これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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いつだって兄の自決を止められない弟は可愛いよね

 

 トビラは己の瞳力が増していることに気づかないまま、兄に尋ねた。

 

「兄さん、マダラは何を言っていた?」

「え? そこまで話してはいねーんだよな。あのジジイ、魔像だかのチャクラをもらわないとすぐ死ぬらしくて、寝てばっかりだったし。ただ、そうだな……この世界は地獄だから因果を断ち切るって言ってたぜ。勝者だけの世界、愛だけの世界だかを作るって」

 

 曖昧な説明にカカシが困惑した。

 

「は? 見るからに危ない老人じゃない? オビト、そんなのと今まで一緒にいたの?」

「仕方ねーだろ! 出口が岩に塞がれて出られなかったんだよ! そのせいでこの人造体でできた腕も壊れちまってさ……」

 

 カカシが冷静にツッコむ中、トビラは驚愕した。

 

――マダラ、里を襲うのに失敗して今度はこの忍世界そのものを壊す気か? 死にかけた者を延命させる魔像だとかいうもの、兄さんにくっついている人造体、知能を持ち動くあの白い人造体、どれも人智を超えた存在ばかりだ。本当に全てアイツが考え、実行しているのか?

 

 オビトの崩れた腕を治療しようとしていたリンが言った。

 

「オビト、これって何で出来ているの? 今までみたいに治療しようとしてもできない……それにこの腕、溶けたように崩れているけど血が流れていない……」

「俺もよく分からねーんだよな。ただ、この人造体のおかげで俺、飲まず食わずでも平気になったみてーなんだ」

「そんなことができる義腕なんてあるのか? 聞いたこと無い」

「柱間細胞って言っていたよね? それって初代火影柱間様の……?」

「多分……俺もよく分かんねーんだよ。ただ、寝ている間にこの半身が出来上がったから、腕もそのうち治ると思うぜ」

 

 リンもカカシも首を傾げたが、トビラは兄の腕を分析した。

 

――確かに兄者の細胞だ。だが、俺のころはここまで実用的な分野まで研究を進められずに終わった。まさか兄さんが兄者の細胞に適合するなんて……生前の俺でも適合しなかったのに。

 

 柱間細胞が気になるところではあるが、トビラとしてはそれ以上の懸念があった。

 

――今の兄さんはマダラの手先。だとしたら、アイツがやりそうなことがある。

 

 トビラはカカシに兄を任せ、増援部隊の中から一人を呼んだ。

 

「日向一族の者だな。白眼は使えるか?」

「ああ、使えるぞ」

「なら、見てもらいたいものがある」

 

 白眼を持つ忍をオビトの前に連れて来て、兄の身体を見てもらった。

 

「白眼! …………こ、これは……! 心臓に何か札が……見たことのない札だ」

「文字は読めるか?」

 

 読み上げてもらった文字から、トビラは札の正体を見破った。

 日向一族の忍を元の見張りに戻し、トビラはオビトをどうにかカカシたちから引きはがして二人っきりになった。

 

「兄さん、重要な話がある」

「俺の心臓に貼ってある札のことだろ? これ、何か分かったのか?」

 

 トビラは頷いた。

 

「恐らくその札は呪印札……相手の動きを制約する働きがある。うちはマダラが貼ったのだろう。兄さんを手先として無理やり動かすために。いつ兄さんの身体を操るか分からない」

「……そうか。トビラ、カカシとリンを頼むぞ」

 

 オビトは覚悟を決めた顔でトビラに言い、弟のクナイを抜き取って自分の心臓に突き刺した。

 かつて忍界最速を誇ったトビラが反応できないほどの速さだった。

 

「クッ……! 確かに俺の動きに制約があるみてーだな……」

 

 心臓に突き刺したはずのクナイはオビトの胸の皮一枚を傷つけるだけだった。

 オビトの手の震えが、彼の思うように身体が動いていないことを表していた。

 あまりのことに放心していたトビラがようやく動いた。

 

「兄さん! 何をしているっ! 今すぐ手を下ろせ!」

「今もあのジジイが俺の身体を乗っ取るかもしれねーだろ! お前やカカシ、リンを傷つける前に早く……」

「兄さんを止める方法は他にもある! だから手を下ろしてくれ!」

「え? そうなの?」

 

 トビラが両手を使っても動かせなかったオビトの手があっさりと下ろされた。

 とてつもなく驚かされたトビラとしては恨みごとの一つや二つでも言いたいところだったが、急を要することだったためすぐに話を再開した。

 

「その呪印札の上からさらに俺の呪印札を貼る。死ぬほどの苦痛はあるが、その細胞があれば死ぬことはない」

 

――マダラが使った呪印札が昔、俺が穢土転生用に作った旧式で助かった。これならマダラ出奔後に再開発しておいた呪印札で上書きできる。

 

 トビラは穢土転生用に持ち歩いていた呪印札を即席でさらに書き換え、オビトの心臓に貼られた呪印札の上に貼った。

 

「うわっ……トビラの手が身体に入って気持ち悪……うげぇええええええ! いってぇええええええ!」

「そう騒ぐな、兄さん。敵に見つかるぞ」

「うぐぁあああああああああ!!!!!」

 

 オビトの悲鳴に駆け寄ったのは敵でなくカカシとリン。

 

「オビト! どうした?!」

「オビト! すぐに医療忍術を……」

「近寄るな! 離れていろ!」

 

 鋭い言葉でカカシたちを止めるトビラ。

 あまりの剣幕に二人とも足を止めた。

 その間、トビラは白目を剥いてのたうち回るオビトをじっと眺めた。

 次第に悲鳴は弱まり、パタリとオビトの動きが止まった。 

 

「オビト! おい、トビラ! オビトに何が?!」

「お願い! すぐに治療をさせて!」

「その必要はない」

 

 トビラの言葉のすぐ後にオビトが起き上がった。

 

「リン……カカシ……俺は……平、気だ…………」

「オビト!」

 

 わっと駆け寄るカカシとリンをトビラは止めず、三人を眺めながら思案した。

 

――無事、俺の呪印札が勝ったか。俺やカカシたちに襲いかかる様子もない。だがこれは一時措置。どうにかしてマダラの札を取り除いた方がいい。だが、それは後だな。

 

 苦痛に泣いていたオビトのそばにいたカカシがハッと振り向いた。

 

「パックン! 戻って来たか」

「おお、カカシか。そこの黒頭巾の小僧の指示で霧隠れのアジトへ行ってきたが壊滅しておった。洞窟が倒壊し、死者の匂いが8つほど」

「残り22人ほどは洞窟から脱出したか……もう少し減らしておきたかったが仕方あるまい。尻にクナイを刺した白い変なのはどこへ行った?」

「それがな、奇妙なことに地面へと消えてしまった。『オビトとはぐれちまったっスー! とりあえずマダラのところにかーえろ!』と言っておった。気味の悪い奴じゃった……一体、なんじゃありゃー」

 

 悪寒が走ったのかパックンがぶるぶるっと身じろぎした。

 

――なるほど。あの白いのはマダラのところへ行ったか……ちょうど良い。

 

 さらにトビラにとってちょうど良い事態となった。

 

「みんなっ! 無事か?!」

「ミナト先生!」

 

 飛雷神の術で現れたのはミナトだ。

 

「前線の手ごたえが全くなくて嫌な予感がしたと思ったら……ん?! 君はオビトか?!」

「そうだよ先生! 俺、生きてたんだよ!」

「…………これまでのことを……いや、先に霧隠れだ。ここを襲撃したと聞いた。トビラ、現況報告を」

 

 トビラは端的にリンが狙われたこと、三尾の人柱力による暴走が企てられていたこと、霧隠れの暗部がまだ20人ほどいることを伝えた。

 

「霧隠れの暗部か……油断できないな」

「それだけじゃない。うちはマダラを名乗る怪しい者がこの近くにいるらしい。兄さんを拾い、半身をくっつけたのもそやつだ」

「うちはマダラ?! そんな……まだ生きていたのか?!」

「本物かはともかく、危険であることに変わりはない。リンが攫われたと兄さんをそそのかしたのもそいつだ」

「ん! そうなのか? オビト?」

「あ、ああ……正確にはジジイじゃなくてグルグルたちだけど……」

「グルグル?」

「マダラを名乗る人物の手下らしい。ともかく、俺は今からそいつらのアジトを探ってくる」

 

 トビラが言うと、皆がギョッとした。

 ミナトが厳しい口調で言った。

 

「うちはマダラを名乗る人物……どう考えても危険だ。君一人には行かせられない。第一、霧隠れの忍たちのこともある。こんな時に戦力を割くのは良くない」

「こんな時だからこそだ。霧の狙いは三尾を使って木ノ葉を壊滅させること。だが、マダラの狙いは定かではない。先手を打って探るべきだ」

「だとしたら俺が行く。君らは援軍と共にこの陣営で待機を……」

「ミナト。マダラが本物だとしたら写輪眼を持っている。現時点で奴の写輪眼に対抗出来得るのは写輪眼のみ。貴様じゃ不足だ」

 

 トビラが二つ巴の写輪眼を見せながら言った。

 ミナトは唖然とした。

 

「…………トビラ、どうしたんだい? やけに焦っているが……」

「それだけ急を要する事態だ」

 

 睨むトビラと冷静に見つめるミナト。

 トビラの剣幕にカカシもリンもオビトも息を飲んだが、ミナトは一瞬の思考の末、頷いた。

 

「……ん! 分かった。アジトの偵察を任せよう。ただし、深追いはしないこと。念のため、俺のマーキング付きクナイを渡すよ。いいね?」

「ああ」

「ミナト先生! 行かせるんですか?!」

 

 カカシが抗議するもミナトは言った。

 

「トビラには何か考えがあるようだ」

「なら俺も一緒に行くぞ、トビラ。俺ならジジイのところまで案内できる」

「兄さんのその身体じゃあまともに動けないだろう。片手が溶けかけているのだから。兄さんの案内がなくともアジトの予想はできている」

「お前はあのジジイのヤバさを知らねーからんなこと言えるんだよ。マジで何言ってんだか分からねー話の長い危ないジジイなんだぞ」

「黙れ! 俺は行く。いいな」

「おい、トビラっ」

 

 オビトが止めるのも気にせずトビラは瞬身の術で発った。

 残されたオビトは後を追おうとしたが、ミナトがそれを止めた。

 

「オビト、その身体で無茶はいけない。今は君の弟を信じて待つんだ。いいね」

「…………アイツ、無茶しねーかな」

 

 形が定まっていない片側を抑えつつ、オビトは心配そうにつぶやいた。

 

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