一方その頃、ダンジョンの中ではとある異常が観測されていた。賢明な読者諸君はこの流れから予測できるだろう。そう、喋るどころか歌い踊るモンスターの存在である。フェルズがうっかり漏らしてしまったばっかりに、
準備とは得てして地味なものであり、それが順調であれば尚更である。
何が言いたいかと聞かれれば、書く事が無いのだと答えるのが適当であろう。
「そんなわけであれから二年半が過ぎたわけですが」
「どうしたんだ、壁からブロックに」
「それを言うなら藪から
「それだ……いや、違うな、藪から
「それはそうと、切り出そうとした用件を聞いてみるべきでしょう。珍獣殿?」
「表も裏も顔見せしなきゃと思って諸国巡りを頑張って残り三ヶ月は微調整しないとってオラリオに戻ってきたら都市全体がアイドル漬けになってるとか想定外なんですよぅ! オマケに
ノーカは協力者として
その成果を見届けた後は、ギルドの出奔理由であるオラリオの外で活動する神々への視察と是正のために諸国を巡っていたのだが、
尚、殆どの訪問先でダイナミック謁見に臨んだため神に対して不敬であると神や眷族から喧嘩を売られ、高値で買い、叩き潰した眷族を主神に更なる高値で買い取って貰う流れを繰り返していたおかげで各勢力との友好度は安定して低く、しかし力関係は文字通りに叩き込んでいるため協力自体は断らせない実質的な従属国の様な形に収めている。
そんな感じで割と頑張ってして来た
「「あー」」
まるで観光客から喧伝されている内容と実物の差異について問われた地元民の如く、それ良く聞かれるけど違うんですよと言わんばかりの態度であった。何なら周囲の
「言われてみれば、知らない者からすれば異様な光景か。最早オラリオの日常と化して違和感を持たなくなっていた」
「始まりにして頂点という生ける伝説扱いされているグループは珍獣殿のお仲間なのですがね」
神エレボスは気まずそうに頬を掻き、ヴィトーは大元の原因について言及する。
「それは……そうかも知れませんけど……ぐぬぬ、報告には流行に関する内容なんて無かったのに」
『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』のアルマ達をアイドルデビューさせようと考えて実行したのは、言わずもがなノーカである。故に責任の一端を担いでいる予感はしていたのだが、ここまで大事になるとは考えてもいなかった。
そしてノーカは諸国巡りの最中も仲間や協力者の面々とは定期的に連絡を取り合っていたし、オラリオにも立ち寄ってギルドや
「サプライズを提案していましたからね、我が神が」
悩むノーカであったが、ヴィトーがあっさりと理由を暴露した。忠臣の裏切りを受けた主神は、しかし堂々とした態度を崩さずに立ち上がり
「アルマ達から相談されたので全力を尽くしたまでだ。俺は後悔していない」
いつの間にか袖を通していた法被を見せ付ける様にくるりと一回転してからポーズを決めつつ宣言したのであった。
襟字には文字ではなくドット絵にデフォルメされたアルマ達の顔アイコンが並んでおり、腰柄はヒラヒラフリフリなアイドル衣装に身を包みフォークの代わりにマイクを掲げて笑顔を振り撒くモーモー・アルマの姿がプリントされている。胸の控紋には
恐らくはグッズとして開発されたそれには個別のアルマ全種類や、ペアやトリオの組み合わせ、そして全員集合版が存在しているだろう事を、ノーカは瞬時に察知していた。
「何それめっちゃ欲しい」
自分に情報が回って来なかった元凶を知ってどのように報復しようかと頭を働かせ始めた所にこれである。考えるよりも先に欲求が口を衝いて出ていたし、思考もグッズ商品の開発や今後の展望に占有された。何ともなれば、ノーカの頭の中からはオラリオの行く末やそれらを良くするための悪巧み、果てはこの世界における
「いいだろう? まぁ考えたのは他ならぬ受付嬢と例の【
「プレミア過ぎる……ッ!!」
その稀少性に出遅れた自分には入手が不可能だと判断し崩れ落ちるノーカ。一方の
「悔しがっておられますが、あの純真無垢な面々ならば珍獣殿のために取り置きしてい、るのでは……」
ヴィトーの言葉が終わるよりも先に、ノーカの姿は消えていた。
恐らくは『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』へと向かったのであろうと当たりを付けた二人は、何となくやり込めて勝った感に酔いしれながら互いのジョッキをぶつけるのであった。
直後、その場に居合わせて聞き耳を立てていた
因みに、ノーカは大方の予想通りに『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』へ帰還報告とグッズ入手のために訪れ、アルマ達から無事にグッズをプレゼントされ天にも昇る気持ちを味わったのだが、次の日になってギルドへ出頭すると報告を後回しにされたロイマンから説教される羽目になった。土産として各地からの
同時にギルドの職員にもお菓子等のご当地品を配って歩いたのだが、ECO由来の品物で肥えた面々からは珍しいけどそう美味しいわけでもないとある意味で
序でにノーカを良く知らない新人は初対面が割とマシな態度であったために常識的だと評価を間違え、後日
「こんにちはー進捗の確認に来ましたー」
オラリオに本拠地を戻した日から一日半、諸国を巡りつつもちょくちょくオラリオ内を荒らしていたノーカはギルドへの報告と前回立ち寄った際に提案した改善策の成果確認を簡単に済ませると、アクロニア開拓地へ顔出しに来ていた。
こちらは
「ノーカさ
「よォ、久々」
「えぇ、かれこれ二年間、皆さんもご健勝な様で何より」
男子三日会わざれば……等とは言われるが、二年の月日は少年達にとって大きな価値を持っていた。
見違える要素として、まず単純に体つきがしっかりした。ヒューマンである
尤も、それを言ったらリリルカも15歳時点で110Cと5歳女子相当なので身長は打ち止めなのだが。おかげで姉妹は姉が強気で妹がやや弱気でという雰囲気以外そっくりになっていた。因みに、体の成長に関して第二次性徴はヒューマンの女性と同じ時期なので、将来的には姉妹の判別はしやすくなる事だろうとノーカは姉の方に内心で哀悼の意を抱いた。
「何か失礼な事ォ考えてねェか?」
「特別にYESと答えさせて頂きます」
「よーし、二年間の成果を見せて……いや、聞かせてやンよ。具体的にはアルマ達から聞き出したお前の地元でのオイタとかなァ!!」
「おい馬鹿やめろ」
「いいや! 限界だ言うね! 今だッ!」
二年経っても成長しない年長組のじゃれ合いに、年少コンビは微笑ましげだが苦笑いを浮かべて見守っていた。これではどちらが年上なのか分かったものではない。
「ほう、あんたが……」
そこに新たな声。ノーカがそちらを見れば、精悍な顔付きとがっしりした体型とを兼ね備えた歴戦の戦士風な男性の姿があった。
「どうも、全自動式
「これはご丁寧に。俺はザルドと言う。半年程前に流れ着いて、そのまま此処で世話になっている」
ノーカの自己紹介にも引く事なく男は自己紹介を返す。その名前は、ノーカがギルドで調べた資料に記載されている物と同じであった。
「ザルドさん……と、いうと不躾で申し訳ありませんが、もしや【ゼウス・ファミリア】の【暴喰】と呼ばれた方では?」
「何だ、知っていたか。確かにそのザルドで間違いない。
ノーカの追及をあっさり認め、しかしかつての最強は謙遜の言葉を吐く。
実はこのザルド、かつて
そこで終われば美談というかめでたしめでたしで済んだのだが、テンションを上げた彼はついついはしゃいでしまい、偶然そこに居合わせた
故に、
「嘘吐けオッサン。姉御と並んでDDソロで潜って最深部まで行ってるトンデモじゃねーか」
そんなザルドの言葉に反論したのがラジルカであった。
健康な体を取り戻したザルドはアルフィアに出鼻を挫かれた事で大人しくなり牧歌的な暮らしを始めたのだが、アルフィアがそれを許す筈は無かった。具体的には上質にして一部は未知な食材を入手出来るDDの利用許可を条件に、ベル一行の指南役を任された。そしてアルフィアに命じられるがまま、手始めにベル一行の実力を把握させるための模擬戦を行った。
ベル一行はDD通いで『
「ほう! 最深部が判明したんですか」
「そっちに食い付くのか……姉御の話じゃ五十階層だそうだ。ちなみに、アタシらは
「ふむ、報告では三十五層がメイオウでしたが突破しましたか。
「むしろ
「あー、自動的に
げっそりしたラジルカの言葉に、ノーカは
「【静寂】が討伐に成功している。俺は相性がな……」
「ほう、相性」
「五十階層は巨大な地底湖と畔として僅かばかりの陸地で構成されているんだが、ボスが水中から出て来ないわ津波を起こしてくるわで真面に
「ほうほう、なまじ最初から水底スタートでないせいで、距離を詰めるのが難しい感じですかね。DDなら水中は時間毎に環境ダメージが入りますけど、呼吸は不要だと思われますし抵抗も軽めだと思いますので、思い切って突っ込んでみては?」
「は?」
「マジか……いや、そういや溶岩でも焼けなかったわ」
ザルドから得た情報を元に、ノーカが推論を交えた提案を返す。その内容が常識を覆す荒唐無稽なものであったためにザルドの目が点になり、同じく内容を信じ難いと否定しかけるも自分達で似た経験をした事を思い出して納得してしまったラジルカの言葉で確度が高まってしまう。
「なん……だと……少し用事を思い出した。失礼する」
「「「「いてらー」」」」
暫し呆然としたザルドは、明らかに再戦目的でDDへ潜るつもりで場を離れて行った。一同は何処からともなく取り出したハンカチを振りながら、声を揃えて見送った。
そしてノーカは残ったベル一行に向き直ると、至って冷静な様子で話を切り出し始める。
「さて、では改めて……ボスの名前って知ってます?」
取り繕った態度とは裏腹の情けなさが漂う内容に、ベル達はずっコケた。
「た、確かニーズホッグなのです。アルフィア様が言うには
「うん。お祖父ちゃんから見せてもらったお伽噺に出て来た邪竜と同じ名前だったから覚えてる。間違いないです。お
「なるほど。
幸い、ノーカが
聞いた話によると、
結局はザルドが開拓地を訪れて、体調を快復した後に挑み踏破して漸く広まったのだが、勿論、敢えて教えていなかった未踏破階層の情報を酒の席でポロっと漏らしDD利用者――開拓地在住者のほぼ全員――に広めたザルドは、後日それをベル経由で知ったアルフィアからの
この時、話を聞いていたノーカは、ベルの漏らしたお伽噺の邪竜という言葉に内心で非常に愉快な笑みを浮かべていたのだが、終ぞ誰からも気付かれる事は無かった。
恥ずかしながらダンメモは端末の都合で未プレイで、情報も周年イベントの概要くらいしか知りませんでした。そして身長や年齢をグーグル先生に尋ねてたらダンメモの攻略まとめサイトを紹介されフィン(流しのP)の存在を発見し、芋づる式に迷宮偶像歌合戦の存在を最近になって知りました。
アミッドが見せたリヴェリア直伝のモード切り換えとか、極東風ケモ耳コスプレアイドルとか、リリカル・アーデとか……ついでに他のイベントも調べたら漫画イベントまであって、正に公式が原典にして最大手……ッ!
アニメ外伝の音声ドラマについても神ディアンケヒトに存在を教えてもらい、台本を公式サイトで読みました。リヴェリアェ……。
なお、この二次創作中でのアイドルは暗黒期の最中に一般人扱いでオラリオ民みんなの子供的な立ち位置を固めていたアルマ達の小さな路上ライブから始まり成立していった概念です。そして暗黒期なのでロキやヘルメスと言えどもそれぞれオラリオを守る冒険者の務めで忙殺されているし、焦燥感に駆られてもいましたから、事務所を立ち上げて地盤固めとかは流石に無理っす。闇派閥が大人しくなったタイミングでオッタルに端を発した一連の流れが始まって、英雄を目指すためその流れに乗っかるとかいうフィンの迷走があったおかげで、黎明期から参戦自体はしたがな!