なお、アルマ側は自主的に話し合い、まずは自分達が楽しめる事を目標にしてメニューを組み上げて、和気藹々と過ごしながらも着実に歌と踊りの腕前を上げていた。そしてそれに混じっていたリリルカが徐々に人間離れしていったのだが、魔改造されて戻って来たラジルカは素直に称賛するだけで、ツッコミを入れたり嘆いたりする事が出来なかった。
オラリオに激震が走って数日。
「原作ヒロイン候補の敵対する率高過ぎワロタ」
「台詞の割に草生えてませんよ」
「しっかりしろ農家、役目だろ」
アイズによる襲撃の後、【ガネーシャ・ファミリア】の取り調べをしっかり受けてから解放されたノーカは、
そこで受けた助言……というかブレインストーミングにより、一度行方を眩まして諸国を巡ったり
「でもこの時点だと正直リューさんもアイズも単なるガイジだからしゃーない」
「ベルくんの漂白効果でようやく人間味を取り戻すのが彼女らですもんね」
「もう大丈夫って安心して逝った神を尻目に復讐の鬼と成り果てた自虐誘い受け系正義マンがなんだって?」
「正義を口にする奴って大体は立場が低くて物が見えてないよな。もしくは狂信者あるいは詐欺師」
「そりゃ、現代だと空っぽの頭に詰め込むための
「つまり夢か」
「人の夢と書いて儚い……アグリアスは俺の嫁」
「残念ですが彼女は兄の
「ちくしょう
「小難しい話はわからないけど、どうせ始まりはギリシャの
「ソクラテス、プラトン、アリストテレス。私でも知ってるぞ……名前だけならな!」
「十分でしょう。それでは名前の挙がった世界三大
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
基本的に暇を持て余している転生者一同は自由時間の多さから互いに娯楽を融通し合っており、ダンまちに関しても原作に触れてある程度の知識を得ている。外伝であるソード・オラトリアや
そのため、
「アイズなんてこの時点じゃまだ七歳だったかだしな。小学一年生か二年生って考えたら自分で考えて選べるだけ凄いけど、復讐一色で生き物ガンガン殺せるの今となってはキモいわ。それを許す周りの大人はもっとキモい」
「神からしたらどう言い繕っても所詮は
「まー、その辺はお国事情ならぬ世界事情って奴でしょう。私らだってスラムのガキとか園児レベルが
「だねー。それ以前に従った方が得だと思わせるだけの価値を示せないなら説得なんて無理っしょ」
「黒竜の首を土産に……したら神から総スカン食らうか?」
「大丈夫じゃない? 別にあいつらゼウスたちの時も見学してないんでしょ?」
「あー、その辺のイベントは基本的にこの世界の人に手を汚させます。正直、妬みで排除する流れを作られる可能性も低くないですし、英雄なんてのは本物であるほど馬鹿を見るのが相場ですからねぃ」
「ノーカが挑む場合は事前にバフ盛って挑んだのに開幕出来心モンスターテイミングが通って終了する未来しか見えないんだよなぁ」
「ボス属性<よし、通れ!」
「仕事しろwwww」
「竜はドミドラで間に合ってますから……黒竜様におかれましては今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます」
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
「トラウマ発症してやがる」
「祈りに弱い……アンデッドですか?」
「ここは仕切り直しですね。はい、かんぱーい!」
「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」
アイズに関しても、
少なくともモンスターへの憎しみに関しては、アイズの好奇心を満たす相手を見付けていない以上は現時点での修正は不可能と考えられ、
「んー、しかしあの二人、要は熱を通して無毒化される鰻の血みたいなもんです?」
「正義やモンスターで毒を取り戻す辺り、かなり近いな」
「辛辣ゥ!」
「残当」
「擁護できる点が未熟だからオンリーなんだけど、眷族の時点で重機を運転してるようなもんだからそんなんじゃ許されないんDA☆」
「これもみんな大した試験もなしに免許ポンポン発行する神が悪い」
「マジかよ神の奴ら最低だな扇風機のファン辞めます」
「風が…やんだじゃねえか…」
「はいはい、乾杯しますよー。チンチン!」
「「「「「「チンチン!」」」」」」
環境や経験といった要因を知っているため、気持ちは分かる部分もあるのだが、転生者は前世込みで考えると最も若い者でも三十代に届いてしまう程度には生きており、その中でそれなりの苦労をしている。有能なばかりに管理職経験を持つ者が殆どで、故に風紀を乱す下っ端に過ぎない
「でも、そうかぁ……ヒロインが鰻の血……ベルくんは珍味好きな吸血鬼だった……?」
「種族変更アイテムならありますよ」
「引っ込め世界の可能性」
「嫌じゃ! わしは鰻の血など吸いとうない!」
「吸血と妊娠の間にある関係を求め、我々調査隊はアマゾンの奥地へと旅立った」
「新説来たな」
「学会が大騒ぎするぜ」
「ただの蚊じゃん」
「草」
「よし、話を戻すためにも一旦乾杯すっか! プロースト!」
「「「「「「うぇーい!!(ガシャーン)」」」」」」
こんな感じに過ごして沈んだ気持ちを回復させていったノーカは、ついでに原作小説を読んで知識を得るように推奨されたのだが、知ってしまうと変な気の使い方をしそうなので断った。
そして次の日。オラリオを離れた(事になっている)ノーカはアクロニア開拓地にやって来ていた。アーデ姉妹を連れて。
「テーマパークに来たみたいだぜ……テンションは駄々下がりだがなぁ」
「お姉ちゃんはどうしてそんなに疲れてるのですか?」
疲れているというよりはもはや
「リリルカさん、あなたのお姉さんは今日という日が楽しみ過ぎて昨夜はよく眠れなかったんですよ」
「なるほど……でも、意外です。お姉ちゃんは年齢の割に大人びていると言われますのに」
「ふふ、年齢相応の可愛いところが見られてラッキーですね」
「はい! お姉ちゃんの新しい一面を知れてリリは大満足です!」
「ぐぬぬ……」
ラジルカの内心を
その花咲く笑顔を散らすわけにもいかず、ラジルカは意外に子供らしい一面を持つというレッテルを否定する事が出来ないまま唸る事しか出来なかった。
「そんなわけで期待の新人一号二号です」
「ほう、前に言っていたパルゥムの姉妹か」
アーデ姉妹の案内された先は、長閑な農村ではあった。が、見た事の無い動植物が闊歩する魔境染みた場所でもあった。と、言うのも
「取り巻きは減らし過ぎるとでかいのに呼び出されるぞ! 個別に引き離して釘付けにしておけ!」
「近くに長くいると寒さで動きが鈍る! 前衛はこまめに交替しろ!」
到着時は運がいいのか悪いのか、ECOの浸食が進んだらしく最近になってDDでなくともポップするようになった
「ちょうどいい、混ざってこい」
「いやいやいや、そんな子供の遊びみてぇなノリで言っていい内容じゃねぇンだが!?」
『
「何かあれば
「うおお暴君」
だが撤回されることは無く、出されたのはGOサイン。それを是とする根拠が
「お姉ちゃん」
無情な命令に打ちひしがれるラジルカであったが、服の裾を引っ張るリリルカの声に我を取り戻した。そう、姉として妹の身はこの命に代えても守る――
「あれくらいなら大丈夫ですよ」
「なンて?」
そんな決意を滾らせるラジルカに掛けられたのは、至って平静な妹の声だった。まさか恐怖の余り精神が……と思考を巡らせながら恐る恐る確認するものの、リリルカの瞳からハイライトが消えていたりはしなかった。表情も声と同様に普段通りであり、恐怖は微塵も感じていない様子だった。
「リリルカさん、はい
「ありがとうございます、ノーカ様」
呆気に取られているラジルカを他所に、リリルカは
「ちょっと待てェ!」
「?」
「お姉ちゃん?」
唐突な登場を果たした
「いや、だって、
「あぁ」
混乱の収まらないラジルカの内心を悟ったのか、ノーカは納得した風に声を上げて、ラジルカに補足の言葉を告げる。
「ちゃんとラジルカさんの分もありますよ」
「マジか! サンキュ……ってそうじゃなくてだなァ!?」
差し出されて反射的に受け取ったズッシリ重い
「ちが、違うンだ。アタシの愛しいリリ……」
「どうでもいいからさっさと逝け」
「あ、ちょ、待」
必死になって否定しようとしたラジルカであったが、現実はいつだって厳しいものである。自分を無視して始まりそうな三文芝居をキャンセルしようと思ったアルフィアによる命令が、今度は強制力を持って――首根っこを掴んでそのまま現場への投擲という形で下されたのだ。
「せめて
「あー、あれって
「何? それは……失敗したな。だがまぁ、乱戦に持ち込まれた場合の訓練と思えばいいだろう」
空を飛ぶラジルカの叫び声が遠のく中、ノーカは頬を掻きながらアルフィアに簡単な説明を済ませ、アルフィアは逸った自分の過ちに顔をしかめたが深刻な問題ではないと気持ちを切り替えた。
「では、リリも参加してきます」
そんな一幕があっても動じた様子を見せず、リリルカは前線へと駆けて行った。ここだけ見ればクールな妹だが、内心では姉との共同作業にウキウキであった。仮に原作でベルに近付いたときの様に
「あれで『
感心したように呟くアルフィアが視線を向ける先では、放り投げられたラジルカに追い付き空中で受け止め着地してからも抱えたまま
「やはり食事が影響するようでして。ベルくんもすっかり恐ろしいスピードを身に付けたとか?」
そんなアルフィアの呟きを拾ったノーカが、疑問の答えを述べる。
ノーカが各所に差し入れしてきた料理の数々だが、使われている食材は多くがECO由来であり、ECOのスキルによって生み出された代物だ。それらに何やら特別な効果がある事は確認されており、特にそれらを日常的に摂取しているギルド職員の変化は最早人体改造と呼んでも差し支えない域に達していたのだが、数日前にノーカ視点でロイマンの名前が水色から緑色に変わっていた。
これはECOにおいてプレイヤーのLVとMOBのLVとの差が正負を問わず5未満に収まっている事を意味しており、ノーカのLVは110である事から、必然的にロイマンのLVが106~114である事を示していた。日々の仕事や趣味の様な活動がクエスト扱いとなったのか、パートナー装備の様に食事そのもので経験値を得たのかは
ECOはLVUPによって得られたボーナスポイントを基本ステータスに割り振る形で強化されるシステムである。そのため、いくらLVが上がっても【ランクアップ】のような急激な変化による感覚のズレが起こらず、日常生活に支障が出なかった事から、ここまで発見が遅れた形だ。
尚、物は試しとロイマンにステ振りして貰おうとしたのだが、彼の視界内にステータス画面など存在しないため不可能だったという悲しい結果が得られている。また、JOBLVの存在についても確認が出来ていない。
「あぁ……最近になって詠唱を聞いてから距離を取っても回避が間に合うようになったよ」
「あー、事前に耐久が上がってて良かったとかいう、あの」
どこか遠い目でノーカの言葉を肯定したアルフィアの言葉に、ノーカは上がっていた報告を思い出す。内容としてはベルが音速の壁にぶち当たって重傷を負ったという、笑ってしまいそうになる笑い事じゃない案件であり、鍛錬の成果ではあった。それ以前からアルフィアによるゴスペル
そんなベル・クラネルが現在どうしているかと言えば、取り巻きに一撃入れてヘイトを稼いでからの
因みに、白熊くんは中距離から弾丸を叩き込めるリリルカの加勢で形成が一気に傾き、比較的あっさり倒された。まさかの背負い魔・ブーストがドロップしたため現場は騒然となり、残された石像は放置されてしまって、しばらく寂しげに立っていたという。神魔・ケルベロスも宿った事のある由緒正しい彫像なのに。