これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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第一部 少年編
千手扉間改め「うちはトビラ」


二代目火影として名高い千手扉間は金閣・銀閣のクーデターにて負った傷が原因でその生涯に幕を下ろした。

そんな彼が二度目の生を受けることになるなんて、本人はもちろん、誰も想像ができなかった事態だろう。

 

「しっかりしろ! 俺の弟だろ! こんな病気に負けるな!」

 

――うるさいな、兄者。病人を揺さぶるな。耳元で怒鳴るな。

 

 扉間はその身体のダルさから目を開けることも言葉を発することも出来ていなかった。

 兄の柱間にしては高い声が頭痛をさらにひどくさせていた。

 

「ばあちゃん! どうして医者が来ないんだよっ?!」

「目を覚まさないことには薬を飲ませることも出来ないんだよ。それじゃあお医者様も手の施し様が無い……」

「なんだよそれ! おい、起きろ! こんなに早く死んじゃだめだ!」

 

――だから病人を揺さぶるなと言っているだろうが、兄者。目を開けるのも辛いぐらいなのだから。起きるのは少し身体を休めてからでもいいだろう……

 

「起きろ! 俺を置いてくなんて許さねーぞ!!」

「黙れ! 病人は大人しく寝かせろ!」

 

 あまりの喧しさに扉間は無理やり起き、怒鳴った。

 兄を一喝するのは慣れたものだ。

が、静かになったのは一瞬だけで、さっきよりも騒がしくなってしまった。

 

「ばあちゃん! トビラが起きた! 薬! 薬!」

「な、なんと……今夜が峠と言っていたのに……ああ、良かった……! さあ、トビラ。これをお飲みなさい」

 

――誰だ、こやつら?!

 

 目を開けた扉間の視界に入ったのは見知らぬ黒髪の少年と白髪の老婆。

 

「早く飲め! 苦いからなんて我儘、許さねーぞ!」

 

 生前の扉間であれば、見知らぬ人間が差し出す薬なんて飲まなかっただろう。

 だが、彼の心が拒否をする前に、その身体は少年が差し出す水差しと薬を受け入れた。

 

「トビラ、もう大丈夫だからな。兄ちゃんがそばにいるからな」

 

 少年は薬を飲む扉間の身体を抱きかかえながら言った。

 年のころは3歳ぐらいだろうか。

 

「お医者様を呼んでくるからトビラを頼むよ、オビト」

「おう! 任せてくれよ、ばあちゃん!」

 

 少年は……オビトは老母が部屋を出てからもずっと扉間を抱きかかえたままだった。

 その状態で、やれもっと水を飲むかだの、食べたいものは無いかだの、衣を変えようか、身体を拭こうか、と幼いながらも甲斐甲斐しく世話を焼こうとした。

 扉間は途切れそうになる意識でうつらうつらと返事をし、老婆が医者を伴って部屋に戻って来たのを見届けた。

 

「トビラ、こんな病気すぐに良くなるぜ。なんて言ったってお前は俺の弟だからな!」

 

ポロポロと涙をこぼしながらも気丈に見せたオビトの笑顔と言葉は兄、柱間を思い出せるものだった。

 

――扉間、こんな怪我すぐに良くなるぞ! なんと言ったってお主は俺の弟だからの!

 

 扉間は再び遠くなる意識の中、思い出した。

 かつての兄、柱間はとっくに死んでしまったことを。

 そして、彼の新たな兄はうちはオビトであることを。

 




柱間(オート治癒能力持ち)の言う
「俺の弟だからすぐ良くなるぞ」の説得力
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