戦闘には勝ってるのに直後のストーリーで負けた風に進むタイプの強制負けイベントは萎えるから滅べ!! 2周目以降でも安心してボコボコにしてくるサウザーを見習え! でも演出のヴァリトラごときで撤退するからやっぱ見習わなくてもいいわ
前回までのあらすじ
うぅ~威国威国。オレ、シャーロット・リンリン。
第六話:ギルド・後――不審者VS不審者&ギルドの主神・決勝戦からの受賞式(ポロリもあるよ)――
「……というわけでして」
「なるほど……なるほど?」
「面白いな。ガネーシャ興味津々」
面接官による精神攻撃に屈しかけた少女が意識を異世界に飛ばしていたのはオラリオ時間で数分間。実はHPが消し飛び戦闘不能状態に陥っていた所を装備に憑依しているお仲間がこっそり魔法の検知を警戒してわざわざアイテムで回復してくれていたのは内緒だ。ちなみに、意識を飛ばした先の某海賊漫画内では数年以上の時を過ごして来た。最終的にビッグマムから珍しい種族と能力とが原因となって目を付けられてしまい、勧誘を断ったら敵認定されて確かエルバフ由来だったはずな技で消し飛ばされた所でこちらに戻って来ていた。次のあちらにいる自分はうまくやってくれるでしょう。
「まぁ、稀にだがよくあるというやつです」
「ふむ……それはさておき、次の質問に移りたいのだが」
「はい。問題ありません」
気持ちを切り替えたらしいウラノスに少女が同意を返した事で面接が再開され、幾つかの項目についてやり取りする。内容的には至って普通の就職面接で、実際の業務内容に対する考えや将来の目標などに加えプライベートを少々といったところだった。
最初の設問で起きたようなやや意地悪だが正論としか言えないツッコミに何度か打ち上げられ顔面落下を繰り返したが、不屈の精神という名のアイテム投入で復活を遂げ挑み続けた結果、遂に面接は終了した。
「それでは合否の判定だが……」
「ダラララララララ……」
ウラノスが一度言葉を切って目を閉じたところで始まるガネーシャによる口頭でのドラムロール。厳かな雰囲気が台無しになっている感は否めないが、少女の期待と緊張とを煽る効果は十分だった。
「ララララララララ……ジャンッ!!」
「…………」
「……ごくり」
ドラムロールが終わって静寂が到来しても目を閉じたままのウラノス。どこかのクイズ番組を思わせる引き延ばしだが、選択問題の正誤と違って面接の合否判定に唯一つの完璧な正解など存在しないに等しいのだから即決できなくとも仕方がない。そんな風に考える少女は固唾を飲んで面接官の言葉を待つ。
「……合格!」
「おめでとう! これでお前もギルド職員、そして俺がガネーシャだ!」
「……ほっ」
告げられた合格の言葉に安堵の溜め息を漏らす少女。メインプランではあっても唯一の勝ち筋というわけではなかったのだから、残念ですが~や誠に申し訳ありませんが~などのお祈り攻撃を受けたとしても最悪には程遠く、そこまで心配する必要はなかった。それでも単純な試験の合否に心を乱されていたのは、少女なりに最善を尽くしたからなのだろう。そしてそれは少女の性質が生前の人間ベースであることの証左でもあった。
「聞くところによると今まで住んでいた環境とは勝手が違うらしいが、焦ることなくこのオラリオに馴染んでいって欲しい。そして願わくばこのオラリオを、そこに住む人々を愛せるようになって欲しい。どうか証明してくれ。今この時に私が出した合格の判断は間違いでなかったのだと」
「心得ました。微力を尽くしましょう」
まぁ、だからといって人間が邪悪ではないとは限らない。少女とてネットゲームに触れた当初はネットリテラシーが欠けており、無知で無垢だったからこその邪悪な振る舞いを仕出かした経験を持っている。具体的には親の所有物であるDC版PSOをテーマに扱った4コマや某碑文がどうたらなゲームの内容を鵜呑みにした上で持病の中二病と悪魔合体させてしまった結果として双子の兄とキャラを共有している妹という設定のロールプレイだ。ちなみに双子の兄は非実在で乖離性人格障害によるものというチープな隠し設定もあった。少女がプレイしている横から口を出すことこそあれど本人はちゃんと別アカウントで学友と楽しくプレイしていた実在する方の双子の兄が知って色んな意味で深く嘆いた、少女自慢の黒歴史である。
「うむ。ところで話は変わるのだが」
和やかな空気の中、いかにも雑談や世間話といった風にウラノスが口を開く。
「『
穏やかな表情に微かな笑みすら浮かべながら放たれた言葉は火の玉ストレートだった。場を痛いくらいの静寂が支配し、直前までの空気が嘘のように霧散していた。
「……ぜのす?」
面接中のダメ出しで車田飛びをするような少女は、しかし此度の言葉で宙を舞う事はなかった。代わりと言ってはなんだが、土手っ腹に風穴が開いていた。どうした欠損無効、仕事しろ欠損無効。しかして先の車田飛びと違い今回は※注:イメージです。故に欠損無効はしっかりとその責務を果たしていたのだ。偉いぞ欠損無効。すごいぞ欠損無効。などとそんなこの間わずか0.2秒的な夢想を終えた少女は気を取り直すべく軽く咳払いをしてから問い掛けに答える。
「私の知る限りにおいて、ゼノスという音を持つ言葉には複数の意味があります。代表的な物を挙げれば稀人を意味する単語。他には人名、地名、何度でも甦る系クレイジーサイコフレンド等々と。なのでウラノス神の期待する『
実際には原作……正確には二次創作由来の知識から、オカンの説明にあった理知を備えた怪物達――少女自身を含むであろう枠組みの事を聞いている事はほぼ確実だ。しかしほぼでしかないのも事実。故に条件が足りぬと首を横に振る少女を前に、ウラノスとガネーシャは目を合わせて頷き合う。
「『
「これは常識ではあり得ない事態だ。滅多に発生しないとはいえ、下手にその存在が明るみに出てしまえば冒険者の、オラリオの在り方にも無視できない影響が出ると懸念されている」
「……それはギルド職員に開示されるようなものなので?」
踏み込んだ説明に移ってきた神を前に、少女は首を傾げた。普通に考えれば秘匿されるべき内容だ。モンスターは無条件に人類の敵……それが不変の理であるからこそ、神の降臨に一定の正統性が生まれ、恩恵を刻まれた眷族である冒険者が認められている。そこへ対話による共存の可能性などというものが生まれてしまえば、神は、命を賭して迷宮に挑む冒険者は、一転して無体な略奪者に貶められる危険性を抱える羽目になる。
そんな存在について、採用が決まったばかりの田舎者に伝える事が果たしてあるだろうか。仮に、実際に遭遇してしまったというのならばまだわかる。だが少女は実物との遭遇経験を持たず、田舎から出て来たお上りさんの体裁を保っている。
或いは田舎ならば怪物への偏見が薄いとでも思っているのだろうか。それはない。ダンジョンの外にも怪物はいる。
今でこそオラリオの街に発展し巨塔バベルと神ウラノスの祈祷によりダンジョンが能動的な侵略に及ばなくなったが、古き時代はモンスターの大穴外への流出は止めることが叶わず、溢れ出て暴れていたものがそのまま定着した形だ。それらはダンジョンでは見られない繁殖活動が確認されており、その際に活動源である魔石が分割されるらしく、大穴の内部で生まれる同種の怪物に比べて弱い特徴がある。が、弱かろうと人類の驚異であることに違いはなく、むしろ神が身近におらず対抗できる者が少ないので忌避する傾向はより強いと言えよう。
「正直に言えば、『
二神は更に踏み込む。もはや少女は犯人に自白を促す探偵の推理にも近いプレッシャーを感じて追い詰められている事を自覚していた。
実のところ、二神の間では、少女が尋常な人間ではないことだけはわかっていた。
神は子の嘘がわかるのだから。
地上に降臨した神は恩恵を持たない人間と変わりない程度まで超越者としての機能を大きく制限しているが、数少ない違いの一つがこれに当たる。そして目の前にいる珍妙な格好をした少女と面接の形で言葉を交わした結果、少女の発言に嘘があったのか判断できなかった。これは少女が人間としては一般的の範疇にない事をはっきりと示している。そして何より
「実を言うとな、最近とある筋から新種の『
「…………」
「はっきり言って、その情報元は信ずるに値しない存在だった」
「つい先程の事だ。いつもの様に祈祷を捧げていた私の下に、どこからともなく声が届いた。「私、ダンジョンさん。これからオラリオに娘を向かわせます。どうぞよしなに」とな」
「オカァァァァァン!!」
ウラノスが告げた残酷な真実に、少女は崩れ落ちた。まさかの身内。まさかの裏切り。フォローできないとは何だったのか。確かに大雑把に過ぎるのだが。
少女とて根回しの重要性は知っている。予防線を張るのは最低限でありながら最重要でもあり、新人に任せた仕事のフォローに予め上司同士で打ち合わせしておく事は珍しくない。
ましてや自分は『
しかし、だ。今なお現在進行形で人類に牙を剥いているダンジョンが、意思を持ち、あまつさえ友好的に話し掛けてくるなどという滑稽な話があるだろうか。破壊神シドーがクラフトの楽しさに目覚めるようなものである。なんてことだ、そう考えたら実現の可能性がぐんと高まった。例え話の難しさに少女はひっそりと泣いた。
そんな少女の肩に優しく手が乗せられる。少女が顔を上げれば、そこには我らが頼れる父にして兄、群衆の主ガネーシャの姿。もはや少女には後光が差して見える。貴方が神か。神だったわ。なお、登場から今まで着替えタイムを含めても少女が常に目隠しをしたままなのは言わぬが花というやつだろう。
「ウラノスから話が来た時にはこのガネーシャであっても悪戯だと思ったものだ。実際に応接室で出会った時でも言った通りに不審な目を向けざるを得なかった」
ガネーシャの言葉は何一つ間違っていない。
果たしてどれだけ世間を知らなければ信じられようか。幾千年に渡り人類を追い詰めて来た大穴が、大神ウラノスの祈祷なくばバベルがあってもモンスターが這い出して来るであろうダンジョンが、自ら繋ぐための手を差し出して来るなど。
「だが、言葉を交わして理解した。確かに神の特性ではお前の言葉が嘘かどうか判別はつかない。お前自身に自覚のない、ダンジョンの仕掛けた悪質な罠が仕込まれているのかもしれない。それでも、だ。お前自身は信じるに値する者だという事は俺が、ガネーシャが保証しよう。もちろんウラノスも保証してくれるさ、なぁ?」
ガネーシャの言葉に対し、頷きながらあぁ、と短い同意を示すウラノス。彼の表情もまた穏やかに子を見守る大人のそれだった。
「あ……ありがとうございます」
認められたのだ、と。
少女は今までほとんど経験したことのない打算抜きで真摯な言葉を受けて、低い自己評価とは異なる価値を見出だされたもどかしさを覚えつつも、すんなりとそれを受け入れることができた。
「一先ず白状しておきますと、伝言のあった娘というのは私で間違いないと思います」
地味にオカンへの復讐を胸に誓いながら、いつまでもorzの姿勢を晒す無礼を続けるわけにもいかないと正座に移行した少女は、手始めに暴露話を始めることにした。
「まずですね、私は気が付いたらダンジョンにいました」
「うむ」
だが、それが必ずしも良い結果に繋がるとは限らない。それを理解していないはずのない少女ではあるが、この時の少女は色々と感情的な意味で振り回された事で冷静さを欠いていた。
「その直前まではデスクトップPCの前でエミル・クロニクル・オンラインというMMOのサ終に立ち会っていました」
「うむ?」
「流れ変わったな」
「今の姿はそのMMOにおいて自分で使用してキャラクターの一人で、能力やアイテムを引き継いでまして」
「…………(眉間に指を当てて揉み始める)」
「ざわ…ざわ…」
「分類的にはモンスターみたいですけど中身の都合もあって実質ちょっと強めの人間ですね。体内に魔石はありませんし活動限界時間は生後一日未満なのでよくわかりませんけど元ネタ通りなら寿命は百年千年の単位かと」
「…………(額に手を当てながら天を仰ぐ)」
「ウラノス、これ聞いて大丈夫なやつか? ふざけられる状況を過ぎたぞきっと」
「アイテムと言えば多分オラリオの上空に浮いてる小島みたいなのが見えると思いますけど、飛空庭と言って空を飛んで移動できる物になります。私と同じかそれ以上に強い仲間が数十名控えているようですね。みんな素直……とは限りませんけど、可愛くて良い子ばかりで」
「…………(口の端から血を垂らしながら安らかな笑顔で意識を手放す)」
「あー、その、なんだ。少しいいか?」
「こちらでは馴染みの薄いDEMというロボットですとか……はい、如何しました?」
何やら男の子の心に致命的な言葉が聞こえた気もするが、鋼の意志で抑え込んだガネーシャは少女にストップを掛ける。
「すまんな。どうやらウラノスが限界みたいだ。俺も【ファミリア】を長く離れるのは都合が悪い」
「なるほど、それは確かに。配慮が足りませんでした」
ガネーシャの言葉に恐縮する少女の姿は確かに人間そのものだ。そこには発言内容から推測される脅威は感じない。見立て通りの善性を見せる様に微笑ましさを覚えつつも、疎いらしいオラリオの現状を教えてやらねばとガネーシャは気持ちを新たにした。
「まぁ、その辺りは経験だ。追い追い慣れていけばいい……そうだ!」
その瞬間、少女を宥めるガネーシャの脳内に唐突な閃きが走った。
「本来ならギルドでの面通しやら研修やらをするべきなのだろうが、手続きをする前にウラノスがこうなってしまったからな。そこで! お前をガネーシャ自慢のホームに招待しようではないか! もちろん道中で街の紹介もしてやろう!」
「おおー」
実際問題、少女を野放しにするわけにはいかない。
少女の抱える問題は余りにもデリケートで、容易くオラリオの滅亡に直結しかねない爆弾だ。心を開いてくれたと思えば悪い気はしないが、割とあっさり正体を暴露してしまった少女の迂闊さを考えれば、『
フェルズは応接室の一件から面倒を見るどころか面倒事を引き起こす気配しかしないので今回は保留した方が賢明だとガネーシャの直感が言っている。
『
彼の神はちょっかいを掛ける際にはある程度の本質を見抜いて致命的な部分は避けているようだが、少女の常識とは異世界の常識なのである。価値観のズレからヘルメスが少女の地雷を踏んでしまったり、そうでなくとも軽いツッコミでヘルメスの首が三回転半を決め送還されたりした日には目も当てられない。何なら今後も関わらせない方がいいように思われたが、『
そんな感じで選択肢を挙げては下げるを繰り返し、最終的に残ったのは有言実行で少女の人柄を信じている自分が責任を持つべきだろうというものだった。
治安維持的に考えても街の人々に周知してもらうのは早い方がいいし、自惚れではなく人々からの信頼が厚いガネーシャが同伴する姿を見せる事で一見すると不審者な少女に対する警戒を多少は解くこともできよう。
少女にオラリオを知って欲しい、気に入って欲しい、ぶっちゃけ自慢したいという思いも当然ある。その正体を知ってなお、否、知ったからこそ、群衆の主にとっては少女も新たに加わった庇護する民なのだ。
「そうと決まれば善は急げだ。ついて来い! 俺がガネーシャだ~!」