オビトの死後、トビラはミナト班に編入された。
とは言っても、ミナト班のうちミナト、カカシ、トビラの三人が上忍だ。
そしてリンは中忍。
つまり、この班での任務はそう多くなく、バラバラでの行動の方が多かった。
「あら、トビラ君。久しぶりね」
トビラが雲隠れとの戦地で再会したのは大蛇丸だ。
砂隠れ、霧隠れ、岩隠れとの戦闘を経た木ノ葉隠れの里は全戦力を雲隠れとの戦いに投入し、戦争の終結を図ることとなった。
ミナトは別の地域を担当するためここにはいない。
トビラは数年ぶりに師と会話することとなった。
「貴様がこの区域の担当だったのか」
「ええ、そうよ。じわじわといやらしい手を使って来るから気を抜けなくてねぇ。まあ、私も数日前に来たばかりだけど」
「貴様の名をあまり聞かなかったがどこにいた?」
「忍は己の任務内容をペラペラ口外しないものよ。ああ、そうそう。オビト君は残念だったわね。私の言った通りになって」
今は小康状態のため、大蛇丸とトビラは見張りをしながら会話を続けた。
「忍に死はつきものだ。兄さんも仲間と里を守って死んだ。本望だろう」
「ふふ……聞けば写輪眼を開眼してすぐに死んだみたいじゃない。念願の目を手に入れられてはしゃいじゃったのかしら……どうせ死ぬならその写輪眼、欲しかったわねぇ」
トビラがじろりと大蛇丸を睨んだ。
その目に灯る赤色。
大蛇丸の笑みが深まった。
「いい目になったじゃない、トビラ。忍の世界なんてこんなもんよ。少しは分かったかしら」
「…………なぜ貴様はそう写輪眼に固執する」
「写輪眼だけじゃないわ。私はすべてを知りたいのよ。そのためには時間も力も足りない……ねえ、カカシがオビト君の目をもらったらしいわね。うちはの身体じゃないのに適合したのかしら」
「今のところ、異常は見られない。カカシの兄さんへの思いが繋げているのだろう」
「へえ……興味深いわね……それにしてもよくうちは一族が許したものね。あのプライドの高い一族が……」
「兄さんの遺志を尊重した。ただそれだけのことだ」
写輪眼を元の目に戻したトビラは大蛇丸から視線を外した。
だが、大蛇丸はなおもトビラを見ながら会話を続ける。
「あなた、今はミナトの下についてオビト君の代わりをしているらしいわね」
「カカシの目のサポートの意味合いが強い。誰も兄さんの代わりはできん」
「オビト君の担当上忍が憎くないの? むざむざ部下を殺した彼が」
「もう一度言うが忍の任務に死はつきものだ」
「ふふふ……つまらない子。それにミナトも……せっかくの私の教え子を二人とも奪っちゃうんだから困ったものね」
トビラは意外そうに目を見張った。
「貴様、ミナトに嫉妬しているのか」
「ミナトに嫉妬? あんな自来也の弟子に? 冗談はやめてちょうだい。私はただ心配なだけよ。せっかく担当したあなたたちが見殺しにされないか」
「己の身は己で守る。それが忍の鉄則だ。それにミナトは仲間を見殺しにするような奴じゃない」
「信頼しているのね」
「それが火の意志というものだ。貴様にもあるだろう」
「クックック……猿飛先生みたいなこと言うわねぇ、あなた。オビト君が年寄り臭いって言ったのも分かるわ」
大蛇丸が次の言葉を継ぐより前にトビラが反応した。
「火遁・豪火球の術!」
横を向く大蛇丸の背後から多数の手裏剣が現れたが、トビラの火の勢いに押され、カランカランと音を立てて地面に落ちていく。
「大蛇丸。休んでいないで貴様も動け」
「あら。弟子の成長を見せてくれたっていいじゃない」
未だに動こうとしない大蛇丸に切り掛かる雲の忍たち。
だが、
「潜影蛇手!」
忍装束の上に羽織った衣の袖から出る無数の蛇がそれぞれの忍の首に噛みついた。
途端にボン、ボン、ボン、と煙と共に消えていく。
「そちらも影分身か」
同じように影分身体の忍たちを倒したトビラが大蛇丸のそばに戻った。
「初めにあらかた殺したらこのやり方に切り替えて来たのよ。こっちもひどいもんだけど、向こうも弾切れなんでしょうねぇ」
大蛇丸が守っている地区はトビラが来るまで彼一人だった。
雲隠れとしては断続的に襲撃をすることで大蛇丸のスタミナを削り取るつもりだったようだが、伝説の三忍がその程度の作戦に根を上げるわけがなかった。
「ふふふ……向こうの予定なら木の葉と霧の戦いがもっと長引くつもりだったんでしょうけど、やけに早く来てくれたじゃない」
「忍刀七人衆がほぼ全壊したことで霧が早々に撤退した。向こうとしても戦争を続けることが困難になったのだろう」
「あら。そっちじゃそんな面白いことになっていたのね。誰がやったのよ。またサクモさんかしら」
「いや。マイト・ダイだ」
珍しく大蛇丸が困惑した表情を見せた。
「……誰だったかしら」
「下忍だ」
「下忍? 冗談はよしてちょうだい。下忍一人でやられるほどチンケな集団じゃないわよ」
「いや。ダイが一人でやったらしい。本人はもう死んでいる」
「命と引き換えに戦ったってこと? ふふ……いったいどんな禁術を使ったのかしら」
「禁術と言えば貴様が使っていた潜影蛇手も禁術だな。どこで習った?」
「あら、よく知っているじゃない。蛇の道は蛇って言うじゃない。まさしくそれよ……興味があるならあなたにも教えてあげるわよ、トビラ君」
「必要ない」
「そう……ふふふ……力が欲しくなったらいつでも言いなさい。忍の才を極めるためならどんな道もある方がいいもの」
手からニョロニョロと蛇を出しつつ笑う大蛇丸。
――力への執着……やはり危険な男だ。
トビラは雲隠れの忍だけでなく、大蛇丸への警戒も改めた。
そんな折、彼らの下へ伝令が来た。
トビラと大蛇丸が守る場所は火の国内の国境付近。
すでに国境突破を許してしまっているため、今は侵入した雲隠れの陣営を追い出そうとしていた。
だが、国内は守るべき場所が多いため、単独で敵陣営をかき乱すような作戦に出づらかった。
そのため大蛇丸も一人で広範囲を守ることに徹していた。
しかし、霧隠れとの戦いが落ち着いたことにより、木ノ葉の忍びが集まっている。
そこで、木ノ葉の忍たちは一気に雲隠れを追い出す作戦へと移行することになった。
ある地域ではミナトがきかん坊のエー、キラービーと接触したものの、木ノ葉の追い出し作戦は成功となった。
これで各国との戦いは終わりが見えて来たが、忍は常に裏をかく世界。
予断を許さない状況の中、各国のにらみ合いはまだ続くのだった。