知っている
オビトがマダラと接触して柱間細胞を手に入れたこと
知らない
トビラの中身が二代目・マダラをトビラが殺したこと
元々どこの里も消耗している時期になっていたため、終戦の目途もつきつつあった。
そのため、三代目としては終戦交渉する目算もついていたし、上層部も終戦に反対はしていなかった。
だが、彼が火影を降りる理由には反発があった。
「いくら弟子がしたこととは言え、大蛇丸の責任をなぜお主が取る!」
「火影は弟子に限らず里の者すべてに責任を持っている。お前のその辞任の仕方だと、後の火影も下の者が何かするたびに辞任することにならないか?」
「大蛇丸のことを気づけなかったのはワシに責任がある。火影を降りた後、あやつを見張り続ける。その覚悟も込めた辞任じゃ。ワシは元々、こたびの大戦での賠償責任を他里に求めたくないと考えておった。強引に終わらせるとしたらその責任も取らねばならん」
憤るコハル、眉を顰めるホムラにヒルゼンはあくまで冷静に言った。
共に話を聞いていたトリフも口を開いた。
「大蛇丸が火影の命令でもなく、里の者たちを実験に使っていたのなら極刑は免れない。なぜ殺さない?」
「…………」
三代目と相談役たちは長い時間を共に過ごしてきた。
一瞬の躊躇にも気づくほどに。
コハルが一番に吠えた。
「まさかヒルゼン! 弟子の命が惜しいのか? お主は火影! そんな甘い気持ちで見逃すと里のためにならん!」
「お前がやれないなら他の者にさせるのはどうだ?」
ホムラの言葉に三代目が首を振った。
「ダメじゃ。大蛇丸は確かに禁忌を犯した。しかし、あ奴の研究は後々、里を救うことになるかもしれん」
「アイツがしていたのは柱間細胞を子供に埋め込む実験だったか。成功例が?」
「いや。じゃが、うちはオビトの研究をするのに大蛇丸ほど最適な者はいない。オビトの身体に適合している柱間様の細胞を分析し、他の者も使えるようになったら……」
「うちはオビトという者に埋め込まれた細胞、元はうちはマダラに埋め込まれたものらしいが、危険はないのか?」
割り込んできたのはダンゾウだった。
コハルが咎めるように言った。
「ダンゾウ! どこへ行っておった! この忙しい時に!」
「ワシとてやることは多い。こと戦の最中ではな。三代目よ、うちはオビトは写輪眼も開眼していると聞く。さらに柱間細胞も使いこなすようになったら、力が集中しすぎないか? それすらもマダラの策略ではないか?」
「その心配はない。マダラはもう死んでいる。確かにオビトの心臓にはマダラが施した呪印札があるが、それを打ち消す札はすでにこちらで貼ってある」
トリフが尋ねた。
「呪印札が? 打ち消すなんて可能なのか? ヒルゼン、それをお前が?」
「…………ああ。かつて二代目様より教わったことがあり、それを使った」
「二代目様の……穢土転生に使う札か。しかし打ち消すものなんて聞いたことが無いぞ」
「トリフ。ヒルゼンは幼き頃から初代・二代目ご兄弟のご指示を賜ってきた。我らが知らぬ術を知っていてもおかしくはない」
ホムラの言葉のおかげでトリフの追及はそこで終わった。
コハルが気を取り直して話し始めた。
「今の議題はうちはオビトではない。ダンゾウ、大蛇丸が禁忌としていた実験を……柱間様の細胞を里の子供に埋め込む人体実験をしていた。ヒルゼンはその責任を取って火影を辞任し、大蛇丸を監視するつもりじゃ」
「火影を? 次の火影はどうするつもりだ」
ダンゾウの問いに三代目が答えた。
「次なる世代より選ぶつもりじゃ」
「しかし今は戦時中だ。若い者に務まるのか?」
「終戦の目途はついている。一刻も早く各里と交渉し、条約を結び、次の火影へ繋げる。ワシは自来也に任せたいと考えている」
「…………弟子の責任を取って火影を辞めるのに、次の火影に結局お前の弟子を選ぶのか?」
ダンゾウがチクリと言うも、トリフが口を挟んだ。
「自来也は伝説の三忍として他里にも名を馳せている。上忍班長の立場から言わせてもらうと、本当ならそれ以上の名声があったはたけサクモが適任かとも思うが……」
「はたけサクモは任務失敗の影響が大きい。里内からの信任が得られないだろう」
ダンゾウの否定に加え、ヒルゼンも眉を下げながら頷いた。
「サクモ本人からも火影は己に向いていないと言われてしまった。あやつはあくまで前線に立ち続ける気だ」
トリフが顔を曇らせながら言った。
「惜しいな。サクモは大名様からの覚えもいいのに……だが、やる気のない者に任せるのも危険か。であれば、自来也が最有力候補と考えて良い。名声の点で言うと、うちはフガク、波風ミナトも候補になりうる」
「うむ。しかしうちはフガクはすでに警務部隊の隊長、火影にまでしたら権力が集中しすぎるの……」
「波風ミナトは確かに資質もあるから良いが……まだ若い。そう考えると自来也が適任じゃ」
ホムラとコハルも自来也が候補であることに賛同したため、ダンゾウは顔をしかめた。
「しかしだな、ワシが言いたいのは三代目の教えが大蛇丸の失敗に繋がったのなら、同じ教えを持つ自来也が火影になるのは良くないのではないか、ということだ」
ダンゾウの懸念にトリフが切り込んだ。
「俺は大蛇丸の失敗が果たして三代目の教えが原因か疑問だがな。ダンゾウ、大蛇丸はお前の部下でもあった。禁忌であった人体実験、根が絡んでいるということは無いよな?」
「…………無論だ。大蛇丸が一人で行ったこと」
「弟子とは言え、一人前になった以上責任は本人にある。だが、うちはオビトの呪印札を三代目が制御できる点も考えると、大蛇丸、うちはオビト両名を三代目が抑える形が良いかもしれない」
「トリフ、お主までそんなことを言うのか!」
「コハル、戦争でこの里もかなり疲弊している。そんな中でうちはマダラに関わる問題も一人で対処するのは難しい。だからこそ、里は次の世代へ、そして三代目は過去の遺産に対処する。そのつもりなのだろう。ヒルゼン?」
「ああ。その通りじゃ」
トリフの問いに三代目は頷いた。
「ならば、上忍班長としても次の火影は自来也を支持する。アイツなら皆の信任も得られるだろう」
「ワシも同じく」
「同じく」
「ダンゾウ。お前は?」
「……いいだろう」
こうして上役たちの会議が終了した。