これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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兄者と兄さん

 トビラは3歳のころに高熱で死にかけたものの、快癒して以降は健康そのもの。

 毎日、双子の兄との修行を重ね、もう5歳になっていた。

 

「そろそろ休憩しよう。集中力が欠けてきている」

「確かにもう昼時だな。トビラ、熱は出てねーか?」

「いつも言っているが平気だ。兄さんの方こそちゃんと水分を捕れ」

 

 幼少期のトラウマか、単に兄として弟を構いたいからか、オビトはこうして体調を気遣うことが多い。

 そうでなくともオビトは優しい子だとトビラは思っている。

 

「あーっ! やっぱ、ばあちゃんのおむすびはうめーな!」

「さっきもらったトマトときゅうり、川で冷やしておいたからこれも食べよう」

「そうだった! いやぁ、荷物運び手伝っただけで野菜いっぱいくれてあの爺ちゃん親切だよなぁ!」

「兄さんが親切にしたからそのお返しなのだろう」

「あんぐらい別に気にすることねーのにな」

「そりゃあ、毎日誰かしら困った老人を見つける兄さんにとってはそうだろうな。一体どうやって見つけているんだ?」

「だから俺は探してねーよ! いっつも向こうから出てくるんだって」

 

 オビトが優しいから困っている人を見つけるのか、それともその優しさが困っている人を呼び寄せるのか。

 毎日人助けをせざるを得ないオビトのそれはもはや体質と言える。

 

「見つけることに関しちゃトビラの方が得意だろ? 感知タイプなんだから」

「俺は困っている人を感知する力なんて無い」

 

――それに、感知の精度は前に比べると劣っている。

 

 扉間は感知タイプだったが、トビラの身体でも同じように感知が可能だが、やはり肉体が変わるとチャクラの練り方や使い方も変わるらしい。

 

「写輪眼を開眼できたら俺ももっと感知しやすくなるのかな」

「写輪眼か……開眼したいのか?」

「当たり前だろ。写輪眼があればもっと強くなれる。トビラは興味ねーのか?」

「……」

 

 オビトは写輪眼の開眼条件を知らないから言えることだ。

 扉間時代に研究を尽くしたトビラとしては無邪気に欲しいとは言えない。

 

「一族の全員が開眼しているわけでもないだろう。開眼するかもあやふやなものに頼るのは危険だ。それよりも先に鍛えるべき部分はいくらでもある」

「はーっほんとジジイみてーなこと言うな、トビラ」

 

――どこがジジイみたいだとっ?!

 

 トビラが追及するよりも先に、オビトが彼を振り返った。

 

「でもお前の言う通りだよな! よし! 兄ちゃんとして負けてらんねー! まずは体術の基礎と、使える忍術を増やすぞ! そんでもって火影になるんだ!」

「兄さんは火影になりたいのか」

「おう!」

 

 トビラが意外そうに尋ねるが、オビトは気づくことなく力強く頷いた。

 

「火影ってのは里を守る一番強くて偉い忍らしいんだ。俺はトビラもばあちゃんも守れるくらい強くなりてーんだ」

「ほぉ……里を守る強い忍か」

 

――サル、こんな幼い子供までお前を慕っているようだ……立派にやっているじゃないか。

 

 トビラはかつての教え子を思い出し、目を細め、すぐ兄に目を向けた。

 

「だが、火影以外にも強い忍はいるだろう。他に理由があるのではないか?」

「ああ。戦争が無けりゃ俺らの父ちゃんも母ちゃんも死ななかった。里には俺らみたいな子供は多い。だから俺が火影になって戦争を無くす! そんでもって俺が世界を救うんだ!」

 

 オビトはぐっと手を握りながらはっきりと宣言した。

 

――こやつ……

 

 幼子の夢物語にしてはオビトのまなざしは強かった。

 そしてかつての兄、柱間によく似ていた。

 

「ふふ……はっはっはっはっは!」

 

 突然笑い出したトビラにオビトは驚き、そしてムッとした。

 

「なんだよトビラ!」

「いや、ついツボッてしまっただけだ。お主があまりにもバカなことを言うからな」

 

――初めは兄という生き物はみな似るものなのかと思ったが違う。こやつ、兄者にそっくりだ。

 

「はあっ?! なんだよ! 火影になんかなれはしねーってバカにしてるのか?!」

「バカになんてしていない」

「バカなことって言ったじゃねーか!」

「ああ、お主は兄者……いや、初代火影並みのバカだ。俺が断言する」

「はあっ?!」

 

――うちはの者に兄者を重ねる、か。因果なものだ。

 

 トビラは目じりに溜まった涙をぬぐいながら幼き兄を見た。

 

「だが、そのぐらいのバカでないと火影になんてなれないだろう」

「なっ……お前は応援してんのかバカにしてんのかどっちなんだよ……つーか、初代火影と比べるならバカとかじゃなくてもっと才能とかそういうのをよぉ……」

 

 はっきりと「バカ」と言われたものの、初代火影と比べられたことでオビトは喜ぶべきか怒るべきか混乱した。

 が、弟が今までで見たこともないような輝く笑顔を見せたこと、そして彼の言う「バカ」に悪意を感じなかったことで結局はオビトも笑顔になった。

 

「里の子供ならみんな憧れている火影をバカ呼ばわりするなんてお前、意外と肝が据わった奴だな、トビラ」

「憧れ……か……」

 

 かつて己が二代目火影になった時は他に適任がいないからなったというだけで、そこに最高責任者以外の意味合いを感じていなかった。

 どちらかというと、次世代への繋ぎという感覚が強かった。

 だから、火影が憧れの象徴になっているのに新鮮さを感じた。

 

「でも、他の奴にそれを言うの止めとけよ。火影はみんなの夢なんだから、バカって言葉だけで怒りだす奴も出てくるかもしれねーし」

「そりゃあ俺だってその程度の分別はある」

「どうだかな。トビラは人づきあい悪いから、そこらへんが兄ちゃんとしては心配だぜ。やっぱさ、お前も修行と読書だけじゃなくて里の子供らと遊ぼうぜ」

「缶蹴りか……俺はやらんと言っているだろうが」

 

 戦乱の時代に幼少期を過ごした扉間が兄弟とやっていた遊びは組手や手裏剣の的当て、つまりこの時代で言うところの修業だった。

そのため、今の時代の缶蹴りといった子供の遊びは馴染みづらいもので、数回付き合ったものの、すぐに参加をやめてしまった。

 

――兄者の付き添いで行った賭場でもそうだが、どうにも俺は外の「遊び」というのに向かんらしい。将棋と囲碁であればまだ嗜んでいたが、あれは高価なものだからな。この年じゃできる子供もそういないだろう。

 

「トビラ~、社交性を磨くのも忍としては必要だぜ」

「ふん。社交性なら問題あるまい。里の者どもとは話せているのだから」

「トビラの話し相手って大人だろ? じゃなくて子供同士の付き合いだよ」

「里の子供らとの遊びだって以前顔を出したではないか。あれで義理は果たした」

「いやいや、顔を出せばいいってそんな会合じゃねーんだから。遊べる友達ってのも大事だぜ」

 

 トビラは胡乱な目で兄を見た。

 

――兄者もあのマダラを友と言い続けたが……こんなところまで似なくて良いものを……

 

「あ! ほらほら! やっぱお前、友達の意味わかってねーだろ!」

「おい、その哀れむような顔をやめろ」

「うんうん、大丈夫。トビラは面白い奴だからすぐに打ち解けられるぜ。ほら、前に挨拶したリンとは普通に話せていたしさ。あんな調子で遊びにも行ってみようぜ」

「はあ……のはらリンか。兄さんが慕うのも分かる、感じの良い娘だったな」

「えっ?! はぁ?! おい、慕うっていや、なんで分かったんだよ? あ、いや、そうじゃなくて……っ!」

「遊びであれば今もこうして兄さんと遊んでいる。それに里の子供らと社交する場ならアカデミーがある。それで十分だろう」

 

 オビトが慌てている間に食べきったトビラは立ち上がった。

 兄も合わせて食べ物を口に詰め込んでいるようだが、途中で盛大にむせていた。

 

――アカデミーに通い出したら時間的拘束を受ける。自由に動ける時間は貴重だ。

 

 オビトはトビラと修行していないときは里の子供らと遊ぶか、困っている老人たちの手助けをしていた。

 対してトビラは兄と修行していないときは一人でこっそり修行するか、術の開発をするか、身をひそめながら里の大人たちの噂話を盗み聞き、情報集めをしていた。

 特に今は第二次忍界大戦が終結したばかりで、小国同士の争いは続いている状況だ。

 

――兄者ならともかく、もしマダラが俺のように転生していたら面倒だと思ったが、それらしき人物がいない。この2年で調査済みだ。かと言ってこれからも出ないとは限らん。注意が必要だ。

 

 かつての教え子である三代目火影に己のことを話すことを考えたものの、今の彼は千手扉間ではなくうちはトビラである。

トビラの予想が正しければ、木の葉の上層部はうちはを警戒し続けている。

 別の人間として転生したなんて荒唐無稽な話をし、無用な疑りを受けるのは良くない。

 それに、千手扉間はすでに猿飛ヒルゼンに里を任せて死んだ。

 だから過去の人間が出張るのでなく、新たなうちはトビラとして生きていくことを決めていた。

 

――それにしても、まさか俺がうちはとして生を受けることになろうとはな……

 

 食べ終えたばかりの二人は食休み代わりに各々で軽い運動をし、組手に備えていた。

オビトは丸太に向かって蹴り、突きを繰り出している。

 歴戦の忍たちとしのぎを削って来た扉間から見れば、5歳の兄が行うそれは幼子の遊びにしか見えない動きだった。

 

――里が無い時代であればすでに俺らは初陣に出ている年頃か……筋は良いがうちはとの戦場であの程度ではすぐ死ぬな。ああ、いや、今は俺らがうちはだったか。

 

 トビラは先日届いた封書の中身を思い出した。

 

――俺と兄さんがアカデミー入学試験を受けるまであと半年か。かつては戦場に出る年だったが今は学校へ通う年になったということか。兄者の理想は続いているようだな。

 

 寸止めするつもりのオビトの突きが思いっきり丸太にぶつかり、うずくまった。

 

「うがぁあっ!!!」

「兄さん!」

「へへっ……へ、平気だぜ……こんくらい……」

 

 戦い慣れていない子供の拳じゃ丸太には勝てない。

 しかし弟を心配させまいとオビトは強がった。

 トビラは兄の強がりに気づきつつも、弟にいいところを見せたい兄のプライドは理解していたので、骨が折れていないかだけ確認した。

 

「そろそろ組手をするか」 

「おおっ! 今日こそお前に勝つからな!」

「ふん。あと20年は早いな」

 

 トビラはオビトと組み手をするときに手加減なんてしない。

 いくら今世の兄とは言え、扉間からすればひ孫並の子供と戦うようなものだ。

 だが、オビトに手心は必要ないと思っていた。

 

――昨日よりも動きが良くなっているな……

 

「兄さん、俺が寝た後も修行をしていたのか?」

「うっ! な、なんで分かったんだよ!」

「やはりそうか。全く。休むことも修行のうちだと言っているだろうが」

「うるせー! 俺はお前よりも兄ちゃんだからちょっと無理しても平気なんだよ!」

「だから俺らは双子なんだから体格の差はそう無いだろうが! ほれ、脇が留守だぞ」

「うぉおっ! クソっ! トビラ、お前ほんと卑劣なところばっかり狙って来るよな!」

「忍が素直でどうする。裏の裏をかく戦いが出来ねば死ぬぞ」

「分かってらぁっよ! っと!」

 

 二人が修業を始めたころ、病み上がりの弟へ手心を加えようとしたのはオビトの方だった。

 が、トビラがそれを完膚なきまでにぶちのめしたところから二人の切磋琢磨は始まった。

 

「あぶねっ! へへっ! お前の腕がもう少し長けりゃ一発入れられただろうにな、トビラ」

「ふん。そうしたら兄さんはすでに5回は死んでいただろう」

 

――この身体、俺が5歳のころと比べても小柄だ。

 

 大人の姿で戦うのに慣れていたトビラにとっては、新たな身体を馴染ませる作業が必要だった。

 オビトはトビラに比べて視野が広く、動体視力が良い。

 そして負けん気が強い。

 トビラにボコボコにされてもへこたれずに修行を重ねているからか、最近は特に動きが良くなってきていた。

 

――あとは集中力さえ保てればな……

 

「ぐへっうえっぶはぁっ!」

「目の前の敵に集中せねばそこから切り崩される。兄さんは集中しているときは俺の攻撃も避けられるのだから意識を保て」

「くっそーーっ! また負けた! トビラ! まだいけるよな?」

「無論だ」

 

 口角をあげながら兄を迎え撃とうとしたトビラだったが、眉を寄せ兄の手を止めた。

 

「ん? おい、どうしたトビラ?」

「そこにいるのは誰だっ!」

 

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