そして後日、通常周期の一月を待たずして機会を得たオッタルは『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』の一角を貸し切った特別会場にて大食いチャレンジへ参加していた。どうしてこうなったかと問われれば、気が付けばこうなっていたと答えるしかなかった。文句を言おうにも、調理担当に
何故かミアに【ステイタス】の更新を命令されたため主神の手を煩わせてしまったのだが、不思議な事に【ランクアップ】出来るようになっていた。遠くから自分をガキ扱いしていた高い壁の啜り泣きが聞こえた気がしたが、オッタルは鋼の意思で聞かなかった事にした。尚、主神は
最終的な回収金額は十一桁に届き、手が回らなかった公共事業への投資が可能となった事でロイマンは大いに喜んだ。一番の喜びは報告書に記載されない一部の商人からの鼻薬についてだったが。
これは商人が自らオラリオに来ていたタイミングでノーカが急襲、後ろ暗い取引からは完全に手を引く誓いを立てさせた上で今までの事を見逃す代わりに分捕った金であり、当然ながら不正の証拠でしかないため記録には残せない。よって個人の懐にこっそり入れる他ない泡銭であった。
ノーカは自分の懐に入れた場合だと神ペニアに見抜かれる
オラリオ内では挽回不可能なレベルで名誉が地の底を這っているので、効果の見込めない小細工に過ぎないが、九桁ヴァリスの寄付ともなれば、外向けのアピールとしては十分に機能するだろう。
爆弾を抱えたままなのは怖かったのか、ロイマンは寄付とは別に、この資金から
試用期間なにそれおいしいのとばかりに独断で始めた大型プロジェクトを済ませ
それは
イベントナビも気持ち張り切っている様にノーカは感じていた。勿論、気のせいである……と言いたい所だが、イベントナビの妖精プリムラが存在するため実際に張り切っている。見知らぬ土地だろうが時間の流れにより人々の行動が変化しようがイベントの気配は逃さないプロの意識と技とが存分に発揮されている形だ。
そんなプリムラの意見をまとめた物になるイベントナビを参考にしながら、ノーカはアパテーの紹介について礼を言っていなかった神イケロスへ謝礼を渡すついでに頼み事をしたり、公共事業の下見ついでにオラリオの街中にちょっとした仕掛けを施したり、正規の周期で開催された
余りに精力的過ぎて、同時期に複数箇所で目撃例があった事から、分身するだの自己増殖するだのと噂が流れたのは
第三十五話:ここまでチュートリアル――ここから自由。だけど最初はメインストーリーくらいしか進めないんですよ――
そんな生活を送り始めるのと時期を前後したある日、ノーカは五度目となる【ソーマ・ファミリア】の監査を行った。そして活動報告に目を通し、狙い通りに眷族がギルドから借金をして上納金に当てているらしい事を確認してほくそ笑んだ。
ザニスの言い掛かりに対して、ノーカは
その後、今度は神ソーマにゲーマーズで取り扱っていた
「……と、まぁ、こんな感じですが、いかがでしょう?」
「興味ないね」
今回の結果をラジルカに連絡したところ、返事は素っ気ないものだった。が、表情からは喜悦が漏れていた。たこ焼きが増量されてマヨネーズの追加もされていたので、気のせいというわけでもあるまい。
「そういえば、
「ディメンジョンダンジョン? 多分、初耳だな」
「でしたか。まぁウチらの故郷が関係するんですけど」
何と無しにされた質問から始まり軽い感じで続いた会話であったが、ノーカの
「聞きたくねぇ……が、知らねぇまま巻き込まれるのはゴメンだ。言ってくれ」
「あい、あい。DDは次元断層ですね。
開拓地の管理運営はアルマ達が行っているが、彼女等は人の姿を取れる様にもなったモンスターである。育てている
つまり開拓地はモンスターが住み着いた廃村であり、ロケーション的にダンジョンと認識されたのだろう。
「はぁ、で、危険度はどンくらいだ?」
「前提条件として、特殊なアイテムで空間を安定させない場合だと内部での活動は事故の素ですね。時間や空間のズレはもちろん、別世界に一部だけ跳ばされる可能性も十分考えられるかと」
「ろくでもねー」
「割と簡単に作れるアイテムで安定するので大した問題にはなりませんよ。で、安定後の話ですが、内部には
「へぇ……それを話すってこたぁ、アタシらもいずれ?」
ラジルカ・アーデは妹のリリルカ共々『
現在はギルド長との裏取引めいたやり取りにをしたノーカの
「実験の結果次第ではありますがね。前回の報告では
「ほー。そうなるまでの苦労がどンくらいかは知るのが怖いが、実際にそれだけの強さは持てるのか」
「ECOはデスペナのない気軽にゾンビアタックできるゲームでしたからねぃ」
「……
割と悲惨な未来が予想され、ラジルカは遠い目をして天を仰いだ。ダンジョンで何度も死にかけた経験を持ち、妹のためなら零に近い確率のために自爆テロへ踏み切る程度には覚悟も決まっている自分はまだしも、妹を参加させるかは非常に迷う問題であった。
当のリリルカは
「まぁ、どんな影響があるか分かってませんし、許容値を超えたらモンスターに変異するとかの取り返しの付かない副作用があったら怖いですからね。最低でも半年は様子見しませんと」
「なにそれこわい」
「クジラ岩と呼ばれる場所がありましてね……ぶっちゃけるとクトゥルフ関係なんですけど」
「オーケー、わかった。もう言わなくてもいいぞ予想はできた」
「ちなみにファントム・アルマが
「言うなっつってンだろアホ」
前世の漫画やアニメの知識から、自覚なしに気付けば異形化している現象に幾つか心当たりを持つラジルカは、その脅威を十分に把握出来た。正直な話、懸念があると聞いてしまうと調査の結果を問わず参加したくない。
だが、モンスターが存在しているこの世界では、何をするにも強さがなければ自由とはいかない。
パルゥムは体格で他の種族に劣るし、筋肉も付き難いので、『
それでも、オラリオの現最強派閥はそれぞれ団長や幹部にパルゥムがいるし、物語ではフィアナ騎士団のような例もあるため、強さを得られない訳ではない。
「まー、アタシらに逆らう権利はねーからな。心構えだけはしとくわ」
「えぇ、いい報告ができるように……とは言っても、究極的に共通点の無い
その言葉を最後に一礼すると、ノーカは去っていった。
その口元にソースをべっとり付着させていたのを指摘しないままだった事について、気付かなかったと自身に言い訳したラジルカは、モラトリアムの終わりを予感し、『
後日、適性検査と言われて地獄のような
因みに、ノーカは人類の発展に一番寄与してきた要素が知能であり、それを下地として考えられた道具を作り出す器用さであると考えている事から、この世界で最も進化した人類は肉体的に劣る面をそれらで補い他種族に食らい付けるパルゥムであると考えている。
小さな体格だって限られた空間を考えればより多くを賄うための最適化であり、手先が器用なドワーフのゴツゴツした大きな手では物理的に不可能なサイズの細工を施せる利点となる。他種族との体格差による不便な点は道具で解決すれば良く、それは人類全体が技術を発達させてきた流れと変わらない。
あと小さいは可愛い。可愛いは
日々暗躍を続けるノーカであったが、一方で日中は居なくても回っていた部署への追加人員となっているため、割と任される業務が
これはノーカの行った統一書式の導入と関係者への配布により、データの確認が簡単になった事も関係していた。文字の上手下手による読解スピードの差は残っているが、以前の様に酷い時は表題や提出元すら書かれていないまま提出された書類の中から必要なデータを探す手間が省けたのは大きい。何が悲しくて筆跡を照らし合わせるために過去の書類を漁ったり筆跡リストを作って照合せねばならないのかと職員のモチベーションを著しく落とす要因が除かれたため、ノーカの評価は上向いていった。
仕事の中には部署を跨いで処理されるものも多い。そのため、自然と他部署とのやり取りも増え、幾つか重複しているため纏めてしまえる内容に気付いたり、逆に一連の流れだからと部署を跨がず独自に処理してしまうためブラックボックス化が起きて担当者以外には理解出来ず誰も助けに入られない業務の存在を知ったりした。
これがノーカの次なる目標、ギルド内の業務改善計画へと繋がった。提案書を持って来てプレゼンを始めたノーカに対し、ロイマンはまたかと頭を抱えながらもゴーサインを出すのであった。
そんなわけで上司に新規プロジェクトのため一時離脱しますと報告をしたノーカは、どこからともなく地獄に付き合ってもらうとか火中の栗を拾うかとか危険に向かうが本能かとか良い声のナレーションが響いて来た気がした。
考えてみれば欠損無効の