これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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勝者、大蛇丸!

 

「サルよ。その様子を見るに大蛇丸の実験は火影命令ではないようだな」

「当たり前じゃ! 大切な里の者たちを徒に使い、実験するなど! いったいどれほどの里の子を犠牲に……っ!」

「フフ……攫った子供50人ほど柱間細胞を組み込む実験に使いましたけどね、バタバタ死んでいっちゃいましたよ。オビト君、彼がもう少し早く見つかっていればいらぬ手間となったものを」

 

 あっけらかんとした大蛇丸の言い方にトビラは三代目の言葉を思い出した。

 

――『柱間様の木遁を……尾獣を抑える力を受け継ぐため、多くの里の者を死なせてしまいました……まさかこんな形で適合者が出るなど……分かっておれば…………』

 

 そして今も悲しく苦し気な三代目の顔をチラリと見上げた。

 

――サルも似たようなことは言っていたが師弟でこうも意味が違うか。

 

「大蛇丸! お主はやりすぎた! このまま見過ごすわけにはいかん!」

 

 三代目が臨戦態勢に入った。

 

「貴方に殺せますかね? この私が……」

 

 大蛇丸はなおも不吉に笑い、じっと蛇の目で師を見つめた。

 三代目はトビラを手で庇い、印を結んだ。

 

「口寄せの術!」

「……猿飛、呼んだか。っ! 大蛇丸……そうか、ついにやるんだな」

「猿魔! 行くぞ!」

 

 口寄せで呼ばれた猿猴王は如意に変化した。

 三代目は如意を掴み大蛇丸へ迫るが、弟子も口寄せした剣で応戦した。

 が、剣は簡単に砕けた。

 

「あら、こんなものじゃダメね。やっぱり草薙剣でも無いと」

「お主がそれを手にすることはない!」

「それはどうでしょうね……風遁・大突破!」

「クッ!」

 

 剣が砕けた隙を狙おうとした三代目だったが、それより早く大蛇丸の風遁が彼を襲った。

 三代目が瞬身で回避したことにより、二人の間に距離が出来た。

 トビラはその間、ずっと腕を組んで眺めていた。

 

「そうやって見ているだけですか? 二代目火影……このままだと貴方の弟子を目の前で失うことになりますよ」

「若造が……サルが貴様ごときに殺されるわけがないだろう」

「フフ……年寄りの慢心ほど醜いものはありませんね……それとも弟子を信じる美しき師弟愛ですか?」

「その師弟愛の恩恵を一番に受けるお前がよく言うものだ、大蛇丸よ」

 

 トビラは表情を変えずに言った。

 猿魔が三代目をなじった。

 

「猿飛! あいつをやるんだろう! しっかりしろ!」

「すまん、猿魔…………」

 

 三代目の額から流れる脂汗、歪む顔に浮かぶ苦難、震える手。

 トビラはその様子もじっと見つめ、そして大蛇丸が次の手を打とうとする瞬間に言った。

 

「サル、里に仇なす者を討つのは火影としての責務。だが、どうやらお前はそれができぬようだな」

「…………」

 

 沈黙は肯定だった。

 

「大蛇丸の実験方法は許されるものではない。危険もある。だが、奴の知識と才能が里に貢献できることもまた事実。であれば、別の形で師としての責任を果たしたらどうだ」

 

 トビラの言葉に、ヒルゼンは己の手の震えが止まったことに気づいた。

 そして、苦難に歪む顔のまま俯き、すぐさま言った。

 

「ワシは火影を降り、生涯を懸けて大蛇丸を見張る。これ以上、里に仇なすことのないように。それがせめてもの、師としてできる償いじゃ」

 

 ヒルゼンは俯きながら思った。

 

――ワシはどこまでも甘い……この期に及んで大蛇丸を……弟子を殺さずに済むことに……今、ホッとしてる……

 

 ヒルゼンの相棒である猿魔は当然、彼の心の内が分かったので呆れて息を吐いた。

 

「猿飛、俺はもう行く。これ以上、そこの馬鹿弟子に殺されることのないようにな」

「ああ、すまなかった。猿魔」

 

 ポン、と口寄せが解けた煙が上がった。

 呆然としていた大蛇丸はその音でようやく話し始めた。

 

「正気ですか? 猿飛先生、私のために火影を降りるなんて……あなたは里の象徴ですよ? どう説明なさるおつもり?」

 

 大蛇丸の問いにトビラが割り込んだ。

 

「勿論、まだ戦時中だから混乱を避けるため、戦争を終わらせるまでは降りられん。だからサル、さっさと終わらせるしかないな」

「ええ。こうなったら、多少の無理をしてでも平和を取り戻し、次の火影へ繋げましょうぞ。大蛇丸のこと、そして終戦処理の責任を取って火影を辞める……上役にも説明いたします」

「…………本気なんですね、猿飛先生……二代目がいるからですか? 貴方にそこまでさせたのは二代目の生まれ変わりがいるからですかっ?!」

「ワシが選んだことじゃ、大蛇丸よ。トビラは考えるきっかけをくれたにすぎん。元より、火影としての責任を果たせないワシにそこへ居続ける資格はない」

 

 大蛇丸はなおも言い募ろうとしたが、師の表情が昔のように穏やかであることに気づいた。

 その隙を見逃さず、トビラは腕を組んだまま言った。

 

「大蛇丸よ。三代目はお前を殺す代わりに己の生命を絶った。火影としての生命をな。しかし次の火影はそう甘くない。師の顔に泥を塗りたくなければ、これ以上の狼藉を止め、里に貢献しろ」

「なるほど……そうやって先生を降ろして次の火影に私を殺させるおつもりですか?」

「バカを言うな。お前が殺される事態になったら一緒に死ぬのは三代目だぞ。こやつは生涯をかけ、お前を見張ると誓った。それが果たせぬ時は死ぬときだ」

「共に逝く覚悟はできておるぞ、大蛇丸」

 

 弟子をまっすぐに見つめる師。

 その瞳に映る色は火影ではなく、純粋な師としての色だった。

 戦意を失った大蛇丸はだらん、と腕を下ろした。

 

「ククククク…………それで私を完封したつもりかしら、二代目」

「さあな。効果が無いなら別の手を打てばいい。貴様の師は無駄死にすることになるがな」

「……随分と執拗に脅してくるんですね。ふふ……猿飛先生の命がかかれば私が退くとお思いで? そんな曖昧な手を使って来るだなんて、あなたらしくありませんね。二代目」

「貴様が俺の何を知る。…………今の俺はうちはトビラだ。そしてなんの因果か、今の俺はお前の弟子だ。貴様も少しは師匠らしいところを見せろ」

「…………いいでしょう。オビト君の柱間細胞にあなたの存在……気になることは沢山あるわ。トビラ君、貴方も弟子として研究を手伝ってちょうだい」

「無論だ」

 

 大蛇丸は何事も無かったかのように歩き始め、トビラも続いたが振り返り、三代目に言った。

 

「三代目、あなたが火影を降りるまでは俺が大蛇丸を見張りましょう。これも弟子としての務めだ」

「ああ……頼むぞ、トビラよ」

 

 こうして因果の絡まった師弟の今後は決まった。

 

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