これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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研ぎ続けた刀

 

「うむ。意図していなかったが、お主にこの任務を任せて正解だったの」

 

 火影室にて、すべての報告を聞き終えた三代目は言った。

 

「危うく草隠れとの関係をふいにするところじゃった。お主には助けられたの、サクモよ。おかげで多くの命が救われた」

「勿体ないお言葉です」

「……サクモ。お主の力、若き火の意志たちを守るために奮ってくれるか」

「勿論。この身がある限り、戦場で刃を振るい続けます。私にはその生き方しかできませんから」

「…………そうか。次の任務は改めてこちらから連絡する。ご苦労じゃった」

 

 サクモが火影室を出ると、待機していたコスケがぺこりと頭を下げた。

 

「木ノ葉の英雄と任務ができ、光栄でございました」

「こちらこそあなたには助けられました。コスケさん」

 

 和やかにサクモとコスケが会話する間、壁を隔てた火影室では三代目が煙管の白煙と共に深い息を吐いているのだった。

 

 

 コスケと解散したサクモは時折感じる、刺すような視線に耐えながらも帰り道を歩いた。

 途中、道端にて老婆に肩を貸すオビトを見つけた。

 向こうも気づいたようだ。

 

「よう! サクモさん!」

「オビト君……どうしたんだい? そちらの女性は……」

「ああ。なんか婆ちゃん、転んで足を痛めちまったらしくてさ」

「すまんねえ、オビトちゃん。また世話になって」

 

 恐縮しっぱなしの老婆とオビトがよろよろ歩く。

 見かねたサクモは申し出た。

 

「そちらの女性は俺が背負うよ」

「でも、時間は平気なのか?」

「ああ。ちょうど任務終わりだ。足を痛めたのなら無理に歩かない方がいい。さあ、どうぞ」

「そ、そんな……忍の方に背負っていただくなんて恐れ多いです」

「俺がそうしたいだけですよ。さあ」

「婆ちゃん。こう言ってくれているし背負ってもらおうぜ」

 

 オビトに言われ、老婆は恐る恐るサクモの背に乗った。

 

「ありがとうございます……本当にありがとうございます」

「いいんですよ、このぐらい」

「俺ももっとデカくなったら婆ちゃんを背負えたんだけど……」

 

 どこか悔しそうにするオビトをサクモは微笑ましく思った。

 

「今の君に出来ることをしていたんだから立派だよ。それに、オビト君もすぐに大きくなるよ。ああ、そうだ。ナス、ありがとうね。カカシはナスの味噌汁が好物だから喜んでいたよ」

「ええ?! そうなのか?! あの野郎、俺が渡したときはぜんっぜんそんなこと言ってなかったのに……!」

「ははは、すまないねぇ」

「いいよ。おっちゃんは悪くねーもん。まあ、カカシが生意気なのは今に始まったことじゃねーし」

「ははははは…………」

 

 困り顔になりつつも、サクモは穏やかな心持で歩いた。

 

「ガイ! 下忍になっても青春は続くぞ! むしろこれから始まるんだ!」

「はい、パパ!」

 

 緑色のスーツを纏った親子が逆立ちしながら前から歩いて来た。

 子供の方がこちらに気づいた。

 

「ん? おお! オビトじゃないか!」

「よお、ガイ」

「それにそちらはカカシのお父さん! なにしてるんですか? はっ! もしや、新しい修行法?!」

「ちげーよ! 人助けだよ! なんでも修行に結び付けるな! 修行バカ!」

「応援ありがとう!」

「ツッコミ入れたんだよ!」

「応援ありがとう!」

「話を聞け!」

 

 オビトのツッコミも聞こえたのか聞こえていなかったのか、そのまま親子は逆立ちで行ってしまった。

 サクモはなんとなく気になって後ろを振り向くと、周りがヒソヒソと話しながら親子を見ているのに気付いた。

 彼らに向く視線はサクモが浴びているのと同じ種類だ。

 

――あんな言われて……ガイ君はまだ子供なのに傷つかないだろうか……

 

 サクモは心配したが、

 

「応援ありがとう!」

「応援ありがとう!」

 

 と逆立ちしながらもナイスガイポーズをする親子を見て目を真ん丸とさせた。

 オビトは大して驚いた様子も見せず、サクモを見上げた。

 

「おっちゃん、ガイと会ったことあるんだな」

「ああ。入学説明会の時にガイ君とお父さまには少し話をしてね」

「私もあの親子はよく見ますよ。元気の良い方たちですよねぇ」

 

 老婆の声に嫌悪感は無かった。

 

「俺も見習った方がいいな」

 

 もう前を向いたサクモはポツリと言った。

 が、横を歩くオビトはギョッとした。

 

「え゙っ……サクモさんもあのスーツ着るの? さすがにアレはやめた方が……カカシも止めると思うからさ……」

 

 マジトーンで止めるオビトにサクモは噴き出した。

 見上げた空はよく晴れていた。

 どうにかしてスーツを着るのだけはやめさせようとするオビトの声を聞きながら、サクモはその空の色を目に焼き付けた。

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