次回も過去編です。
火影に選出された柱間は一族の長たちを集めた。
勿論、マダラにも声をかけたが来てはくれず、空席を見つけて落ち込んだ。
「兄者、皆が待っている。そろそろ始めてくれ」
「む……コホン。ここにこうして里に集う一族の皆と会合が出来ること……本当に感謝する!」
ゴンっと机に頭を打ち付け涙する柱間に扉間は横から言った。
「兄者! 先日の封書により兄者は正式に火の国木ノ葉隠れ代表の火影となった。代表ともあろう者が簡単に頭を垂れるな!」
「だが、これだけの者たちが集まってくれておるのだぞ! うれしくて仕方あるまい!」
名家もそうでないのも含め二十ほどの長たちがいる。
扉間は仕方なくその者たちに言った。
「すでに協力してもらったから分かるだろうが、火影は里の皆による民意で選出された。つまりこれで兄者は里からも大名様からも認められた里の長だ。また、この里の名も同時に決まった」
「うむ! うちはマダラの命名により、木ノ葉隠れの里と呼ぶことにする」
「あいにく、命名者のマダラは所用につき今日は欠席している」
柱間の言葉をすかさず扉間が補足する。
一族の長たちの多くは兄弟の掛け合いを用心深く聞いていたが、中には心底めでたいとばかりにニコニコと聞いている者もいた。
柱間も里のことを考えると嬉しくなってくるのか、明るい面持ちで言った。
「これで火の国からも里は認められた形となる。里も出来たことだし、さっそく皆に提案したいことがある!」
「兄者! 段取り通りに進めてくれ!」
「どうせ話すことだ。今でもそう変わらん」
「良いではないですか。火影様の第一の提案、みな興味があるでしょう」
柱間を援護したのはニコニコと聞いていた男だ。
「おお! 猿飛殿もそう思うか! 実はだな、俺は子供らを集めた学校を作ろうと思っている! 皆の子もぜひ通わせてほしい!」
猿飛佐助の援護に気を良くした柱間が堂々と言うと、その場に緊張が走った。
用心深く話を聞いていた一族の長たちの顔が強張っている。
思っていた反応と違うことに首をかしげる柱間とその横でため息を吐き額に手を当てる扉間。
スッと手を挙げる者がいた。
「火影殿よ、それはつまり我らの子を人質に取りたいということか?」
「なっ! 志村殿! それは断じて違う! そもそもだな、俺は子供が殺し合わなくて良い集落を作りたいと思っていた。そしてマダラの協力もあり出来上がったのが木の葉の里だ。そして、学校は子供がちゃんと強くなるよう訓練するために作るつもりだ」
「まさか訓練は火影様がなさるおつもりで?」
「ああ! もちろん俺も参加する!」
「兄者、少し黙れ!」
扉間が一喝するも遅かった。
一族の長たちがヒソヒソと懸念を話し始めている。
「千手とうちはに我が子を兵として差し出すのか……」
「しかしそれで強くなるのであれば一考の余地もあるか?」
「いや、強くなったとしてもその子は千手のために動く」
「火影は千手とうちは以外を駆逐するつもりではないか」
漏れ聞こえる言葉に柱間は大慌てで否定した。
「皆の者! 落ち着いてくれ! 子供が多くなれば俺らだけでは手が回らなくなる。だから、皆にも協力してもらいたい。これだけの一族が集まっておるのだ。それぞれの持つ術を共有すればこの里もそれだけ強くなる。子供の能力に合わせた訓練だってできるぞ!」
「火影様! 一族の秘術は一族で守ってこそのもの! いくら木の葉隠れの里に加わったとは言え、そこは譲れません!」
「そうだ! そもそも、子供の能力に合わせた訓練であれば我らとてすでに行っている! それをなぜ、わざわざあなた様のところで?」
「そもそもだ! 里に加わったとはいえ、他の一族たちを信用しているとは言っていない! 情報だけかすめ取られるのは勘弁だ!」
「それはこちらのセリフだ! 貴様の一族はいつも小賢しい手で情報を取っていくのだからな!」
「何を! こちらとて先祖の代より貴様らには手を焼かされるばかりだった!」
喧々囂々、白熱する議論の中、ゴン! と大きな音がした。
柱間が机に頭を打ち付けた音だった。
「たしかに我らは少し前まで一族同士で争い続けていた……すぐにこの俺を信用することは難しいかもしれん。だが、俺は一族の垣根を超え、皆が協力し合う里。それが出来る日を夢見てここまで来た。皆もいまの戦乱の世に思う所があったからこそ里に加わったのではないか?」
議論していた面々が柱間の方を向いた。
「俺は子供のころに弟を二人失った。皆の中にも兄弟や我が子を失った者もおるはずだ。子供らを死なせることのないような……皆が強く大きくなるまで生きていられる、そんな里を作りたい。だからどうか、どうか! 皆の協力も頼みたい……!」
火影の嘆願を皆、難しい顔で聞いていた。
続きは扉間が引き取った。
「これが火影の願いではあるが、子供を学校へ通わせることを強制する気はない。各々の一族で育てたいのであれば好きにすればいい。まだ里そのものも出来上がっていない状態だ。学校が出来上がるのもかなり遠い話になるだろう」
「学校は里の中でも重要な施設ぞ! そうだ! 火影室のすぐそばに作り、皆が立ち寄れるようにしたらどうだろうか?」
「兄者! そういった込み入った話はまた後だ。それよりもまずは里の基盤をしっかりさせねばならん。これには皆の協力も必要だ。そうだろう?」
「うむ。確かに俺は里の代表として火影を名乗ることになったが、俺一人で里を作ろうとは思っておらん。マダラに里の名をもらったように、里の皆で作り上げていきたい」
柱間が一同の顔を見ながら宣言した。
「そういうことだ。今日は一族同士の顔合わせの会合だ。そろそろ終わりにする」
扉間の一声で会合は終了し、皆が帰って行った。
長たちが集結していた部屋はがらんと寂しいものに。
その部屋で柱間はうじうじと落ち込み、扉間は腕を組んでしかめ面をしていた。
「兄者! いつまでそうしているつもりだ!」
「しかしだな、扉間よ。まさか皆があれほど反対するとは……」
「だから言っただろう! 学校の話はもう少し後にするべきだと!」
「だが、火影となった一番の時にこそ夢を語らんでどうする」
「兄者! 自分でも言っていただろう。もう里は兄者一人のものではない。皆で作り上げていくものだ。民意で火影を選んだように、里の運営も民意で行っていく。学校の在り方も皆の同意を得て行かねばならん。それには時間が必要だ」
「マダラはすぐに賛同してくれたのに……」
柱間はチラリと空席を見た。
そこはマダラが座るはずだった席だ。
「兄者。いつまでもマダラのことを……」
「ちと、よろしいでしょうか」
部屋の入り口から声をかけられ、扉間は話を中断した。