次効果を発見して大喜びしていたが、当然ながら被弾面積が広がるデメリットもあり、今回は巨大化のタイミングが悪く自分の召喚したサモン・シューターの矢を膝に受けた。目撃者が居なくともどこかしらでアホな真似をする奴である。

 

 

 

 

 

第二十八話:続々・開拓地――DD(ディメンジョンダンジョン)闇派閥(イヴィルス)――

 

 

 

 

 

「気は済みましたか?」

 

「ぼちぼちですねぃ」

 

 御魂・アリアの質問に答えつつ、ノーカはDDの情報を整頓する。その表情は満足げだ。

 D(ディメンジョン)アクロニア開拓地のフィールドは、元になった廃村の在りし日を参照しているらしかった。

 長閑な農村の風景をECOで見掛けた外見のMOBが闊歩する様はどこか歪であり、ノーカは言い知れぬ不安感を抱く。少なくとも今回は特筆するべき事態は起こらなかったが、定期的な調査は必要だろうと考え、ギルドの仕事を早く通常業務に戻すため時間外労働を増やす決心をした。

 生息しているMOBは頭にDが付く命名法則からは外れていないが、通常は強化されるはずの強さが元になったMOBと変わらない種や、むしろ弱くなっている種も見受けられた……というか、個体差すらあった。

 また、アクロニアにおける生息域を考えると滅茶苦茶な生態系であり、無限回廊並の節操の無い印象を受けた。記憶にある限り、アルマが実装されている種が見受けられなかったため、或いは『そう言う事』なのかも知れないとノーカは嬉しいような怖いような気持ちになった。

 ドロップアイテムはディメンジョンダンジョンお馴染みの石類としてディメンジョン魔石なる結晶の破片、他には各種ポーションやブランクイリスカードといったラインナップだが、植物系統のMOBからは種や花びら、植物系パートナー等のECO産アイテムが入手出来た。植物知識のスキルが仕事をしているらしい。憑依装備の面々にも協力して貰い検証したところ、それぞれの持つ知識スキルの影響を確認できた。

 ついでに収集ゴーレムと呼ばれる、稼働させると自動でアイテムを採集してくれるアイテムを放流するのも忘れない。ログアウト時に残す事が出来、ログアウト中しか活動しないはずだったそれもまた、ECOの仕様から外れて自立稼働していた。何なら自分からMOBを狩っていた。アイテムってそうやって集めもしたんだーとノーカは感心したのであった。

 

「浅い層は強さ的にDDとは思えないですし、ベルくん達の鍛練に使えるのでは」

 

「例のダンジョンに出て来るゴブリン? よりも弱いので、装備や憑依で底上げすれば子供でもいけるかと」

 

 思い付きに対する御魂・アリアの条件付き肯定を受けて、ノーカは割と乗り気になって試験運用の生贄(テスター)を探そうと考えた。最悪の場合は当然ながら死亡なので、人選としては惜しくない人物になる。

 適当な闇派閥(イヴィルス)を拐って来るのが後腐れ無く済むので第一候補か。だが目標が一般人の育成と考えれば『神の恩恵《ファルナ》』を持つ眷族は不適格だ。

 こうなると闇派閥(イヴィルス)を構成する邪悪な神を誘拐(おまねき)した上で脅迫(せっとく)して、眷族の『神の恩恵(ファルナ)』を取り上げて貰い、挑ませる事で強化に関する試金石となって貰うのが後腐れ無くて良いだろう。

 

「いや、待てよ……」

 

 そこまで考えて、ノーカは先送りにした案件を思い出す。そう、捕縛された闇派閥(イヴィルス)の首魁と護衛である。

 

「神と眷族と、想いが深いのはどちらでしょうか」

 

 強制送還と眷族の命、『神の恩恵(ファルナ)』の剥奪を受け入れる様に脅迫(せっとく)するならどちらの方が成功率が高いだろうか。闇派閥(イヴィルス)とは言っても全知零能の不便な生活を受け入れる程度には人間に興味を持ち、天界に戻るだけの神。神を敬うが一度きりの人生を歩む人間。

 まぁ、神が送還されてしまえば『神の恩恵(ファルナ)』は消えるので残された無力な眷族は殺されるし、眷族を見捨てた所で護衛を失った神は無力であり俎上の鯉でしかないのたが。

 本来であれば神殺しのために神の前――オラリオまで輸送したり処分が下され実行されるまで捕らえておいたりする猶予期間が発生し、助けが来る可能性に賭ける事も出来るのだが、対神粛清兵器の物騒な肩書きを持つノーカの存在がそれを恐ろしく分の悪い賭けに変えてしまっている。

 ここに来て設定が足を引っ張りそうな事にノーカは内心で舌打ちした。『神の恩恵(ファルナ)』以前に捕縛されて逃げられていない事実があるため詰んでいる点からは全力で目を背けておく。

 先程の愉快な一柱と一人が首魁と護衛だとして、会話の内容からするとそれなりに気心の知れた仲だった。悪魔にだって友情はあるのだから、闇派閥(イヴィルス)に無い理由は無い。

 つまり、互いに○チョウ倶楽部(じゃあオレやる)をしてくれるなら心を打たれたとか妄言を吐いて減刑の建前で実験協力に持ち込めるので、ノーカはその可能性に賭けるしかなかった。そうはならんやろと脳内のピピ○がツッコミを入れて来るが、脳内のポプ○がなっとるやろがいと封殺してくれたので事無きを得た。

 

 

 

「そんなわけで私が片方だけ助ける取引を持ち掛けるので全力で互いに互いを庇い合え下さい」

 

「ここまで堂々とした茶番の打ち合わせは初めてですね」

 

「俺も初めてだよ。誰に対する建前なのか全くわからん」

 

 DDから戻ってきたノーカは、早速壁の穴からダイレクトお邪魔しますを敢行し、小屋に縛られ放置されていた二名の説得に掛かっていた。

 

「でも地上の神ってこういうところありますよね?」

 

「あぁ、否定できないのが悔しい」

 

「そこは嘘でも否定して下さい」

 

 ノーカの話術ではオラリオの裏を牛耳る闇派閥(イヴィルス)の老獪さには到底敵わない事が予測されたため、初手から直球でお願いに走った。が、素気無く流された。

 こうなればノーカには殆ど打つ手が残されていない。故に次の手――泣き落としである。

 

「お願いします! これが出来ないと私はオラリオに居るたくさんの冒険者を赤ちゃん扱いしつつ『神の恩恵(ファルナ)』与えてる神を一人立ちの邪魔する毒親だって纏めて虚仮にして悦に入れなげふんげふん……ん゛んっ、皆に証明したいのです! 古の英雄の様に、いやそれ以上に人は成れるのだと。自分の足で立てるのだと、思い出させたいんです!」

 

「虚仮にしてまで言った時点で本音が駄々漏れてて手遅れですよ!?」

 

「ててて?」

 

「どもった訳ではなく!」

 

 白々しさ満点なノーカの台詞に、紅い髪の青年が極めて真面な反応を示すが、ノーカは同じフレーズが三度繰り返されると呪術の疑いを持ってしまう性質があったのでついつい反応してしまった。

 

「エレボス! 貴方からも……」

 

 青年は堪らず己の主神に助力を求め、しかし言葉を途中で止めた。

 

「エレ……ボス?」

 

 泣いていた。端正な顔立ちはそのままに、何かに感じ入るかの様に瞳を閉じて、涙を流していた。

 しばしの沈黙の後、そっと目を開いたエレボスは抑えていた神威を戻して口を開く。

 

「……感動した」

 

「は?」

 

「ヴィトー、彼女は言ったのさ。今の世の中を引っくり返すと」

 

「それは……」

 

 エレボスの指摘に、ヴィトーはノーカの言葉を振り返る。彼女は言った――人も神も虚仮にする、と。それは確かに現体制への否定である。同時に、千年掛けた神の策(眷族による討伐)が黒竜に通じなかった事実に、世界が向き合わなければならない今後の在り方に対する問い掛けにもなる。

 原因の幾つかは取り除かれたとは言え、個人的な神への、世界への恨みを抱くヴィトーには虚仮にする部分だけでも話を聞く価値はあると考えた。

 

「何より虚仮にするという部分が気に入った。大いに結構だ。その先はまだ聞いていないが、神の時代(完璧な秩序)でも英雄の時代(完全な混沌)でもない緩やかな……それこそ無数の選択肢を自分で選ぶ事の出来る、人の時代(責任を伴う自由)が訪れるのだと俺は考える」

 

 ノーカは眷族を赤子と、神を毒親と、それぞれ称した。神であるエレボスとしては殴り付けられた様な衝撃を受けたし、返す言葉も無かった。

 大穴に封をして安全を確保し、人間に恩恵を与えモンスターと簡単に戦える様にした。だがその後はどうだっただろうか。自分達は時に導きこそしたが、基本的に見守るだけの受け身であった。

 確かに世界に人の数は増えた。文明も発達した。未だに村が壊滅する事態も起きるが、モンスターの被害はかつてと比べるまでもなく軽微になった。

 だが、その一方で生きるために、強くなるために、どれだけの熱を持てる様になっただろうか。後を継ぐ者へ託す共通の夢を、より良い未来を目指して生きる者が何人残っているのか。

 千年の間オラリオにおける力の頂点に君臨し続けたゼウスとヘラの失敗を経ても絶望に負けず逞しく……と言えば聞こえは良いが、実情は闇派閥(イヴィルス)の台頭や権力争いに比重が置かれた派閥間のいざこざ等、人類規模で見れば内ゲバでしかない。

 生まれた時から平和(そう)だった彼らにとって、モンスターの脅威とは備えこそ必要だが差し迫っているわけではない案件なのだ。平和ボケと言う奴なのか、何処を見ても自分が獲物でしかない自覚は無く、人類の存続自体は疑ってもいない楽観者で溢れている。

 

 神とてそうだ。神とダンジョンとの間で交わされた契約はある。だが抜け道の模索は最初からしなかったか、疾うに打ち切られたかだ。或いは契約を破る愚かな真似を決行できる神等、果たして残っているだろうか。人を、子を愛するが故の自己犠牲を手放しに称賛するつもりは無い。無いが、もはや約束の刻は目前なのだ。手段を選ぶ余裕は残っていない。だからこそ『原初の幽冥(エレボス)』は――と決意を新たにする神エレボスを他所に

 

「ダンジョン制覇前に黒竜の対処をしたいところですよね。理想としてはテイム技術を発達させてワイバーン辺りの強化種を作り出しそれら同士を掛け合わせ続け種族の壁を突破した強くて強かな特異個体の内の一体を番に差し出し繁殖させて魔石を削りつつ、卵を盗んで人間の手で育ててから親にぶつけたり、幼体の内に殺して得た素材を武具に加工したりをしたいんですよね。これが一番早くて楽だと思います」

 

 目の前の手羽先(ノーカ)が何か酷い事を言い出した。

 卵を盗まれたり子を殺されたりしたら幾ら黒竜だって怒るんじゃなかろうか。そもそもアレが繁殖なんてするのだろうか。エレボスは訝しんだ。

 隣の眷族は完全に頭のおかしい奴を見る目で神造兵器(ノーカ)を見ている。エレボスは内心で違うんだ、製造に関わった神が誰かは知らないがそいつの頭かこいつ自身の頭がおかしいのであって神全体がこんな訳では……訳では……大体こんなんだわ。との結論に至りスン……っとなった。

 

「ですがそんな正攻法を試す余地があるとは思えません。人々のモンスターに対する忌避感は凄まじい。元より多少の知恵で予測した最悪の未来という被害妄想で他の種族を滅ぼすまでやらかすのが人間ですから。試しても結果が出る前の段階でネコソギにされるはずです」

 

 そんな正攻法があって堪るか、とエレボスは痛みを覚えてきた頭を押さえる。人間に対する評価自体は同意出来るのがまた悩ましかった。

 

「セカンドプランは人間だけで頑張って貰うんですけど、これはこれで千年の結晶(ゼウスとヘラ)が失敗に終わっていますよね」

 

 それは、人類にとってそう断言できる程の大打撃だった。神々にとっても予想外の結末だった。

 有史以来、唯一古の大英雄アルバートが精霊アリアの力を借りた上で命と引き換えに片眼を奪ったとされるお伽噺を除けば、傷らしい傷を受けた記録を持たない正真正銘の怪物が『隻眼の黒竜』である。

 

「なので、より広く深く巻き込む必要があるでしょうね。質より量、ではなく質も量も。具体的には先程とまではいきませんがテイムしたモンスターや、闇派閥(イヴィルス)すら含めた何もかもを使った消耗戦で、年単位の時間を掛けて磨り潰します。過去の英雄が精霊の加護有りだったとは思いますが隻眼にしたまま治ってないなら、もう一度やるだけで視覚を封じられるんですから無駄死ににはさせません」

 

 言葉にするだけなら簡単だが、ゼウスとヘラであってもそれを成せなかった事実が高く遠く険しい山脈の様に横たわる無理難題でもある。

 

「正直、最強夫婦(ゼウスとヘラ)が全滅するんなら従来の『神の恩恵(ファルナ)』をじっくり鍛えるなんて手法じゃいつまで経っても一山幾らで纏めて一確されるだけなんですよね。ましてや今の安定志向で殺し合いもせずに仲良し小好しのダンジョンも集団で安全マージン取ってる連中ですよ? 階層主相手のレイドバトルだって前衛盾役(ウォール)が機能してる時点で勝手が違う訳ですし前提が違います」

 

 エレボスはノーカの言葉を吟味し、黒竜の一撃を受け止められるレベルについて想像してみる。が、想像の中の『生ける厄災』は初手から最後まで空中を飛び回りブレスを吐き続けるクソモンスターだったので、最早防御力とか関係なかった。こりゃ勝てないわけだ。

 ところでどうしてこいつは対黒竜戦の妄言を垂れ流しているのだろうか。エレボスは今更ではあるが首を傾げた。

 

「だからここでこの実験をする必要があるんですよね。『神の恩恵(ファルナ)』とは別口の強化で【経験値(エクセリア)】として吸収されない経験値(EXP)は人間の素の力をどこまで高めるのか。鍛えた前後で『神の恩恵(ファルナ)』の影響はどこまで変わるのか。加算方式じゃなく乗算方式なら素の力を鍛えるに越した事はありませんし、数値の馬鹿でかい加算方式であっても複数の神から『神の恩恵(ファルナ)』を与えられた場合の相乗効果の有無ですとか……」

 

「あ、それは爆散するぞ」

 

「おや、肉体が耐え切れない系の?」

 

「そうなるな。まぁ、誰もやってないってことはそういうことさ」

 

 ノーカの話がここまで進んだ事でエレボスもようやく合点がいった。早い話、ヴィトーを実験台にしたいのだろう。『神の恩恵(ファルナ)』を育てると言った段階で、精霊と同様の武器であると知っているのだ。剥奪した状態で何らかの――命の危険がある様な鍛錬を課して、成長の度合いだとか掛かる負荷や必要な補助等を確認、調整することで本命の後続に繫げるための叩き台(モルモット)が欲しいのだ。

 

「なるほど。で、ここで思い出して欲しいのは私これでもオラリオのギルドに属しておりまして」

 

「大変だ我が眷属。急にお腹が痛くなってきた」

 

「偶然ですね我が神。私も寒気が止まりません」

 

「このまま闇派閥(イヴィルス)の首魁を捕まえたとなれば、最低でもオラリオに運んで取り調べの上、全裸に向いてデリケートな部分だけ熱した蝋を垂らして隠した格好のまま屈強な同性愛者(どうくつせんもん)な冒険者の一団にお預けすることになってしまいます」

 

「済まないヴィトー、『神の力(アルカナム)』が漏れそうだ」

 

「そんなトイレを我慢しているみたいな軽さで送還されよう(逃走を図ろう)としないで下さいますか我が神エレボスよ」

 

「安心しろ。俺たち超越存在(デウスデア)は老廃物が出ない……だから大も小もしないんだ」

 

「その割に汗が凄いですよ。諦めて下さい私も命を張る覚悟は決めました。せっかく色付いた世界に生まれたのです石に齧り付いてでも生き延びますよ、私は」

 

「私“は”って何だ“は”って。‥‥逃がさん‥‥‥‥お前だけは‥‥(お前一人だけを行かせるかよ)

 

「私としてもその程度で済ませげふんげふん、そんな酷い真似はしたくないので、一芝居打ってお二人の互いを想う気持ちに感化されたという体で減刑を図り多少の肉体労働に従事して貰おうと考えた次第」

 

「水臭いぜ我が眷属。俺たちの絆でこの難題を乗り越えようじゃないか」

 

「おぉ、我が神。貴方の信が得られるのならば私はどのような困難も乗り越えられることでしょう」

 

「「友よー!!」」

 

 ちなみにこのやり取り、小屋の周囲に集まった開拓地在住の面々が揃って聞いている。ベルだけはアルフィアに耳を塞がれているので聞こえていないが、一部アルマ達は教育に悪そうなやり取りを真似して他のアルマ達から叱られたりしていた。

 

「おぉ、なんという。みぶんをこえたユウジョウ! わたくしかつてここまでこころをうたれたことがあったでしょうか。かんどうでなみだがとまりません。いいでしょう、あなたがたのふけーきずなにけーいをひょーしてつみいっとーをげんじげんばでのほうしかつどーをめーじmuscle」

 

「なんで棒読みなのに一部だけ妙に発音がいいんだ。というか途中から明らかに棒読みですらなかったぞ」

 

「神エレボス、まっそぅって何です?」

 

「筋肉だ」

 

「筋肉」

 

 ノーカの宣言により恥ずか死回避用自害(即時の強制送還及び処刑)を免れた神エレボスとその眷属ヴィトー。

 時に死は救いであると知る筈の彼らだが、地味に未知への期待によって天秤が傾いていた。そして詳細を聞いて神は人の成長を願い、人は見返す形での復讐を誓い、それぞれ前向きな姿勢での協力を約束するのであった。

 後にアイドル親衛隊長(エレボス)はこの判断を大正解だったと自画自賛し、後援会会長(ヴィトー)は苦労人同盟なる組織を別途で立ち上げる切っ掛けになったと苦笑する事となる。

 

 

 

 なお、このやり取りをデス・アルマに説明した際に尋ねられた「実際の対黒竜戦に関する想定」に対してノーカはこう語った。

 

「敵も味方もDDに隔離して黒竜がMOB判定になるかを確認。少なくとも味方は死ねない状況に持ち込んでますので黒竜が学習するまで粘って疲れさせます。当然、味方は交代制で。学習後にどうせ傷つけられないと高を括って眠ったりしたら騒音で妨害を試みストレスを与え続け、それでも本気で寝入ったら目を覚ますまで睡眠学習に切り替えて徐々に洗脳します。生態や精神構造が分からないですけど、問題なく友好的になれば良し、ならなくても知能が高ければ高いほど終わりの見えない未来(死ぬ事すら出来ぬ地獄)をはっきり予測できてしまい勝手に絶望し衰弱してくれるでしょうから……MOB判定にならなくて死なない様なら永久に閉じ込めて観光名所化しても良いですね。次元に干渉する能力を持ってたり途中で能力に目覚めたりしたら、その時は仕方ないので適当な人間(英雄)を伴い体内に突入して、こないだ収穫された死ぬと増える系の品種改良マンドラシリーズをバラ撒いて内臓破裂か窒息死かして貰います」

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