これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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綱手(36)

 

 火影室の外が騒がしくなり、ドタドタと人が入って来た。

 

「綱手様! まだ合図をもらっていないので入るのはやめ……あれ? トビラ君と…………君は?」

 

 ズカズカ中に入る女性を止める少女がオビトを見て首を傾げた。

オビトはその反応にショックを受けた。

 

「なんでトビラは覚えていて俺は忘れてんだよ! オビトだ! トビラの兄ちゃんのオビト! お前は確かリンとよく一緒にいたシズネだよな? テメーまでガイみたいに忘れっぽいのか?」

「え? オビト君?! でも彼は死んだって聞きましたよ?! あひぃ! ゆゆゆ、幽霊?!つ、綱手様! 幽霊が……!」

「なに寝ぼけたこと言ってんだい、シズネ! 気味の悪いもんがくっついちゃいるが、その子は生きている。おいジジイ! これはどういうことだ!」

 

 急に騒がしくなった室内。

 三代目は「やれやれ」と言わんばかりに息を吐き、説明を始めた。

 

「そこのオビトの治療を綱手、お主に任せたい」

「そこのガキの治療?」

「で、ですが火影様! 綱手様はその……医療忍術は…………」

 

 口ごもるシズネにオビトは尋ねた。

 

「綱手ってもしや伝説の三忍の一人か? 医療忍術がすげー人だろ?」

 

 無邪気な言葉にシズネも綱手も気まずそうな反応になった。

 特にシズネは火影とオビトと綱手をチラチラ見まわし目が回りそうだ。

 オビトはそんな二人を気にせず自己紹介した。

 

「俺の名前はうちはオビト! 隣にいるトビラの兄ちゃんで将来うちは一族初の火影になる男だ! よろしくな!」

 

 ピクっと綱手が反応した。

 シズネはそんな師を心配そうに見た。

 

「綱手様……」

「フン、半身を潰してまだバカを言う元気があるのか。私じゃなくて病院へ行かせればいいだろう」

 

 綱手の後半の言葉は三代目に向けて言われた。

 

「オビトの半身はちと特殊だからの。綱手、お主の協力が必要じゃ」

「ありえないな……断る。 その半身、医療忍術の範疇を超えている。それに私はもう医療忍者じゃない」

 

 この言葉にミナトが驚きの声を上げた。

 

「綱手様。あなたは重症を負って戦線離脱されたと聞いていました。ですが、医療忍者じゃないというのは?」

「お前……自来也の弟子のミナトだったか。アイツからはなんも聞いていないのか?」

「自来也先生とはなかなか会う機会もありませんので」

「それもそうか。戦場のはしごをしているような奴だ。次に会うことがあるのかも分からんか」

 

 皮肉気な綱手の言葉にオビトが怒った。

 

「おい! それってどういう意味だよ? テメェ、ミナト先生の先生が死ぬって言いてーのかっ?! 今も戦っている仲間に向かってなんつー言い方してんだよ!」

「うるさいガキだね。お前は運よく戻って来れたみたいだが、大半は犬死にするのが忍ってもんだろ」

「犬死に?! ふざけんな!」

 

 二つ巴の写輪眼を灯したオビトがまっすぐに綱手へ殴りかかった。

 

「どきな! シズネ!」

「綱手様! いけません!」

 

 綱手の方も止めようとしたシズネを押しのけ、オビトの握りこぶしを掴んだ。

 

「っ!!」

「うっ……クッソー! また溶けやがった!」

「綱手様!」

 

 綱手がオビトの拳を掴んだ途端にドロッとその手が溶け、ポロリと落ちた。

 柱間細胞がまだ定着しきっていないようだ。

 動揺して動きが止まった綱手をシズネが介抱した。

 

「綱手様、無茶をしないでください! 血を見てはいけません! 血が……流れていない?」

 

 綱手の手に残るのは白く溶けた柱間細胞のみ。

 シズネは困惑しきった顔でオビトに尋ねた。

 

「オビト君! 君のその腕、一体なんなんですか?!」

「これははし……あー、ええっとぉー……」

 

 危うく言いそうになったオビトだが、里に帰る前にトビラに他言無用ときつく言われていたために思いとどまった。

 だが、あっさりと三代目が言った。

 

「柱間様の細胞じゃ」

「……おじい様の? どういうことだ?」

「オビトの治療を引き受けるのであれば説明ができるが、そうでないなら聞かなかったことにしてもらいたいの。綱手、腕を見れば分かるじゃろう。オビトの半身、崩れることはあっても血は流れんようじゃ。今のお主でもその子なら診られる」

 

 俯き、黙り込む綱手をシズネも不安げに見つめた。

 三代目はオビトに尋ねた。

 

「オビトよ。その腕。安静にしておれば元に戻るのじゃろう?」

「あ、ああ。それに俺、この半身のせいか寝なくても食べなくても平気になったんだ」

「そ、そんなものが?! 聞いたことありませんよ! オビト君、一体どうしてそんな身体に?!」

 

 放心状態の綱手を気遣っていたシズネが思わず尋ねた。

 オビトがチラリとトビラを見ると、弟は首を横に振り、言ってはいけないと無言で圧をかけた。

 オビトが黙り込む中、綱手が呟いた。

 

「とんだ化け物じゃないか……おじい様の細胞? どうしてうちはの子供にそんなものをくっつけたんだ。アンタがやったのか? 三代目?」

「いいや。誰がやったかに関しては里の機密に関わる。綱手、お主が携われるのはこの子の身体のことのみ。治療をするか否か、どうする」

「…………私が診なくても勝手に治るんだろう。治療なんか必要ないじゃないか」

「そうは言っても人体に詳しい者がそばにいた方が良い。そしてお主が最適じゃとワシは考える。口が堅く、医療に長じた者がの」

 

 三代目の説得に綱手も考え込むそぶりを見せた。

 だが、治療を受ける当人が反対した。

 

「おい、待てよ! 俺はそこのおばちゃんが戦争で死んだ仲間をバカにしたこと、まだ許してねーよ! アンタの治療なんかいらねー!」

 

 オビトの言葉をトビラが制した。

 

「兄さん、治療は受けろ。できれば綱手から」

 

――そうじゃないと今すぐ研究所へ回されるぞ。

 

 トビラの言葉にミナトも同調した。

 

「ん! トビラの言う通りだ。綱手様は木ノ葉の里どころか忍界一の医療スペシャリスト。そばにいてもらえてこれほど心強い方もいない」

「トビラもミナト先生もムカつかねーのか?! 犬死になんて言い方っ……!」

「綱手様が何を思ってそんなことを言ったのか……オビト、君なら理解してあげられるかもしれない。自来也先生から聞いた綱手様はそんなことを本気で言う人ではないからね」

「分かったような口をきくな! この若造が!」

 

 綱手が吠えるとミナトは困り顔になった。

 三代目もため息を吐いている。

 そんな中、シズネが言った。

 

「綱手様! 彼を見てあげましょう! 事情はよく分かりませんが火影様の頼みなら引き受けるべきです!」

「ならシズネ。お前がメインで治療しな」

「あひぃ?! わ、私が?!」

 

 思わぬ流れ弾にシズネは驚愕した。

 

「え~?! シズネが治療するのか? どうせなら俺、リンに診てもらいてーんだけど」

「なっ! 治療を受ける側の人のくせに注文つけないでくださいよ! 私は綱手様の一番弟子なんですからね!」

「お前、弟子というか世話係にしか見えねーよ。忍らしくねーな」

「仕方ないじゃないですか! 綱手様はだらしない方ですから修行よりもお世話の方が」

「シズネェ!」

「あひぃ! す、すみません! つい……!」

「いつまでダラダラ喋っているんだ! さっさと行くよ!」

 

 この短時間で打ち解けたシズネとオビトを綱手は一喝し、歩き始めた。

 その背に三代目が声をかけた。

 

「綱手よ、場所に関しては……」

「言われなくとも分かってる! 人目につかなきゃいいんだろ!」

 

 ドタドタと出口へ向かう綱手たちに続いてオビトも歩き始めたが、不安げにトビラを振り返った。

 

「行って来い、兄さん。あとで顔を見に行く」

 

 弟の言葉にようやく安心し、

 

「おう!」

 

 と笑い、溶け落ちた自分の腕を拾い部屋を出た。

 火影室に残されたのは三代目、ミナト、トビラの三人。

 

――すでに暗部も退かせてあるか。手回しが良いな。

 

 チャクラ感知で悟ったトビラは感心した。

 

「何か話したいことがあるようじゃな、トビラ」

 

 三代目が朗らかに微笑みながら言ったので、トビラは頷いた。

 

「単刀直入に言おう。俺はうちはトビラであると同時に千手扉間の記憶を持つ。うちはマダラについて話がしたい」

 

 三代目の微笑みは崩れなかった。

 

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