オラリオ総異端児化計画   作:夜月工房

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前回のあらすじ:オラリオでお祭り騒ぎが行われて居た間、各地でも闇派閥の一斉蜂起――と言う名のゲリラライブ――が人々を騒がせて居た。大陸の東側に居た学区は驚破テロかと緊急出動するも、其処には明らかな不審者の集団が、しかし荒れ狂うギターの旋律に乗せて社会への不満を攻撃的な表現で声高に叫ぶのみだった。破壊活動とは言えない面も有り介入するべきか悩みつつ、一先ず行政に尋ねた所、無許可だと判明した。迷惑行為として取り締まるべきだろうと戦技学科に出動命令を出そうと学長バルドルが決心した、正にその時である。ステージに女神が舞い降りたのは――!
ステージ上に乱入して来たのは長い金髪の美しい神だった。彼女こそはオラリオを中心に広まって流行中の最先端を走り続けるアイドル概念にアルマ達の出現以前から独力で到達して居た、学区の何処ででもアオハルを叫ぶ者――名をイズンと言った。これには思わず闇派閥の面々も度肝を抜かれたが、直ぐに調子を取り戻した。そこからマイクパフォーマンスを経て参加を認められると、観客のボルテージは最高潮に達した。そうしてイズンの出番がやって来る頃には、学区の面々も普通に応援用の格好で会場を包囲して居た。そして伝説の一時間と語り継がれるその瞬間が始まり、途中から潔く敗北を認めてメイクを落とすと共に着替えもした闇派閥の面々も一糸乱れぬペンライト捌きを見せて居た。こうして無事に闇派閥の横暴を収めて見せた学区だったが、行政からは死傷者無しに終わった事を感謝されつつも乗っかって無許可のイベントを盛り上げた事をチクチク言われる結果となった。イズンは叱られた。そして彼女は反省から詫びライブを突発で行い、全く懲りて居ない事を世界に示したのだった。そしてバルドルは今日も穏やかに微笑むので在る。


第六十九話:それでもまた日は昇る――魔法剣士で必殺技が突撃で普段は斬撃の細剣使いとかいうECO適性の無い女――

 戦後処理。それは面倒の極致である。なので此処では詳細を省くが、今回の場合は不意討ちの形で闇派閥(イヴィルス)の蜂起とオラリオの封鎖が発生した事から、オラリオの輸出入を止めた事で生じた損害の補填に主な焦点が当てられた。

 結局の所、物を言うのは金銭(ヴァリス)である。犯人(珍獣)は丁度良いと言うべきか、ダンジョンの意思なる存在への報告にダンジョンへ赴く必要が有ると宣った。故に、深層から魔石やドロップアイテム、自然物を持って来れば十分補えるだろうと結論付けられた。尚、悲しい事に一足飛びの上質な素材を得た所で加工する設備や技術が足りずに歯噛みする未来を想像出来る者はギルド(行政機関)上層部(専門家)に居なかった。

 此の背景には許可された遠征の期間内で到達可能な一番深い場所から持って来いと指示したロイマン(過労死手前)の迂闊さが有ったのだが、唯でさえ珍獣による情報爆弾で頭痛と胃痛の止まない所へ都市内外から突き上げを受けて折衝の為に奔走する彼に一から十まで自分で考えて決める事は難しく、簡単な指示だけ出して委任出来る管理職としての優秀さ故に起きた悲劇と言える。

 因みに、陳情の上がっていた都市内に於ける建物を主とした器物の損壊に関しては、ギルドが動くよりも早くアルマ達『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』が都市民に聞き取りをして補填に動いていた。駆り出されたラジルカや【ゴブニュ・ファミリア】は大忙しだったが、其の甲斐有って三日と経たずに封鎖前の環境を取り戻した。副次効果でアルマのファン増加に繋がったので万々歳な結果と言える。そして其れはファンクラブの会員数がギルドの把握しているオラリオ人口の三割を上回った瞬間だったのだ。

 

 

 

 

「と、そんなわけでして」

 

『うーん、ワープポータルかぁ。定番と言えば定番だよね』

 

 事件の首謀者、そしてギルド職員として数度の話し合いに参加して、幾つかの取り決めが成された事で一段落したノーカ(珍獣)は、通称オカン(ダンジョンの意思)への報告をする目的でダンジョンへと訪れて居た。途中でアクロニア開拓地の様子(古龍)を確認して絶望を味わい発狂し掛ける愉快な出来事も起きたが、こうして健在な以上は些事として片付けられるべきだろう。

 

「事故率は1%で十分だと思いますが、念の為に適当なアイテム……そうですね、例えばこの次元安定石を使えば確実に安全なワープを保証するとかを考えてます」

 

『なるほどねー』

 

 会話自体はウィスパーチャットを流用出来るので、本来ならば居場所は無関係であり、それこそ上層浅部でも構わない。しかしながら、ロイマンからの命令で深層の素材を持ち帰る必要がある事から、ノーカは報告がてらライドパートナーのドミニオンドラゴンに階層を打ち抜いて貰いながら深部へと進行していた。オカンは泣いた。

 尚、かつては脳内会話の様相を呈していたウィスパーチャットだが、当時はオカンが肉体を持たず文字通りダンジョンの意思でしか無かった事が理由だった。ダンジョン深層深部の活動を全面停止しつつ現行最強(ロキとフレイヤ)の到達階層である60階層付近より深くに関しても環境維持に必要とされる最低限に抑えて、更には其処より上の階層でも大量発生や悪辣な罠を初めとする各種の異常事態(イレギュラー)に関しても頻度を落さなければ破綻待った無しのカツカツな運営を年単位で迫られる程のリソースを費やして造られた人型の肉体(アバター)を得た現在は、こうして肉声を介しての通話を実現させている。その声は、いっそ小憎らしくなる程に愛らしく、同時に美しかった……何故か基本的にダミ声を作るので、色々と(緊張感等が)台無しなのだが。

 補足すると、対策が実を結んで此処3ヶ月程前からは通常通りのダンジョン運営に戻している。冒険者は難易度が(上が)った事で嬉しくない悲鳴を上げる羽目に成った形だ。

 

「とりあえずこちらが書類になりますので後でサインをお願いします」

 

『はいはーい。さらさら、っと。これでい〜い?』

 

「…………あ、はい」 

 

 チャットウィンドウから棒人間の様な線と丸で構成された腕が伸びて来て、擬音通りの流れる様に滑らかな動きで――しかも達筆な――【神聖文字(ヒエログリフ)】でオカンと署名される様子を見せられて、ノーカは正気度(耐久度)の下がる音を聞いた。そもそも内容を吟味せず署名したので説教が必要なのだが、上手い具合に諌めるべき人物(珍獣)は混乱の最中に在り、華麗に(スルー)された。

 

『ところで急いでるみたいだけど、目的地はどこなの?』

 

「とりあえず一番深い場所の一つ上くらいですかね。人類をあっと言わせるドロップアイテムや植物、鉱石等の素材を鞄一杯に持って帰りませんと」

 

 ノーカがギルドの記録を漁った限りでは、人類の最深到達階層を更新したのはゼウス・ヘラ(毎度の如く)である。しかしながら、其処から持ち帰られた素材や其れを用いた製品については耳に入れた記憶が無い。とはいえ、両派閥が壊滅したのは十年に満たない近年の事。鍛冶系【ファミリア】の主神であれば瞬きするよりも短い時間であり、下界では滅多にお目に掛かれないと思われる稀少素材(レア物)となれば記憶に残っている可能性は高い。

 その意味では聞き取り調査の一つも無しにやって来たのは失敗だったとノーカも反省する所だった。尤も、最大手の【ヘファイストス・ファミリア】に関しては団長自らECO由来の素材を求めて復興活動に勤しむアルマ達へ突撃して営業妨害並の問い合わせを繰り返したせいで『なんでもクエストカウンターオラリオ支部』を出禁にされたばかりだった事から、ノーカとしても接触するのは憚られたと言う理由も存在するのだが。

 

『ふーん。ナイフとかランプとか用意しておけばいい?』

 

「どちらかと言えば飛行石やロボの残骸が欲しいですねぃ」

 

 転生者であっても世代的に通じるか微妙になってきたネタを交わしつつ、ノーカは『ノームの万屋』を営むボムお爺さんをポムじいさんと混同していた過去を思い出した。全くの余談である。

 ノーカとしてはECOのみならずモンスターをハントするゲームまで混入している事態を比較的重く見ており、或いは天空の城とて流れ着く可能性は零では無いと考えていた。実際には無いと確信に近い思いを抱いて居るが、仮に何かの間違いで存在した場合、例の雷だけで地上が面白い様に吹き飛ぶ事に成り兼ねない。確認漏れは無い方が良いに決まっていた。

 しかしながら、世の中にゲーム間のコラボが存在する事を考えれば、互いの強さは倒せる程度まで拮抗するとの楽観も持っていた。現に自称歴戦個体の古龍がパートナー(カンスト済)の集団からタコ殴りにされて敗北を認めたと報告を受けている。ノーカ自身、今度(開拓)地まで赴いた際に軽く手合わせして確認するつもりである。恐らくスタン嵌めに近い形でボコボコにされて敗北すると考えられるが、軽い手合わせなので勝ち負けを気にするつもりはない。

 

『流石にないかなぁ』

 

「でしたか」

 

 オカンから返って来たのは否定だったが、予想を裏切らない内容だった事でノーカを安心させた。飛空庭や飛空城を撃墜される可能性自体は他ならぬ隻眼の黒竜や、最近になって確認された竜の谷で元気に過ごしているモンスター達(一狩り行こうぜ系)の存在から零には出来そうに無いので、引き続き対策を重ねる必要を感じてはいたのだが。

 

『でも、そーゆー事ならこの私に任せんしゃい! 50階層に特別仕様の漆黒モンスター産み出すから、それを倒して持ってけ泥棒!』

 

「あ゛ァ!? 誰が泥棒だゴラァ!?」

 

『ぴぃ!? ごめんなしゃい!』

 

「こほん、失礼。好意は有り難く受け取りますとも。しかしながら今回限りの特別な配慮(イレギュラー)とは言え、余り容易に起こしては以前の様なひもじい生活を送る羽目になりますよ?」

 

 地味に安全階層(セーフティポイント)へ任意のモンスターを産み出す特大の異常事態(イレギュラー)が明言されたのだが、幸か不幸か聞いた者はノーカしか存在せず、人々に対して無駄な危機感を煽る事態は避けられた。しかしながら、オカンにそうした配慮等は頭の中に存在して居ない事が判明したと言える。故にノーカは侮辱表現に託つけて恫喝し、話を聞かせる下地を作った。

 

「それに一度確認されてしまえば次を警戒されてしまいます。最悪の場合は人々が遠退いて干される可能性だってあるわけですからね」

 

 ノーカの言葉は根拠も実現性も皆無に等しい物だった。一度知ってしまえば以前には戻りたく無いのが人間であり、魔石製品によって便利な暮らしを得た以上は依存を止められるとは思えない。多少危険が増した所で、むしろ魔石の供給が減少すれば価値は相対的に高まり、命知らずな冒険者が数を減らす事はほぼ無いだろう。

 難易度に関しても、相対的に上がったと言っても実情は以前と同じに戻っただけなのだから、そう時間を置かずに慣れてしまう筈だ。暗黒期の劣悪な治安も手伝って、冒険者には新人よりもベテランの方が圧倒的に多いのだから。

 

『うげぇ!? そ、それは非常に困るのねん! 今後は気を付けるなの!』

 

 とは言え、オカンはノーカの発言を真に受けて自戒した。動揺と混乱の余り言葉遣いが乱れに乱れる程だったが、ダミ声はしっかり保持(キープ)していたので何処までが本心なのかはノーカも類推するしか無かった。ネタバレすると、ダミ声は意識せずとも出せる領域にまで習熟しているため精神状態に関わらず出てしまうだけであり、本人(?)は極めて真摯に受け止めて反省していた。不幸な事にノーカへは伝わって居なかったのだが、極めて自業自得な結果だと言える。

 実は此方のオカンと呼ばれる存在、前世でゲームやライトノベルを趣味に持って居たが故に迷宮管理者(ダンマス)とも言うべき存在への転生と運営に関しては驚くべき適応能力を見せて馴染んだが、一方で原作を知らず作中のダンジョンに関する知識――即ち人々にとっての常識は知り得なかったりする。引き籠もり脱却のために活動体(アバター)を創造したので今後に期待が寄せられるが、その際はダンジョンの過去と人類の確執にどう反応するか地味にノーカから心配されて居たりするのは此処だけの話だ。

 兎にも角にも、オカンは心に刻んだ――珍獣に対する泥棒扱いは厳禁だと。人間、何処に地雷が埋まっているか判った物では無い。その意味では、マイナス表現自体を控えるべきかと真剣に脳内で討議したのだとか。結果が活かされるかは、今後判明する事だろう。

 

 

 

 

「難問だね」

 

 そう溢したのは、押しも押されもせぬ【ロキ・ファミリア】の団長、フィン・ディムナ其の人である。現在は自室の机の前で肘を突き手を組み口を隠す姿勢で何事か考えている最中だった。

 

「成功例は確認されてるが、長期的な影響は不明だ。そもそも定義にもよるが、純粋な人間から変貌を遂げている可能性だってある」

 

 彼の悩みとは、即ち珍獣の実施する政策である新たな――『神の恩恵(ファルナ)』に依らない――力を得る手段に手を出すか否かだった。

 フィンを名乗り、種族の旗印と成る事を決意したからには、珍獣の実施する方法は願ってもない話だと言える。何故ならば、世間一般に蔓延する小人族《パルゥム》軽視の風潮は『神の恩恵(ファルナ)』を以てしても覆す所か差を広げたに等しい。

 此れは『神の恩恵(ファルナ)』の用途が人類の生存圏確保を目的とした、モンスターと戦う為の武器である事に起因するからだ。例え【ステイタス】が同等だとしても、絶対的な数値で見た手足の短さはリーチや移動速度に直結する。攻撃を当てるために他種族よりもより近くまで赴く必要が有り、そのためには移動の距離が伸びて時間も増える。歩幅の違いから同じ距離を移動するために他種族よりも多く足を前に出さなくては追い付かない……それでも努力で補える範囲に収まっているのだから前進には違い無いのだが、同時に効率を優先する部分ではこう考えてしまうのだ――他種族ならば同じだけの努力でもっと良い結果が出せたのに、と。此れで種族に誇りを持てと言うのは難しい。

 

「しかし効果は絶大だ。間違いなく冒険者の在り方を変える。魔法の存在が『神の恩恵(ファルナ)』以上に身近で気軽になるのは小人族(パルゥム)にとっても強い追い風になる」

 

 一方で珍獣(ECO)齎す方法(侵食)は、直接敵を倒すだけが戦いでは無いと言わんばかりの内容を含んでいた。珍獣の言うジョブは特例を除き戦闘職(ファイター)魔法職(スペルユーザー)生産職(バックパッカー)の三系統に各四種類で合計十二種類が存在し、各々の職は専門性が高く応用に欠けると言う。

 しかし裏を返せば本人の資質に左右される事無く役割を熟せる資格を与えられる訳で、その点で見れば汎用性にも優れる。臆病で保守的な性格であっても従来の冒険者と同じく武器を手に取りモンスターと殴り合う必要は無くなり、最初から魔法で安全な距離から攻撃に参加出来る様になる。或いは微妙に見た目よりも多く中身が入る鞄と組み合わせて弓矢等の支援に回れる武器を持っても良いだろう。フィンとしては同胞に今度こそはと最初の一歩を踏み出す勇気を与えてくれそうだと期待が止まらない。歩幅等の問題も同種族で集まれば良く、或いはフィアナ騎士団の再来すら見えて来るのだから。

 話では『神の恩恵(ファルナ)』との併用も可能だそうで、しかもどうにもジョブの恩恵は『神の恩恵(ファルナ)』側で獲得出来る【経験値(エクセリア)】の判定には考慮されないらしい。端的に言えばジョブのLVが高くて強い者が『神の恩恵(ファルナ)』を刻まれた場合でもLv.1として判定されるので格上狩りが非常に捗り偉業の達成も通常よりずっと安全且つ容易に行えるし、第一級冒険者がジョブを得て深層で強力な敵を倒せばジョブ用の経験値を大量に獲得出来て素早くJOBLVを上げられる。何れにしても非常に()()()()訳だ。

 そもそも気軽に他者を回復、そして強化又は弱体化させる事が出来るとなれば継戦能力に大幅な補正が期待出来るし、サポーターの地位も相応に高くなる。と言うより、地味に生産職でさえ戦闘力が皆無な訳では無い。ブロウと呼ばれる単なる打撃に過ぎないスキルが普通に殴るよりも明らかに強く、ダンジョンに潜らない【デメテル・ファミリア】の眷属がファーマーのジョブを得て少しばかり採集、運搬の依頼をこなしてJOBLVを上げた状態で放った通常の一撃はゴブリンに痛打を与えたが戦闘続行可能だったものの、ブロウを放ったら頭部を胴体にめり込ませながら打撃にも関わらず真っ二つに引き裂いた。放った本人にトラウマを植え付ける酷い光景を作り出した一幕は、誰もが同情を寄せる結果を齎した。多分の例に漏れず此の件を考案、主導した珍獣は囲まれて袋叩きに遭い、首から『私は今回もやらかしました』と書かれた札を下げる制裁を加えられたのは言うまでも無い。

 そう、ジョブには道具の採集や荷物の運搬と言った本人が体を張ってモンスターと殺し合う以外の方法(クエスト)でも強く成れ(経験値を稼げ)る強みもあった。従来の常に強者に挑む必要が無いのだ。そして戦闘職であってもドロップアイテムを納品する形の採集クエストが存在するらしいので、二束三文なゴミアイテムの使い道が増えて地味に下級冒険者としても嬉しい点だと思われる。回収したドロップアイテムの使い道に関しては気にしたら負けだろう。

 事務仕事と交渉に明け暮れるロイマンが其方側の階位(レベル)をモリモリ上げているらしい話は記憶に新しく、流石のフィンも驚かされた。ロイマン本人も驚愕して取り乱したり、肝心の能力が上げるために一手間必要で恩恵に与れて居なかったりした事実に関しては、知らぬ存ぜぬを通す覚悟だ。

 

「ダンジョンに挑むための力は欲しい。だが感情を無視してはいずれ破綻する。納得……いや、妥協が必要だ。説得の材料は異世界、か」

 

 此処でフィンを葛藤させるのは、珍獣がモンスターである事だった。モンスターの襲撃による両親の死が立ち上がる切っ掛けと成った手前、其の手を取る事は心情的な問題から二の足を踏まざるを得ない。そして【ファミリア】内部の面々も自分と同じくモンスターに対する恨みや憎しみを抱き胸の裡に昏い炎を灯す者が少なくないため、諸手を挙げて歓迎出来る筈も無いのだ。

 然りとて個人の自由としてしまう事は間違いなく団員間に軋轢を生むだろう。そして反対の立場を取れば最強の看板を奪われる可能性が高くなり、感情を理由に目的を達成する手段を取れなかった愚者の烙印を捺される事態に陥る事だろう。団長の立場からしても腰は重くなる一方だ。本心としては一も二も無く飛び付いて他派閥より先に進み最高派閥としての地位を固めたいのだが。

 尤も、先の珍獣討伐の立役者を果たしたアイドルの概念は珍獣が持ち込み広めた上に、レッスンを施したアルマ達は異世界のと言う冠を頂くとは言えがっつりモンスターだった事が判明している為、今更な話では在るのだが。珍獣に関しても、体内に魔石が存在せず人類に敵対的で無い珍なる個《ユニーク》なので、特例だと主張する事は十分に可能だ。

 

「一人で悩んでいても仕方ない、か」

 

 どの様な姿勢で臨むべきか、其々の選択肢に関して利点と欠点を見出したフィンは、これ以上は考えても堂々巡りするだけだと見切りを付けて、同じく悩んでいるだろう年長組(幹部)を集めて相談する事を決めた。

 

 因みに主神が買収(神酒請取)済であり、最も強く頑固に反対を叫びそうなアイズが既に(騙されて)ソードマンに転職済だと知って崩れ落ちる事と成るのだが、この時点では親指の疼きも無く、知る由も無かった。

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