そんな中、【アストレア・ファミリア】でもアイドルのレッスンを受けるべきではとの話が持ち上がっていた。主に主神と団長と二名の間で。他の面々は様々な理由から拒絶したが、主神の悲しそうな表情には勝てなかった。駄目押しに資金稼ぎとしても有効だと説かれてしまえば、団員達も二度と主神に雑草スープを飲ませずに済むのならば、と腹を括るしかなかった。こうして依頼のため『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』へと訪れたアリーゼであったが、ブームに乗り遅れていたため予約待ち半年以上先という厳しい現実の前に諦めざるを得なかった。しかし捨てる神あれば拾う神あり。何処からともなく湧いて来た神ヘルメスに誘われて、正義《アストレア》の眷族達は設立されたばかりのアイドルスクールに通う事となったのである。このスクール、独自に開発をした溝を掘った円盤を取り扱う予定らしいっすよ。これぞ正にアストレア・レコ(ry
ノーカが外遊を
「とはいえ、オラリオが全体的に腑抜けたままでは……」
時期的にはノーカの国巡り中の話になるのだが、実は
「言うて、自業自得なんですよねぇ」
どうせならば、と【ロキ・ファミリア】に大規模遠征をさせて被害を大きくする事で、相対的に最大派閥としての価値と民からの依存度を高めようと考えていたのだが、せっかく
その結果、完全に【ロキ・ファミリア】の動きがダンジョン攻略から離れてしまい、音頭を取れる二人が動けない事から大規模遠征の話は立ち消えになって、そのまま影も形も無くなってしまった。
「表面上はオラリオが活気付いてたのが地味に痛い。アイドル効果が想定よりも種類は多いし度合いも上……というか
その報告を受け取ったノーカはダンジョンに挑むべき探索系【ファミリア】のトップとして規範となる姿勢を見せるべきだとロイマンに訴えてせっ突かせようと考えたが、当時はアルマ達だけであった
そもそも要求される大規模遠征の――到達階層の更新という――目的である、強いオラリオが健在だとする対外的なアピールも、現在進行形でノーカ自身が示して回っている様なものであった。
「どうしてこうなった……オラリオ民のノリのよさを見誤った私の落ち度ではあるんですけど、あるんですけどぉ~」
結局、大規模遠征は行われず、襲撃は日時と場所だけギルド内に複数人確認している信奉者を使って流させた後は
ともあれ、神に依存しない戦力として頭角を現しつつあったアルマ達を一つの集団であると認識させる目的で立てたアイドル化計画を、自分では力になれない部分だから丁度良いとオラリオを離れるタイミングで実行した事が、巡り巡って自分の計画に
「お困りの様だな!」
「な、何奴!?」
「貴様に答える必要は無い……このエレボスがそう判断した!」
「えぇい猪口才な。またしても私の前に立ち開かるか、神エレボス!」
「はいはい、いいから用件に入りますよお二方」
「「へーい」」
ヴィトーの取り成しで茶番を終わらせたノーカと神エレボスは、そのまま
「では早速だが、血気に逸った連中が暴走寸前だ。特にオリヴァスは襲撃の悉くを潰されて焦っているな」
エレボスの告げた内容は、ノーカも空気として感じていた。
計画には、要所要所で多少の猶予を持たせており、ある程度なら柔軟に対応する事が出来る。それは開始時期に関しても該当するため、望むのであれば前倒しも可能だ。
「ふむ。私側の仕掛けは済んでますし、始めるのでしたら、いつでも」
ノーカとしては正直どちらでも良かったので、早めても大丈夫だと告げておく。
「俺としては外の陽動が間に合わなかったり失敗したりの可能性があるから予定通りが好ましいのだがな」
一方のエレボスとしては予定通りに進めたいらしい。予定通りに進まないのが計画ではあるが、予定通りに進ませる努力をするのも計画である。小さなズレが重なって計画がご破算になる
「んー、ぶっちゃけ援軍が来ても仕掛けを発動させてたら一段落するまではほぼ介入は不可能ですし、介入させたとしても精々が学区のナイナイライオンさんLv.7が増えて歯応え出るねって程度なんですよね」
それでも、同意して終わらせるだけでは変化に対応出来なくなる可能性がある。なのでノーカはエレボスの懸念について触れておく。
学区で軽く手合わせした感じでは、互いに
「いやいや、眷族同士の争いでLv.7は劇薬だぞ。いくらフレイヤのところの【
実は開拓地に来る前からアルフィアとザルドの勧誘を済ませていたので戦力的な不安は無い筈の神エレボスではあったが、常識を持ち出して否定的な態度を取る。恐らくはオラリオの外で活動しており有事に間に合うか不明な戦力に
「ふむ……ではそれなりの規模を陽動に使って、オラリオが撃退したって勝鬨を上げてる所に水を差す形で宣戦布告します? 敗北を重ね過ぎたから本気出すとか言って」
「小物臭いのは嫌だなぁ~。確かに自粛要請後の襲撃は被害らしい被害も出せず負け続きだったから、小物路線もありなんだが」
「宣戦布告はカンペ見ながら棒読みでいきましょう。読み間違えをして指摘されて焦ったり」
「嫌い? 俺のこと嫌いなの? ねぇ?」
「愛されてますねぇ。流石は互いにオンリーワン」
そんなやり取りを続けた後で、計画を少しだけ前倒しする事や暴発組は使い捨てにして普段の襲撃と誤認させて油断を誘う罠にする事、宣戦布告は当初の予定通りに開幕セレモニーの花火を上げた後で行い、以降は前倒しするが進行速度は予定通りにする事等を決めた。
幹部勢への周知を神エレボスに任せつつ、ノーカはノーカで使い捨ての襲撃タイミングでロイマンへ本格的な襲撃の情報を事前に流す役目を請け負った。
当然、ロイマンを筆頭に
現在のオラリオで敵対を避けたい相手を探しても
そして数日後、神エレボスの説得を受けても意見を曲げなかった急進派による
「こ、これは……どういう、どういうことだぁぁぁぁ!?」
【
「なんで、これじゃ……お母さんに会えないよぅ」
「くそっ、なんでだ!? なんで、俺は死んでないんだ……ッ!」
彼等彼女等は、かつて妹を人質に取られた【
ダンジョンの44層に出現するフレイムロックと呼ばれるモンスターのドロップアイテムである火炎石を加工して性能を更に高めた
それなのに、死傷者は皆無である。地味に髪型がチリチリのアフロになっていたり、髪色が七色に発光していたりするのだが、シリアスに全振りしている空気の中では細やかな主張に過ぎず若干名の腹筋へ打撃を与えるに留まっていた。
「自爆……した……?」
「けど、あれで生きてるどころか怪我もないとか、どうなってやがる」
冒険者側も混乱していた。規模の大きな爆発だったので、それなりの距離に居た者でも感じた熱さと痛み。近場に居た者はどう考えても致死性の爆発に巻き込まれた筈なのに、形を保ったまま吹き飛んで来た。かと思えば、即座に起こしたその体には傷一つない。
「なんか滅茶苦茶痛かったし熱かったのに、今はもう何ともないんだが……幻覚の魔道具か?」
「吹き飛ばされたのは事実だろ。痛みも怪我も無いのは不可解だが……おかげで贔屓の酒場が閉店待ったなしだ」
爆発が何らかの奇妙な能力を持った魔道具だとしても、風に飛ばされて建物を破壊する強さの物理的な衝撃を受けた事は間違いないのだ。それでもやはり痛みを覚えただけで打ち身の跡すら確認出来ない。実際は死んでいて束の間の夢を見ていると言われた方がまだ納得できる謎の現象に誰もが動きを止めていた。
そんな中、近くから様子見に来た冒険者が現場に到着する。
目に映るのは、七色に光るアフロヘアーの主張が強いものの決して戦う人種には見えない煤けた老若男女と、同じく七色に光るアフロヘアーにイメチェンしている数名の冒険者。髪が無事な面子も居るが、一様にどこか散漫な様子だった。
「何が起きてるかさっぱり分かんねぇが、向こうの無事な強面連中は敵だろ? 動くぞ!」
「あの高い所に居るのは【
爆発の瞬間を見ていない追加の冒険者達は、事情を知らなかったからこそ平時通りに動く事が出来た。呆然としたり嘆いている信奉者をすり抜け、後方に控えていた
「隙だらけだ、オラァッ! って斬れてねぇ!? なんだこいつら!?」
「ぐわっ! ……あれ、痛みが収まった。怪我もない……?」
「……捕縛だ! 囲んで抑えて縛り付けろ!!」
何をしても無傷。痛みはあれど一瞬。余りに不可解な現象であったが、とある冒険者が頭を切り替えて殺傷から捕縛に切り替える指示を出す。
その頃には
捕まった構成員が
これら追走劇に参加した冒険者の一部――主に【ガネーシャ・ファミリア】の面々は、爆発とアフロヘアーの組み合わせに
因みに、アイドルが普及し始めた辺りからオラリオの至る場所に
それらの使用優先権は『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』が、使用許可を出す権利自体は