このままでは【ファミリア】が割れる――そう判断したロキは男性団員にレッスンを受ける様に命令したが、肝心の『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』から団体相手は不可だと拒否されてしまう。天下のロキだぞと詰め寄った団員が
周囲へは誠意をアピールしつつ相手には威圧する目的で
誰を捻じ込むか相談してくると一旦保留にして黄昏の館に戻ったロキは幹部会を開き、アイズの矯正計画を相談するも
「……と、そんなわけで前回討伐は半分成功した感じですかね」
「……そうか」
苦い敗北を味わいながらも五体満足でDDからの帰還を果たしたベル達。
一行は依頼者であるアルフィアへの元へ赴き、受注者であるベルの口から報告を上げたが、
だが、更に恐縮しながら詳細を説明し始めたベルがライオウの復活に言及すると、アルフィアは明らかに纏う空気の質を変えた。そして
「すまなかった。『
これはベルにとって衝撃であった。
己の正しさを疑わず、実際に正しい絶対的な
「で、でも、最初の一回だって二人の協力が無かったら難しかったと思う」
「それでも、だ。復活などと
「う……な、なら! 僕はもっと強くなる! だから気にしないで叔母さ「ゴスペル」あばぁぁぁ!?」
「「ベル(様)ー!?」」
そして感極まったベルがテンションの赴くままやや童心に帰ったせいで
なまじベルがそこいらの上級冒険者と比較しても劣らぬ強さを手に入れていたせいで、
「まぁ、親子の感動的なやり取りはさておき、アーデ姉妹もDDの感じは掴めたと思いますので今後は
「この状況で話ィ進めンのかよ……」
「地味に予定が立て込んでますので」
ベルが
ドン引きしながら呆れの言葉を漏らすラジルカに対して、ノーカはあっけらかんとした態度を崩さない。リリルカはベルの回収とポーションによる治療を行っていた。
「オラリオ出て何する気なンだ?」
「オラリオの外でしか出来ない事はたくさんありますが、まぁ、一言で言いますと……」
ラジルカ達を外に連れ出す際に、ノーカはオラリオに居られなくなった、と言っていた。
同じ口から語られた
問われた側は、煙に巻く気が満々である事を隠さない態度で少しだけ溜めを作ると、表面を撫でるだけの薄い内容を明かした。
「あ・ん・や・くです♪」
「うわきっつ」
今度はラジルカが空を飛んだ。リリルカは
そんな愉快な一時を過ごした開拓地を後にして、ノーカがやって来たのはまさかのオラリオだった。
「……それで? 仕事を責任ごと投げ出した貴様は何をしにノコノコと姿を見せた?」
「何って、そりゃ引き継ぎしてない【ソーマ・ファミリア】の監査ですよ。他の人に任せてしまっては貴重な
警戒の薄い上空から窓を破壊してダイナミックただいまを告げようとするも自分の手で強化ガラスに全面交換していたせいで割る事が出来ず無様に
ノーカはそれらをのらりくらりと躱しつつ、最終的にはそれらしい理由を呑まざるを得ない利益と共に返してくる。ロイマンはやりにくさを感じながらも、結果を見れば総合的な損益は間違いなく利益となる相手なため、それ以上の追及は飲み込んだ。代わりに出た深い溜め息は、飲み込んだ物の大きさに比例しているに違いなかった。
「三日後に
「パスで」
「そうか……まぁ、それもいいだろう。それで、今後は世界各地を回るのか?」
神に対する抑止力でもあるノーカの不在は、オラリオを管理するギルドからすれば痛手である。一方で、
それによりオラリオが富む事はロイマンとしても望む事であり、タイミング的にも
「そうなります。まぁ、ちょくちょく此処には寄りますよ。今回は忘れ物を取りに来た体で済ませますけど、次回以降はちゃんと変装してきますのでご心配なく」
「それは本気で注意しろ……いや、不定期に姿を見せた方が警戒心を煽れるな。ばれる程度の変装で来る機会も作れ」
「アイ、アイ。それではご健勝で」
話はそこで終わり、ノーカは最近になって商売系に鞍替えし酒場を経営し出した【ソーマ・ファミリア】へと向かうのだろう、その場を後にした。
「はぁ~~~ッ」
見届けたロイマンの溜め息は、やはり深かった。内心ではもう仕事を切り上げて帰って酒を飲んで眠ってしまいたかったが、根性で耐えた。
「失敗作とはいえ仮にも
「あばばばば」
探索系から商業系に鞍替えした【ソーマ・ファミリア】の本拠には酒場が併設されていた。開店からそれなりの時間が経っていたが、その売り上げは今一つ伸びなかった。それどころか、今では閑古鳥が鳴く有り様だ。
最初の頃こそ
ましてや
「とりあえず単純に改善しても効果は薄いと思われます。何か奇抜なものでも良いので目玉になるようなものが欲しいですね」
「うぅ、でっ、ですが、一体何を……」
「それを考えるのは手前ぇの仕事だるおォん!?」
「ヒイィィィ!」
ノーカへの恐怖により性格に幾分か変化を起こしていたザニスはすっかり縮こまり丸くなっていた。今では弱気なインテリメガネである。今なら多少の無茶も通りそうだとノーカはほくそ笑んだ。
ノーカは基本的に臆病であり、そのために敵という存在をどこまでも恐れる。特別な理由がない限り敵は作りたくないし、仮に敵対したのならばどうにか味方や中立になるよう手を尽くすか、或いは復讐を生まないために関係者の関係者ぐらいまでを根刮ぎにして、記録を含めた物品は勿論、情報に至るまで一切合財を無に帰すくらいはしなければならないと考えている。
故にノーカが提供側で参加していたギルドの炊き出しにラジルカが
最終的には血脈を絶やす事で復讐の芽は完全に潰えると考えて、ならば
現状は最終段階の一歩手前だ。酒場は赤字経営であり、ザニスの立場は大きく揺らいでいる。
「仕方ありませんね。そちらで意見を出せないのならばこちらの案を採用してもらうことになりますが……」
「えっ、こ、この状況から巻き返せる方法があるんですか?」
「んっふ」
目の前の男を一度地獄に突き落とすための策を切り出そうとしたノーカであったが、保険の宣伝を思い出させるザニスの返しに思わず吹き出しそうになる。それを堪えたせいで勢いが削がれてしまったため、ノーカはザニスの持つポテンシャルに恐怖した。
「失礼、それでですね、えーと……まず団長であるザニスさんの責任。これは【ファミリア】内部に向けた示しとして取らなければなりません」
ノーカの言葉にザニスは絶望の表情を浮かべる。下手に逆上されてもうっとおしく、殴るのを我慢するカロリーが無駄になってしまうので即座に言葉を続ける。
「一番簡単な責任の取り方はザニスさんの想像する団長交代ですが、それをしたところで現状に劇的な変化は見込めないでしょうし、そもそも引き継ぎに手一杯で通常の運営でも一苦労、酒場の巻き返しにまでなんて頭も手も回せません。故に……」
団長の座を守れそうだと明らかに安堵の表情を浮かべ、打開策を告げるであろうノーカの言葉を待つ。揺さ振りは十分だと判断したノーカは、決定的な案を提示した。
「お前がママになるんだよ!」
残響が止み、痛いくらいの沈黙が場を支配する。聞き間違いや誤解を疑い聞き返すべきか悩むザニスに対して、ノーカは先んじて畳み掛ける。言葉を紡ぐと共に圧を強めていったその顔には、目隠しをしていても通じる様なオリジナル笑顔が浮かんでいた。
「ザニスさん。今日で男性とは別れを告げてもらいますよ」
上げて落とす。相手がより強く不快感を覚え、精神的な傷が深くなる
詳細はゲイン・ロス効果で調べると出て来るが、当然ながら相手の自己評価と自己肯定感により好感度の上下する幅は異なるので生兵法は大怪我の基でしかない。
今回ノーカは落としてから持ち上げてまた落とし、ついでに踏み躙った。言葉の内容を理解して、次にそれが冗談ではないと理解してしまったザニスの情緒はぐちゃぐちゃである。
「ひっ、ひぁぁ……たすっ、たすけ」
椅子から転げ落ち身体中から体液を吹き出しながら後退りするザニスであったが、助けを求める声は最後まで続かなかった。抑え切れずに自然と表に出てしまったと言わんばかりの狂った様な笑顔を浮かべながら近付いてくる
「……アタシ、生まれ変わったわ」
「
「ありがとうね、ノーカちゃん。お詫びというわけでもないけど……絶対にこの酒場、いいえ
オラリオに最新最高の
――是を以て復讐の完遂とする――
なお、暗黒期の終焉を迎える頃には有言実行で唯一の強みを持った
同じ【ファミリア】なせいで真っ先にその恩恵に与った構成員が、その
アーデ姉妹は変わり果てた古巣の姿に復讐の虚しさを学び、ベルは漢女の姿に
アルフィアなどは明らかに女子力や母性で負けている事実に心底震え、料理を学び始めたのだから、ベルの漢女への憧憬は更に深まってしまった。
そして一連の流れを作り出した