「トビラ、トビラ、トビラー!!!」
「そんな大声を出すな! 聞こえている!」
駆け込んできた少年はうちはオビト。
両親の形見のゴーグルをしっかりとそのツンツンとした頭に着けている。
対するはうちはトビラ。
家のどこからか見つけて来た黒い頭巾を頭に巻き、兄と同じツンツンヘアーは隠している。
祖母と共に台所に立っていたトビラはこめかみをピキピキといからせながらピシャリと言った。
柱間であればズーンと落ち込んでみせるのだろうが、オビトはケロリとしている。
祖母も気にした様子もなく、彼を振り返った。
「おはよう、オビトや。今日も元気だねぇ」
「おはよう、ばあちゃん! なあなあ、トビラ! まだ修行はしてねーよな?」
「落ち着け。今朝は俺も早く起きられなかったから修業は朝餉の後だ。すぐ出来上がるから早く顔を洗って来い。兄さん」
「ああ! 朝飯の準備してくれててありがとうな! 俺もすぐ手伝うから!」
そう言って遠ざかる足音。
「ったく、朝から騒々しい」
「元気が一番ぞよ。昨日は遅くまで修行していたみたいだけど、疲れは残っていないかい?」
「ああ。兄さんは見ての通りだし、俺もしっかり眠ったから平気だよ。おばあ様」
「そうかい、そうかい。二人とも元気で嬉しいよ。トビラ、そろそろ味噌汁の火を止めておくれ」
オビトとトビラは祖母と三人暮らしだ。
二人の両親は彼らが赤ん坊のうちに戦死しているため顔も知らない。
が、第二次忍界大戦の戦禍が残る里ではそんな子供は珍しくなかった。
「それにしても双子だと言うのに、こうも性格が違うなんて面白いものだねえ」
食器の用意を始めていたトビラは祖母の言葉に心の中で答えた。
――俺には千手扉間の意識が残っているのだからそりゃあそうだろう。
トビラの心の声が聞こえない祖母は炊き上がった米の具合を確認しながら言葉を続けた。
「明るいオビトにしっかり者のトビラ、二人とも良い孫たちぞよ」
「トビラの場合、しっかり者というよりジジくせーんだよな。考え方と言い、喋り方と言い」
いつの間にか戻って来たオビトの言葉にトビラはドキッとした。
と同時に、言葉遣いを「ジジくせー」と言われたことにムッとした。
――ワシとは言わないようにしているのに……!
「話し方は兄さんとそう変わらないだろう」
「うーん、使う言葉って言うのかなー? なーんか違う気がするんだよなぁ。ま、お前は頭がいいから難しい本もたくさん読んでるんだろうな!」
自分で言い出して自分で納得している辺り、オビトもそこまで気にしていないのだろう。
「ばあちゃん! 俺もトビラもご飯大盛ね!」
「俺の分まで勝手に決めるな! 俺は並盛でいい」
「しっかり食べねーと大きくならねーぞ。そりゃあトビラは弟だから俺の方がデカくなるだろうけど」
「俺らは双子なんだからそう体格の差は生まれないだろうが。食べすぎると修行に支障が出る」
「とか言いながらおかずが川魚なら気にせず大盛にするくせに」
今日のおかずはきんぴらごぼうだった。
好物だとご飯の量も増えるのはオビトの言う通りだったのでトビラはムッと口をつぐんだ。
そんな弟を見てニッと笑ったオビトが元気よく宣言した。
「よし! 今日は川の近くの演習場で修行だ!」
「川の近くの? そんなところ、近所にあったか?」
「いや、ちょっと遠いけど里の端っこにあるらしいぜ。そんで修業をした後は魚釣りだ! ばあちゃん、俺とトビラでたくさん釣ってくるから楽しみにしててよ!」
「それじゃあお昼ご飯用におむすびを作ろうかね。家を出る前に持って行くんぞよ」
「やった! 俺、梅おむすびがいい!」
「昼餉の前に朝餉だ。ほら、兄さん。味噌汁の具も多くしておいたぞ」
「さすが俺の弟! 分かってるなぁ!」
――本当に朝から騒々しい男だ、兄さんは。
トビラは呆れつつも口角は上がっていた。
にぎやかな双子の兄と過ごす新たな日常を彼は気に入っている。
そのため、千手扉間の記憶はあるものの、うちはトビラとしての人生を受け入れていた。