これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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担当上忍、大蛇丸!

 火影室に数名の大人と二人の子供がいた。

 

「お主たちが飛び級で卒業試験を受けるはたけカカシとうちはトビラじゃな。特例であるため、火影であるワシも試験に同席する」

 

 トビラが弟子の顔を見るのは転生して以来だ。

 

――老けたな、サル。

 

 一方は年を取り、一方は転生し子供の姿。

 奇妙な再会に浸る暇もなく、促されたトビラは卒業試験用の術を見せた。

 そしてカカシも続き、二人はあっさりと合格した。

 

「本来であれば、アカデミーを卒業した者たちは担当上忍を含むフォーマンセルを組む。じゃが、見ての通りお主たちは変則的な卒業者である。そのため、担当上忍を含むスリーマンセルとする。担当上忍であるが……入れ」

「あら、やっぱり合格したのね。才能に溢れた子を担当できるなんて嬉しいわ、猿飛センセ」

 

 するりと火影室に入ったのは蛇をほうふつとさせる男だった。

 

「この者たちは特例の卒業者、そして才能があることは間違いないがまだ子供。お前がきちんと導くのだぞ、大蛇丸よ」

「ふふ……勿論です」

 

 大蛇丸という名の通り、微笑むその目つきはやはり蛇を思わせた。

 

「それじゃあ二人とも、来てちょうだい」

 

 連れて行かれた先は演習場だった。

 

「今からちょっとした演習をするわ」

 

 そう言って二人に見せたのは1つの鈴。

 

「この鈴を私から奪えたら合格よ。どんな手段でも構わないわ。できればとっておきの術でも見せてくれると嬉しいけど」

「こういう時、隊を組むなら自己紹介の一つでもするところではありませんか?」

 

 呆れたようにカカシが尋ねた。

 だが、大蛇丸は不気味に笑うだけ。

 

「ふふふ……あなたたちと隊を組むかはまだ決まっていないの。鈴を奪えたら合格って言ったでしょ。一つしか無いんだから、取れなかった方はどうなるか……ねえ? 合格したら私のことも教えてあげる」

「なるほど。時間制限は?」

「そうね。私もあなたたちも暇じゃないわ。1時間にしましょうか。せいぜい私を楽しませてちょうだい」

 

――癖のある若造だ。ひとまず目くらましをして離れた後、カカシと連携を取るか。

 

 トビラが目配せをすると、察しの良いカカシは頷いた。

 

「じゃあ……始めましょう」

 

 合図と同時にカカシが煙玉を投げ、二人は大蛇丸から離れた木陰に身を隠した。

 

「カカシ、鈴は一つしかないがどうする? 俺と奪い合うか?」

「何言ってんの。俺らの任務は鈴を奪うことなのに仲間内で争っても仕方ないでしょ。というかトビラもそれは分かっているからこうして連携取る気なんでしょ」

「ふっどうだろうな。あの若造の見えないところでお前を先に始末するかもしれないぞ」

「あのねぇ、そういう冗談はいいから。もしもオビトとツーマンセルならアイツを囮にするけど、トビラは囮にするには勿体ない。俺が行くからお前はその隙をついて取ってよ」

「いや、囮は俺が行く。俺には目を引きやすい術があるからな」

 

――申し分ない分析力だが、若い芽を囮にする方が勿体ない。

 

 カカシは反対しようとしたが、すでにトビラがやる気モードに入っているのを察して諦めた。

 煙玉に乗じたトビラたちに逃げられた大蛇丸は焦らず待っていた。

 

「ふふふ……あの二人の実力ならカカシが囮で気を引いて、その隙をついてトビラ君が来るかしらね。でもトビラ君の方はひねくれてそうだからどうかしらね……」

 

 木陰から手裏剣が大蛇丸めがけて飛んできた。

 そちらに目を向けることもなく避けると、片方が姿を現した。

 

「土遁・土波の術!」

 

 カカシが地に手をつけると、大蛇丸の足元が少しだけ揺れた。

 

「あら、思っていたよりは素直なのね。でもこの程度の術じゃ囮も務まらないわよ」

 

 大蛇丸がカカシに迫ろうとするのを阻むように手裏剣が飛んできた。

 それも避けると、さらなる追撃が。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

 木陰から現れたトビラから出た炎が大蛇丸を包む。

 

「その年でこの術……しかもこの威力! いいわよ! 素晴らしいわ!」

 

 変わり身で炎から逃れた大蛇丸。

だが、そこにまで手裏剣が飛んできた。

 

「逃げる方向を予測していたのかしら? やるじゃない」

 

 と言いつつも余裕綽々な彼に思いもよらぬ方向から手裏剣が飛んできた。

 

「地面から……これは? 初めに投げた手裏剣! ワイヤーを仕込んでいたのね」

 

 二方向から迫る手裏剣に加え、

 

「火遁・鳳仙火の術!」

 

 トビラがさらに別方向から火球を飛ばしたので大蛇丸の退避方向は自然と一方に決まった。

 すかさずカカシが迫って鈴を奪おうとしたが、大蛇丸は軽い蹴りでいなした。

 カカシに意識が行った瞬間を狙い、トビラがクナイを振り下ろした。

 

「やっぱりあなたがメインね。良い囮の使い方よ。でもこういう時は死角から攻撃しないとねぇ」

 

 大蛇丸もクナイで受け止め、甘い声音で言った。

 が、トビラも笑みを深めた。

 

「ふん。どうだろうな」

 

――蛍火(ほたるび)!

 

 クナイを交え、近接していたトビラの口からノーモーションで火球が出た。

 吹けば消えるほどの小さな火だが、突如眼前に迫ったため大蛇丸はギョッとしてのけぞった。

 

「俺が囮だ」

 

 チリン、と音が鳴った。

 カカシの手に鈴があるのを見て、トビラは満足げに頷いた。

 

「よくやった、カカシ。任務達成だ」

「アンタのサポートあっての達成だけどね」

「構わん。任務とはそういうものだ」

 

 任務達成した割には大した喜びも見せない子供二人に大蛇丸はいつものように笑った。

 

「死角外からの分かりやすい攻撃も計算のうちってことね。期待以上のいやらしい作戦ね」

「鈴を手にしたのはカカシだ。俺はアカデミー戻りか?」

「あれだけの術を見せられちゃあね。二人とも合格よ」

 

 大蛇丸は心の内で思った。

 

――本当はカカシだけ落としてトビラ君を子飼いにしようと思ったのに、それを見越してあの子に鈴を取らせたわね。まあ、いいわ。

 

 カカシに返された鈴を受け取った大蛇丸は口を開いた。

 

「トビラ君。最後の技……あれは何?」

「なんのことだ? 豪火球を出そうとして失敗しただけだが」

「ふふふ……手の内を見せる気は無いってことね。それとカカシ。私の油断を誘うために弱い振りをするなら、もっとそれらしくなさい。初めに見せた術、印を組む速さを見れば成熟度も分かるから、あれじゃわざと手を抜いたってバレバレよ」

「その割には俺に鈴を取られたじゃないですか」

「二人の忍術、体術、手裏剣術の腕はあらかた見れたからね。無駄に時間を使うのは趣味じゃないの」

 

 大蛇丸が蛇のように笑うので、生意気に腕を組んでいたカカシはうっと怯んだ。

 

「隊員になったことだし自己紹介と行きたいけれど……今更何か言うことってあるかしら。アカデミーで私の名前ぐらいは聞いたことあるでしょう?」

「確か伝説の三忍の一人で、三代目に師事していたと聞きましたが」

「ええ、その通りよ。まあ、そのうちの一人が里にいないから、三忍で動くことはそうないでしょうけどね。また戦争になったら話は別だけど」

 

 「戦争」の言葉に眉を顰めるカカシとトビラを見て益々笑みを深める大蛇丸。

 

「ふふふ……あなたたちも大変ね。子供のうちから戦争の駒になるんだから」

「また戦争が始まるのか?」

「さあ、どうかしらね。今だって小国は争ったままだから戦争は終わっちゃいないとも言えるわ。あら、ごめんなさい。今から怖がらせても仕方ないわね。それじゃああなたたちにも自己紹介してもらおうかしら」

 

 マイペースに自己紹介を打ち切った大蛇丸にカカシは呆れ顔をした。

 

「自己紹介って、好きなものとか嫌いなもの、趣味とか……あとは将来の夢とか言うもんでしょ、フツー」

「あら、意外と可愛いことを聞きたかったのね、カカシ。でもねぇ、好き嫌いを教える気なんて無いし、趣味も色々あるからねぇ……将来の夢なんて無いわ」

 

――サルは何を思って俺らをこいつに預けたんだ。

 

 カカシだけでなくトビラも呆れ顔になった。

 

「結局名前しか分からないし」

「聞くだけ無駄だってことだ」

「ふふふ……さ、あなたたちのことも教えてちょうだい」

「……はたけカカシ。好き嫌いは……そちらが教える気がないなら俺も言う気はない。ただ……ま、将来の夢って程じゃないけど父さんのように強い忍にはなりたいかな」

「サクモさんでしょ。世間じゃ三忍の名も霞むって言われているみたいじゃない」

「確かに貴様よりはサクモの方が強いだろうな」

「あら、言ってくれるじゃないの、トビラ君。でもねぇ、あの人はただ強いだけ。天才忍者なんて言われているけれど、忍の才能が高いとは思わないわ。忍とは別次元の人よ」

「はあ? そんなこと言って、父さんのこと僻んでいるの?」

「ふふ……僻む? 私の話を聞いてそこにいくの? ズレてるわね、あなた」

「貴様の思う忍の才能とはなんだ?」

 

 トビラはカカシを封殺するためにも尋ねた。

 

「良い質問ね。忍の才能とは世にあるすべての術を用い、極めることが出来るか否か……そこにあるのよ。忍者とはその名の通り、忍術を扱う者を指す」

 

 堂々と答える大蛇丸の言葉にトビラはあることに思い至った。

 

――サルには俺と兄者がかなりの術を叩きこんだ。なるほど、サルを師匠としているからその結論に至ったということか。

 

 カカシは担当上忍の言葉にも同意できるためか、黙り込んだ。

 

「私が言いたいことを理解してもらえたかしら。サクモさんは忍術よりもチャクラ刀を用いた戦術を極める人。彼の剣技の腕は認めるけど、それで天才忍者を名乗られちゃあねぇ」

「己に合った戦い方を極めているだけだ。結果も出している」

 

 トビラがすかさず言うと、大蛇丸はにやりと笑った。

 

「だから言ったでしょ。忍とは別次元って。ふふふ……カカシだけじゃなくてトビラ君もサクモさんに懐いているの? あの人は相変わらずね……」

「貴様もサクモのことをそれなりに知っているようじゃないか」

「ええ。彼を入れたフォーマンセルで何度か任務をしたことがあったもの」

「父さんが伝説の三忍と? 聞いたことない」

「ふふ……随分と前のことだからねぇ。まあ、父親に理想を抱くのは結構だけど、抱きすぎるのもよしときなさい」

「俺が父さんをどう思うとアンタに関係ないと思うけど」

 

 カカシが若干いらだちを交えながら言うと、大蛇丸はますます楽しそうに言った。

 

「あら、ごめんなさい。だって息子のあなたもサクモさんが次期火影になるなんて思いこんでいたら可哀想かと思って。だってあの人は忍を束ねる火影になれる器じゃないもの」

「父さんは火影になりたいなんて言ったことないけど、あなたがなるよりはマシなんじゃない?」

「本人がどう思っているかなんて関係ないわ。あれだけ有名になっちゃうと周りは勝手に色々思うものよ。ふふ……あの人も大変ねぇ。大戦の英雄なんて肩書、勝手につけられちゃって」

 

 大蛇丸の考えは理解できたものの、カカシはなおも不満そうだ。

 問答に飽きたのか、大蛇丸はトビラを向いた。

 

「さあ、トビラ君も自己紹介してちょうだい」

「はぁ……うちはトビラだ。俺もカカシに倣って将来の夢だけ言っておこう。火影になる兄を支え、里を守ることだ」

 

 大蛇丸の目がピクリ、と動いた。

 

「兄ってうちはオビト君のことかしら。でもあの子、まだアカデミー生じゃない。あなたまさか、自分より劣る兄を支える気?」

「兄が俺に劣るかはまだ決まっていない。子供の成長と言うのは時として大人の範疇を超えるものだ」

「そりゃあ、あの子もうちはだもの。生まれつき写輪眼っていう忍の才はあるでしょうね。でもあの子はそれをもってしても凡庸そのものよ」

「写輪眼を持ってないアンタがよく言えるね、それ」

 

 カカシがやや険のある言い方で指摘すると、大蛇丸は蛇のような目つきで彼を見た。

 

「ふふふ……だからこそ、そこのトビラ君には興味があるのよ。すでに才に溢れ、いずれ写輪眼を開眼することを約束された子……」

「言っておくが俺では写輪眼は開眼しないだろう。己にない物に興味を持つことは結構だが、子供を実験体のように眺めるのはやめろ。あからさますぎる」

「あら、ごめんなさい。気を悪くしちゃったかしら」

 

 大して悪いと思っていないような口ぶりだ。

 トビラはしかめ面のまま警戒を引き上げた。

 

――いくら弟子とは言え、サルもこやつの危険性は分かっているはずだ。なのに、担当上忍にしたということは他からの圧力があったのかもしれん。俺はともかくカカシは不合格にさせてやった方が良かったか。だが、それはそれでカカシだけ暗部に引き込まれる可能性もあった。アカデミーを卒業した以上、俺の目の届くところにひとまず置いた方がいい。今の暗部はきな臭いところがある。大蛇丸、才能は確かな奴なのに思想が危険だ。

 

「でも、あなたたちの担当上忍になった以上、役目は果たすつもりよ。猿飛先生にも念を押されちゃったし。明日は朝8時にここへ集合よ。それじゃあ……」

 

 解散しようとした大蛇丸だが、駆け足と大声が中断した。

 

「あ! いたいた! おーい、トビラー! カカシー!」

「噂をすれば影、ね。あなたのお兄さんでしょう」

「ああ。兄さん、何の用だ」

 

 はあはあ、と息を整えるオビトに端的に尋ねた。

 

「用というかさ! 俺もリンもトビラたちが合格したか知りたくて待ってたのにお前ら全然来ねーからよ! 知らせに来ないならこっちから探してやったんだよ!」

「あら、よくここが分かったわね」

「うちはの子供と銀髪の子供の組み合わせで聞いたらすぐ分かったぜ! 俺は里中の爺ちゃん婆ちゃんたちと仲が良いからな! ん? というか、アンタ誰だ?」

「大蛇丸、俺ら2人の担当上忍だよ」

 

 カカシが答えるとオビトは目をぱちくりさせて驚いた。

 

「ええっ?! もう担当上忍まで知らされてんのか? 大蛇丸さんって聞いたことあるぜ。伝説の三忍のうちの一人の……ん? 伝説の三忍って女二人いたか?」

「私は男よ。まあ、性別なんてどっちだっていいけど」

「そっか! 俺はうちはオビト! そこのトビラの兄ちゃんでカカシとはまあ、ダチみたいなもんで、いつか火影になる男だ!」

「夢見がちな子供ね。やっぱり私から見たら凡庸……トビラ君の言うほどではないわ」

 

 興味が無さそうな大蛇丸の様子にムッとしたものの、弟の名前が出て笑顔になった。

 

「なんだよ、トビラ! お前、もう俺のこと話してたのか? というか、下忍って担当上忍と下忍三人のフォーマンセルなんじゃねーの? あと一人は?」

「俺らは変則的な卒業だからスリーマンセルだ」

「へえ! ならさ! 俺がとっとと卒業して三人目になるぜ! だから待っててくれよな! 大蛇丸さん!」

「一体いつになるかしらね。二人が中忍になって班を解散する方が早そうだわ」

「んだとコラ! 俺は火影になって弟も里も守る男だ! だからな! それまでの間、俺の弟と……まあついでにカカシは頼むぞ! 傷一つでもつけてみろ! 俺が許さねーからな!」

「なんだよついでって。というか頼まれる義理は無いんだけど」

「うっせーよ、カカシ。だからついでって言っただろ」

 

 オビト本人は気づいていないが、彼の登場ですっかり空気が変わった。

 カカシは憎まれ口を叩きつつもそれにホッとしていた。

 が、大蛇丸はそうではなかった。

 

「火影を夢見て死んでいったガキはいくらでも見て来たわ。せいぜいあなたもその一人にならないといいわね」

「ああ? んだと! あんた有名な割に嫌な奴だな!」

「トビラ君、いくら兄だからって叶わない夢を見せるのは酷ってものよ。はしゃいだ子供は戦場じゃすぐ死ぬもの」

「おい! 俺の夢が叶わないって決めつけてんじゃねー! 火影は俺の夢だ! 絶対叶えるんだから見てろよな!」

 

 ぷんすかしながら騒ぐオビトを一瞥した大蛇丸は、それを無視してドロンと姿を消した。

 

「ああ! 逃げやがった! なんだよ、お前らの担当上忍。失礼な奴だな」

「あれだけ啖呵切るのも十分失礼だと思うけど……ま、今回ばかりはいいタイミングだったよ」

「そうだな」

 

 頷くトビラとカカシにオビトは不安そうな顔をした。

 

「……なあ、大丈夫か? なんか見るからにやばそーな奴だけど」

「伝説の三忍と言われるほどだし、実力は確かだと思うよ」

「トビラ、もしアイツに変なことされたらすぐ言うんだぞ! いいな?」

「分かっているよ、兄さん」

 

 同じ里の忍であり火影の弟子であるものの、三人ともすっかり大蛇丸を警戒していた。

 かと言って、大蛇丸の視線には好奇心や興味は感じられたものの、敵意はなかったことがトビラには分かっていたので様子見となった。

 

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