アカデミーの授業終わり、オビトが悪戯っぽい笑みを浮かべながらトビラに言った。
「なあなあ、トビラ。俺、今朝会った爺ちゃんからすっげー情報手に入れちまったんだよ」
「今朝? ああ、遅刻スレスレになった原因か」
「おい、そういう言い方すんなっての。あのな、でっかい魚が釣れる川があるんだってよ! トビラ、川魚好きだろ? 明日は休みだしそこ行こうぜ!」
「誰かの私有地ではないだろうな。また叱られるのは勘弁だ」
「それは大丈夫! つーか、前に怒られたところだってあれ、私有地というよりもおっさんが難癖つけてきただけだっての! どうだ? 行くだろ?」
「まあな。夕飯のおかずを釣って来ればおばあ様も喜ぶだろう。次の日の朝食の分も考えて多めに釣りたいところだ」
「へへっトビラは川魚好きだもんなぁ。よし、決まりだ!」
立ち上がったオビトはちょうど後ろにいるカカシとぶつかりそうになった。
「あ、悪いな……ってなんだカカシか」
「なんだとは何よ」
「うっせーな! というか後ろに立ってる方が悪いだろ!」
「はあ? なにその言いがかり」
いつものように言い合いを始めた二人にため息を吐き、トビラは言った。
「そういえばカカシとは釣りをする約束をしていて結局行ったことが無かったな。明日、川で釣りをするが一緒に行くか?」
「釣り? まあ、別にいいけど」
「おい! なんだよカカシ! せっかくトビラが誘ってんだからもっと乗り気になれよ! 嫌なら来なくてもいいんだぜ」
「嫌とは言ってないでしょ。というか勝手に決めつけないで」
「んだと~?」
また絡みそうなオビトを押しのけトビラは尋ねた。
「釣り竿は持っているか? 無いなら作るが」
「父さんと釣りに行くこともあるから持ってるよ」
「なら問題ないな。ちょうど良い機会だ。いいだろ、兄さん?」
「まあ、いいけどよ。あ、釣りの前に組手もすっからさ。昼飯はちゃんと持って来いよ!」
オビトもなんだかんだと言いつつ、カカシが嫌いなわけではないためあっさり決まった。
次の日のこと。
「遅い! なんで休みの日まで遅刻するわけ? しかも今日はトビラまで!」
「仕方ねーだろ! 大きな荷物でよたよた歩いている婆ちゃんがいたんだから」
「そういうことだ。悪かったな、カカシ」
「まあ、トビラも遅れているってことは本当なんだろうからいいけど」
「おい! トビラなら信じるってことは俺のことは信じてねーのかよ?!」
「そりゃーね。ほら、今日は先に組手もやるんでしょ。そこにちょうどいい空き地があったから行くよ」
その後、三人はカカシが見つけた空き地でしばらく組手をし、休憩を挟んで釣りを始めた。
「カカシ、その釣り竿を少し見せてくれ」
「いいよ」
「ほぉ……職人が作ったものか……丈夫で使いやすそうで……ぬ! なんだこれは!」
「リールで巻く方式なんだけど見たことないの?」
すでにリールに夢中になっているトビラの代わりに応えたのはオビトだった。
「俺らは木と糸で自作したもんだからなぁ」
「よくそれで釣りができるね」
「俺もトビラも釣り名人なんだぜ!」
カカシとオビトが話している間、トビラは存分にリール式釣り竿を見分した。
「この釣り糸はワイヤーで出来ているのか。なるほど、張りのある素材で作ることで飛距
離を伸ばしている……なぜ先についているのが釣り針ではない?」
「これはルアー。小魚に見せかけたもので、魚っぽく動かすことで引っかけるの」
「ははぁ……虫を引っかけずとも済むのか」
トビラの釣り知識は里が創設される前のもので止まっていたため、カカシが持つ最新式の釣り竿に興味津々だった。
「トビラって釣りが好きなの? こんなに生き生きしている姿、初めて見た」
「そうか? こいつ、意外と新しい物好きのミーハーだぜ。ガキのころなんて、目覚まし時計にレンジ、洗濯機なんかを大喜びしてずーっと観察していたし」
「へえ。機械好きなんだ。子供っぽいところもあるんだね。そんなに興味あるならそっち使ってもいいよ。俺はトビラのものを使うから」
「いいのか?」
ソワソワするトビラにカカシは使い方を教えてやり、釣りが始まった。
「トビラ、どうだ? カカシの釣り竿は」
「ああ。これは中々にいい。このリールの構造が興味深いな。仕掛け罠に応用できるかもしれん」
「仕掛け罠ぁ? あ! もしかして敵を釣り上げるのか? それいいじゃねーか!」
「人間は魚ほど軽くないよ。巻き上げるのが難しくない?」
「人力じゃない方法で巻き上げるようにできればもしくは……」
弟が楽しそうで嬉しいオビトは勿論、カカシも罠には興味があるので話は弾んだ。
話しているうちに罠から話題は逸れていき、時間が経つにつれてぽつりぽつりとなんてことない会話をするようになった。
「なあなあ、カカシの名前って父ちゃんが決めたのか?」
「なに急に。まあ、そうだよ。父さんが決めて母さんも賛成したらしい」
「へえ。俺らはどうなんだろうな、トビラ」
「写真を見る限り、俺らが生まれた時は父さんもいたようだから両親で決めたんだろう」
「つーかさ、俺らの名前……オビトとトビラって面白いよな。トビラの名前がトビオだったら上から読んでも下から読んでも同じで」
「それなら兄さんの名前がラビトでもいいだろ」
「ラビトはウサギみてーで弱そうだから無し!」
「ならピッタリじゃん、ラビト」
「んだと、バカカシィ!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ兄たちを尻目にトビラはふと思った。
――帯戸と扉、か。
トビラの釣り竿が微小に揺れ、見事に魚が釣れた。
その後、カカシとオビトもそれぞれ少なくとも一匹は釣れたので食べることにした。
「さっきお昼食べたのに」
「新鮮な魚を食うのが川釣りの醍醐味だ」
「カカシ、釣りたての魚はホントにうめーよ」
石と落ち葉を集めて作った簡易かまどで焼いた魚に三人でかぶりついた。
「うむ! やはり美味い」
「うめーな! カカシ、どーよ、どーよ?」
「まあ、悪くないね」
口ではそう言いつつも、ガツガツと食べるカカシにトビラは微笑ましく思った。
オビトも、
「素直じゃねー奴」
なんて言いながらも笑顔だった。
「トビラ、ほら。これも食べごろだ。たくさん食えよ」
「ありがとう、兄さん」
「……トビラって魚好きでしょ」
「正しくは新鮮な川魚だ。釣りたては格別だな。塩をかけずとも美味い」
トビラは一人だけ二本目をかじりながらカカシへキリっと答えた。
「ふーん。俺は秋刀魚の塩焼きの方が好きだけどね」
「秋しか食えねーじゃん」
「だからいいんでしょ。旬のものは美味しいんだから」
オビトとカカシはいつもの言い合いをしているものの、食べている最中だからか、それともトビラが好物を食べる邪魔をしたら怖いからか控えめだった。
家に帰ってから、さっそくカカシの釣り具で着想を得た罠を作ろうと思ったトビラは唸った。
「ん? どうした、トビラ。いつも以上に難しい顔して」
「いつも難しい顔をしているみたいな言い方だな。道具の点検をしていたのだが、そろそろ手裏剣とクナイも調達した方が良さそうだ」
「ああ。父ちゃんたちが遺してくれた手裏剣たち、そろそろ無くなるのか。練習で結構ダメになっちまったもんなぁ」
「兄さん、どこか安くて質の良い忍具屋は知らないか?」
「うーん。さすがに俺も爺ちゃんたちからそういう話は聞かねーよ」
「なら、明日カカシにでも普段使う忍具屋を聞いてみるか」
「忍具屋ならワイヤーも売ってるといいな。トビラのことだから、昼に言ってた罠、作りてーんだろ?」
「よく分かったな」
「そりゃーお前の兄ちゃんだからな! なあ、俺思ったんだけどさ。罠の先端にすっげーデカい釣り針つけるの、どう?」
「それじゃあ、釣り竿を大きくしただけではないか。ならいっそ熊手にでもした方がいい」
6歳の双子の夜は罠談義でふけていくのだった。
次の日。
授業の合間にオビトはカカシに話しかけた。
「なあ、カカシ。お前、いっつもどこの忍具屋で手裏剣とか買ってんの?」
「忍具屋? 父さんが連れて行ってくれる店で……西地区の方にあるけど、買いに行くの?」
「俺らが持ってるやつ、けっこう壊れちまったからさ。西地区ならあそこの爺ちゃんの家の近くかな」
「どこのお爺さんだよ。…………ちょっと入り組んだ場所にあるし俺が案内してやってもいいけど」
話を聞いていたトビラも加わった。
「それはありがたいな。カカシ、今日の放課後はどうだ?」
「いーよ。俺もちょうど新しい手裏剣、見たいと思ってたし」
カカシはそっけなく顔をそらしたが、まんざらでもない顔をしているのがトビラには分かった。
放課後、3人はカカシを先頭に忍具屋へ入った。
「おおーっ! カッケー! なんだよこの手裏剣! めちゃくちゃデケーぞ!」
「風魔手裏剣か。あれは折り畳みも可能だから使えると便利だぞ」
「俺、あれ欲しいなぁ!」
「普通の手裏剣を扱えるようにするのが先でしょ。お前、授業でもてんでダメじゃん」
「んだと、カカシ! 俺だってすぐにあんぐらいできるようになるんだよ!」
「はいはい。ほら、手裏剣とクナイ、そっちにあるよ」
トビラはキャンキャン騒ぐ兄はカカシに任せ、手裏剣たちの選定に入った。
――両親の遺品でも思っていたが、やはり俺のころよりも質が安定しているな。里システムが普及したことで供給ラインも安定したのか、それとも戦時中だからこその品質向上なのか……
「なんだぁ、騒がしいと思ったら。お前ら、アカデミーのガキどもか?」
「そうだぜ、おっさん! 俺はうちはオビト! いつか火影になる男だ! よろしくな! こいつは俺の弟のトビラ!」
「んん~?珍しいな、うちはの者がこんなところに来るなんて。そっちの白いのは見たことあるぜ。サクモさんところのガキだろ」
「そうです。カカシです」
「ああ、そんな名前だったな。この前よりもちいっとだけデカくなったじゃねーか。友達連れて買い物か? お前、友達いねーと思ってたよ! いて良かったな!」
店の奥から現れたゴツいムキムキマッチョな店主は、ガハハ! と笑いながらカカシの頭を撫でた。
撫でたというよりは上から押し付けるようで、カカシの身長が1cmくらい縮みそうな勢いだった。
トビラは彼の言葉で気になるところがあった。
「店主、うちはの者がここに来るのは珍しいとは?」
「んん~? そりゃ、そのまんまの意味だ。あそこは一族専用の入手ルートがあっからな。お前さんら、父ちゃんに言わずに来ちまったのか?」
「俺ら、父ちゃんも母ちゃんもいねーよ。トビラ、ばあちゃんから聞いたことあったか?」
「いや、ない。だが……一族で贔屓にしている店があるならそちらで買った方がいい。いらない諍いを生むのはよくない」
「じゃあ、帰ってから聞いてみっか」
「おう! そうしな、坊主ども。おっちゃんとしても、勝手に買われてあとでそっちの族長様にでも文句言われたらたまったもんじゃねーからな」
ガハハ! とまた一笑いし、店主は奥に引っ込んだ。
つまらなそうにクナイを物色していたカカシがトビラたちを見た。
「じゃあ、今日は買わないの?」
「せっかく案内してくれて悪いが、そういうことだ」
「ごめんな、カカシ。俺ら、まさかうちは一族専用の店があるなんて知らなかったからよ」
普段はいがみ合うオビトもさすがに悪いと思ったのか素直に謝った。
「別にいいよ。二人が悪いわけじゃないし」
「なあ、トビラ。思ったんだけど、ワイヤーぐらいは買ってよくねーか? お前、さっさと罠の試作してーだろ?」
「確かにそうだな。外で見せる気もないし……兄さんの言う通り、ワイヤーだけ買おう」
「罠? もしかして昨日言っていたやつ?」
カカシが尋ねるとトビラが頷いた。
「ああ。お前が見せてくれた釣り竿から着想を得た仕掛け罠に使いたくてな。これなら良さそうだ」
「んじゃ、さっきのおっちゃん呼ぶか。おっちゃーん! ワイヤー買いてーんだけどぉー!」
奥に引っ込んだとは言え、そばに控えていたらしく店主はすぐに出て来た。
「ああ? お前さんら、よそで買うんじゃなかったのか?」
「ワイヤーぐらいはどこで買ったっていいだろってことでコレ! 欲しいんだけど!」
「それもそうか。欲しい分だけの長さで切ってやっからな。値段はそこに書いてある通りだ」
トビラが財布を開くのと同時に、オビトとカカシも出した。
「兄さん、カカシ。これは俺が使うからいいよ」
「何言ってんだよ。俺は兄ちゃんだから半分出してやるって……つーかカカシ、なんでお前まで」
「その罠、興味ある。一緒に作った方がいいもん作れそうでしょ」
店主は3人を見比べ、ニカっと笑った。
「なんだ、坊主ども。仲いいじゃねーか。んじゃあ、ちょっとおまけしてやるよ。1mくらい長めにな」
「ええ~おっちゃん! もう一声!」
「なんだよ、ゴーグルの坊主は調子がいいなぁ。んじゃ、2m!」
「いよ! 男前!」
「よし来た、3m!」
「さすがおっちゃん!」
「これで最後だ5m!」
ノリの良さでかなりのおまけをゲットした兄にトビラは感心した。
――よくもまあ、初対面の人間とこうも意気投合するものだな。この調子で里の老人とも仲良くなっているのだから大したものだ。
かくして、予想よりも長いワイヤーを手に入れた3人は店を出た。
3人はそのままカカシの家に行き、トビラ主導の下で罠づくりを始めた。
「大方の設計図は出来上がっている。ここを巻いてあとは……」
トビラは説明しながら手を動かした。
「この部分、もっとワイヤーの長さがあった方が良くない?」
「なるほど……それでやってみるか」
トビラは勿論、若き天才カカシも加わって罠らしきものが出来ていく。
だが、一人会話に入れないオビトはしびれを切らした。
「だーっ! もう! 俺、外で修行してくっから!」
「兄さん、忍術を使うなら火遁以外にしておけ」
「分かってる!」
ピューンとオビトが出て行った方向をカカシは呆れて見た。
「あいつ、留まることを知らないのかな」
「兄さんは身体を動かす方が好きなんだろう。貴様も修行したければそっちでもいいぞ」
「ん~、もう少し罠の方を見るよ。気になるし。オビトは放っておいても大丈夫でしょ」
外から、「ぐぁー!」「分身の術!」「なんでできねーんだよー!」など、オビトの奮闘の声が聞こえたのでトビラも安心して作業できた。
二人で和気あいあいと作業し、納得のいくものが出来たころ。
「あっサクモのおっちゃんだ!」
「オビト君、久しぶり。でもなんで一人で外に?」
「カカシとトビラは中で罠づくりしてるよ。俺はよく分かんねーから修行してんの! あ、そうだ! おっちゃん、修行つけてくれねーか?」
「勿論、俺で良ければ」
「へへっやりぃ!」
会話が聞こえたカカシがムッと口を尖らせた。
「気になるなら外に出ればいいじゃないか、カカシ」
「気になるなんて言ってない」
と言いつつも、外が見えないのに壁を見続けるカカシ。
仕方ない、とトビラは作業を終わらせ外に出ることにした。
広い庭ではオビトとサクモが組手をしていた。
「このっ!」
どうにかして一発食らわせようと頑張るオビトだが、サクモは軽くいなすばかり。
カカシはと言うと、仁王立ちで腕を組み、厳しい目でオビトを見ていた。
「うわっ!」
頃合いを見計らったサクモに投げ飛ばされ、二人の組手は終わった。
「ちっくしょー! やっぱサクモさん、つえーな!」
「オビト君、その年だと動ける方だけど動きが素直すぎるね。自分よりも体が大きい相手と対するときは正面からでは力負けするから、できるだけ死角を突くようにすると攻撃も当てやすいよ」
「父さんの死角を突くなんてそいつにできるわけないでしょ」
やけに冷たい声でカカシが言ったからか、オビトも反応した。
「てめーにもできねーだろ! カカシ!」
「少なくともオビトよりはいいところまで行くよ」
「ちょっと、二人とも……喧嘩は良くないよ」
途端にオロオロしだすサクモにトビラは話しかけた。
「あいつらはいつものことだ。放っておけ。サクモ、兄さんの相手をしてくれてありがとう」
「やあ、トビラ君。罠作りは上手くいったのかな?」
「カカシのおかげでな。色々とアイデアを出してくれて捗った」
「なら、カカシもきっと楽しかっただろうね」
戦い始めたオビトとカカシを眺めながら会話していたトビラとサクモだったが、事態は一変した。
「このぉ~っ!」
「っ……! 兄さん! やめろ!」
押され気味だったオビトが印を組みだした時、トビラも対抗して印を組んだ。
が、
「うげっ……」
「悪いね、オビト君。さすがに家を燃やされると困るから止めさせてもらったよ」
印を組み終わる前にサクモが手刀を食らわせ、オビトの意識を一瞬奪った。
そのまま倒れそうだったオビトだったが、サクモがその前に抱え、すぐに目を覚ました。
――すさまじい速さだな、サクモめ。やるではないか。
トビラは途中まで組んでいた印を止め、オビトの下へ駆け寄った。
「んっ……あれ?」
「何をしている! ここで火遁はやめろと言っただろうが!」
「だってカカシに勝つために……」
「黙れ!」
「うっ……」
久しぶりに見たトビラの本気モードの一喝にオビトが黙った。
「ま、まあまあ、トビラ君。燃えずに済んだからそのくらいで」
「ダメだよ、父さん。コイツを甘やかすのは良くない。そもそも火遁を出しても俺に勝てるわけないのに」
「んだとカカシ!」
「カカシも煽るのはやめなさい。二人ともいい動きだったよ。オビト君、少し強く打ってしまったけど身体は平気かな?」
「お、おう。……おっちゃん、俺、家燃やす気は無かったんだよ」
「大丈夫、分かっているから。まあ、俺が止めなくてもトビラ君が止めてくれただろうからね」
トビラはギクッとした。
――やはり気づいていたか。
オビトは不思議そうにトビラを見たが、すぐサクモに視線を戻した。
「でも、ごめんな。止めてくれてありがと、おっちゃん」
「ホントに勘弁してよね。俺と父さんの家を燃やすなんてありえないよ」
「あーもー、悪かったって言ってんだろ!」
「それが謝る態度なの?」
またいがみ合う二人にサクモは慌てた。
「も、もしやうちの子たち……仲良くない……?」
「子どもはああいうものだ、サクモ。いちいち気にしていると身が持たないぞ」
「うっ……そ、そうか……ははは」
――トビラ君も子供なんだけどなぁ……。
サクモの心の声はトビラには聞こえなかった。
「兄さん、暗くなってきた。そろそろ帰ろう」
「なんだとバカカ……ん? もうそんな時間か」
「もう帰るの? まだよくない?」
オビトといがみ合っていた割には渋るカカシにトビラはふっと笑った。
「おばあ様が心配するからな。カカシ、それらしい罠は出来上がったがまだ試運転が出来ていない。明日、また仕上げに来ていいか?」
「! ま、いいよ。作った罠はそのまま置いておくから……オビトは? 明日も来るの?」
「そりゃあ、トビラが来るなら兄ちゃんとして一緒に来てやらねーとな!」
「そういうことだ。サクモ、しばらく貴様の家に世話になる」
「勿論、いいよ。危険なことはしないように気を付けてね」
「おっちゃん、任せろよ! トビラはやべー開発することもあるし、俺がちゃんと見張ってっからさ!」
ドンと胸を張るオビトだが、トビラはやや不服だった。
――子供らしい開発に留めているのに……
「んじゃー、またな! カカシ! 今日は忍具屋付き合ってくれてありがとな!」
「はいはい。じゃあ、また明日ね」
オビトもトビラもはたけ親子に手を振り、早く家に帰ろうと駆けだした。
なお、家でカカシに罠を見せてもらったサクモはヒヤリとしたが、息子がとても嬉しそうにしているので、
「あまり危険なのはダメだからね」
と意味のない忠告をもう一度したのだった。