オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

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前回のあらすじ:アルフィアとザルドとが案内された先は、何の変哲もない建物だった。しかしある程度の距離まで近付いた頃にノーカが何かを取り出して操作すると、景色が一変した。看板には謎の記号が並び、辛うじて数字や一部の記号は読み取れたので、二人はそれが建物の営業時間なのだろうと当たりを付けた。そしてやけに四角い建物の、これまた四角い全面硝子という防犯的な意味で強気な扉……の隣に備えられた下り階段を進んで行くと、天界の神殿もかくやと思われる繊細且つ美麗な装飾の施された扉が現れる。その扉を何の躊躇いもなく気安い感じに開いたノーカから促されるまま進んだ先は、更に空気が一変した光景。落ち着いた照明を反射する大理石の床と壁。広めのワンルームに数セット並べられた丸いテーブルと、それぞれを囲んでいる背凭れを持たないシンプルな丸椅子。奥にはカウンターが備え付けられ、その手前にも椅子――こちらは背凭れのあるタイプ―が並んでいた。他にも観葉植物や見慣れぬ金属製の箱が見られるが、雰囲気としては高級な料理店を思わせた。ノーカから着替える様にと渡された衣類でなければ、アルフィアのドレスはともかくザルドの冒険者ルックは浮いていた事だろう。そこはオラリオでは珍しい――辛うじて最近オープンした【ソーマ・ファミリア】併設の酒屋が該当する――小洒落たバーだった。しかし一変した空気とは店の内装等ではなく、そこにいた先客達の静かだが濃密な――それぞれ種類の違う、絶対的な強者の――気配だった。緊張を覚えて思考を戦う者のそれに移行する二人であったが、そこでカウンターの奥に立ちワイングラスを拭いていた背の高い優男が手を止めてグラスを置くと、二人に顔を向けて口を開く。長台詞なので仔細は省くがみんな大好き塊魂のエンディングで流れる荘厳な曲をフルで歌い、観客も総出で起立してコーラスを担当する始末。二人は思った。こいつら全員ノーカの同類(実力だけはある馬鹿)だ、と。


第五十二話:ポーションの雨――最初の案では飴玉とか鍋汁ポーションが降る予定だった――

「仕掛けてきた!? このタイミングでか!?」

 

「親指の疼きはランダムイベントじゃなかったか……」

 

「言っとる場合か! 出払ってる戦力を戻したとして押し返せるのか? そもそも間に合うか?」

 

「不明です。例の自爆だけでなく、爆弾を本来の用途で投げたり仕掛けたりしてまして……このままでは人々よりも先に建物が持ちません」

 

 もうじきライブが始まるタイミングでまさかの襲撃。複数の異なる方向から聞こえて来た爆発音に、連合本部は蜂の巣を突いた様な騒ぎであった。

 ライブの後にはランダムイベントが控えており、初回のモンスターパニックが引き起こした衝撃は忘れたくとも忘れられないものだった。次のスカで気勢を殺がれたのは確かだが、だからこそ今度こそはと気合を入れ直していたフィンは、親指の疼きからモンスター関連のランダムイベントが来ると信じていた。連続でスカを出す確率は低いし、愉快犯の気がある珍獣がスカ(何も起きない)を連続させる事態を到底我慢出来まいと思っていたので、半ば確信してさえいた。

 故に、イベント前に最後の英気を養うべくライブに集中しようと考えていたのだが――

 

(あるいはそんな考えを読まれた? いや、こちらがランダムイベントに備えて防御を固めているのは見て分かるはずだ。粘られてランダムイベントを起こされて挟み撃ちになる危険を考慮しないのは考え難い。なら、事前に知って? 例えば向こう(イヴィルス)珍獣(ノーカ)と繋がっているとしたら? そう、賽の目は打ち合わせ済で初回みたいなイカサマするとしたら……)

 

「スカだ……今度のランダムイベント、賽の目はスカを出す!」

 

「何だと!? いや、それなら襲撃の時間が延びる。夜にライブもランダムイベントもない以上はそのまま朝まで続くぞ……」

 

「主催と敵が繋がっている可能性がある。そうでなくても賽の目を知る事のできる何かを敵は持っている……そう考えた方が良いだろうね」

 

 まさか闇派閥(イヴィルス)がサイコロ振る奴の不運を当てにしているとは夢にも思わないフィンは、今回の襲撃に関してそう結論付けた。

 ノーカにカジノへ連行された経験のあるロイマンは、その時にノーカが起こした笑える程に負け続け支配人を呼び出して不当なクレームにより返金させようとした事で出禁を食らった事件を思い出して出目(スカ)の予想に納得したが、ここでその根拠となった一件を言うのは立場的な問題を生じさせるので口を噤んだ。

 序でに言えば、ロイマンはノーカが上げて落とすのを好む性格について熟知していたので、今回の様な闇派閥(イヴィルス)が一方的に有利となる状況を見逃すかは疑問に思ったし、そもそもノーカの思い付いたら抱えている案件を責任と一緒に投げ出(大暴投)して明後日の方向にかっ飛んでは痛い目を見る習性についても把握しているので、フィンに対して真面目だなぁと他人事の様な感想を抱いたのであった。言えば士気が下がるのは目に見えているため、やはり口を噤んだが。

 

「最新の情報が入って来ました。その、割と善戦してる様です」

 

「「……へ?」」

 

 追加で隠密からもたらされた情報は、フィンの作り出したシリアスな空気を少しだけ緩めた。

 

 闇派閥(イヴィルス)の誤算は、血の涙を流して奥歯をひび割れさせる程の強い克己心でライブの参加を踏み留まったアルマFC会長(エレボス)とまでは行かずとも、連合もライブを楽しみにしていた事だろう。即ち、怒りによる一時的な上昇補正(バフ)が起こす奇跡である。おまけとばかりにライブ観賞を邪魔された怒りは共()する思いでもあるため、皆の心が一つに纏まっている状態だ。今ならゲッターシャインもレッツコンバインも思うがままだっただろう、平時では考えられない完成度の連携が実現していた。

 

「ヒャッハー爆弾を食らえぇ~!」

 

「オラァッ!」

 

「げっ、げぇぇ打ち返してきビャッ」

 

「許さねぇぞ闇派閥(イヴィルス)ぅぅぅぅ!!」

 

「争いなんて下らねぇ! アルマの歌を聞かせろぉ!!」

 

「爆弾がなんぼのもんじゃい! ライブ見て尊死してから出直して来いやぁ!」

 

 

 

「……以上、現場の声です」

 

「う、うむ……押し返せるならそのまま押し返せ。劣勢な場所は?」

 

 ロイマンの私兵である隠密の報告を受けて、当のロイマンは現実逃避しそうになった。ピックアップされた冒険者達の癖が強過ぎた……というより、見間違いでなければ迎撃班の中に神が混じっていた。

 それでも立ち向かわなければならないと気を取り直して欠けた情報を尋ねれば、隠密は淡々と報告を続ける。

 

「優性な場所だけではありませんので、ライブを抜け出して援護に回ってくれる冒険者にはそちらへお願いしていますが……」

 

「何か問題が?」

 

「信じ難いのですが、【暴喰】と【静寂】、ゼウスとヘラが舞い戻って来た、と。」

 

「「「なん……だ(って)……」」」

 

 隠密から放たれた言葉は、考え事をしていたフィンだけでなく周囲の神や幹部を巻き込んで、声を揃えさせる程に驚愕させた。

 

 

 

 ギルド連合の首脳陣が告げられた内容に衝撃を受けていた頃、当の本人達はといえば、オラリオの現最強の前に姿を現していた。

そこで交わされた言葉は本来の歴史(アストレア・レコード)とは違ったが、ザルドとオッタルは互いに喜色を隠さず再戦を誓い、アルフィアはリヴェリアにアルマ推し活をされて困惑していた。

 アルフィアと遭遇したショックで失った記憶(アルマのレッスン)を思い出したリヴェリアは、二つ名通りに喧騒を嫌い周囲の営みを雑音と切って捨てていた【静寂(アルフィア)】へ、アルマの歌を聞かないのは人生の半分を損しているとまで言い切り一歩踏み出す事を進言していた。そして直後に別の場所(アクロニア開拓地)で別グループのアルマ達にレッスンする側だったと(カウンター)されてしまい、羨ま死んだのだった。

 その場に居合わせた正義(アストレア)の眷族達は、アイドル(りあ☆りあ)でもある都市最強の魔導士を一言で返り討ちにした事実とその内容――アルマとは別系統のアイドルスクールに通っている都合から先生(コーチ)と呼ぶべき存在の圧倒的な実力を感じ取り慄いていた。この時、末っ子が青臭い正義論を振り翳して闇派閥(イヴィルス)の側に立つアルフィアを非難しなければ、場の空気はぐだぐたのゆるゆるのまま流れで解散していた事だろう。おかげで歌声(ゴスペル)が響き渡り纏めて吹き飛ばされていたが。

 

 

 

 そしてアルマのライブが終わっても戦線は一進一退を繰り返しており、やがて戦線が膠着気味になった頃、ランダムイベントの内容を決めるダイスロールの時間となった。

 

「いやー、昼はスカで襲撃も何も起きませんでしたからね。こちらとしても暇で暇で。さすがに皆さんの見えるところで昼寝するわけにもいきませんし」

 

 地上の抗争(様子)を知りつつも平常心でマイペースを崩さない様は、人の心が分からない()であった。

 それどころじゃない現場の面々はさておき、首脳陣は戦況を左右するランダムイベントに注目する。奇しくも双方スカが出る前提で動いているが、片やは運の無さに対する確信から断然そうなってくれと願い、片や想定される最悪から外れて欲しいと願い、とスタンスは異なっていた。

 

「そこで! 今回は仮にサイコロ振るった結果が振るわないなんてときでも退屈させないようにゲストをお呼びしております。今回はこの方、歓楽街の女帝、夜の街の最も高き花、女神イシュタル様でーす」

 

「……して、許して……」

 

 珍獣の台詞と共にスポットライトが浴びせられて姿を現していた現したのは、紫色の髪と褐色の肌を持ち、露出過多でありながら(抜群)武器(プロポーション)を持つが故に下品に映らない美貌の持ち主。オラリオにおける重要度は地味にトップクラスな娼館経営の最大手である【イシュタル・ファミリア】の主神、女神イシュタルであった。何故か椅子に縛り付けられており、表情は死んでいたが。

 

「やる気の出ない野郎共も多いみたいなのでテコ入れも兼ねて南国を思わせるゴージャスな高嶺の花を用意してみました。感謝に咽び泣き珍しい(レアな)美神の表情を焼き付けるが良いですよぅ」

 

「絶対嘘だ……」

 

「何を、何を企んでいるのだ。あれは」

 

「エレボスくぅ~ん? この流れってヤバくな~い?」

 

「あば、あばばばば……」

 

 目的を語るものの、生憎と視聴者の誰一人として信じていない。ギルド連合は真意を推し量り、闇派閥(イヴィルス)は直後の展開を察して作戦が崩壊する音を聞いていた。

 

「もちろん今回のサイコロは神イシュタルに振って頂きます! 実は私こう見えて昼の結果にですね、くやしさでいっぱい。なので軽く訓練してみたんですが、何故か6しか出ない不具合を発見したのでこれじゃ折角の準備が無駄になる……という訳でイシュタル様、こちらどうぞ」

 

「ヒッ! ンンっ、よかろう」

 

 近付かれて短く悲鳴を上げたものの、拘束を解かれると調子を取り戻したイシュタルは、顔より大きなサイコロを両手で受け取る。バランス等を確認するためか軽くサイコロを持ったまま前後左右に軽く振り、その後で全身を使って渾身の一投を披露した。

 たわわな果実が揺れ、大事な部分を隠している衣類が外れて溢れそうになっていたのを見た男性陣の殆どは思わずガッツポーズ。女性陣は冷え冷え……の様でいて、肉食系美神のお姉さんが両手でサイコロを放り投げるあざとい動きをしたギャップは多少なりとも琴線(信仰)触れ(目覚め)た者を生んだのだった。これには恐らくどこかで女神イナンナもニッコリ。

 

「あ、あああ……」

 

「どうして……」

 

お願い、死なないで襲撃組! あんたらが今ここで倒れたら、ギルド連合や珍獣への攻撃はどうなっちゃうの! 希望はまだ残ってる。6の目が出れば、連合に勝てるんだから!

 

 闇派閥(イヴィルス)の仮本拠に集まる邪神達は、映像を見て祈った。神でありながら必死に祈った。6が出てくれ、と。スカであってくれ、と。その結果は

 

「と、いうことで賽の目は……4(ドンッ)!!」

 

次回「襲撃組死す」デュエルスタンバイ!

 

「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!」

 

 邪神達は一斉に崩れ落ちた。希望は潰えたのだと。思わず神も仏もないと溢しそうな位に絶望していた。

 

「いや、待て……4はポーションの雨だ。あの爆弾は単体で完結しているタイプで雨程度では例え驟雨であろうと爆発を防げないし、威力的にポーション程度の回復じゃ全く足りない……実質的な妨害は無いに等しいのでは?」

 

 とある邪神の言葉に、他の邪神達は一斉に顔を上げた。その瞳には希望が宿り、幾分輝いてさえ見えた。邪神なのに。

 

「では5分……約4分後にランダムイベント『ポーションの雨』が始まります。皆様どうぞ外出の際は傘や防水コート等、雨具のご用意をお忘れなさいませんよう、老婆心からご忠告申し上げます」

 

 そこで一旦発言は止まり、代わりにゆったり目のジャズが流れ出す。地上では激しい戦闘が続いているのだが、何故だか場の雰囲気に合っていた。戦っている当事者達は爆発音や怒号で聞こえていなかったが、その事実からはそっと目を逸らす。

 

 そして曲が終わると同時に、ランダムイベントが始まった。雲一つない茜空、夕陽に照らされる街、それでも天からは水滴が降り注ぎ始める。それは、夕陽の赤を受けても容易に判別できる程、非常に色彩豊か(カラフル)だった。

 

「ところでポーションと言えば通常の傷を癒すポーション以外にも上級版のハイ・ポーションですとか、精神力(マインド)を回復させるマジックポーションですとか、色々な種類がありますけど」

 

「うん? まぁ、そうだな……待て、今回の雨は何ポーションだ?」

 

「さすがは上位の【ファミリア】を束ねる女神、反応が早い。今回の雨に含まれるポーションは主にトキシケートポーションという私の故郷で私と同じ職業の方が使うこともあるものですね」

 

「んん?」

 

「まぁ、早い話が天然動植物由来の成分を抽出、ブレンドした毒って事です」

 

「……は?」

 

 珍獣がその日の天気でも話すかの様な軽い調子で毒の雨を降らせていると説明した頃、オラリオの街には地獄が広がっていた。

 トキシケートポーションはノーカのメインジョブである農家の最終形態ハーヴェストが習得できるスキル・ネガティブハーヴェストに用いる触媒アイテムである。本来であればスキルのレベルに応じて別々の効能を発揮するので、現実に即した場合は成分の調整や触媒の組み合わせ等で任意の効果を引き出し使い分けが出来る薬品なのだろう。では、それを原液のまま雨の様に降らせたらどうなるだろうか。

 闇派閥(イヴィルス)もギルド連合も、雨に当たった者は突如として錯乱したり声が出なくなったりしながら意識を失って倒れ込み、やがて光に包まれて消えていく。これが答えである。ネガティブハーヴェストにない効果(継続ダメージ)まで出ているのが確認されており、そのせいで死亡判定を受ける犠牲者が続出していた。

 それは耐異常の発展アビリティを持った者も例外ではない。効果が出るのは遅いが、即座に建物や屋根の下に行かなかった者はやがて各種症状を引き起こし倒れて消えた。

 唯一の例外は開拓地での荒行により状態異常の完全無効化スキルを発現させたザルドのみで、そんな彼は口を開けて上を向き毒の雨を味見していた。基本的に甘いらしく、新しい物を食べたと判断されてレアスキルによる強化までされており、彼とぶつかる事となるオッタルの苦労が偲ばれる。

 

「これはひどい」

 

「うーむ。襲撃は止んだが防衛に出ていた者の被害も大きいな」

 

 ギルド連合の首脳陣が集まる会議場では先程までの慌ただしさが収まり、無事な伝令を通して細々と上げられて来た報告を纏めていた。野外に居た殆どの冒険者が死亡判定を受けてしまい、守っていた拠点の一角に復活戦したのだから、最強が来た衝撃さえ一時的に吹き飛んでしまっていた。

 それにしても、とフィンは珍獣の言葉を反芻する。

 

(故郷、職業……ロキの話では天界で神により目的の下で生み出されたんじゃなかったのか? それに、任務の遂行に関係しない余計な知識は与えられなかったとも聞いた。今回の雨だけじゃない。見た事の無いモンスターの栽培といい、そもそものアイドルといい、言動の不自然さを隠す事さえしていない。ひよっとして――)

 

「暴走、しているのか……?」

 

 フィンが導き出した結論は概ね正しい。

 今回のイベントは大掛かりな物であり、膨大な負荷はそう多くはないノーカの処理能力の限界を超過していた。そのせいで、全てを任せたが故に冷静な第三者の視点で事態の推移を見守っているウラノスとフェルズとのハラハラが止まらない程度にはボロを出しまくっている。

 幸運にも、オラリオの殆どの者は激流の様な事態に食らい付こうと必死な時間を過ごしていたので、不自然さにまで気を回す余裕を持っていなかった……この時までは。

 

「ロイマン、珍獣の様子は普段と比べてどうだい?」

 

「うん? なんだ唐突に……ふむ、振り返ってみれば、普段というか仕事のときに比べて高揚している感はあるな。カジノで記録的な連敗を喫していたときのようぉっほん、ん゛っ、ん゛んっ!」

 

「ロイマン……」

 

「あ、あれに接待の下見だと連れ出されたのだ。定時は過ぎていたし残業代の概念はギルド長に適用されない。合法だ、合法」

 

「まぁそれは後で話し合うとして、今回のイベント抗争は珍獣が公言していた救界(しごと)に該当するはずだ。だけど貴方の印象からすれば振る舞いとしては私用……これはおかしいんじゃないかな」

 

「む……ぅ。正直、微妙だな。仕事に私情を持ち込みつつも成果をきちんと出すのがあれだ。言ってみれば取り掛かってしまえば楽しんで仕事をする類の変質者だな」

 

「なるほど、そういうタイプか……今回のイベント説明で、故郷とか職業とか違和感のある台詞を言っていたからね」

 

「あー、本人の言葉を信じるなら、最初は仕事に必要あるなしに色々な知識を詰め込んだんだそうだ。そこから不要な知識を消していったらしいんだが、一部だけ消したとか残っただとかで設定がブレるという話らしい」

 

「えぇ……怖……」

 

 正解に辿り着き、後は確信を得るだけだったフィン。しかし尋ねた先が珍獣を良く知る者であるが故にノーカ渾身のガバ対策として考えた設定(言い訳)を聞かされていた雇用主(ロイマン)であったために今一歩、濃厚疑惑の段階で足踏みする事となった。

 

 

 

 一方で真の地獄を味わっているのは闇派閥(イヴィルス)であった。襲撃する側なので野外に身を晒していた者が多かった事は勿論だが、彼等彼女等を復活地点へと送り戻したその原因は毒の雨である。毒の()なのである!

 降った雨は排水溝を伝い下水処理場へと送られるのだが、ここで思い出して欲しい。闇派閥(イヴィルス)の拠点にして復活地点なのは地下水路。つまり各地から流れて来た毒がすぐ近くを流れて行く場所であり、一部の揮発性を持つ成分が空気中を漂い猛威を奮ったのである。

 

「お、おのれ……ノーカめ」

 

「もうおうちかえりゅ……」

 

「イシュタルは許さない。絶対にだ」

 

 死屍累々ではあるが、不幸中の幸いだったのは揮発性の高い成分が目眩や気絶(スタン)を与えるものだと言う事だろう。ECO仕様なので致死量が存在せず出落ち且つ天丼(リスポーンキル)にならずに済んだのも幸運と言えそうだ。

 

 結局、不調を押してローブやマントを羽織り再出撃した者も居たが、長く外に留まっていれば雨が浸透して来て各種状態異常の盛り合わせを受ける羽目になり、動きを止められたまま継続ダメージでじわじわ体力を削られていって死亡判定を受けた。俺たちは二度目の死って呼んでる

 事態を重く受け止めた闇派閥(イヴィルス)首脳陣は泣く泣く構成員に作戦の失敗を告げ、今後も作戦は伝えるが従うかは各自の判断に任せると実質的な解散宣言を出したのであった。そして責任を取って首魁であるエレボスはその座を退き、唯一の眷族であるヴィトーと共に鉄砲玉としてギルド連合の首脳陣に対する奇襲をメインに最前線で戦い続ける事を発表した。が、既に今回の抗争に関しては泥船の気配を漂わせる闇派閥(イヴィルス)の首魁に就きたいと思う邪神はおらず、思い止まるよう説得されて結局首魁を続行した。

 因みに、作戦失敗の発表に文句を言いそうな狂信者(オリヴァス)は、既に三度目の死亡判定を受けており、敗北者の部屋へと送られているため不在である。




チラシの裏にノーカさんが存在しない世界線のラジルカがチートで成り上がる(可能性が微レ存な)話を置いてます。ノーカさん相手にあっさり鎮圧されてあれよあれよという間に開拓地に送られた彼女もランクアップする程度には冒険してたわけで、その軌跡とあり得た可能性の未来についてちょこちょこと。まぁ、三話くらいからプロットを無視して迷走し始めてますが。
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