オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

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前回のあらすじ:冒険者として、【ロキ・ファミリア】の幹部として、ハイエルフとして、そして――アイドルとして。それぞれの立場から板挟みになっていた苦悩を抱えて『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』へ相談に訪れたリヴェリアは、非常に晴れやかな表情で『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』を後にした。最早それは浮かれていると称しても差し支えない程に上機嫌で、軽やかにスキップまで披露してしまう程のキャラ崩壊を起こしていた。当然ながら帰り道に人の目が無い等の奇跡は起きず、ウキウキルンルンでスキップして帰るハイエルフが目撃され、噂になった。エルフだけでなくヒューマンも獣人(デミ)も魅了され、アイドル『りあ☆りあ』の存在と人気とは不動のものとなった。リヴェリアは引き篭った。
そんな中、【アストレア・ファミリア】でもアイドルのレッスンを受けるべきではとの話が持ち上がっていた。主に主神と団長と二名の間で。他の面々は様々な理由から拒絶したが、主神の悲しそうな表情には勝てなかった。駄目押しに資金稼ぎとしても有効だと説かれてしまえば、団員達も二度と主神に雑草スープを飲ませずに済むのならば、と腹を括るしかなかった。こうして依頼のため『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』へと訪れたアリーゼであったが、ブームに乗り遅れていたため予約待ち半年以上先という厳しい現実の前に諦めざるを得なかった。しかし捨てる神あれば拾う神あり。何処からともなく湧いて来た神ヘルメスに誘われて、正義《アストレア》の眷族達は設立されたばかりのアイドルスクールに通う事となったのである。このスクール、独自に開発をした溝を掘った円盤を取り扱う予定らしいっすよ。これぞ正にアストレア・レコ(ry


第四十六話:蠢く悪意――初手ガバからのオリチャー発動というアドリブからスタートする大胆な計画――

 ノーカが外遊を終わらせ(切り上げ)てオラリオに帰還してから一週間。地味にオラリオの外で闇派閥(イヴィルス)が動き易い様にとこっそり手助けした甲斐あってか、予定以上に早く、そして多く、物資が集まっていた。その内の半分が打ち上げ用の酒と食料である事実を考慮して尚、予定を前倒しして計画を始めても良い位にだ。

 

「とはいえ、オラリオが全体的に腑抜けたままでは……」

 

 時期的にはノーカの国巡り中の話になるのだが、実は闇派閥(イヴィルス)の活動縮小に伴ってオラリオの危機意識が低下ないし消失する可能性への対策として、それ以上に闇派閥(イヴィルス)側の不満解消を名目(建前)にした我慢が出来(本番に使え)ない層を使い潰すため、散発的な襲撃を予定していた。

 

「言うて、自業自得なんですよねぇ」

 

 どうせならば、と【ロキ・ファミリア】に大規模遠征をさせて被害を大きくする事で、相対的に最大派閥としての価値と民からの依存度を高めようと考えていたのだが、せっかく闇派閥(イヴィルス)の活動を縮小せて油断を誘っていたにも関わらず、【猛者(おうじゃ)】の【ランクアップ】から始まる予想外(アイドル)事態(流行)に【勇者(ブレイバー)】が電撃参戦してしまった。何やってんだよ? 団長!。更には【九魔姫(ナインヘル)】まで祭り上げられてしまう始末。

 その結果、完全に【ロキ・ファミリア】の動きがダンジョン攻略から離れてしまい、音頭を取れる二人が動けない事から大規模遠征の話は立ち消えになって、そのまま影も形も無くなってしまった。

 

「表面上はオラリオが活気付いてたのが地味に痛い。アイドル効果が想定よりも種類は多いし度合いも上……というか闇派閥(イヴィルス)が素直で我慢強かったのが誤算だったし溜まった不満の捌け口にアイドルがピッタリだったのも誤算で……くっ、うちの子達が可愛すぎた……ッ!」

 

 その報告を受け取ったノーカはダンジョンに挑むべき探索系【ファミリア】のトップとして規範となる姿勢を見せるべきだとロイマンに訴えてせっ突かせようと考えたが、当時はアルマ達だけであった推しの子(アイドル)に貢ぐべく一念発起した冒険者(ファン)達により魔石やドロップアイテムの買い取り総額はむしろ上向いていたと報告を受けていたので、提案が通るとは思えなかった。その冒険者に闇派閥(イヴィルス)の構成員も含まれていたのだから、発起人として笑うに笑えない。

 そもそも要求される大規模遠征の――到達階層の更新という――目的である、強いオラリオが健在だとする対外的なアピールも、現在進行形でノーカ自身が示して回っている様なものであった。

 

「どうしてこうなった……オラリオ民のノリのよさを見誤った私の落ち度ではあるんですけど、あるんですけどぉ~」

 

 結局、大規模遠征は行われず、襲撃は日時と場所だけギルド内に複数人確認している信奉者を使って流させた後は任意の参加者(使い捨て構成員)に好き勝手やらせた。まぁ、アイドルとして知名度を上げたアルマが普段の助っ人業務でオラリオ中に散っているため襲撃箇所の近くに居合わせるパターンが多く、人的被害は出せないという不甲斐ない結果に終わり闇派閥(イヴィルス)の脅威度を下げる要因となったのだが。おかげで、襲撃の殆どで指揮を取っていた白髪鬼(オリヴァス)がストレスで白髪になったと闇派閥(イヴィルス)内で笑い者にされていたらしい。

 ともあれ、神に依存しない戦力として頭角を現しつつあったアルマ達を一つの集団であると認識させる目的で立てたアイドル化計画を、自分では力になれない部分だから丁度良いとオラリオを離れるタイミングで実行した事が、巡り巡って自分の計画に致命打(クリティカル)を与えて来る。完全に空回って墓穴を掘っている様子には自分の事ながら頭を抱えるしかなかった。

 

「お困りの様だな!」

 

「な、何奴!?」

 

「貴様に答える必要は無い……このエレボスがそう判断した!」

 

「えぇい猪口才な。またしても私の前に立ち開かるか、神エレボス!」

 

「はいはい、いいから用件に入りますよお二方」

 

「「へーい」」

 

 ヴィトーの取り成しで茶番を終わらせたノーカと神エレボスは、そのまま計画(茶番)の実行に関しての最終打ち合わせに入った。

 

「では早速だが、血気に逸った連中が暴走寸前だ。特にオリヴァスは襲撃の悉くを潰されて焦っているな」

 

 エレボスの告げた内容は、ノーカも空気として感じていた。

 計画には、要所要所で多少の猶予を持たせており、ある程度なら柔軟に対応する事が出来る。それは開始時期に関しても該当するため、望むのであれば前倒しも可能だ。

 

「ふむ。私側の仕掛けは済んでますし、始めるのでしたら、いつでも」

 

 ノーカとしては正直どちらでも良かったので、早めても大丈夫だと告げておく。

 

 

「俺としては外の陽動が間に合わなかったり失敗したりの可能性があるから予定通りが好ましいのだがな」

 

 一方のエレボスとしては予定通りに進めたいらしい。予定通りに進まないのが計画ではあるが、予定通りに進ませる努力をするのも計画である。小さなズレが重なって計画がご破算になる実例(ケース)を何度も経験してきたノーカとしても非常に理解出来るし心から納得出来る……というか直近でアイドルによるそれが起きて今も余波を受けている最中である。

 

「んー、ぶっちゃけ援軍が来ても仕掛けを発動させてたら一段落するまではほぼ介入は不可能ですし、介入させたとしても精々が学区のナイナイライオンさんLv.7が増えて歯応え出るねって程度なんですよね」

 

 それでも、同意して終わらせるだけでは変化に対応出来なくなる可能性がある。なのでノーカはエレボスの懸念について触れておく。

 学区で軽く手合わせした感じでは、互いに環境へ配慮(手加減)していたのを差し引いても、からかわれた時のアルフィアよりは弱い様に感じた。つまり、最悪は片手間でジョイントジョブをブリーダーとガーデナーと双方のJOBLVを30にし(カンストさせ)ている魔改造が止まらない女傑(アルフィア)メタもっ(変身し)て貰い冒険者(ECO)の作法を教えて頂けば良いと考えていた。

 

「いやいや、眷族同士の争いでLv.7は劇薬だぞ。いくらフレイヤのところの【猛者(おうじゃ)】が並んだとはいえ、だ。未だにオラリオでは現状唯一だからな?」

 

 実は開拓地に来る前からアルフィアとザルドの勧誘を済ませていたので戦力的な不安は無い筈の神エレボスではあったが、常識を持ち出して否定的な態度を取る。恐らくはオラリオの外で活動しており有事に間に合うか不明な戦力に経験値(リソース)を割く事は避けたいのだろうと、ノーカは考えた。

 

「ふむ……ではそれなりの規模を陽動に使って、オラリオが撃退したって勝鬨を上げてる所に水を差す形で宣戦布告します? 敗北を重ね過ぎたから本気出すとか言って」

 

「小物臭いのは嫌だなぁ~。確かに自粛要請後の襲撃は被害らしい被害も出せず負け続きだったから、小物路線もありなんだが」

 

「宣戦布告はカンペ見ながら棒読みでいきましょう。読み間違えをして指摘されて焦ったり」

 

「嫌い? 俺のこと嫌いなの? ねぇ?」

 

「愛されてますねぇ。流石は互いにオンリーワン」

 

 そんなやり取りを続けた後で、計画を少しだけ前倒しする事や暴発組は使い捨てにして普段の襲撃と誤認させて油断を誘う罠にする事、宣戦布告は当初の予定通りに開幕セレモニーの花火を上げた後で行い、以降は前倒しするが進行速度は予定通りにする事等を決めた。

 幹部勢への周知を神エレボスに任せつつ、ノーカはノーカで使い捨ての襲撃タイミングでロイマンへ本格的な襲撃の情報を事前に流す役目を請け負った。

 当然、ロイマンを筆頭に体制(オラリオ)側からも闇派閥(イヴィルス)側からも疑惑の目を向けられるだろうが、最初からノーカの優先順位は自分>ECOの仲間>オカンであり、その後に個人的に気に入った個人>その他と続く。

 現在のオラリオで敵対を避けたい相手を探しても胃袋を掴まれている相手(ミア・グランド)ぐらいのもので、他はむしろ敵対して会う度に殺し合い(戦闘訓練)をする位でも良いと考えている。神々は普段の言動こそアレだが、感情を含んだ損得を計算した上で必要ならば感情を一時的に抑え呑み込んで動ける精神性の化物である。内心で報復を考えていても、救界(マキア)が成されるまでは――少なくとも10年やそこらでは――爆発する事はあるまい。

 

 

 

 そして数日後、神エレボスの説得を受けても意見を曲げなかった急進派による暴発(襲撃)が起きた。後に恥の七日間と呼ばれる死ねない地獄の幕開けであり、世界が()時代の終焉へ向けた第一歩を踏み出した瞬間でもあった。

 

 

 

「こ、これは……どういう、どういうことだぁぁぁぁ!?」

 

 【白髪鬼(ヴェンデッタ)】オリヴァス・アクトの絶叫が響き渡る中、信奉者と呼ばれる『神の恩恵(ファルナ)』を持たない一般人でしかない闇派閥(イヴィルス)の協力者達もまた困惑と混乱との極みにあった。

 

「なんで、これじゃ……お母さんに会えないよぅ」

 

「くそっ、なんでだ!? なんで、俺は死んでないんだ……ッ!」

 

 彼等彼女等は、かつて妹を人質に取られた【芸術家(ファイアワーカー)】ラジルカ・アーデから製造方法がもたらされた本来の歴史(アストレア・レコード)よりも高性能な爆弾を懐に隠しており、闇派閥(イヴィルス)の襲撃を止めるために集まってきた冒険者を道連れにしようと起爆させた。

 ダンジョンの44層に出現するフレイムロックと呼ばれるモンスターのドロップアイテムである火炎石を加工して性能を更に高めた爆弾(それ)は、最早Lv.6の全力で放つ魔法に近い盛大な熱と衝撃とを巻き起こし、爆心地であれば『神の恩恵(ファルナ)』を授かった冒険者ですら肉片の一つも残さない威力を持っていた。

 それなのに、死傷者は皆無である。地味に髪型がチリチリのアフロになっていたり、髪色が七色に発光していたりするのだが、シリアスに全振りしている空気の中では細やかな主張に過ぎず若干名の腹筋へ打撃を与えるに留まっていた。

 

「自爆……した……?」

 

「けど、あれで生きてるどころか怪我もないとか、どうなってやがる」

 

 冒険者側も混乱していた。規模の大きな爆発だったので、それなりの距離に居た者でも感じた熱さと痛み。近場に居た者はどう考えても致死性の爆発に巻き込まれた筈なのに、形を保ったまま吹き飛んで来た。かと思えば、即座に起こしたその体には傷一つない。

 

「なんか滅茶苦茶痛かったし熱かったのに、今はもう何ともないんだが……幻覚の魔道具か?」

 

「吹き飛ばされたのは事実だろ。痛みも怪我も無いのは不可解だが……おかげで贔屓の酒場が閉店待ったなしだ」

 

 爆発が何らかの奇妙な能力を持った魔道具だとしても、風に飛ばされて建物を破壊する強さの物理的な衝撃を受けた事は間違いないのだ。それでもやはり痛みを覚えただけで打ち身の跡すら確認出来ない。実際は死んでいて束の間の夢を見ていると言われた方がまだ納得できる謎の現象に誰もが動きを止めていた。

 

 そんな中、近くから様子見に来た冒険者が現場に到着する。

 目に映るのは、七色に光るアフロヘアーの主張が強いものの決して戦う人種には見えない煤けた老若男女と、同じく七色に光るアフロヘアーにイメチェンしている数名の冒険者。髪が無事な面子も居るが、一様にどこか散漫な様子だった。

 

「何が起きてるかさっぱり分かんねぇが、向こうの無事な強面連中は敵だろ? 動くぞ!」

 

「あの高い所に居るのは【白髪鬼(ヴェンデッタ)】だぞ! ここで討ち取れ!」

 

 爆発の瞬間を見ていない追加の冒険者達は、事情を知らなかったからこそ平時通りに動く事が出来た。呆然としたり嘆いている信奉者をすり抜け、後方に控えていた闇派閥(イヴィルス)へと斬りかかる。

 

「隙だらけだ、オラァッ! って斬れてねぇ!? なんだこいつら!?」

 

「ぐわっ! ……あれ、痛みが収まった。怪我もない……?」

 

「……捕縛だ! 囲んで抑えて縛り付けろ!!」

 

 何をしても無傷。痛みはあれど一瞬。余りに不可解な現象であったが、とある冒険者が頭を切り替えて殺傷から捕縛に切り替える指示を出す。

 その頃には闇派閥(イヴィルス)側も意識を切り替えた者が大半で、そこからは逃走する闇派閥(イヴィルス)との追走劇が始まった。

 捕まった構成員が最後の抵抗(ラスアタ)に爆弾を起動させて周囲を巻き込み一斉に七色アフロと化したり、逃げる構成員が爆弾を投げ付けて追跡者を吹き飛ばしつつ投擲距離よりも広い効果範囲の爆風に巻き込まれて自らも七色アフロになる展開がそこかしこで繰り広げられていた。オリヴァスも尻尾切りした構成員の反乱に遭い七色アフロと化したが、咄嗟の判断で爆風に乗って大きく距離を取れたのでそのまま逃走に成功していた。仮拠点の廃棄工場に待機していた予定待ち勢から盛大に嗤われたが。

 これら追走劇に参加した冒険者の一部――主に【ガネーシャ・ファミリア】の面々は、爆発とアフロヘアーの組み合わせに既視感(珍獣の影)覚え(幻視し)て戦慄していた。闇派閥(イヴィルス)が使った爆弾である事や建物の破壊は起きていた事に対して、裏切ったのか、盗まれたのか、押し付けたのか、経緯に関する予想はそれぞれ違えど、皆が共通して抱いた感想は「遂にやりやがった」な辺りに、珍獣時代から続く付き合いの長さが感じ取れた。

 因みに、アイドルが普及し始めた辺りからオラリオの至る場所に犯罪行為の証拠を押さえる(アルマ達のライブを遠くまで届ける)目的でギルドに寄付された映像の投影装置と撮影装置とが設置されている。限定条件下ではるが地上で行使が許されている数少ない『神の力(アルカナム)』である『神の鏡』の存在が涙目になっている上に監視社会染みているのだが、ギルドは防犯効果を期待出来て場所代でウハウハにもなるのでありがたく受領したし、設置を取り止めるつもりも無い。

 それらの使用優先権は『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』が、使用許可を出す権利自体は一応ギルド(実質ノーカ)が握っているのだが……現在それらには、切り抜かれた各地の爆弾騒ぎが無音に編集された、酷くシュールな映像が繰り返し流されている。画面端の余白に表示された緊急速報の見出しが、最早隠すつもりのない挑発行為となってオラリオの街全体を煽っていた……。

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