オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

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前回のあらすじ:力を求めてを力をも止めてと誤変換してしまったノーカ・ウントは、仲間達の導きを得て別の日に見る夢の(世界でやんちゃする)自分が時空を越えて集まって駄弁る定期報告会の会場へと赴いた。右を見ても自分、左を見ても自分。前を見ても後ろを見ても、上も下も、全部自分。ネット上でも人見知りを発動してしまうノーカ(シャイガール)は相手が自分だろうと多数の視線に耐え切れず即座にトラスーツを身(自分の殻)()った。
とはいえそこにいた自分達は、弾けに弾けた結果その世界における最上級の実力者――ぶっちゃけ時空を越えたり因果を操ったり世界を創り出したりするような連中ばかりだったので、然したる効果は無かった。そして同じ自分だからこそ話は早かった。ここに来た目的に理解を示し、そこに至るための道程を提示したのだ。そしてそれを見たノーカは、催眠術的なサムシングで色々とエロエロでオロオロウロウロする羽目になった。ゆるぼ:アロアロの使い方。
それから数分後、そこには完全に順応して炙りゲソを噛みながら管を巻く酔っ払いの姿が! 尚、酒を飲んだ訳ではなく雰囲気に酔っただけ(思い込みによる誤作動)である。本来の目的である力の開拓に関して、今の能力を使いこなせるように突き詰める事が重要だとの結論だったせいでやさぐれた部分もあるのだろう。
エミル・クロニクル・オンラインのプレイヤーキャラクターは魂に干渉する能力を持っているし、気軽に魂だけで抜け出して近くの物に憑依する。転生に関しても他人の助けを借りはしたが体験しているので解析可能な範囲。むしろ普段は死んでも蘇るし欠損は無効。時空や異世界に関しても、飛空城を解析すれば理論が立てられて自力で干渉する方法にも目処が立つ。神魔に師事するのも手段の一つだろう。そうやって古代種族(アークタイタニア)は次元移動の技術を確立していたのだから。しかも機械生命(DEM)の開発を主導していた知力に優れた種族であるし、DEMは人の手を離れて長く経った後の話ではあるが心を宿してすらいる。早い話、最初から割と神様神様できる可能性(スペック)を有していた。尚、運命関連は別途必要だが、そもそもそれら概念的な能力は次元の違う強さを持った相手には通じない場合が多い事から、最終的に目指す先は存在の格を上げるための数字という具体性を伴った暴力との事であった。上げ方? 知らん。


第六十一話:闇派閥「やりきった」――八年の活動に幕か――

 ネタ被りを起こしたランダムイベント(ポーションの雨)ではあったが、やる気を出した闇派閥(イヴィルス)の襲撃――ランダムイベントよりもランダムイベントしている緊張感の溢れる出来事――が重なった(発生した)ので、街全体は騒然となった。

 まるで燃え尽きる直前に再度強く燃え上がる蝋燭の火を思わせる闇派閥(イヴィルス)の攻勢は、散々な目に遭いつつも被害らしい被害を出さなかったギルド連合に大打撃を与える事に成功していた。これには地下水路に潜む邪神もにっこり……闇派閥(イヴィルス)側も相当な打撃を受けたが、織り込み済か或いは本望だと言わんばかりにいい笑顔を浮かべていた。

 尚、子供達(眷族や信奉者)が頑張っているのを眺めるだけで、どさくさ紛れで連合側の神を排除に動かない辺りは実に神々(娯楽目的)であった。こんな茶番で真面目になって送還(返り討ち)されたら馬鹿らしいとの気持ちも解らなくは無いと超越存在(デウスデア)の中では専らの噂ではあったのだが。

 今回はしっかり回復薬としてのポーションが降り注いだのだが、各地で起きた襲撃と続く戦闘では闇派閥(イヴィルス)側の持ち出した爆弾により一撃必殺されるか一撃で返り討ちにされるかの大味な戦闘が多く、それこそ第一級冒険者でもなければ――爆心地からの距離も関係して来るが――雨の恵みを受ける事態にはならなかった。これには珍獣もがっかり。

 なお、因果が収束でもしたのか、こっそり正史における死亡原因な少女の自爆でアーディが一乙していたりする。事前に少女と会話及び説得をした結果、神様(タナトス)が嘘を吐いていたら二人でお仕置きしようと指切りを交わして双方納得の上での心中だったが。

 この時、姉にして団長であるシャクティは納得できない顔のまま見届けた後で、抱えたもやもやをぶつけるかの如く闇派閥(イヴィルス)をしばき倒した。途中から何食わぬ顔で合流していたアーディも一段落した後でしばき倒した。

 そんなアーディだが、イベント後の【ステイタス】更新に伴い【ランクアップ】が可能だと判明して、物議を醸す事となる。具体的にはシャクティにお仕置きされると【ランクアップ】出来るのでは、と噂になった。自爆に巻き込まれると~でない事を喜ぶべきだろう。

 何を馬鹿な事を、とシャクティは頭を押さえたが、今やアイドルのレッスンを受けると【ランクアップ】出来る事が常識になりつつあるこのオラリオではどれだけ突拍子もない内容であろうと頭熟しに否定できなかった。しかし試す気に等は到底ならなかったため、お仕置き希望者の列を前にして頭を抱える事となった。

 余談だが、ガネーシャはその噂を聞いて色々と想像してしまいドキドキしたらしい。

 

 ところで、正史では猛威を振るった闇派閥(いたち)自爆攻撃(最後屁)ではあるが、この世界では然程の成果を上げられなかった。

 言うまでもなく珍獣(いつもの)が原因ではあるが、現在のオラリオには一時的に死と呼ばれる現象が存在しない。起きるのは死亡判定による復活地点への送還か敗者の部屋送りかである。

 そのため、最初の不意討ち気味な自爆こそ巻き込まれる者が多発したが、その後は危険性を認知したギルド連合側が『神の恩恵(ファルナ)』を持たない信奉者に対しても無力化するための手加減を投げ捨てた致命の一撃を容赦無く繰り出す方針を徹底したのである。結果、多くの『神の恩恵(ファルナ)』を持たない一般人やLv.1でしかない構成員は火炎石を用いた自決装置を起動させる前に復活地点や敗者の部屋に送られてしまった。場合によって(動作の途中だった者)はそこで起爆して即落ちする愉快な事件も起きた。

 これにより闇派閥(イヴィルス)本拠地(アジト)が判明したに等しく、地下水路が一度や二度で済まない爆発による大きな打撃を受けて崩落の危険まで考えられたために、邪神達は移動を開始した。行先は、言うまでもなく人造迷宮(クノッソス)

 

 一方で、爆弾(無粋)とは縁遠い地域も中にはあった。

 

「随分と腑抜けた。器の昇華(ランクアップ)を果たしたとは欺瞞か? それとも誤報か? 何れにせよ、前にも増して歯応えがない。それが現実だ。旨味等は欠片すらも……これではいっそこのまま向こうへ送ってやる方が慈悲か」

 

「ザルド……ッ!!」

 

「才能が無いならば無いなりに足掻く……それだけの話だ。違うか、糞ガキ」

 

「う、うおおおおおおおっ!」

 

「そうだ、それでいい! 何度でも立ち上がって見せろ……何度でもだ!」

 

 他ならぬゼウス(ザルド)ヘラ(アルフィア)の担当した極小範囲の場所である。それぞれオラリオ有数の戦力に対する足止めの名目(倒してしまっても構わん)面倒(訓練)見て(付けて)やった形だ。

 

「失望させる……アイドルとは名ばかりのひよっこでしかない。全く時間の無駄だったな。やはり期待を掛けるべきは向こうに置いて来た子供(おチビ)達か」

 

「アルフィア、貴様は……」

 

「その見た目で経産婦(子持ち)だったの!?」

 

戯けが(ゴスペル)

 

「きゃー怒ったわらばっ!?」

 

「アリーゼてめぇこのアホがはぁっ!」

 

 どちらも教官(襲撃)側の状態が快癒しているために手加減まで絶妙で、足止めを命じられた者達は死亡判定を受けさせて貰えず色々な意味で生き地獄を見た。何せ、互いに足止め目的だった事情も噛み合って、ランダムイベントの時間一杯まで戦闘(訓練)は終わらなかったのだから。

 そして【アストレア・ファミリア】におけるアリーゼの株がごっそり下がった。何ならリヴェリアからの評価もちょっぴり下がった……妖精の同胞(リューとセルティ)から謝罪を受けて持ち直し(慈悲を見せ)たが。

 

 結局、今回のランダムイベント(ポーションの雨)は暫定トップだった前回の死亡判定記録を大幅に更新した。これにより、オラリオにおいて『ポーションの雨』は夥しい数の死者を生み出す『災害』を意味する言葉として不動の地位を築く事となる。

 そんなイベントを引き当ててしまったフィンはと言えば、名声に響かないかと気が気でなく、赤い目も血の涙も引っ込めて冷や汗を掻いていた。結果的には闇派閥(イヴィルス)へ大打撃を与える大金星を齎した英雄的行為として称賛に繋る事となるのだが……それを確認出来るのは数日後の話であり、現在のフィンを安心させる要素は見当たらなかった。

 余談だが、フィンと交代で飛空庭に足を踏み入れたロキは珍獣から駆付三杯と飲まされた完成品神酒(ソーマ)のレビューを延々と垂れ流しており、映像を眺めている神やドワーフ達を落涙させた。悪知恵を働かせて珍獣から情報を引き出してくれる事を期待していたフィンとロイマンも同様に涙した。

 

 

 そうして迎えた夕方の部である。直前に行われたアルマのライブでは、まさかの新曲が発表されて、ファンを熱狂の渦に叩き込んだのは記憶に新しい。

 初見にも関わらず完璧なタイミングで合いの手を入れた親衛隊(ファンクラブ)の底力を存分に思い知った一時でもあったが、そちらは記憶しなくていいだろう。

 

「さてさて、例の如くランダムイベントを決める時間がやって参りました。今回のゲストは闇派閥(イヴィルス)側から引っ張って来る予定だったのですが……候補が昼のイベント(ポーションの雨)行われている(降り頻る)中でひっそりと退場して敗北者の部屋に送られちゃってたんですよねぃ。関係ないですが前衛(ファイター)後衛(スペルユーザー)で部屋が別れちゃった語尾になりそうな(ディース)姉妹には強く生きて欲しいと思うでぃーす。そして代打に名乗り出て下さったのがこちら、オラリオに知らぬ者なし、まさかまさかの美神フレイヤ様です。この高所にも届く万雷の拍手でお迎え下さい」

 

「フレイヤよ。よろしくね」

 

 珍獣の挙げた名を聞いて、そして実際に姿を現したゲストを見て、視聴者からどよめきが巻き起こる。

 然もありなん。現状は、言ってみれば美女と野獣ならぬ美女と珍獣。それ(絵面)だけでは問題になる光景とは言えないが、人々にとって未だに珍獣は危険の概念が形を取った歩く災害であり、女神フレイヤは危険地帯の真っ只中に身を置いて居ると言う事に相違無いのだから。

 今も主神を奪還すべく飛空庭を目指す眷族達が努力を重ねている最中だ。具体的にはヘディン指揮の下、アレンがアルフリッグ達を肩車した状態で魔法込みの加速を付けてからオッタルを足場にすると同時に全力で押し上げて……否、放り投げて貰っていた。空中で勢いが弱まるに連れて、肩車の下から順に足場となって多段ロケットの如く切り離されながら空を進んでいる。結局は庭まで届かずに落下しき、それなりの高度を記録したアルフリッグ達四兄弟は残機まで減らしていたが。因みにだが、ヘグニは愛用の呪剣(ヴィクティム・アビス)に限界まで体力を注ぎ込んで刃を庭まで届かせようとしていた所に周囲からフレイヤ様を危険に晒すなと総ツッコミを受けた事で乙っていた。何なら復活地点で自責していたら満たす煤者達(アンドフリームニル)から袋叩きにされて二乙してしまい後が無くなっていた。合掌。

 

「いや、まさか立候補する方がいらっしゃるとは思いませんでした。しかもフレイヤ様にはトリを飾って頂く予定でしたのに」

 

「あら、繰り上がりで丁度良かったじゃない」

 

「うーん、前向き。それでは話を始める前にサイコロ行きましょうか」

 

 そんなシリアスな笑いを提供している眷族に気付かないまま、フレイヤは渡された顔よりやや大きいサイコロを回転させながら繁々と眺める。

 

「……これ、全面6(スカ)なのかしら?」

 

 一通りサイコロの面を確認したフレイヤの台詞がそれだった。

 今回のサイコロは丸印の数ではなく、アラビア数字が印字されているタイプだ。そして十面体ではなく六面体をしており、各面は同じ6の形が描かれていた。

 

「いえいえ、6と9が互い違いになってますよ。数字の下に線が引かれてますので、そちらで区別して頂ければ」

 

「……どちらにせよ選択肢は少ないのね」

 

 珍獣の言葉を受けてもう一度サイコロを確認すれば、確かに数字以外にも線が引かれており、6か9かのどちらかが出る仕組みとなっていた。各面の上下に線が引かれており、目に映る形は6のみである点が非常にややこしい。

 ヘラ派閥(クレイジーサイコ)に敗北してオラリオにその身を縛り付けられたフレイヤとしては、自由を奪われるのは中々に苦痛だ。そのため、護衛としてひっそり付き添っているドラッキー・アルマが差し出してきたウッドスピア(ただの木の枝)を使って珍獣をチクチク刺して憂さ晴らしをしていた。因みに、サイコロは保持したまま。

 

「いやぁ、折角なら全種類制覇とかしたかったものですから。丁度お昼が抗争らしい抗争でしたし、夕方のイベントはまったり料理を楽しんでもらおうかと思ってたんですよ」

 

「はぁ……そこに私が来たから苦肉の策でこのサイコロが作られたのね?」

 

 弁明を聞き届けて、フレイヤは自分の行動が珍獣の計画を阻害した事を知った。思わず溜め息と弱気な言葉を吐いてしまったが、対する珍獣はどこ吹く風。

 

「事前の用意が足らないという非難は甘んじて受けましょう」

 

「それを言ってしまったら完全に私が悪者じゃない。今の時点でも計画を潰しちゃったわけだし」

 

「むしろそれに関しては英雄的行為として称賛を受けるべきでは?」

 

「……それもそうね!」

 

 映像を眺めている面々は珍獣の意見に深く頷き、各々の心の中でフレイヤへの評価を一段階上げた。それはもう最後に一暴れ出来たし今回はもう解散してもいいかなと思っている闇派閥(イヴィルス)や、一方的な敵視をしているイシュタルですらも例外ではない。

 尤も、イシュタルに関しては先日庭に拉致された際の対話を通してフレイヤに対する嫉妬や憎悪を自己解決しており、現在では住み分けが可能な相手だとして好感度のリセットが起きた後なのだが。

 

「それでは気を取り直して、運命のダイスロールをお願いします」

 

「わかったわ……えいっ!」

 

 その瞬間、フレイヤの掛け声と両手で抱えた大型サイコロを放り投げる仕草により、オラリオは停止(キュン死)した。全くの無自覚に振り撒かれた『魅了』は、人々から何か尊い物を見た気がする瞬間から十数秒の時間と記憶とを奪ったのだ。

 この時、半脱退な『豊穣の女主人』所属を除いた【フレイヤ・ファミリア】の面々は、記憶を失いながらも途徹も無く勿体無い事をしてしまった想いに捕らわれて、唯一人の例外も無く目と鼻と口とから赤い液体を流した。その姿を見た人々は、こいつらが今の最強派閥なのか……とドン引きしたらしい。

 因みに、絶妙なタイミングでくしゃみをした事により魅了を回避したイシュタルと、そちらに『魅了』された眷族が居たりもした。美神の面目躍如と言って良いのかは判断が分かれる所である。

 

「ふぅ……申し訳ありません。即死して確認が遅れました。えーと、あ、ちゃんと9ですね。おめでとうございますとありがとうございますが合わさって最強に見えるランダムイベントの内容はモンスタークッキング~」

 

「テンション高いわねぇ」

 

「えぇ、まぁ、休憩よりは食べ歩きの方が楽しめるでしょうし。概要を説明しますと、うちの謎食材をうちの子達が料理しますので、たくさん買い食いして貰います。無料の炊き出しもありますので、金欠な皆様や避難生活で飽き飽きしていた皆様も奮ってご参加下さい」

 

 魅了の代わりに即死する謎体質をしている珍獣が復帰すると同時に行った説明に、モンスターから人々がクッキング(ボコボコに)される地獄のイベントを想像していた面々が胸を撫で下ろす。

 一部の(開拓地を知る)者は珍獣の語る言葉の意味(類語:ヨモツヘグイ)に寒気やら嘔吐感やらを覚えていたが、幸か不幸かそれを疑問に思う者は居なかった。

 そして、サイコロの目を確認したアルマ達がいそいそと即席の調理場を準備し始めたので、ファンクラブの情報網を通じて瞬く間にオラリオ中に広まり、メインストリートの一角に長蛇の列を作っていた。

 本来であればその先頭に並んでいたはずのエレボスだが、先頭に居る見知った顔と言う事でスタッフ(半ば身内)扱いされてしまい、あれよあれよと流される内に気付けば『こちら最後尾』と書かれた立て札(プレート)を掲げて客を誘導する役に就いていた。

 並びに来た神々からそんな状況をからかわれたが、エレボスが『なんでもクエストカウンター臨時スタッフ』と書かれた腕章を見せ付けると、神々は揃って目を灼かれたかの様に例の台詞を叫びながらよろめき、地面をのたうち回った。ン億歳になっても男子中高生のノリを卒業出来ない連中である。

 

「ところでフレイヤ様は料理をここに運んで貰うのと地上で食べ歩きするのと、どちらにします? お奨めは食べ歩きですが」

 

「あら、デートのお誘い? 高いわよ、私」

 

「オッタルさん辺りが支払うので問題ありませんよ」

 

「あら、悪い人」

 

 珍獣の提案は、しかしフレイヤにとっては好ましい物であったので、揃って飛空庭を後にした。護衛のドラッキー・アルマも先行しての周囲警戒を始めている。

 尚、話題に上がったオッタルはザルドに捕獲されてしまい、大型(ボス)モンスター達の開催している大食い選手権への出場登録をされていたせいで、フレイヤの護衛を勤める栄誉には与れなかった。その代わりと言うべきか、会場へ赴いた主神の応援を受ける栄誉を賜り、決勝まで駒を進め見事準優勝に輝いた。

 景品に貰った『なんでもクエストカウンターオラリオ支店』で使える商品券は主神への捧げ物にするつもりだが、恐らくは女神の意向を受けて彼自身が店に赴き商品を受け取る事になるだろう。アレン(都市最速)に任せると荷物の中身がぐちゃぐちゃになる不具合を起こすために。

 

 

「ローキーちゃん! 『お任せ』三つご注文なのです!」

 

「うむ、任せよ!」

 

 さて、こちらはアルマ達『なんでもクエストカウンターオラリオ支店』の屋台。メニューそのものは先のモンスターフェスティバルの夏祭りとほぼ同じだが、その中で一番人気を独走しているのが今回のみの特別メニュー『ローキー・アルマのお任せ』である。特別価格100ヴァリスでのご奉仕だ。

 このローキー・アルマ、幼い見た目からは想像も出来ない才色兼備振りであり、その腕は料理に関しても……と言いたい所ではあるのだが、何故かレシピ通りに作っても品物がランダム生成されてしまうタイプの料理下手だ。可愛い(マーベラス)。しかしながら、味そのものは抜群に良いため、例え真夏にぐつぐつと煮立っている鍋焼うどんが出されても気が付けば完食している有り様。

 その何が出来上がるか分からない部分も含めてアルマ達からも人気なのだが、今回は催しという事で存分にその腕を振るって貰う事が決められたのであった。本人も主の催しを盛り上げられるのならばと乗り気である。

 今も巨大な手動かき氷機のレバーをぐるぐる回し、比較すると随分小さく見える簡素な容器に氷を注いでいく。可愛い(エクセレント)。そしてボワン、という効果音と共に立ち込めた煙が晴れると……そこには持ち運びに便利な取っ手が備わった木製の板と、その真ん中の窪みに嵌まる安定性抜群な金属製の容器、そして容器の縁ギリギリを攻めているグラタンの姿が! 表面のチーズがうっすら焦げて香ばしい匂いを撒き散らしており、とてもかき氷を製作する工程から発生したとは思えない。錬金術師(アルケミスト)を修めている珍獣(ノーカ)びっくりな(発狂物の)光景が其処には在った。因みに、残る二つはジャンバラヤとレアチーズタルトだった。

 言うまでも無いが、『お任せ』が一番人気なだけで他のメニューもしっかり売れており、厨房はてんやわんや大騒ぎしていた。その様子もファンを喜ばせる一因となっており、大食い選手権の会場にも負けぬ熱いスポットと化していたのは間違いなかった。

 

 

 そうしてモンスタークッキングが終了して、アルマを含む珍獣関係者が撤退した後は酔っ払い(恒例)祭典(二次会)へと移行して行った。今回ばかりはアルマの新曲発表(サプライズ)によりファンのテンションも高く、ここ数日で一番騒がしく賑やかな夜となった。

 

 そんなオラリオの街を、ノーカはクスクスと笑いながら眺めていた。誰にも気付かれないまま。

 お陰でトラスーツを脱げとのツッコミが入る事は無く、大層残念な絵面を晒していた。毎度の如く色々と残念な奴である。

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