オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

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前回のあらすじ:定期報告会では様々な夢で活動している自分達から自己紹介をされていたのだが、中々にどうしてこうなった(エキセントリックな)案件が多かった。オラリオのバー・ナザリックに集まる面々と関連付けた者を抜粋してみよう。
ある自分はスーパーなロボットの大戦が舞台の世界で円盤獣チンチ◯を作ってベガ星連合軍の評価をドン底に落としたり、フリード星のベガトロン放射能除染と緑化を完遂した実績を知った東方不敗からスカウトされて承諾しデビルガンダムの自己進化を促し過ぎた結果一周してアルティメットガンダムに戻した上で地球意思に接続したアルティメットアースを爆誕させていた。デビルアクシズもびっくりな結末である。しかも一段落したら何故かいたアルマ・ベオルブに誘われ、デジョンの応用でFFTの世界に赴き獅子戦争(茶番)を尻目に戦う農家をしている。もうこの時点でお腹いっぱいだった。
またある自分はバーのマスター、グロッケン・バウムの所属するギルド『アインズ・ウール・ゴウン』が転移して来る世界へ竜帝のやらかしに即応したかのようなタイミングで混ざり込み、竜王から敵対されて全面戦争したり死んでもデスペナなしで蘇り封印してもすり抜けて活動し始める無法振りに停戦協定が結ばれたりするも、百年ごとのプレイヤー転移を解析して時空を越えた様々な並行世界からプレイヤーを大量に呼び込みユグドラシル村を作ってスローライフを提供していた。モモンガ一行とは元ギルメンどころか並行世界のモモンガが数名いた関係から原作比で穏当な付き合いができたというか完全に抑止力となって平和な異世界ライフを過ごしている。ノーカは今すぐ帰ってバウ・アルマを吸いながら眠りに落ちたい衝動に駆られた。
そしてまた別の自分はおっぱいドラゴンの生まれる世界で堕天使勢力の世話になりつつも振り回し、規模を拡大しつつ協力体制を築いて世界を一つに纏め上げた。ついでに別世界の自分やご当地戦力を集めてEだのFだのの異世界を雑に平らげていった。やけに敵対的な機械生命はELSとフェストゥムとアルティメットガンダム(上記アースから産まれた子供達)をけしかけたら普通に融合や同化や浄化をしてしまえたのでいっそ憐れな程に一方的だったらしい。平和になったと思ったら今度は懇意にしているご近所さんの息子さんが通う学校でクラス丸ごと異世界召喚されたので回収に赴き、知り合いを呼んで神を名乗る輩(エヒトとかいうの)を玩具にして遊び、更にはその異世界を舞台に群雄割拠の戦争ゲームを始めているのだとか。ノーカはこの後の記憶がない。
結論として、気付いたらオラリオの飛空庭に戻っていたノーカは、一段落したらもっと弾けようと心に決めたのであった。


第六十二話:ネタバラシ――アルマは黙々とライブの準備中――

 その日は、やけに晴れ渡っていた。

 とは言え、ここ一週間は一度も雨が降らなかったのだが。それが珍獣による庭師(ガーデナー)天候操作スキル(ウェザーコントロール)によって作られた事は――飛空庭が剥き出しなので雨天は見映えが悪いという珍獣の意図を推測した者が現れなかったので――誰も気付かないままだった。

 飛空庭が雲の上に位置すれば地上の天候とは無縁な事に珍獣が気付かなかったが故の徒労であり、知られざる喜劇ではあったのだが、仮にそうした場合でもアルマのライブに思い至り同じ処理をしていたであろう事は想像に難く無い。

 

「そんなわけでアルマのライブで活力を得た皆さんに捧げるランダムイベントも最後のお時間となりました。イシュタル様に始まりフレイヤ様に終わる予定ではありましたから実質もう終わったに等しいですし、一通り全項目制覇(コンプリート)出来たので私が振っても良かったんですが、スカでは締まりませんからね。折角なので一般人代表で来て貰いました。ギルド長ロイマンさんです」

 

「お前の企画ならばスカで終わる方が()()()だろうに……」

 

 呼び声に応えて――ドラッキー・アルマに連行される形でやって来たのは、幾分か窶れた老年の妖精(エルフ)だった。珍獣が現れてからの三年間――正確には一年足らず――で生活習慣の改善による減量(シェイプアップ)を果たした彼の外見からは、豚と呼ばれる要素は見当たらない。権力の座に拘る点は変わらないが、三大冒険者依頼(クエスト)達成の悲願に向けた責任感の裏返しである。横領? 気にしてはいけない。

 尚、定期的に開かれている闇派閥(イヴィルス)対策会議のお陰もあってか、彼の姿を知る者達は健康な形で徐々に体が引き締まって行った変化に気が付かないまま年月を過ごしており、とある会議でアレン(口の悪い猫)が豚と罵った際に改めてギルド長の姿を確認した一同が疑問を覚えた事で認識された。本人は今更かと憤慨したが、彼以外のほぼ全員がその瞬間に認識したせいでその回の会議は踊りに踊ったそうな。暗黒期であってもオラリオはオラリオだった。

 全くの余談だが、神の中には触り心地の良いたぷたぷして遊べる顎肉が失われた事に悲しみを覚えた者も居たとか。

 

「普段は表に出ないから名前は売れても顔は売れてないですからね。ギルドの豚なんて蔑称はもう古いと知らせる意味でも良い機会でしょうに」

 

「ふん……まぁ良い。さっさとサイコロを寄越せ」

 

 老年であっても妖精(エルフ)である以上は骨格的に整った造形をしている男は、珍獣の気遣いを察してほんのり頬や耳を赤くしたが、需要としてはニッチであった。

 尤も、目の前の珍獣は普段から目隠しをしているので、別段気にした風もなく、言われるが儘に巨大十面サイコロを手渡す。今回は顔どころか一抱えもあるサイズである。

 

「イカサマは仕込んでおらんだろうな?」

 

「それは勿論」

 

「えぇい、そこで切るな! 勿論仕込んでいると続き兼ねんのが貴様だろうに!」

 

「安心して下さい。サイコロを投げたと思ったら解けて中から全面同じ数になっている真・サイコロが飛び出して来たりはしませんから」

 

「別のパターンは仕込んでいる可能性が残っているだろうが! そもそもイカサマを仕込んでいないと明言されん限りは何一つ安心できんわ!」

 

 手渡されたサイコロを持ったまま軽く上下左右に振ったり、口頭で確認したりと然り気無く有能さを披露するギルド長の姿を見て、ここ数日で珍獣の被害に遭い続けて目が肥えた人々は彼に高い評価を与えた。

 今やオラリオの街を運営するに辺り最も必要な能力は、珍獣に好き勝手させないためにありとあらゆる想定を元に言質を取る交渉力である。それはそのまま都市外との折衝にも活かせる事を、人々は身を以て思い知ったのだから。

 

「それで? このサイコロにイカサマ要素が無い事を天に誓えるか?」

 

「誓いましょう。そのサイコロが出す目は誰にも分かりません」

 

 ジト目を注がれるも全く堪えた様子を見せない珍獣ではあったが、遂にロイマンの望む言葉を吐き出した。ここで嘘を疑い始めると切りが無く、冗長に過ぎるためロイマンは諦めて納得する事にした。事実、こういった岐路で嘘を吐かない実績を重ねて来たのがこのアホ(珍獣)である。

 

「……よかろう。では振るぞ」

 

「ここで一旦CMに入りまーす!」

 

「待てえええい!? このタイミングは卑怯だろう! そもそもCMとは一体何だ!? 説明しろ馬鹿者が!!」

 

 ロイマンの手を離れた瞬間に叫ぶ珍獣。遠い地面に向かって落ちていくサイコロに手を伸ばすも、当然届かなかったので、抗議と質問と叱責を飛ばすロイマン。珍獣相手に一切臆す事をしない強気な姿勢に都市民からの評価は鰻登りだ。トラスーツの首元を掴んで、笑点でお馴染みいやんばか~ん(センシティブな内容)歌い(口ずさみ)始める珍獣に振り回されつつも逆に揺すって振り回し返す姿は、いっそ英雄と称されるに相応しい振る舞いであった。

 因みに、画面外からスッと現れたネコマタ(山吹(山田君枠))により痛烈なハリセンツッコミが放たれ、そのまま珍獣の椅子からクッション(座布団の代わり)が持って行かれたが、見えない人間が多数だったので怪奇現象だと騒がれた。ロイマンは珍獣が出奔した辺りでローカライズされた関連イベント(一大スペクタクル)をこなしたので見える側であり、珍獣の扱いにも慣れがあったので大して動じなかった。この数分でどこまでも株を上げ続けるが、横領や専横がバレるまでの短い天下である事を宣言しておく。

 

「えーと、出た目は……8ですね。宝箱」

 

「無難なお題が来たか」

 

「都市への負担を考えたらスカと隕石に次ぐでしょうねぃ。そこから参加型で『神の恩恵(ファルナ)』がなくても楽しめるとなれば最良を引いたんじゃないでしょうか」

 

 珍獣の言葉を裏付ける様に、各所でやる気を見せる神々や人々が前回の目撃地点に散ったり、準備運動(ウォームアップ)を始めたりしている。それはそれとして、ロイマンは何やら違和感と嫌な予感とを覚えた。

 

「貴様、自棄になっておらんか?」

 

「まさか。ただ出費が嵩むので今回の事態が収束したら又候アイテム補充に都市外へ旅立つ必要が出て来たなぁ、と」

 

「……溜まった分の書類仕事は片付けてから行けよ?」

 

 案の定、ギルドの仕事を放り出す気だったらしい。業務改善と意識改革を経て効率化された現在であっても三人から五人分の仕事を熟せる珍獣に自由を与えるのは、ロイマンとしては決して歓迎出来る事では無い。何時の間にやら組織図で表せばギルドの枠組み内には居るがウラノス直属としてロイマンと繋がりのない独立部署に配属されているので、休暇の申請を却下したり強制的な命令を下したりは出来なくなってしまった問題はあるのだが。

 尚、ロイマンはこれに関して大神ウラノスの弱味を握ったのだと確信にも似た推測をしており、しかしながら人類のために毎日欠かさず祈祷を捧げている老神がどのような弱味になる事態を引き起こしたのかと首を傾げている。まさか当の本人(珍獣)が『異端児(ゼノス)』という超弩級の爆弾だとは、老獪なギルド長の目を以てしても見抜けなかった。

 

「いいですけど……もう少しギルドで働ける実直な人材が欲しいですねぃ。文字の読み書きと簡単な計算が出来て、口が堅いとなれば大体どこも欲しがるんですが。孤児を育てても困った事に冒険者への憧れから【ファミリア】の門を叩いてしまうので無駄骨になりますし。いっそ新人類(漢女)を雇うべき……いやでも人情に厚すぎて泣き落としで機密漏らしてしまう未来がっがががが」

 

「その辺りは学区に期待するしかなかろう。都市外の情勢に危機感を抱き、戦う力を持たぬなりにオラリオ(冒険者)の尻を蹴り上げんとする者が現れぬはずがない」

 

「まぁ、その冒険者を下位互換品に貶めてしまおうと動いているのが私なんですがね!」

 

「この場で言う事か! 全く……確かに実績は先日の【芸術家(ファイアワーカー)】で見せてもらったとはいえ、そもそもあれは元より冒険者としての才能も飛び抜けている部類だぞ?」

 

 ロイマンにとっては神の助力あってのオラリオであるため、それに真っ向から噛み付いてみせる珍獣は非常に扱いが難しい存在でもあった。

 当の神は未知を見せてくれる相手だと歓迎して楽しんでいるが、神への敬意を抱く冒険者やそれ以外の人々にとってはその限りではない。

 その不満や怒りの矛先がギルドに向かない様に、組織の長としてロイマンは慎重且つ大胆に動かざるを得ないため、元から手放せなかった胃薬の量は増えるばかり……最近では胃薬(錠剤)回復薬(ポーション)で服用する様になっていた。他の薬品と禁忌を起こさず、気持ち甘味のある飲み易い回復薬(ポーション)を作製している薬師(ハーバリスト)への感謝は絶えない。財布からはドンドン中身が飛んで行くし、冒険者優先なので度々使えなくなるが。そこで権力を笠に脅さない辺りが、ギルド長を任される由縁である。

 

「その辺は追々、都市外から芽吹いて来る日は近いはずですよ。とりあえずランダムイベントの開始まで秒読みですね。30秒前……ヒャアがまんできねぇ0だ!」

 

「少しは待たんかぁ!」

 

 そうして始まったランダムイベントだが、おっかなびっくりな前回を経験した事から積極的な狩りが行われていた。鍵開け役のアルマもアクロニア開拓地から派遣してもらい増員してあったので実にスムーズ。

 

「いやぁ、賑やかですが穏やかですねぃ」

 

「その口振りは何か問題を起こす前触れか?」

 

「いえいえ。少しばかり雑談でもと思いまして」

 

「……聞くだけなら聞いてやろう」

 

 のんびりとした口調ではあったが、ロイマンの長年を生きた経験から来る勘は最大限の警戒をするべきだと告げて来る。

 

「フィンさん相手に私の中身についてお話ししたでしょう? 折角なのでガワ(肉体)についても秘密をお話ししておこうかと思いまして」

 

「待て待て。それは……」

 

「実は器も中身に合わせた異世界仕様なんですけど、産まれはダンジョンなんですよね」

 

 ピタリ、と。まるで時間が切り取られた様な静寂がオラリオに生まれた。メレンから聞こえて来るラウドミュージックのシャウトが届くも、割とセンシティブ(下ネタ)なその内容を理解出来た者は居なかった。

 

「は?」

 

「天界とかあの辺、全部嘘です。何故か皆して信じてくれましたけど。神々がもう少し神々しかったら違ったんでしょうけどねぃ」

 

 一世一代の大告白であろうに、珍獣の声は朗らかですらあり、至って平静だった。

 

「……何故だ」

 

「その意味では私が出奔した前日に斬り掛かってきた【ロキ・ファミリア】の(人形)姫は行動だけなら正しかったんですよね。無知と無力の合わせ技で起きた偶然でしかありませんでしたが」

 

「何故それを今になって明かす!?」

 

 対するロイマンは混乱の極致に居た。今までギルドの、人々の発展に寄与してきた実績は何だったのか。人間社会に潜り込むための演技か。それにしては数々(あれだけ)醜態(やらかし)晒す(実行する)意味はあったのか。そもそもダンジョンで産まれたと言っても、その中身と器とが異世界由来ならば実質モンスターとは異なる存在ではないのか。現に振り返っても人類の敵とは一言も口にしてはいない。それでも尚、誰からも指摘されなかったその出自を明かす必要は何処にあるのか。

 

「敵不足」

 

 問い掛けに対する返答は、どこまでも簡潔(シンプル)内容(モノ)だった。

 

「……何だ、それは」

 

「黒竜と呼ばれている古代のモンスターを打ち倒すのが此処の役割でしょうに、どうにも皆さんやる気が見られないんですよ」

 

 何もない空間から突如として現れた(テーブル)に腕を乗せ、頬杖を突きながら残る手の指先で机をリズム良く叩く。珍しく不満十割で不機嫌を体現している珍獣の様子に、ロイマンは胃が絞られる様な錯覚に襲われた。

 

闇派閥(イヴィルス)も冒険者も温すぎますし、ギルドに至っては慎重を越えて臆病。住民を類型(パターン)別に区分しても余りにも種類が少ないせいでオラリオを定義するのに一年も要りませんでした。内半年は本部に詰めて死にながら公的事業に回す資金の回収と都市外に対する繋がりの強化に勤しんでましたから実質半年。それだけあれば傾向と対策が掴めてしまうとかどんだけ浅いんですか世界最強の街(オラリオ)。いっそ都市の外に足を運んでも、多様性と呼ぶには足りない貧相な変化(マイナーチェンジ)ばかり。有り体に言えば、この世界の人間は疾に諦めている。問題が見えているのに自分の番では大丈夫だろうと楽観してもいる。それでも精一杯やっていると悲劇の主役を気取って、白馬の王子様(これから生まれる英雄)迎えに来て(勝手に救って)くれるのを待つだけの、無力で怠惰な家畜の群れ」

 

 仰っけからとんでもなく上から目線な暴言が飛んで来て、ロイマンは早速現実逃避を始めた。おそらきれい。

 

「一部は本分を全うしようと足掻いていますが、同類が少ないから協力できない。他人を巻き込む才能もない。一人でやるしかないけど限界が見えてしまい、伸び悩んでいる苛立ちを周囲に向けるだけで精神的な成長もしない。まぁ八方塞がりで表向き努力してる風ですけど内心諦めて現状維持に満足する様になっちゃうわけです。私はその原因を人間による同士討ちだからだと結論付けました。そもそも闇派閥(イヴィルス)等と粋がって見せてた所で所詮は愉快犯(自称邪神)が家畜を嗾けているだけ……非道を働こうと、残虐に振る舞おうと、引かれた(絶滅に到る)線を踏み越えない。そもそも実力もないわけですが。恐らくゼウスとヘラが健在だったら今も地下で計画の準備とか言い訳して動けないだろう小者集団こそ闇派閥(イヴィルス)の正体ですよ。そんなの相手にしたって偉業になるはずもないでしょう。エレボスの描いた図だってスカウトした死に掛けのLv.7を主軸に置いて他は状況を整えるための使い捨てに過ぎなかったんじゃないですかね。ヴァレッタとフィンさんですとかディース姉妹と【フレイヤ・ファミリア】のお二方みたいな因縁持ちは上位の【経験値(エクセリア)】になったかも知れませんが、それ込みで考えても時間を含む資源の無駄です。だからここ数日で常識ごと状況を掻き回しました」

 

「う、ぬぅ……」

 

「大体ですよ、千年かけて道具(恩恵)の解析も進んでないとか人間でいる意味が無いでしょう。盲目で白痴な従うだけの子供(人間)達と、全知を標榜しながら導く方法一つ取っても下っっっっっっ手クソで説明書すら読んでなさそうな自称神(プレイヤー)。自主性を尊重してるつもりなでしょうけど、非効率なやり方で時間切れが見えて慌てて動き始めたのも居て間抜けも良い所です。つーかそもそもアプデもデータ引き継ぎもない同じゲームをクリアしたら遊べなくなるからって千年休まずだらだら先延ばしにしても楽しめるわけねーだろ無課金厨(寄生虫)共が。サポートも設定せずにフレンド申請バラ撒く害悪の分際で世の中舐めてんじゃねーぞ鈍い通り越して死んでるじゃねーか真面な神経。そんでもってフレポと無料石分のガチャだけで満足出来るとかどんだけ敏感なんだよテメーらの快楽神経。そんなん適当な代替手段を考案し合えば済むだろうに能力封じて下界行きとか全知全能に独創性は含まれねぇのかよ誇るもんなさ過ぎだろ……と私の中のイマジナリーラジルカさんが言ってました」

 

「めっちゃ煽るではないか貴様。というか急に落ち着くのは止めろ、心臓に悪い」

 

「ですがいっそこれだけ駄目な方向に振り切ってしまっているのなら、丁度良いから私が越えるべき壁として十年位は君臨して差し上げようかと思った次第」

 

 この時、ロイマンは途中から現実逃避をしていたが、なまじ有能なばかりに話半分で聞いてはおり、偶然にも重要な部分だけを上手く聞き取る小さな奇跡を起こしていた。

 

「私が狭い範囲ですけど世界の未来を知っている話をしたでしょう? 無関係な読者としては笑えるけど当事者としては全く笑えない話がありまして、主人公は最初の【ランクアップ】所要期間一ヶ月半でしたからね」

 

「嘘じゃろ貴様」

 

「それに関しては神会(デナトゥス)でとある神がうちらの恩恵はそんなもんやないとか因縁吹っ掛ける程度にはあり得ないらしいですけど、それって結局は未知を期待しながら否定する一種の諦めですよね。自分の(眷族)がその可能性を開拓できなかった妬みや僻みにも見えて非常に醜い」

 

「その神に心当たりが有りすぎる。もう少しオブラートを厚くしてくれ」

 

「ちなみに内容は伏せますが冒険者記録を見たギルドがこれを参考にさせるのは死ねって言ってるに等しいからと非公開を決めてました」

 

「何をしたのだ其奴は……」

 

「ちょっと成長に促進効果のあるスキルが発現して、その条件が気質や知識と合致して、周囲の環境まで後押しするかのように何度も死に掛けるけど諦めなければギリギリ踏み越えられる高さの障害を用意してくれただけなんですがね」

 

其れ(諦めない)が出来れば苦労せんわ」

 

 半自動的な反応を返しているが、未だにロイマンの意識は空の彼方(旅の最中)だった。そんな二人の会話――ほぼ珍獣の独演を聞いている人々は内容を噛み砕くのに苦労しており、神々は憤りながらも分かりやすい未知の出現に多かれ少なかれ高揚を覚えていた。

 

「とりあえず準備運動(ランダムイベント)はそろそろ終わりますし、モンスター相手なら本気を出す所か限界の一つ二つ越えられるでしょう?」

 

 珍獣は席を立ち、手を叩く。それだけで辺りは暗く染まり、足場が消える。気付けば人々は輝く星々を隣に感じる不思議な空間に集められていた。その中には敗北者の部屋に送られた者も含まれており、恐らくはオラリオに暮らす全ての人々が一堂に会していた。

 

「喧嘩ましょうよ、オラリオ。どうせ昼前には終わりますから」

 

「「「……野郎ぶっ殺してやる!!」」」

 

 やらかしの規模に対して余りにも軽い口振りで、しかも随分と安い挑発をして来る珍獣の様子に、招かれた人々(主に恩恵持ち)の心は一つになった。言葉遣いに関してのツッコミは投げ捨てられた模様。

 こうして【白髪鬼(ヴェンデッタ)】の暴発に端を発した一週間の死ねない地獄は、唐突な締めに入ったのである。

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