そして視線を移せば、そこではオッタルが、あの【
振り向けば、そこにはいい笑顔の虎人らしき女の子。やろっか、と言う声の軽さとは裏腹に、手にした得物は至る所から釘を生やした
エレボス情報だが、
それまでホットな話題であったギルドの珍獣への対応について、
そこへエレボスが三年後にオラリオを丸ごと人質に取りつつ諸共に終わりをもたらす計画を考えたと爆弾を投下した事から、無理に動く必要がなくなり、下手に動いて祭を台無しにするわけにはいかないと大人しく準備に勤しんでいるのだとか。
当然ながら跳ねっ返りの暴走は起きるので多少は勘弁して欲しいと言われたが、ノーカは早漏も更年期も
そんな感じで比較的平和な日々が続く中、事件は起きた。
「見るがいい。これが私の新作……
「封印じゃボケェェェェェ!?」
第三十三話:やらかし――鶏が先が卵が先かって言うけど鶏よりはヒヨコが先だよねと真顔で語ったあの子は今――
ここ数日、
最初の方は一時的な
それが、途中で流れが代わり、今や明るみに出れば所持の時点でお縄を頂戴されるであろう事は容易に想像出来てしまう禁製品候補のオンパレードである。どれも有用なのは間違いなく、流石は神秘と魔導を極めた賢者であり、
最近ではボケとツッコミの役割が逆転しかけており、ノーカは自分の中の立場が揺らぐのではと危機感を抱いていた。
「まぁ落ち着け。名前が
流石にノーカの反応を予測出来ない程には耄碌していなかったらしく、こちらの態度に疑問や焦りを見せる事無く、冷静になるよう宥めて来る。ノーカが無言で顎をしゃくり先を促すと、
「名前の通り、この薬は『
「……人工の
「話が早いな。流石に今はまだ効果時間がそこまで長くないので、神ならぬ身では神々の
自慢気に、そして頷きながら語るフェルズの言葉に、ノーカは頭痛こそ感じなかったが頭を抑えながら悪用する方法を考える。が、思ったよりも考え付かなくて拍子抜けしてしまった。
強制的な
暇をもて余した神々の遊びとしては十分なのだろうが、それをしたら戦争……となる可能性は低く、
神が面子を気にして秘匿する可能性はあるが、
何れにせよ、ノーカとしてはギルドの仕事が増えるので神々には是非とも自重して欲しい所であるのだが、そんな願いが神に届くなら苦労はないため、薬の封印に一票を投じるしかなかった。
有効利用と言う意味であれば、単純なのは眷族を放置している神や強制力のある某かで縛られている神からの
冒険者の【ランクアップ】に掛かるコストを考えれば、後進達の【
不安要素となる同じ人間を殺すことへの躊躇いは、同族の意味する
因みに、擬似的な
今回の
ノーカの認識としては、【
そこに今回の人工
それはそれとして神の教育はやっておこうとノーカは考えを一度切り上げる。
「その薬はフリー
「ふ、ふりぃ? あー、あぁ。これの素材は他の似た薬とは違って
「
これらのアイテムは神目線で見た場合、眷族の【ステイタス】を秘匿、独占している優越感を奪われる事となるため、忌むべき物でしかない。おかげで稀少性も金銭的な価値も相当に高い代物となっている。
恐らくは主に
そこに開拓地や飛空城ファームから取れた農作物という割安な素材で作った安価な代替品が市場に流れた際の反応は想像するだけでも非常に愉しいのだが、実現させてしまえば献血組は言うまでもなく他の……というかほぼ全ての神から怒りを買うのは必定。そんな真似をしてオラリオが混乱すれば、収入は減り出費が増えるために絶対が付く程に避けなければならない事態である。いかなノーカとて、不買運動や抗議デモには無力なのだ。情報操作によるコントロールを試みた所で、人々に畏敬の念を抱かせる
「……神ウラノスには?」
「フッ……真っ先に報告し現物も情報も流出しないよう廃棄と凍結を言い渡されたとも!」
「流出してるんだよなぁ……」
念のため確認した内容の、予想通りな答えが返って来た事に天を仰ぐノーカへ、お前はノーカウントだからなと上手い事を言ってやったぜと言わんばかりに自慢気な親指を立てたフェルズは、その
フェルズの大きな悲鳴が上がったが、元より24時間働けますが何かと泊まり込みで仕事をしているノーカの存在と何度か発狂して暴言や奇声を発していた事実はバベル付近の住人にとって周知の事実であるため、問題にはなるまい。
最初の頃は気になって様子を見に来た神も居たが、天井にミラーボールを吊るし設置された光源から放たれるフィルターで色分けされたカラフルな光によって照らされる職場と、地面に撒き散らされた書類の上でブレイクダンスをするトラスーツ姿を目撃してしまい、しかし何も見なかった事にして帰ったという経験談が広まってからは、誰もがそっとしておこうという流れになったらしい。
「とりあえず話を戻しますけど、
「もちろん、私が使うぞ。肉が無くとも骨に刻み付ければ良いとヒントを与えたのはお前だろう?」
「……ジーザス」
ノーカは再び天を仰いだ。かつて、
その時に流れで現代の名前が刺繍されたジャージや、母国語ではない言語で割と間抜けな文言が綴られたTシャツの話を出してみたり、瞳や骨の様な部位またはDNA単位でびっしり刻むだとか、複数箇所に分けて刻むだとかすれば格好良いしお洒落にもなりそうなのに神は努力が足りないと愚痴ったりした。
フェルズの発言は、その時の与太話を真に受けて実行してしまえる段階まで仕上げてきたという事であった。実際に『
「まぁ、その……頑張って?」
「あぁ、ありがとう。ではな、今度会うときはLv.5か6になっているだろうから盛大に祝ってくれ」
どことなく失敗フラグを立てそうな台詞を遺してフェルズは去って行った。ノーカは仕事を再開し、辺りには静寂が戻る。そこに紙を捲る音や辺を走らせる音が響き渡り、オラリオの夜は更けていくのであった。
途中、遠く悲鳴が聞こえた気もするが、気のせいだろうと言い聞かせて仕事を続けた。休憩を取らないガチの徹夜が続くと脳が誤作動を起こし幻覚や幻聴を体験する機会に困らなくなるので、そのせいだろうとノーカは自分を納得させたのだ。休めよとツッコミを入れる者は居ないため、ノーカは黙々と……時折奇声を上げながら仕事を続けるのであった。
後日、しばらく姿を見せなかったフェルズを研究に没頭しているのだと考え気にも留めていなかったノーカの期待を裏切り、幽鬼の様なおどろおどろしい空気を纏まったフェルズが現れた。
実験は無事成功したそうだが、変なスキルが無数に生えてきたらしい。驚くべき事にあの大神ウラノスが耐えきれずに吹き出したと言うのだから相当なのだろう。
だがしかし、冒険者にとって【ステイタス】の詮索は御法度であると知っているノーカは、詳細を尋ねはしなかった。慰めの言葉を掛けたりもしない。代わりに、大量の野菜が入った籠を押し付けた。
推測ではあるが変なスキルが発現した原因の登場に、フェルズは泣き叫び喚き散らしたという噂もあるが、敢えてその正誤は語るまい。それでも敢えて一つだけでも語るとすれば、そう、フェルズは